行動ポイントシステム

 現在認識している行動ポイントシステムのゲームの一覧です。
このシステムは、比較的小さな部隊と大きな移動力(行動ポイント)、縮尺の小さな(1へクスあたりの距離が短い)マップ、それに比較すると長い1ターンが特徴となっています。スタック単位に移動力を消費しながら移動と戦闘を繰り返します。ほとんどが第三次世界大戦ものです。

 第三次世界大戦は1つのジャンルとなっていました。仮想と言っても1985年にソ連の書記長にゴルバチョフが就任するまでは、明日戦争が起きてもおかしくないと思われていた時代だったのです。東西ドイツ国境(1990年10月2日まで第二次世界大戦の敗者ドイツは東西に分割されていました)をはさんで北大西洋条約機構(NATO)軍とワルシャワ条約機構(WTO)軍が対峙していました。この時代のNATO軍の主力は戦車がM-60、航空機がF-4, F-104です。WTO軍の主力は戦車がT-72、航空機がMIG-21,23の時代です。F-15やA-10は最新鋭機です。
 極東では、南北朝鮮の休戦ラインや台湾海峡をはさんでの緊張、ソ連太平洋艦隊に脅える日本という図式です。ソ連は1983年9月1日に航路を大幅に逸脱した大韓航空機(民間の旅客機)を樺太付近で撃墜していますし、北方漁場では日本の漁船がどしどしと拿捕されていました。現在からは想像も出来ないほどの規模の「悪の帝国(笑)」が地球上にいたわけです。(あくまでも当時の感覚ですよ)

用語
カウンター: 2-3mmの厚みの厚紙に印刷され、ダイカットされた紙製の駒の総称。ユニットとマーカーに別れる。
ユニット: 戦闘力を持った部隊を表すカウンター。
マーカー: ゲームの進行で変化する状況を表すためのカウンター。補給切れや損害の程度を示す。


現代ヨーロッパの攻防(The Next War, 1978 SPI)

「近未来シミュレーションゲーム、時は:明日。」と箱に書いてあります。デザイナーはダニガンで、ゲームで想定する第3次世界大戦の勃発は1970年代の後半です。
横の箱絵に継ぎ目があるのは、ボックスがスキャナに乗りきれなかったためです。2回に分けてスキャンして合成したのですが、明るさが異なって継ぎ目がくっきりでてしまいました(笑)。
マップはフルサイズが3枚+A4サイズの補助マップが2枚で、ドイツとその周辺をカバーしています。ヘクスの対辺間隔は9マイル(14km)です。ゲーム中の1ターンは実際の2日を表します。カウンター数は2400個で、ユニットの規模は連隊(ソ連の空挺と海軍歩兵)、旅団(NATO標準サイズ)、師団(WTO標準サイズ)、軍団司令部(NATO)、軍司令部(WTO)です。NATOの旅団は集合して師団ユニットに出来ます。陸上ユニットには攻撃力(数字)、対空力(アルファベット)、防御力(数字)が印刷されています。空軍ユニットは飛行隊単位です。制空力、迎撃力、対地攻撃力が印刷されています。他にも、海軍ユニットやヘリコプターユニット(攻撃ヘリと輸送ヘリ)が存在します。下にあるマップサンプルはドイツ南部にあるフランクフルト・アム・マインの周辺です。

天候ルール、選択補給ルール、化学兵器ルール、核兵器ルール、航空戦闘ルール、航空作戦、海軍ルール、ヘリコプター、空挺隊、偵察機等は全て選択ルールとなっています。つまり、行動ポイントシステムで陸戦を行うことが主眼のゲームです。
陸上ユニットの基本移動力は20。1回の移動で30移動力まで超過することができます(合計50移動力)。超過すると疲労チェックが発生します。標準攻撃に必要な移動力は4、縦陣攻撃に必要な移動力は2です(その代わり攻撃力は半減)。その他、離脱攻撃では6移動力を消費して隣接する敵からの攻撃を受ける形で離脱となります。敵のZOCから離脱するのは離脱攻撃の結果に成功する以外にはありません(変則強ZOC)。
疲労レベルは0から2まであり、10移動力を消費するごとに1レベルづつ回復させることができます(1ターンの休息で疲労レベル2を0にできるわけです)。レベル2のユニットがさらに疲労すると1戦闘ステップを失います。陸上ユニットは3戦闘ステップを持ちます(3単位師団の3個連隊編成のイメージでしょうか)。もちろん戦闘結果としてもステップを失います。ステップを失ったユニットは戦闘時に失ったステップマーカーの数字と同じだけ賽の目にプラスの修正(不利)を受けます。両軍とも1ステップ目は1のマーカーを使いますが、次のステップロスでNATOは2の、WTOは3のマーカーを使います(同じステップロスでもWTOの方が不利な修正を受ける)。これ以上のステップロスを受けると破壊されます。ただし、師団ユニットは破壊される代わりに、師団残余ユニット(和訳では師団基地)に置き換えられます。
戦闘は攻撃力対防御力のオッズ式です。


