築土神社 東京都千代田区九段北1丁目 旧・村社
現在の祭神 天津彦火瓊瓊杵尊
[配祀] 平将門・菅原道真
本地 聖観音 天大将軍身観音

「江戸名所図会」巻之四(天権之部)

津久戸明神社

築土銀町にあり(この地は牛込と小日向の界にして、当社の方は牛込に属す)。 別当は天台宗にして善竜山成就院と号す。 本地仏は聖観音、伝教大師の作なり。 相伝ふ、天慶三年庚子、相馬将門誅せられし後、その首級を当国江戸平川の観音堂へ移し、これを斎ひて津久戸明神と称す。 文明十年戊戌、太田道灌江戸城の鎮守として宮社を造立ありしといへり。

「御府内備考続編」巻之二十二

築土明神社(牛込築土)

往古者平川御門内に鎮座御座候処、天正七己卯年二の御丸御普請に付牛込御門内に替地被下置候処、 又々元和元乙卯年外堀御普請に付御用地に相成、牛込只今之地え替地拝領被仰付、追而相応之地見立相願可申旨被仰付候由申伝候、
[中略]
○本社(二間四方) 廊下(二間四方) 幣殿(間口二間、奥行三間) 拝殿(間口六間、奥行三間) 向拝(二間四方)
  築土大明神(木座像)
   右者、人王六拾壱代朱雀院御宇平親王将門遷化也、
  真鍮六角御宝塔(秘物)
  妙見尊(伽羅仏、立像、丈二寸二分)
[中略]
○本地堂(二間四方)
  本地天台(大)将軍身観音(木立像)
  地蔵尊
○護摩堂(二間四方)
  不動尊、附二童子 弁財天(弘法大師作木座像、丈五寸五分、附、大黒天、毘沙門天) 愛染明王 聖観世音
[中略]
○聖観音堂(間口四尺五寸、奥行五尺五寸)
  供養仏聖観音(銅仏)
○合社(間口二間、奥行六間)
  天照皇大神宮 天満宮 淡島大明神 山王 秋葉権現 護法稲荷 福寿稲荷
○三峰山社(間口三尺、奥行四尺)
○田安稲荷社(間口九尺、奥行二間)
  神躰幣束
[中略]
○祭礼、九月十五日清湯神楽大般若執行、尤往古より渡祭礼之儀者無御座候、
[中略]
○別当善竜山楞厳寺成就院 天台宗東叡山末
○当社縁起壱巻あり、 もとより採用すへきものにあらす、 故に其要のみを爰に抄録す、 曰、修法の奇特にいつともなく将門の眉間へ白羽矢一筋立、 秀郷居合て終に御首かき落、 御首その矢をもちなから虚空を飛武蔵国豊島郡江戸庄平河村つくとの観音堂の仏前に落ける、 それよりして観音霊験奇妙かきりなし、 数百年の後文明の頃太田道灌武蔵の守護として平河に城郭を構へ給ふ時に、此観音を垂跡し将門を大明神に勧請し給ふ云々