〜 絶滅危惧種 〜  

どさくさ


  どさくさに紛れて何かをする、誰でも過去に一度はそんな経験があると思う。この場合の「何か」とは、どちらかと言うと良くないことである。因みに私にはそんな経験はない。

  昔、台東区在住のの古老に「どさくさの語源」をたずねたところ、浅草に由来しているとのことであった。明治の初頭に自らを土性骨(どしょっぽね)と名乗るスリ集団が府内各所の繁華街で犯行を繰り返していた。彼等の根城は上野界隈であったが最も被害が多かったのが浅草である。その後土性骨は全員検挙されたが、彼等の隠語で三社祭の喧騒に紛れて財布を盗み取る事を「どさくさ」と供述したとかしないとか。この事から喧騒に紛れて悪事を働くことを「どさくさ紛れ」と言うようになったらしい。

  しかしその後の調査で江戸前期の浮世草子に「どさくさ」が使われていることが判明した。この古老の説は全くのデタラメだったという事である。他の有力説としてはポルトガル語の「Dosacusa/ドサクサ=混乱して騒いだりするさま」がある。発音も意味もほぼ同じ、恐らくはこれが正解であろうが、間違いと解っていても古老の唱える浅草説も捨てがたい。