第三十八 橋姫明神事
橋姫は日本国内の大河・小河の橋を守る神である。 摂州長柄の橋姫、淀の橋姫、宇治の橋姫など数多いが、今は長柄の橋姫の事を明らかにして、他の橋姫はそれに准う事とする。人皇三十八代斉明天皇の御代、摂州長柄橋がかけられた時、人柱が立てられ、その河の橋姫と成った これに依り、河で死ぬ人はみな橋姫の眷属に成るという。
この橋は度々架けられたが長持ちしなかったので、人柱を立てようと内談されていた。 そこに膝の破れを白布で縫付けた浅黄の袴を履いた男が妻子と共に通りかかった。 男は橋材の上で休みながら、「膝の破れを白布で縫付けた浅黄の袴を履いた者を人柱を立てれば良い」と言った。
橋奉行がこれを聞き、男とその妻子を人柱に立てた。 身を投げる時、妻は歌を詠んだ。
物いえは長柄の橋の橋柱 鳴かずば雉のとられざらましこの女は橋姫と成り、人々は長柄橋の近くに社を建て橋姫明神として祀った。