研究ノート
光速に関する考察
疎密波の伝播速度
2025.6.23
五十川晋一
目的

 音が聞こえるという現象は空気や液体を媒体にした疎密波(縦波)の仕組みと言える。
また空気や液体を媒介するより、固体の端を叩けば反対端に疎密波が瞬時に伝わる。
本報では物理機能モデル手法を用いて疎密波の伝わる速度を調べる。
既研究ノートを通して物質の柔性に反比例して疎密波の伝播速度は大きくなる事が予想される。
すなわち剛性の高い物質ほど伝播速度は大きいと言える。
既研究ノート、”物質破壊(崩壊)のモデル化” に於いて物質の寿命は原子量に反比例すると述べたが、これは原子量と柔性は反比例するという仮説から導き出された。
その中で金属元素1Kg当たりの柔性を推定したが、柔性には上限があると仮定し、物理的な速度の上限と言われる光速、及び疎密波の伝播速度との関係を調べる。
なお、物理機能モデル手法の詳細は補足資料に示した。

もくじ

●柔らかい物質について
●エネルギについて
 ・物質に蓄えられるエネルギ
 ・内包量と外延量について
●机上実験
 ・パラメータ
 ・試験条件
 ・パワについて
 ・疎密波の伝播速度の定義
 ・結果
●考察
 ・物質の質量、柔性と伝播速度の関係
 ・光速の解釈
 ・エネルギは整数倍の解釈
●まとめ
●参考文献

柔らかい物質について

 Fig.1参照
物質は点ではなく、長さ(空間)を持つ。
密度は均一ではなく、質点(重心)は物質内を移動する。
力fは質点に作用する=ニュートンの運動の法則
復元力fiは相対速度vrによって生じる=フックの変形の法則
物質は変形=伸縮しながら運動する。
柔らかさ=柔性とは剛性の逆数であり、相対的なものである。
物質の質量に対して相対的な柔らかさという意味である。
こうした見方をする時、物質は粒子と波動の性質を併せ持つ。

Fig.1

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エネルギについて

●物質に蓄えられるエネルギ
 物質全般は絶対零度以上の温度にあるとき、熱エネルギを蓄え、かつ伸縮している。 *1
まず、伸縮している物質の力学的エネルギEは以下のように定義される。

Ev = 1/2 m・v2   Ev:速度(運動)エネルギ、m:質量、v:バネ端部速度               (1.1)
Ef = 1/2 H・f2   Ef:力(変形)エネルギ、H:柔性、f:バネ復元力                 (1.2)
E = Ev + Ef = const. (1.3)

上式は力学の双対性を現し、式(1.3)は対になったエネルギの和は常に一定となる事からエネルギ保存則と呼べる。
補足資料1参照

 次に、物質は絶対零度(-273.15℃)= 0(k)以上で熱エネルギEtは以下のように定義される。

Et = m・Cp・T  Et:熱エネルギ、m:質量、Cp:比熱、T:温度                      (1.4)

*1:ド・ブロイの物質波と言え、物質全般はバネと見なす事が出来る。

●内包量と外延量について
補足資料3参照

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机上実験

●実験用モデル:
物理機能モデルの基本モデルを2連、および7連にすることで物質を伸縮するバネとしてモデル化する。Fig.2参照。
Fig.2

●パラメータ:
・質量m:表1参照
・柔性H:表1参照
・長さ:表1参照
・温度:0(k)=絶対零度
・重力:無し
表1 case1 case2 case3 case4
質量m(Kg) 0.50 0.50 0.50 1.00
柔性H(mN-1)×10-6 0.50 0.50 0.25 0.25
長さ(m) 0.50 0.50 0.50 0.50
連結数 2 7 2 2
総質量(Kg) 1.00 3.50 1.00 2.00
総柔性(mN-1)×10-6 1.00 3.50 0.50 0.50
全長(m) 1.00 3.50 1.00 1.00

