空戦ゲームの比較

PCゲームでリアルなフライトができる時代になっても、視点の異なるウォーゲームは滅びません。PCゲームでは1人称視点でしかプレイできないのに対して、ウォーゲームでは異なった角度から空戦を楽しむことができます。

第一次大戦物はAHのリヒトフォーフェンとHJのブルーマックスを所有していますが、引っ張り出して調べるのが面倒なので省略しています。

ホビージャパンが日本語化したものは、オリジナルのコピーライト表示から年の表示が抜けているため、そのままではオリジナルがいつ発売されたかを知ることができません。


第2次大戦物

AIR FORCE(ヨーロッパ上空の戦い) 1980, AH
DAUNTLESS(ドーントレス) 1981, AH
EXPANSION KIT(エキスパンションキット) ?, AH/Battle Line

1ターン 10秒
1ヘクス 500フィート
1高度レベル 100フィート
機種方向 6(60度単位)
Avalon Hillが作成して、HobbyJapanが日本語解説書を添付して販売していました。飛行記録用紙に機動を記入して一斉に実施するタイプのゲームです。ユニットにはシルエットと番号しか印刷されておらず、機体特性はデータシートに記載されています。Battle Line社のゲームをAH社がリメイクして発売していたのですが、エキスパンションキットはリメイク無しの平箱での販売となりました。AH版ではデータシートが半円で描かれた(メーターをイメージしている)カラー印刷の見難いものでしたが(色がずれているのです)、エキスパンションキットでは(オリジナル通りの)ただの表のままになっており、かえって見やすいです。
データシートには5000フィート単位の高度域での、失速速度(これを切ると失速)、機動速度(性能を最大限に発揮できる速度帯)、水平速度(水平飛行で発揮できる速度帯で機動速度よりも高い部分)、降下速度(降下時にこれを越えると機体が分解する)、降下率、上昇率、加速率、減速率、バンク/旋回/ロール/ループまでの直進距離、各部の耐久力、機銃の位置と火力と弾数が示されています。射撃結果は命中箇所と数で与えられ、耐久度のなくなった箇所から破壊されて墜落します。
シンプルなシステムのため一人で何機も操作することができますが、記録用紙を使用するという繁雑さは避けられません。少しの説明で理解できる簡単なルールなので多人数でわいわいやるのに向いています。
3進んで右にバンクして3進んで右に旋回する場合、3B3Rと記入します。バンクはMPを消費しないため、この機動で7MPを使用します。旋回はMPを-1するため次のターンのMPは6ですが、この程度の減少ならスロットルを開けることで相殺できます(データシートの加速率で1ターンに得られる加速がわかります)。記録用紙に記載する略号が日本語解説書では悲惨に日本語化されており、誰もそれを使っていた人はいないんじゃないかと思えます(笑)。
右にバンクしている状態から左に旋回する場合、バンクの最少直線距離を飛んでから左に1ポイントバンクして水平に戻し、さらに直進してから左に1ポイントバンクし、旋回の最少直線距離を飛んでから左に旋回を開始します。これを一気に行えるようにするのがハーフロールです。直進距離は通常のバンクよりは長いのですが、要求分だけ直進したら180度のロールを行ってバンク角を変更できます。飛行姿勢は左背面です。
AIR FORCEはヨーロッパ西部戦線での空中戦を扱い15シート30機種のデータが提供されます。DAUNTLESSは太平洋での空中戦を扱い15シート30機種のデータが提供されます。EXPANSION KITではヨーロッパ東部戦線を含む全域(ヨーロッパから太平洋まで)の機種データが提供されます。30シート60機種です。

Achtung - Spitfire! 1995, A Clash of Arms Game(Designed by J.D.Webster)
作戦ゲームスケール
 1ターン 10分
戦術ゲームスケール
 1ターン 1分
戦闘ゲームスケール
 1ターン 4.1秒
 1ヘクス 100ヤード(300フィート)
 1高度レベル 1000フィート
 機種方向 12(30度単位
下に登場するAIR SPERIORITYのデザイナーがCoA社でデザインしたもので、1940-1943年のヨーロッパでの空中戦を扱います。AIR SPERIORITYと同様にログシートに速度や高度等の情報を記録して行きます。スケールが細かくなったためか、バンクすると速度が低下します。Me109E, Fw190A, Splitfire IA等、ヨーロッパの序盤から中盤を戦った航空機が登場します。
実はこれはシリーズの第二弾で、第一弾はOver The Reichという1943-1945年のヨーロッパの空中戦を扱うものでした。残念ながら絶版のようです。第三弾の太平洋物の登場がアナウンスされています。艦艇ユニットが登場するため、対艦攻撃ルールがあるはずです。