 これが直系のご先祖です。スタック単位で移動と戦闘繰り返しますが、疲労度と戦力ステップは別れています。ただし、ヨーロッパのドイツ全域をフルマップ3枚で扱う大規模なゲームなので、子孫たちとは雰囲気がかなり異なります。スタックの数だけでも馬鹿になりません。選択ルールまで含めるとプレイにはとんでもない労力が必要となるでしょう。ちなみに、このゲームはダニガンの著書のウォーゲームハンドブック(HJ刊)の中で、しばしばルールの例として登場します。


NATOディビジョン(NATO Division Commander, 1979 SPI)

「近未来シミュレーションゲーム、時は1985年8月23日。」と箱に書いてあります。
フルサイズマップ2枚(情報ゲームをする場合にダブルブラインド用に同じマップが2枚です)、1ヘクスは1マイル(1.6km)、1ターンは1時間、ユニット規模は大隊、カウンター数は1200個、デザイナーはダニガンです。
ユニットには攻撃力と防御力のみが印刷されており、そのユニットが取る態勢で攻撃力と防御力は修正され、情報値と移動力が決定されます。移動、定点防御、広域防御、緊急防御、総力攻撃、緊急攻撃、待機など11種類の態勢があり、態勢を変更するためには、司令部のもつポイントを消費します。
疲労と損害のレベルは前作同様に分かれています。疲労度は0から3の4段階あり、戦力ステップはTO/E値という名前で0-6の7段階あります。攻防のTO/E値の差が戦闘に影響します。TO/E値が0未満になるとユニットは破壊されます。攻防の疲労度の差も戦闘に影響します。疲労度が3を越えるごとにTO/E値を1つ失います。TO/E値はもちろん戦闘でも失われます。疲労度は移動・戦闘期に休息することで2回復します。移動力は態勢ごとに決められています。快速機動態勢で40、定点防御態勢で0です。強行軍Iで移動力は1.5倍、強行軍IIで2倍化します。ただし、疲労チェックが必要です。
戦闘はオッズ式ではなく、戦闘力差のカラムで行うファイアパワー式です。戦闘修正は16項目に上り、非常に細かいパラメータで戦います。
ゲームの主眼は師団の指揮をとることにあり、師団長や旅団長の固有の能力があります。行軍ドクトリン等が細かく指定されており、まさに師団指揮シミュレーションのゲームです。タイトルと異なり、プレイヤーはNATOだけでなくWTOの師団長にもなります。近代戦としては珍しく、NATO軍とWTO軍のユニット規模が同じです(普通はWTO軍は雑魚の大軍扱いで一回り大きな単位で運用されます)。
登場する部隊は
アメリカ陸軍: 第3機甲師団、第8機械化歩兵師団、第4機械化歩兵師団第4旅団、第11機甲化騎兵連隊
ソビエト陸軍: 第7戦車師団、第11戦車師団、第27モーターライフル師団、第109空挺師団。


とまぁこのように、行動ポイントシステムの発想は良いのですが、疲労とステップロスが独立しており、リアルでないゲームはクソという当時の風潮では問題ありませんでしたが、今見ると戦闘時の修正が非常に繁雑になります。行動ポイントシステムが、このままモンスター化しなかったのは奇跡かもしれません(笑)。