●試験条件:
・無重力空間に物質を置き、物質内に疎密波を発生させる為に左端に以下の速度変動を印加する。
・これは無重力空間で静止している物質の一端を叩く事に相当する。
・印加速度変動:正弦波 振動数=103(s-1) 振幅=103(ms-1) 半周期分
・サンプリング時間:10-5(s)
・なお、温度を絶対零度としているのは、物質が熱エネルギに因る伸縮の疎密波を発生させない為である。

●パワについて:
 物質に任意のパワを印加する事は出来ない。
パワ=速度×力(電磁気学では電圧×電流)であり、工学の分野で1765年にワットが仕事の速さという概念を数量化したものである。
単位はワット(w)だが、後に物理学ではパワを時間で積分した量を仕事量=エネルギ(J)と定義したので、(Js-1)が使われる事もある。
また、パワを時々刻々変化するエネルギと見て、瞬時エネルギと呼ぶ場合がある。
補足資料3で、人間は速度=外延量を操作する事は出来るが、力=内包量については関与出来ない、と述べた。
この事実は本報の机上実験に於いて、物質の一端に印加出来るのは速度だけである事を示している。
力は物質両端に生じた速度差を受けて内部の柔性Hによって生じる復元力である。
この復元力は速度を印加する側に反力として還る事になる。(いわゆる手応え)
これは印加する速度は任意だが、復元力の方は物質の柔性が既知でないと予測が出来ないという事である。
従ってパワとは本来、速度を印加して初めて物質の柔性に因って結果が出る物理量と言える。*3
机上実験での速度印加は振動数と振幅を定めた正弦波を半周期分与える。
なお、物質の柔性に対して相対的に印加速度が過大だと復元力が降伏点を超えて塑性変形を起こす場合がある。
逆に物質の柔性が非常に小さい(剛性が過大)場合も復元力は大きくなり、塑性変形を起こし易い。
これについては既研究ノート、”物質破壊(崩壊)のモデル化” 参照。

 相撲の例で言えば、”あの力士はパワがある” という表現を目にする。
仮に大きな速度で相手を突き押しても相手がのけ反れば、相手の力士の筋肉の内部に生ずる復元力は大きくならず、結果的に突き押した側から相手に対して大きなパワは流れなかった事になる。
これはのれんに腕押し状態と言える。
逆にお互いが四つに組むが、力が拮抗して動けない状態は速度がゼロなのでパワは流れない。
しかし、どちらかが足を滑らせて相対速度が生じればパワが流れ始める。
上位力士は力の掛け方、抜き方が身についているからお互いに警戒し合うと組んだ相撲になりずらい。
そのタイミングや体の柔らかさによって勝敗が分かれると言える。

*3:量子力学が確率の概念を導入した時、アインシュタインは結果は蓋を開ける前に予測出来る=決定論を持って終生反論した事に関係する。すなわち物質の柔性が未知の場合は予測出来ないので非決定論となる。補足資料7~8参照

●疎密波の伝播速度の定義:
 Fig.4_1にパワの立ち上がり波形を示す。
伝播速度はパワをもって算出する理由を以下に述べる。
先に述べたように、パワ=速度×力である。
物質端部に印加した速度、および内部に発生する復元力はお互いに位相差を持っている。
物質端部の速度がゼロ以外の時、復元力はゼロとなる瞬間、およびその逆の瞬間がある。
この位相差は補足資料に示した基本モデルの片端を固定した自由振動状態に於いては数学的にπ/2となるが、本報では物質端部を叩く、すなわち速度を印加する必要があり、自由振動状態ではない。
その為、モデル化するには基本モデルを2連以上に繋げたモデルが必要である。
基本モデルは線形系だが、2連以上では非線形系となり、時々刻々物質端部速度と復元力は複雑な様相を呈する。補足資料7~8参照
この為、速度、力単独で状態を把握する事は困難となる。
なお、エネルギ、パワ(瞬時エネルギ)とは物事の本質を表す量であり、時々刻々変化する物事をパワで捉えるという視点は本報のような振動現象に限らず重要である。
逆に言えば、速度、力単独で物事を観測すると本質を捉えられない場合がある。