1950年から現在まで

最近は空戦ゲームが出版されていないため、現在といってもかなり古いものになります。湾岸戦争以降のものはCoAのAir Powerシリーズでしか期待できません。

AIR WAR(空戦マッハの戦い) 1979,SPI
1ターン 2.5秒
1ヘクス 500フィート
1高度レベル 250フィート
機種方向 12(30度単位)
マップ上に航空機のユニットを配置しますがこれにはシルエットと番号しか印刷されておらず、細かい情報は航空機/ミサイルコントロール表上の15種類のマーカーで記録します。航空機のデータはデータカードで与えられます。細かい動作を再現するためにスケールを極限まで切り詰めてデジタル化したたのはいいのですが、ここでの量子化歪みが許容範囲を越えたゲームです。航空機のデータを眺めて、実際に飛ばすとどのくらいの旋回半径かを再現してニヤニヤするためのものです。現時点でこれで航空機を飛ばすくらいなら、PCゲームでリアルな空中戦を楽しんだ方が良いでしょう。ただし、これが出た当時はPCでリアルな空中戦を楽しむなど夢の夢だった時代であることは忘れないでおく必要があります。
B-52H, F-5E, F-105D, F-4E, A-7D, A-4F, F-111E, A-10A, F-16A, F-15A, A-6E, F-104G, F-8E, F-100D, F-106, F-18, F-14A, B1, F-86E, MiG-19C, Su-15, MiG-17D, MiG-15bis, Su-19, Su-7C, MiG-21E,F,J,K, Air-to-Air Fighter "L", MiG-25A,B,D, Tu-26B, MiG-27, MiG-23B,CWW,E,F-9 Fantan, F-1C, MD-450, Mirage IIIC,IIIE,V, Mystere IVA, Panavia Tornade ADV, Jaguar, Meteor F.8, Lightning F.6, Harrier, Hunter, J35F Draken, AJ-37 Viggen, Kfir C2, Neshrが登場します。

Super Tomcat(空戦マッハの戦い II) 1985,HJ
AIR WARの追加データとシナリオ集です。これはHobby Japanのオリジナルです。
F-5A, F-20, F-16/79, F-4(E) Super Phantom, F-16XL, FB-111A, U-2R, F-101C, F-102A, T-38A, AV-8B, SR-71A, B-70, F-15E, F-14D, B-58A, A-5B, MiG-9, MiG-31, M-52, Su-11, Su-20, Su-25, Tu-22, Tu-28, Ram-P(Black Jack), Yak-28P, Yak-36MP, Qiang 5(強撃5型), Mirage 2000, Mirage 4000, Mirage III N.G., Super Etandard, Buccaneer, Hawk, Valiant B MK.1, Victor B Mk..2, Vulcan B Mk.2, TSR2, Alpha Jet, AM-X, Orao JAR-93, G.91 R.3, G.91 Y, Gnat Mk.1, Marut Mk.1, Me-163 B-1a, Me-262 A-1a, Mitsubishi F-1, J.A.S.39 Gripen, Lavi,が追加されます。

FLIGHT LEADER(フライトリーダー) 1987, AH/HJ
1ターン 30秒
1ヘクス 1000m
1高度レベル 1000m
機種方向 6(60度単位)
AHのゲームの日本語版です。マップ上に航空機のユニットを配置しますが、細かい情報は航空機状態表示カードで記録します。AIR WARの横に長いレイアウトに比べると、トラックを円形に配置したレイアウトで場所をとりません。航空機ユニットには、旋回タイプ/機体サイズ、加速性能/アフターバーナーの有無/超音速性能の有無、レーダー値/電子戦値、搭乗員数、ミサイル数/内装ガンのタイプ等が印刷されており、データカードはありません。少ないシンボルで効率よく機体特性を表す工夫がされています。マーカーは最低限飛行に必要なものが6個で、内の1つは燃料というシンプルさです。兵装トラックで兵装の数量を示し、パイロットの質もマーカーで示します。したがって航空機状態表示カード上にはかなりの数のマーカーが置かれます。
敵の視認、編隊の維持に主眼が置かれたゲームです。

