渓道神社 香川県三豊市財田町財田上 鉾八幡神社の元・境外摂社
現在の祭神 豊玉姫神・高龗神・闇龗神
本地 聖観音

梶原景紹・梶原竹軒「古今讃岐名勝図絵」巻之十一

財田村 龍王社[LINK]

〇龍王社 財田中村にあり。社僧伊舍那院、祭礼六月十八日、社領弐石六斗。
当社は人里を去る事五十町に及ふ山中にあり、 谷の口奥の内といふ所に財田といへる所ある事は前にしるす、 此龍王社の由来を尋るに往古は上の村福池といふ所に有。 今龍王淵といふ所あり此所を田とすれは崇あり、 永正年中当村北地といふ所に観音堂あり、 善入といへる法師信心堅固にして常に普[ママ]品を唱念し光明三味懈怠なく務めけるか或時龍王此善入が夢に告て曰、吾住所川下にして流不浄也、願は此川上に紫竹生たる所あり其地に宮を移すへしとあり、 善入夢さめて其水上を尋ぬれは紫竹の繁茂せし獄あり(此淵今は埋め田地となり紫竹丘と云)此辺に宮を遷ける、 其後又善入に告たまふ、我社一度移すといへとも川上に人家あり流水清情ならす、此水源に九十九谷を経て紫竹と芭蕉の生せし処あるへし、其地へ社を移すへしとなり、 善入等は御告の趣人に告くるとも正しき証なけれは人是を疑ひ申へし奇瑞をあらはし玉へと申と思ひて夢覚たり、 翌朝しのゝめのころ龍女庵の戸にたゝすみ玉ふ、 善入告て、かゝる御姿にては人いよいよあやしみ申へし、只其儘の御姿を拝み奉らんと請ひけれは、 龍女曰、汝真像を見んとならは七日潔斎してと仰あり、 是より斎居して七日目の暁に庵の前なる喬木の上に雲烟かゝり纔に其一手を見せ玉ふ、 善入信心肝に銘して礼拝し御告の事を請かひ是より谷をかそへて行も知れす、 また谷道といふ方の流に添ふてわけ入て尋るに九十九谷の数是りて其元に紫竹と芭蕉の生ひ繁りたる所ありて下に深淵ありて水藍の如し(瀧有高二丈あまり上を雄瀧下を雌瀧と云)誠に深邃絶塵の境なり、 善入歓て此事を時の領主に祈へて此処へ石壇を築き社を建て遷宮せしなり、 夫より此地旱損の憂なし、 早年は雨を祈に応あり(俗に我郷といふ龍王の神徳也)
[中略]
雨乞の節は仮家を建て参籠す、 祭斎踊(又幸祭踊といふ)此踊を催せは雨降らすといふ事なし。 古代の本式にすれは費用多き故略して石野と云在所の者伝へ来りて興行あり、 大般若百万遍修行には此地観音堂にて是を勤む、 本尊は聖観音石像なり。 龍王の本地といひ伝ふ。