伝播速度の定義を以下に示す。

 time_P1:物質前端部に速度を印加した時のパワのピーク時刻(s)。
 time_P2:物質後端部に現れるパワのピーク時刻(s)。
 d1:time_P1に於ける物質前端部の変位(m)。
 d2:time_P2に於ける物質後端部の変位(m)。
 time_propag = time_P2 - time_P1
 d_propag = d2 - d1
 v_propag:パワ伝搬速度 = d_propag / time_propag  (ms-1

なお、物理機能モデルでは変位は速度の積分量として求める事から計算の際の量子化誤差が含まれる。 Fig.3参照

Fig.3 計算上の量子化誤差について
同じ質量m、柔性Hの基本モデルも、それをn連に分割したモデルも、原理的にパワ伝搬速度は不変と考えられる。
しかしながら、n=2のプロットでは印加速度振幅に反比例する結果が見られる。
ここでn数を増やすと伝搬速度はn=7のプロットのように印加速度振幅に因らず、ある値に収束するようである。
これは、伝搬速度を算出する際の変位は印加速度の振幅に比例して増大するので量子化誤差の影響を受け難くなり、n数が増えると誤差の影響が均されてくるものと思われる。
また、n=2は原子2個分だが、現実に扱える物質はモル数単位の膨大なn数であり、一定値を示すと考えられる。
Fig.3

●結果:
・Fig.4_1~4_4に示す。
Fig.4_1 CASE1
m=0.5(Kg)、H=0.5×10−6(mN−1)×2連=総m=1.0(Kg)、総H=1.0×10−6(mN-1
左上図:パワ(Js−1
右上図:物質が蓄えたエネルギ(緑線):96658.957(J)
左下図:変位(m)
パワ伝播速度:973.051(ms−1

Fig.4_2 CASE2
m=0.5(Kg)、H=0.5×10−6(mN−1)×7連=総m=3.5(Kg)、総H=3.5×10−6(mN−1
左上図:パワ(Js−1
右上図:物質が蓄えたエネルギ(緑線):96658.963(J)
左下図:変位(m)
パワ伝播速度:966.882(ms−1
case1に対し質量m、柔性Hは同じで連結数、すなわち総質量、総柔性、全長が
変わっても、パワ伝搬速度はほぼ同じ。(量子化誤差含む)

Fig.4_3 CASE3
m=0.5(Kg)、H=0.25×10−6(mN−1)×2連=総m=1.0(Kg)、総H=0.5×10−6(mN−1
左上図:パワ(Js−1
右上図:物質が蓄えたエネルギ(緑線):184832.531(J)
左下図:変位(m)
パワ伝播速度:1436.186(ms−1
case1に対し柔性を1/2にするとパワ伝搬速度が上昇する。

Fig.4_4 CASE4
m=1.0(Kg)、H=0.25×10−6(mN−1)×2連=総m=2.0(Kg)、総H=0.5×10−6(mN−1
左上図:パワ(Js−1
右上図:物質が蓄えたエネルギ(緑線):193317.914(J)
左下図:変位(m)
パワ伝播速度:973.051(ms−1
case1に対し質量を2倍、柔性を1/2にするが、パワ伝搬速度は変化しない。

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考察

●物質の質量、柔性と伝播速度の関係
・Fig.4_1にcase1:質量m=0.5(Kg)、柔性H=0.5×10−6(mN-1)なる物質を2連にした物質を示す。
・総質量=1.0(Kg)、総柔性=1.0×10−6 (mN-1)となる。

・Fig.4_2にcase2:同じ質量m、柔性Hなる物質を7連にした物質を示す。
・総質量=3.5(Kg)、総柔性=3.5×10−6 (mN-1)となる。

case1、2はお互いに質量m、柔性Hは同じで連結するn数が異なる例だが、総質量、総柔性、全長が大きくなってもパワ伝搬速度は変化しないと言える。
数値が0.6%異なるのは量子化誤差の影響と考えられる。 Fig.3参照

・Fig.4_3にcase3:質量m=0.5(Kg)、柔性H=0.25×10−6(mN-1)なる物質を2連にした物質を示す。
・総質量=1.0(Kg)、総柔性=0.5×10−6 (mN-1)となる。
・case1に対し柔性を1/2としたものであり、パワ伝搬速度は47.6%高くなっている。

