高爪神社 石川県羽咋郡志賀町大福寺 旧・県社
現在の祭神 日本武尊
[配祀] 奇稲田媛命・事代主命
本地
高爪大明神十一面観音
若王子十一面観音
八幡大菩薩阿弥陀如来
伊須留岐権現虚空蔵菩薩
気多大明神地蔵菩薩
白山妙理権現十一面観音

川勝政太郎「続・能登文化財紀行」

松尾寺から竜護寺へ

鳳至郡との堺に純三角形を空に描くのが高爪山で、能登小富士ともよび、海抜440米、その頂上に高爪神社本殿があると教えられる。 いかにも霊山として仰がれるにふさわしい山容である。 やがて大字大福寺にある森に着いた。 ここは高爪神社の幣殿・拝殿のある社地で、山上の本殿とは一里の距離である。 もと神仏分離までは、ここに高爪大明神に奉仕する大福寺があった。
社務所に入って、福山喜三郎宮司にお目にかかり、早速重美の木造彩画懸仏六宮を拝見する。 これも今度の能登旅行で期待したもので、両肩に環を付け、表面に胡粉地を施して、そこへ蓮座上に坐る本地仏を描いたもので、 本来彩色美しいものがあったが、今は剥落が相当進んでいる。 しかし一部に赤褐色や赤の彩色が残って昔をしのばせる。 裏面にはいずれもこれらの本地仏の神名を中央にして、左右に「建治元年(1275)九月九日」「願主伝燈大法師祐禅」と立派な字で墨書がある。 昔六社宮と称して祀った六柱の神の御正躰で、社殿に懸けられていたため剥落を早めたのである。 裏面の神名は次の通りになっている。 「冨来之院、高爪大明神」「若王子」「八幡大菩薩」「伊須留岐権現」「気多大明神」「白山妙理権現」で、高爪の他能登の名神の石動山、気多をはじめ、白山、熊野若王子、八幡の六柱である。 本地仏のよく残る十一面観音(高爪大明神)と、墨書の八幡大菩薩(本地阿弥陀如来)の写真を出しておく。

「日本絵画史年紀資料集成 十世紀―十四世紀」

一二七五年 板絵六社明神懸仏(高爪神社)

〔裏面〕
 (一)
     建治元年九月九日
  冨来之院
  高爪大明神
     願主伝燈大法師祐禅
 (二)
     建治元年九月九日
  若王子
     願主伝燈大法師祐禅
 (三)
     建治元年九月九日
  伊須留岐権現
     願主伝燈大法師祐禅
 (四)
     建治元年九月九日
  八幡大菩薩
     願主伝燈大法師祐禅
 (五)
     建治元年九月九日
  気多大明神
     願主伝燈大法師祐禅
 (六)
     建治元年九月九日
  白山妙理権現
     願主伝燈大法師祐禅

①石川県羽咋郡富来町大福寺 高爪神社蔵
②六面 円形板製 各径23.5cm
③重要文化財(昭和39年1月28日)
④各面表には本地仏が一体ずつ描かれる。 (一)・(二)十一面観音、(三)虚空蔵菩薩、(四)阿弥陀如来、(五)地蔵菩薩、(六)十一面観音か。

「いしかわの神々 ―信仰と美の世界―」

木版彩画 六所宮懸仏 六面

建治元年(1175) 径23.2~23.6
志賀町 高爪神社

 能登富士とも呼ばれる高爪山(標高341m)は、紡錘形の秀麗な山容を示す神奈備である。 中世には、その高爪山信仰の拠点として山麓に大福寺があり、内宮に六所宮として六所権現を祀った。 六面の懸仏は、その六柱の本地仏をあらわしたものである。
 六面ともに檜一枚板製で、表に本地仏を描き、裏面の周縁を面取りして覆輪になぞられ、両肩に鉄製吊り金具を打ち付ける。 表は、前面に白土が下地として塗られ、二重円光を背負う仏菩薩を彩色する。 裏面には、六面ともに中央上方に本地仏に対する神名が記され、その右に「建治元年九月九日」の年紀、左に「願主伝燈大法師祐禅」の願主銘がある。 神名と本地仏の対応はつぎの通りである。
 1 富来之院高爪大明神 十一面観音
 2 気多大明神 地蔵菩薩
 3 伊須留岐権現 虚空蔵菩薩
 4 白山妙理権現 尊名不明
 5 若王子 十一面観音
 6 八幡大菩薩 僧形八幡
 これにより、六所宮では高爪大明神を高爪山第一の神とし、気多・石動・白山といった地元の有力神のほか、若王子・八幡大菩薩を勧請していたことがわかる。