AIR SPERIORITY(エア・スペリオリティー) 1988, GDW/HJ(Designed by J.D.Webster)
1ターン 12-15秒
1ヘクス 1760フィート(1/3マイル)
1高度レベル 1000フィート
機種方向 12(30度単位)
GDWのAIR SPERIORITYとAIR STRIKEを1つにまとめて日本語化したものです。
ログシートに高度、速度、推力設定、飛行タイプ(上昇、水平、降下)、加速ポイント、減速ポイント、使用燃料等を記録します。機動は記録しないので、目をつぶって一定時間を飛び目を開けて撃ち合うという状況は回避できます。開始時の速度と旋回の程度で旋回表を調べて最低直進距離を求めるのは繁雑な気もします。満載のA-10がミリタリーパワーで高度レベル2を速度2で飛行中に戦術旋回(TT)を行う場合は、最低直進距離は1なので、1進んで30度の旋回が行えます。旋回抗力は1なので、速度は1まで落ちますが、ミリタリーパワーでの推力は1.0なので次のターンの速度は2を維持します。急旋回(HT)の場合の抗力は2に上昇します。低空域(1-7)での失速速度は1.5なので、充分な速度を持たずに急旋回すれば失速します(低空を低速で飛行中は急旋回も戦術旋回も旋回率は同じなので無駄な操作です)。
機動を記録するわけではなく、ターンの間の速度の上昇と低下の要素を記録するだけなのが救いです。旋回表はチャートブックからコピーして1枚の紙にした方がプレイアビリティが上昇するでしょう。
エア・スペリオリティーのマップは全面青緑の物が4枚、エア・ストライクのマップは各種地形が印刷されたものが6枚の計10枚があります。データシートはA5サイズが62枚で両面を使用します。表裏をひっくり返さないとデータが読めない形式よりは、A4サイズで片面に全てのデータを記載してくれた方が使いやすいと思います。
旋回表は各機種共通になっており、機種ごとの旋回性能の差は再現されていないように見えます。同じ速度で同じGの旋回をすれば同じ軌跡を描きますが、旋回抗力で速度を失い、加速性能でそれを補なう必要があります。ここに機体ごとの差があります。
MiG-21の旋回抗力は1/2荷重で急旋回を行うと2です。F-4Eは同条件で3です。ミリタリーパワーの場合の推力は両機種とも1.0と1.0で同等なので、MiG-21とF-4Eが同条件で水平面の旋回を行えば、F-4は先に緩旋回に戻さなくては失速してしまうわけです。アフターバーナーを焚いた場合は2.5と2.5で旋回戦をしばらく維持できますが、F-4はゆっくりと速度を失い離脱を余儀なくされます。しかも、単発対双発の差があるため、A/Bを焚きっぱなしではF-4の方が先にビンゴになります。燃料消費量は6:14でF-4が圧倒的にがぶ飲みなわけです。
F-15Cの場合、同条件では抗力2の推力2.5(ミリタリーパワー)です。重戦闘機のF-15ですが軽戦闘機のMiG-21を水平面の旋回で圧倒できます。F-16Aは抗力2の推力2ですから、F-15とほぼ対等に旋回戦が可能になります。ただし、F-16の場合、速度が4.5以下の場合は抗力が1に低下するため有利に空戦を進められます。MiG-23MFでも抗力2の推力1.5ですから急旋回は維持できません。
機体毎のハードポイントと、そのハードポイントに何を装備できるか、装備すると重量はどのくらいになるかが細かく決められており、F-4Eの場合はスパロー4発とサイドワインダー4発を装備すると重量は8となり(各ミサイルとも1)、1/2荷重ではなくクリーン状態で飛行できるということがわかりました。

THE SPEED OF HEAT 19??, CoA(Designed by J.D.Webster)
1ターン 12秒
1ヘクス 1760フィート(1/3マイル)
1高度レベル 1000フィート
機種方向 12(30度単位)
AIR SPERIORITYの続編にあたります。AIR POWERシリーズとして作成されましたが、このシリーズは今のところ、これだけです。朝鮮戦争とベトナム戦争の空中戦を扱います。Air Speriorityとこのゲームはフルコンパチだと書いてありますが、旋回表の高度域の分類が変わっています。Air Speriorityでは全高度域が別々の表になっていましたが、こちらでは、低空、中空(低)の表が同一になっています。ところで、このゲームはコピーライト表示がほとんどなく、あってもその年が書いてないため、発売された年がわかりません。
MiG-15bとF-86Fは旋回抗力、推力共に1.0同士のため、水平面の旋回戦では優劣つけがたい戦いです。データシートはA4レターサイズで両面に異なる機種のデータが印刷されています。データシートの片面に1機種のデータがまとめられているため、日本語版のAir Speriorityよりは使いやすいです。また、チャートブックではなく、チャートシートになっているため取り回しは楽です。チャートブックでは必要なチャートだけを素早く参照することができないのです。


社名略号一覧
SPI: Simulation Publications Inc.
HJ: Hobby Japan
AH: Avalon Hill
CoA: A Clash of Arms Game
GDW: Game Designers' Workshop

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