・Fig.4_4にcase4:質量m=1.0(Kg)、柔性H=0.25×10−6(mN-1)なる物質を2連にした物質を示す。
・総質量=2.0(Kg)、総柔性=0.5×10−6 (mN-1 )となる。

case1に対しcase4は質量を2倍、柔性を1/2としているが、これは原子の原子量と柔性は反比例する関係(既研究ノート、”力学の双対性から見たプランク定数”参照)を模したもので、元素違いという例である。
しかし、パワ伝搬速度は変化せず、この事から物質のパワ伝搬速度は元素に左右されず、一定である事が予測される。

 なお、 case4はパワ変化のタイミングと変位は同じで、印加したパワと物質に与えられたエネルギは2倍になっている。
これは同じ速度で叩いても、物質内部に生ずる復元力の方が大きくなっているからである。
先述の、物質に任意のパワを印加する事は出来ないと言うのはこの事である。
何か事象を制御しようとする際、物理的に手を下せるのは速度(電圧)のみであるが、速度に応じて期待した結果が出ないとしたら、それはパワ、エネルギを任意に制御出来ないからである。
期待した結果=エネルギを創出する為には、制御しようとする相手の柔性値を知っておく必要があると言える。
これは相手に言葉で指示しても相手がどう動くかは相手の感性次第であるという事と似ている。

 case1~4で物質のパワ伝播速度が柔性Hに反比例する事が確かめられた。
ここで、質量m=0.5(Kg)、柔性H=0.5×10−6(mN-1)×2連を基準に柔性Hを10水準に振った例をFig.5に示す。
柔性とパワ伝搬速度の関係は指数関数になる事が判る。左図
両対数表示にすると柔性とパワ伝搬速度は直線の関係となる。右図
近似線(鎖線)を用いてパワ伝播速度が光速=299792458 (ms-1)となる柔性を推定すると、
H_opt=3.977×10−17 (mN-1) が得られた。
ここで、光速とは物理的な上限速度と言われている事に倣えば、物質の柔性Hにも上限が存在すると考える事が出来る。

Fig.5

●光速の解釈
 光速=299792458(ms-1)≒秒速30万(Km)とはその名の通り光の進む速さである。
光は電磁波であるから光速とは、電界と磁界の相互作用による実体の無い空間の伸縮=疎密波の伝播速度である。
光速に関するマックスウェルの公式を以下に示す。

c =1/√(ε0・μ0)  c:光速、ε0:真空中の誘電率= 8.85×10−12(Fm−1) 、μ0:真空中の誘磁率= 1.26×10−6(Hm−1 (1.5)

ここで単位構成を示すと、

 F:ファラド
 H:ヘンリー(本報の柔性Hと同じなので注意)
 J:ジュール
 V:ボルト
 A:アンペア
 m:メートル
 C:コンデンサの静電容量
 L:コイルのインダクタンス

F = J /V2  Jをコンデンサに蓄えられる静電エネルギ = 1/2 C・V2 で置き換えると、 F = C/2
H = J /A2  Jをコイルに蓄えられる電磁エネルギ = 1 /2 L・A2で置き換えると、 H = L/2

次に、式(1.5)を特性値C、L、d:単位距離(m)、を用いて表すと、

c =2d /√(C・L)  分母の√(C・L)は時間(s)の単位を持つ。                           (1.6)

式(1.6)は、実体の無い電磁波の伝播速度を静電容量C 、及びインダクタンスLで表現したものである。
補足資料の力学と電磁気学の相似則で示したように、静電容量Cは物質の質量m、インダクタンスLは柔性Hと相似なので以下の式が得られる。

c =2d /√(m・H)  分母の√(m・H)は時間(s)の単位を持つ。                          (1.7)

式(1.7)は、実体のある空間=物質内の疎密波の伝播速度を質量m 、及び柔性Hで表現したものである。
ここでcase1の総質量=1.0(Kg)、全長d=1.0(m)、光速=299792458(ms-1)を代入して柔性Hを逆算すると、

