アメリ

Le Fabuleux Destin D'Amelie Poulain
2001年/フランス/2時間1分

監督・脚本
ジャン=ピエール・ジュネ

脚本
ギョーム・ローラン

撮影
ブリュノ・デルボネル

美術
アリーヌ・ボネット

音楽
ヤン・ティルセン

出演
オドレイ・トトゥ/マチュー・カソヴィッツ/リュフュス/
ドミニク・ピノン/イザベル・ナンティ/セルジュ・メルラン

モンマルトルのカフェで働く空想好きの女の子アメリの日常と初恋を
可愛くオシャレにジュネ風味を効かせて綴ったメルヘンチック・コメディ。


★★★★★

渋谷シネマライズ動員新記録で話題の本作。
事前に電話したところ「1時間前には並んでいただいた方が確実です」とのこと。
この寒空の下、スペイン坂に1時間行列を作るほど酔狂ではないので、
整理券を配る銀座シネ・ラ・セットの方が少しはマシだろうと目論んだものの、
「整理券をゲットするための仮整理券」とやらを渡され、受付に続く狭い階段へ何度も足を運び、
やっとの思いで観てきたのが12月上旬の土曜日のこと。

観終わった後「幸せになる」のがウリ文句だが、
確かにほんわかあったかい気持ちで映画館を後にすることができたような気がする。

気に入ったと言えば、まぁ、そうなのだが、スクリーンを2時間見つめながら
私には声を大にして訴えたいことがあった。
「これってキェシロフスキのパクリ、いや、オマージュあるいはリスペクトなんでは?!」

故クシシュトフ・キェシロフスキ監督は、晩年、イレーヌ・ジャコブを主演に二つの作品を撮っている。
『ふたりのベロニカ』と、遺作になった『トリコロール 赤の愛』。
二作ともイレーヌ本人の清潔感が作品全体を支配しているような
言ってみれば少女趣味的ファンタジーであり、
退屈でご都合主義ともとれるストーリーには拒否反応を示す人もいるだろうが、
イレーヌに注がれるキェシロフスキの眼差しは静謐な愛に満ちていて、
美しく静かにそして優しく紡がれる1時間半は「幸せ」な気分を誘ってくれる。

そんなわけでお気に入りのキェシロフスキ+イレーヌ作品なのだが、
『アメリ』にはこの二作を彷彿とさせる要素が結構あからさまに登場するのだ。

例えば、偏屈な老人との交流とか、覗き・家宅侵入行為とか、
ビデオテープの手紙とか、ちょっとした推理ゲームの果てにカフェで会ったりとか。
何よりもテーマが「博愛に目覚めたおせっかい少女の初恋物語」なのだから。

とっつきにくいキェシロフスキ作品が掲げたモチーフとテーマを
ジャン=ピエール・ジュネが彼独特の『デリカテッセン』風味で
メルヘンチック・コメディとして料理したものに違いないと確信したのだが、
一緒に観に行った友人にはイマイチ積極的な同意が得られず寂しい思いをしたのだった。

ちなみに、アメリを演じたオドレイ・トトゥって
イレーヌ・ジャコブとジュリエット・ビノシュを足して2で割ったような顔じゃありません?

私の知る限りどこの批評でもこの点に触れていないのが少々不満ではあるのだが、
#ひょっとして『キネマ旬報』あたりでは言及されてるかも知れん。要チェックや。
一部から「渋谷のオリーブ少女たちがカワイイと群がるオシャレ系映画」だと
誤解されているのはもっと寂しい。

『キネマ旬報』11月下旬号の『アメリ』特集記事をチェックできずに年を越してしまった。
年明けから春にかけて上映館が増えるそうだ。先入観にとらわれず多くの映画ファンにこそ観てほしい。
そして思いを同じくする人がいたら「そうそう、やっぱりそうだよね」と肩を叩き合いたいのだが。

追記:やっと『キネマ旬報』11月下旬号をチェックしたが、上記についての言及はまったくナシ。

(2002/01/27)

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