セントラルフロント・シリーズ

 セントラルフロントシリーズはSPIが末期にぶち上げた10作になるシリーズで、10作を繋げると中央ドイツでの北大西洋条約機構軍対ワルシャワ条約機構軍の激突を中隊から連隊規模で再現できるモンスターゲームになるはずでした。残念ながら、第3作目が出たところでSPIが潰れて未完のシリーズとなりました。最初の2作は、まずStrategy & Tactics誌の付録として登場し、その後に薄型(1インチ)の箱に入って販売されました。最後の作品のBAORは箱入りの製品が出ていません。デザイナーはおなじみダニガンです。
ホビージャパンの日本語解説書の出来が悲惨の極みで、TACTICS No.2に大量のエラッタが発表されています。また、TACTICS No.3にはプレイの例が掲載されています。
1ヘクス4km、1ターン12時間のスケールで、マップはフルサイズが1枚付属します。ルールブックはシリーズ共通ルールと、各製品固有のルールの2部構成です。ユニットは中隊(偵察中隊,戦車中隊)から旅団(砲兵旅団)までです。NATO軍は大隊規模、WTO軍は連隊規模が標準サイズです。カウンター数はフルカウンターシートが1枚で400個です。ユニットの移動力は一律12となっています。
この作品で疲労度とステップロスは損害消耗度(EP値)に統合されました。EP値は疲労、損害、物資の消耗をまとめて表します。砲兵ユニットは射撃の度に消耗します。一般のユニットは 1ターンの休息で 1ポイントだけ回復します。砲兵ユニットは 2ポイントの回復です。弾薬の消費による消耗なので回復がたやすいのでしょう。
戦闘はオッズ式で、攻撃タイプは準備攻撃[6](Prepared)、急速攻撃[3](Hasty)、行軍攻撃[2](March)があります([]内は消費する移動力です)。日本語解説書の訳ではそれぞれ、待ち伏せ攻撃、急襲攻撃、強襲攻撃となっており、わけが分かりません(語感としては通常攻撃、急襲、蹂躙が適当かもしれません)。敵のZOCからの離脱は+6を消費することで可能です。戦闘結果は攻撃側と防御側が失うEP値だけです。EPを失う代わりに退却する事も可能ですが、最低限1EP値は失う必要があります。スタック単位の戦闘の場合、防御側の値はスタック全体で消費すればよいのに対して、攻撃側の値は参加したそれぞれのユニットに適用される点に注意が必要です。このため、攻撃側であるWTOの部隊は急速にEPを失っていきます。

第5軍団の迎撃(Fifth Corps,1980 SPI)

このゲームは箱入りを買いそこない、プレミア付きのStrategy & Tacticsのバックナンバーで入手しました。従って箱がありません。カウンター数はハーフカウンターシート1枚で200個です。ルールブックは箱入りも雑誌の付録もカウンターが200個と書いてあるのですが、HJのカタログの写真ではフルシート400個が映っています。ちょっと悔しいです(笑)。
フルダ・ギャップ(アメリカ合衆国陸軍 第5軍団と西ドイツ連邦軍 第3軍団のすき間)を通ってフランクフルトを目指すワルシャワ条約機構(WTO)軍をアメリカ陸軍の第5軍団が迎撃します。アメリカ陸軍の第11機甲化騎兵連隊、第3機甲師団、第4機械化歩兵師団です。他に西ドイツ第5装甲師団、第2装甲擲弾兵師団、郷土防衛隊が登場します。WTO軍はソ連軍だけのようです。

激闘第7軍団(Hof Gap,1980 SPI)

これは幸いなことに箱入りを買っていました。
第5軍団の続編です。第5軍団の南東に位置するマップです。フルダ・ギャップの南、ホフ・ギャップを通ってニュルンベルグを目指すWTO軍をアメリカ陸軍第7軍団が迎撃します。主力はアメリカ陸軍第1機甲師団、第2歩兵師団、第2機甲化騎兵連隊で、他に西ドイツ陸軍が登場します。WTO軍はソ連、チェコスロバキア第1軍、東ドイツ第3軍の部隊が登場します。カウンター数はフルカウンターシート1枚で400個です。

British Army of Rhine (BAOR, 1981 SPI)