H=4.451×10−17(mN-1)が得られる。

この値は先述のFig.5で柔性Hを振って近似線から推定した光速に相当する柔性値、

H_opt=3.977×10−17(mN-1)と凡そ近しいオーダーである。

電磁波を利用した電子レンジ゙の例が示すように実体の無い空間でもエネルギ、パワを伝播出来る事が判る。
一方、電線のように実体が有る導体中をパワ=電圧×電流が流れる速さも光速に近しいとされている。 *4
実体の有無と言う違いはあるが、いずれも光速という値を持ったエネルギ、パワの伝播現象と言える。

参考:
既研究ノート、”物質破壊(崩壊)のモデル化” で質量1(Kg)の9種類の金属元素について推定した柔性の値は
0.232~4.402×10−17(mN-1)の範囲にあった。

整理すると、
・光速とは実体の無い空間内を電磁波のパワが疎密波となって伝播する際の速度である。
・光速とは実体の有る空間(物質)に速度を印加した(叩いた)時のパワが疎密波となって伝播する際の速度である。
・導体に電圧を印加して電流が流れるのも同じ仕組みであり、導体の元素の自由電子が移動する訳では無い。[1]
・パワ伝搬速度とは加速器で電子単体を光速近傍まで加速する際の移動速度(ニュートン運動速度)とは異なる。
・パワ伝搬速度とは補足資料に示したフックの法則に於ける変形速度とも異なる。
・物質の運動と変形は切り分ける事が出来ず、一方があれば必ずもう一方も存在する。 *5
・物質の質量mと柔性Hは切り分ける事が出来ず、一方があれば必ずもう一方も存在する。
・これは電磁気学で電場と磁場を切り分ける事が出来ないのと同じである。
・ 299792458(ms-1)なる値は物質の質量mと柔性Hに由来するものと考えられる。
・確定している質量mと言えば各元素に固有の原子量である。
・原子量とは1モル、すなわちアボガドロ数 = 6.022×1023個の原子の総質量である。
・原子の柔性Hは既研究ノート、”物質破壊(崩壊)のモデル化”、及び本報で推定したように、原子量と反比例して対になった値を持つと考えられる。
・パワ伝搬速度の上限=光速が1つであるのは、原子の質量mと柔性Hの積が一定である事に由来する。
・後述するプランクの黒体輻射に於ける光のスペクトル分布の公式が物質の元素に依存せず、温度のみに依存するのも同じ理由と考えられる。

*4:通称、純銅の導線でも銅以外の不純物=元素の含有量はゼロではないため。
*5:これをあえて切り分けたのがニュートンとフックであり、切り分けなかったのがド・ブロイと言える。すなわち物質は粒子(運動) と波動(変形)の性質を併せ持つ。

●エネルギは整数倍の解釈
 1900年にプランクは黒体輻射に於ける光のスペクトル分布の公式を提示した。 ここには光速cが含まれている。

U(ν)dν = 8πkβ/c3・1/(e(βν/T) − 1)・ν3

U:エネルギ密度、 k:ボルツマン定数、 β:実験値から同定する値、 kβ=h:プランク定数、c:光速、T:温度 、ν:振動数

黒体とは溶鉱炉内の融鉄の温度を推定する為に、放射される光を観測する際に外部からの光の影響を無視できる最小限の穴が必要であり、近似的に真っ暗闇の中で放射される光という意味である。
この公式は光のエネルギ密度が振動数の関数になっているが、エネルギは連続しておらず飛び飛びの整数倍の値になっている事が前提である。
プランク自身も当初はこの解釈に頭を悩ませたが、整数倍の値を取るからには光は波動という性質だけでなく、粒子としての性質を持っていると考えざるを得なかった。
この解釈は光の粒子と波動の二重性と呼ばれるようになったが、1905年にアインシュタインが提示した光電効果に関する光量子仮説によって説明された。(1921年ノーベル賞)
その後、ド・ブロイは光のみならず全ての物質に成り立つ事を示して物質波と呼んだ。(1929年ノーベル賞)
プランク、アインシュタイン、ド・ブロイは夫々に公式を示したが、エネルギが整数倍の値を取る仕組みについては触れていない。
先に、式(1.1)~(1.3)で物質に蓄えられるエネルギを示したが、アインシュタイン、ド・ブロイは式(1.1)の速度(運動)エネルギを想定しているが、式(1.2)の力(変形)エネルギは想定していない。
但し、アインシュタインは一般相対性理論の中で質量の存在による空間の歪みという見方をしており、変形という概念は持っていたと思われる。
3名の物理学者の貢献により粒子と波動の二重性はゆるぎないものとしてその後の量子力学は発展してきた。
加速器で電子を光速近傍まで加速し、様々な対象に衝突させた時のエネルギ変化から素粒子の存在が探索されて来た。
2012年には最後の未発見素粒子、物質に質量を与えると言われるヒッグス粒子の存在が報告されている。

