許し −− for her pardon −−
「RAI なにしたの?」 あゆみはランクルを運転しながら突然そう聞いてきた。 外の景色をボーっと眺めていた俺は その言葉を聞き流そうとした。 ガラスにうっすらと映りこんでいるあゆみは まっすぐ正面を見たままのようだ。 ドアミラーを覗くと 後部座席に座り込んだ エリと視線が合った。 何時から彼女は観ていたんだろうか 等と考えていると、 「ねぇ、RAIに用事って感じじゃなかったし、私でもなさそうなんだけれど・・・」 今度は俺にじゃなく エリに話し掛けている様子だ。 エリの視線が動き出す。 そして再び視線を俺に向け、にっこり笑った。 もう観念するほかない様だ。 しかし、いつもながら あゆみの思考には驚かされる。 バタバタ騒がしくしていながら、物事はしっかり見つめることが出来る。 「何処で気がついた?」 俺はあゆみに体を向けると観念してそう切り出した。 正面を向いたまま ゆっくりとあゆみが微笑んだ。 「だって、RAI 遅刻した割に 堂々としていたからネ。」 そう言うと 少し顔を俺に向け片目を閉じた。 「それに あなたって単純だから。」 「それって誉め言葉だよな。」 そう言いながら俺は笑い出してしまった。 尻ポケットからタバコを取りだした。 「吸ってもいいかな?」 あゆみはにっこりうなずいた。 俺は100円ライターで火をつけ 窓を少し開けた。 煙に 頭が少しクラッとする。 横合いに あゆみが手を差出し催促する。 もう一口吸ってから 指に挟んでやった。 「サンクス。」 魅力的な唇にタバコがよく似合っている。 「そう、あゆみの言うとおり 俺にもあゆみにも関係の無い連中だった。」 「今朝、といっても昼の出来事だけど 待ち合わせ場所に向かう途中で彼女に出逢ったんだ。」 「さっきの連中に追われていたんだ。 真昼の大通りでね。」 あゆみがタバコを返してくれそうも無いので新しく火をつける。 やはり今回もクラッと来たが心地いい。 あゆみの向うには 真っ青な海が広がっている。 真っすぐな砂浜。 真っすぐな水平線。 空からは透明なシャワーが降り注いでいる。 「俺自身 理由がよく分からないんだけれど、助けてやりたかったんだ。」 そう言うと 一口深く吸いこんだ。 「分かるような気がするわ。 きっと私も助けたと思うから。」 「俺達って 今、正義の味方だよな。」 「というか・・・ RAIの場合は彼女の虜なんじゃない?」 「げ、そんな事言うかぁ・・・・ 俺悲しいぞ。」 ぷっ と吹きだしあゆみが笑い出した。 俺もあゆみの笑い声に吊られて笑い出した。 やっとこさ、本当のお許しを貰えた。 短くなったタバコを受け取り 火を消してやった。 俺のほうも最後の一口を吸い込んでから丁寧に火を消した。 パタンと灰皿を閉じる音が車内に響いた。 「エリちゃん。 そのお・・・・嫌なら言わなくてもいいんだけどね。」 「聞かせてもらえない??」 あゆみと俺の二人して質問する形になってしまった。 エリの方を見ると まっすぐ見つめ返してきた。 「家出・・・・したの。」 「家出って・・・ あの連中は少し普通じゃなかったけれどなぁ。」 あゆみも視界の隅っこで コクコク肯いている。 「でさぁ、エリちゃんとしては どうしても嫌なわけ・・・?」 うつむいたまま エリは答える様子が無い。 「ねぇ お父さんと喧嘩でもしちゃったの?」 「お父さんなんて 居ないわ!!」 あゆみの方を睨みつけ エリが言い放った。 あまりにも強い拒絶が感じられ 話が止まってしまう。 エリの突然の力強い言葉に何も言い出せないで居ると、 あゆみがぽろっと言った。 「嫌われちゃったかなぁ・・・」 おどけた声でそう言うと、ルームミラー越しにエリを見つめた。 「・・・・ごめんなさい。」 消え居りそうな声でエリちゃんは言い、そのままうつむいてしまった。 「んふっ。 いいのよ、RAIなんてしょっちゅう怒鳴るんだから。」 「そ、そうか?」 雲行きが怪しくなってきた。 今度は俺の番か・・・・ 「そうよ、知り合った頃なんて 喜怒哀楽がほとんど無かったもんね。」 「今は、こんな風にオチャラけてるけど、違ったんだから。」 「た、確かにそうかもしれないけれど・・・・ 怒ったりするかなぁ。」 「スグ怒って す・ね・る。」 「怒鳴ってないやん・・・・・・・・。」 強く言い放てないので声が小さくなっていく。 「一緒なの! 怒鳴るのも スネルのも。」 よく分からないが、彼女のほうが正しい気がしてきた。 大した違いでも無さそうだ。 こうやって丸めこまれてしまうのは、いつもの事だし・・・。 「ほら、また すねちゃった。」 あゆみがコロコロ笑い出した。 「分かったよ。 そういう事でいいや。」 半分ヤケクソ気味に言ってやった。 彼女には 口喧嘩はもちろん、説得するのも並大抵ではない。 こういう大した問題じゃない場合、折れちゃったほうが得策だった。 ・・・・勝てやしないから。 「あなた 単純なんだから。」 「・・・何時まで引きずるんだよ。」  そう言いながら 不覚にも顔がにやけてしまう。 エリのコロコロした笑い声が響いてきた。 それが合図になって車内は笑い声で溢れた。 なんだか本当に楽しい時間と感じだした。 −−−To be continued.−−− NEXT
−−鼻、もとい 華 募集−− RAI.へmail GO〜 あなたからの感想を心待ちにしています。RAI.へmail GO〜
”挿し絵”なんてあればいいかなぁ〜って・・・・ 何方か”作っちゃる!!”って御方いませんか? ぜひMAILにて ”作っちゃる!!”と。 (^-^

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