SPIの雑誌Strategy & Tacticsに発表されましたが、確か箱入りは発売されていません。2003年7月にプレミア付きのバックナンバーで入手しました。22年前の雑誌とその付録とは思えない良好な保存状態でした。標準ルールが第2版になっています。EP値は各ユニット共通で6あったものが、部隊規模によって異なるようになりました。中隊で3、大隊で4、連隊で5です。これで異常な粘りを見せる偵察中隊に手を焼くソ連軍という状況は回避できます。新ルールは所々の説明が詳しくなっているようですが、まだ完全なチェックは終わっていません。
第5軍団の北西側に位置するマップです。西ドイツドイツ北部のハノーバー付近から西ドイツの心臓部ルール工業地帯を目指すワルシャワ条約機構軍とそれを迎え撃つNATO軍です。
イギリス軍(第2、第3、第4機甲師団、第5野戦部隊、第6野戦部隊)、西ドイツ軍(第1、第2装甲擲弾兵師団)、ベルギー軍(第1師団、第16師団、第17機甲旅団)が登場します。ワルシャワ条約機構軍はソビエト軍(第3打撃軍(第106親衛戦車師団、第12親衛戦車師団、第47親衛戦車師団、第207親衛モーターライフル師団)と予備部隊)だけです。イギリス軍は師団数が多いのですが、旅団編成をとっていない小型師団です(増強旅団といった感じです)。


第二次世界大戦物

第48装甲軍団(48th Panzerkorps, Pacific Rim /国際通信社 199?)

こちらは時代を大きく遡って、第二次世界大戦のスターリングラード包囲戦、北翼の戦いです。場所はスターリングラード包囲陣のすぐ西側のチル川付近です。第48装甲軍団は第11装甲師団、第336歩兵師団で構成されています。
1ヘクス1マイル(1.6km)。1ユニット中隊から連隊まで、1ターン12時間。
セントラルフロントシリーズと異なり、守る側のドイツ軍は小数ながら強力で、第11装甲師団は大活躍します。戦線をはる歩兵部隊とその背後に待機する装甲師団。ひとたびソ連軍が戦線を突破すると、火消しの装甲師団が駆けつけて叩き潰すという展開となります。いくら装甲師団が強力でも、数と戦力に限りがあることをお忘れなく。
登場するドイツ軍は第11装甲師団、第336歩兵師団、アダム戦闘団(およそ師団相当)、シュツンプフェルト戦隊、オーベルゲトマン戦隊、第7空軍地上師団です。


自衛隊シリーズ

 アド・テクノスの北海道自衛隊三部作が行動ポイントシステムとの噂を聞いたので、現在調査中です。全作所有しています。北海道の第2、第5、第7の各師団がメインの三部作です。ソ連軍の北海道侵攻とそれを迎撃する自衛隊の活躍です。一等自営業閣下の「バトルオーバー北海道」の世界です。
調査結果
スケールは、ヘクス対辺間隔が5km、1ターンが6時間です。ユニットの規模は中隊から大隊です。EPは作戦余力という名前で表され、自衛隊の全てとソ連軍の大隊が4、ソ連軍の中隊が3となっています。作戦余力を使い切ってしまうと部隊は消滅します。ユニットには移動力ではなく機動力が記載されています。機甲部隊で4、歩兵部隊で3です。1機動力を消費することで7移動力を得ます。機甲部隊が全力で移動すると28移動力を消費することが可能になります。戦闘には最低でも1機動力を使用します。余分に支払うと戦闘を有利に(余分な分だけ有利にカラムシフト)行えます。作戦余力は補給を受けている状態で戦闘部隊が1、支援部隊(司令部と砲兵部隊)が2回復します。
残念ながら3部作のうち2つしか購入していなかったようで、3作目の「第5師団」は手持ちには見当たりませんでした。

第七機甲師団(アド・テクノス, 1987)

札幌から西側の北海道南部をマップ2枚でカバーします。主役は自衛隊唯一の機甲師団である第7機甲師団です。

北部方面隊(アド・テクノス, 1987)

札幌から北方の道北部分をマップ1枚でカバーします(第七機甲師団とリンクできます)。第2、第5、第7師団が登場します。第七機甲師団のユニットの改定やルールの改定が行われています。


戻る