 先に、物質の運動と変形は切り分ける事が出来ないと述べたが、量子力学に於いて電子、原子、素粒子の運動に関わる質量mは想定しているが、変形に関わる柔性Hは想定されていない。
これは素粒子を完全剛体と見なしている事になる。
式(1.3)は物質がn個あれば、蓄える事が出来るエネルギはn倍となる。
つまり、元素によって決まった質量mと柔性Hを持つ原子がn個繋がればn倍のエネルギを蓄える事が出来るという事であり、これがプランクを悩ませた整数倍の課題と言える。
逆に言えば、補足資料に示した物理機能モデルの基本モデルとは原子単体が模擬されていると言える。
これをn個繋げば単純に総質量m、総柔性Hは整数倍となり、蓄えうるエネルギのキャパシティも整数倍となる。
そうした意味から物理機能モデルはド・ブロイの物質波の概念がモデル化されていると言える。

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まとめ

物理機能モデル手法を用いて物質を伸縮するバネとしてモデル化する事により以下の知見が得られた。
物質端部に速度を印加する=叩くと内部に疎密波が発生する。
疎密波の伝播速度は物質の柔性に反比例する。
伝播速度と柔性には光速に対応する限界値がある。
その値は原子単体の柔性値に因って決まる。
光速とは実体の有無に関わらず空間内の疎密波の伝搬速度である。
光速の値は原子の質量(原子量)と柔性値に由来し、両者の積は一定である。
光速の値は元素に因らず1つである。

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脚注・参考文献

脚注:
[1]:次世代のものづくりのための電気・機械一体化モデル 長松昌男 著 共立出版刊 2015年

参考文献:
・角田鎮男 ほか:製品開発のためのモデル化手法(展開と統合) 日本機械学会 [No.98 8]
 機械力学・計測制御講演論文集 98.8.17 20 ・札幌 )
・機械の力学 長松昭男 著 朝倉書店刊 2007年
・複合領域シミュレーションのための電気・機械系の力学 長松昌男、長松昭男 共著 コロナ社刊 2013年
・次世代のものづくりのための電気・機械一体化モデル 長松昌男 著 共立出版刊 2015年
・機械学会交通物流部門 連続講習会No.12-5 資料
 "機械ー電気の統合モデルによるモデルベース開発" 角田鎮男 著 2021年
 "機械工学から見た相対性理論" 五十川晋一 著 2021年
・機械学会交通物流部門 連続講習会No.22-80 資料
 "機械工学から見たブラックホール" 五十川晋一 著 2022年
・機械学会交通物流部門 連続講習会No.24-53 資料
 "物質の柔性が粒子と波動性に及ぼす影響"  五十川晋一 著 2024年
・ホーキング、宇宙を語る―ビッグバンからブラックホールまで  林一訳 ハヤカワ文庫NF  1995年
・タンパク質の音楽 深川洋一 著 ちくまプリマーブックス  1999年
・地殻破壊の前兆現象としての電磁放射の特性に関する研究 藤縄幸雄 著 1995年
・赤外吸収スペクトルと分子構造研究一バネと玉の振動から形を推測する 岡本裕巳 著 化学と教育 47巻1 号 1999 年
研究ノート 物質破壊(崩壊)のモデル化 五十川晋一 著 2025年
研究ノート 力学の双対性から見たプランク定数 五十川晋一 著 2025年
・力学の双対性から見たエネルギ輻射 五十川晋一 著 2024.1.18(未公開)

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