由加山蓮台寺 岡山県倉敷市児島由加 真言宗御室派別格本山
現在の祭神 瑜伽大権現
本地 阿弥陀如来・薬師如来

「金毘羅参詣名所図会」巻一

瑜伽山蓮台寺慈聖院

本社 瑜伽大権現
本地 阿弥陀如来、薬師如来、本殿に安置す。共に行基菩薩の作、秘仏なり。
[中略]
本尊十一面観世音菩薩 行基菩薩の作。
[中略]
[当山縁起に曰く] 抑当山は人皇四十五代聖武天皇の勅願に依て行基菩薩の開基也。 其の始め天平年中、菩薩大僧正に転任して朝恩を報じ奉らんが為に、天下泰平の御祈願を修すべき一宇を建立せんとて、自ら遍く雲水に遊歴して宿福有縁の境地を選び給ひつ。 竟に児嶋に渡来りて此の山村の茅屋に宿り給ひける夜の夢に神人来りて告て宣く、我は神代の古しへ此の山中の主たる彦狭知命也。 僧正この度、王法守護の霊場を造立せんとの大願を起し給ふ志殊勝なり。 我が住む山は無双の清堺なれば早く来りて梵境を開き三密瑜伽行を修し給へ、国家安全疑ひなからむ。 又我をば即ち瑜伽大権現と号して斎き祭り給ふ程ならば、長久に三密擁護の善神となりて利益を施ん。
[中略]
神託の地はここなりと思し合せて大般若経六百軸を書写して是を埋め、其の所を経之尾と名づけ一寺を造立して、即ち経尾山瑜伽寺摩尼殊院と号し、彼の神の教の如く瑜伽大権現の御社を建て、原来瑜伽は相応にして慈悲の二徳なればとて、其の三昧たる阿弥陀、薬師の二体の本地仏を自ら彫作して安置し奉り、仏法王法の守護神と崇め一向三密瑜伽の行業を修し、国土安穏の祈誓を怠り給はざりける時に、此の山の西の方に夜な夜な怪しき光りの立けるを御覧じ給ひ、いかなる故にやとて覓行給へるに一株の香木なりければ、是を伐りて又手づから十一面の観世音菩薩の尊像を彫刻し本尊とぞ仰ぎ給ひける。 即ち今の本尊是なり。