■思い出

 

1980年代後半。 週末になるとkeywordは『じゃ23時に三京集合な!』三京とは
正式には第三京浜自動車道の事で環状8号線世田谷付近から横浜方面に向かう
わりと直線的な高速道路のことで『さんけい』と言ってた。

          

この頃はバイクブーム真っ盛りで僕らは毎月ミスターバイクを購読し
それに連載する『キリン』で主人公が操る『 刃 』(カタナと読みます)が
ポルシェと高速でバトルする姿に狂喜していた。

三京土曜日23時。この時間になると我々だけでなくどこからともなく
怪しい車やらバイクが集まってくる。

バイクは改造を思い切り施した大型バイクが主役。

刃、忍者、V-MAX、CB。。。。。族の改造とは違う、そう、もっと
硬派な改造だ。 ただ早く走る為だけの改造である。

着ている服装は黒の革ジャンにジーンズ地のベストを重ねたものを
着て、もちろん下は黒の皮パンツに、黒のブーツ。
ヘルメットも黒、グローブも黒が多かった。

皆雑誌の影響だと思う。

その0時にもなると三京はその手のバイクや走り屋っぽい車で埋め尽くされ
とても一般車の入れる雰囲気ではなくなってしまってた。。。

ただ集まっていたやつらは喧嘩するわけでは無く、騒ぎまわるわけでも無い。
バイクを停めて、その近くで缶コーヒーを飲みながらタバコを吸っているだけ。
改造バイクが一列にきれいに並びさながらモーターショーのような
雰囲気であった。
         


深夜0時を過ぎると。。。その場にいるのに飽きてきた連中が出発し始める。

ここからがちょっと普通と違う。ワンハンドウィリーをしながら高速に突っ込
んで行くやつ、マックスターンをかまして目が回るぐらいぐるぐる回り、
そのタイヤから出る煙の中からいきなり全開加速でスタートするやつ。

出発か?と思わせておきながらいきなりジャックナイフをするやつ。

前ブレーキをかけたままアクセルを全開にしてタイヤを空転させ、見ている方が
ドキドキするぐらい怖いのにその煙もうもうの中平然を装って左手でタバコを
吹かし、ひと息ついてから全開加速で出発するやつ。

これらみんなその手の大型バイクで行われるパフォーマンスだ。

観客はその一つ一つのパフォーマンスが行われるたびに歓声をあげて拳をあげた。

ここにいる連中は決してつるんでいる訳ではなく、ただその時間、その
場所に集まれば同じような仲間がいるというだけで集まってきたやつばかりだ。
つるんでいたとしても2〜3人までだろう。

僕らはバイクに乗っているわけでは無く車でその場にいた。
ギャラリーとしてそのパフォーマンスに酔いしれていた。

しばらくしてとんがったやつが皆出て行ってしまうと残るバイクは中型バイク
ばかりになる。こうなるとつまらないので僕らもそろそろ潮時である。

反対車線にはある程度走って戻ってくるやつが全開で走っている。
音は普段街の中で聞く音とは全然違う音。

4stなのに『クァーン』という甲高い音に空気を切る『シシシシ』という乾いた音
たぶん軽く200km/hを超えてるんだろう。そんな音だ。
        
          

そんなのを聞きながら自分達も車に戻る。
当然気分は高まってるので愛車CIVICのエンジンをかける時はアクセルを踏むのにも
力が入る。起動時のエンジン音がいつもより大きくなりあおりまで入ったりする。

スタートもホイールスピンしながらだったりする。( FFだから前輪だけど )
気分はもう走り屋だ。

     

その後は1号を流したり横浜行ったり、富士山にも行ったりした。。。

富士山に行った時は夜中に峠道を走っててふっと気づいたら車が亀の子状態に
なっていた事があった。 寝ぼけてコーナーを曲がりきれず(曲がらず)山側に
突っ込んで崖を登ったのだ。助手席の相棒と同時に一緒寝こけてしまったらしい。

谷側じゃなくて良かったといまだにたまに回想して思う。。。。

気づいたら車の周りを族に囲まれていた事もあったっけ。

うしろ走ってるプレリュードのHから無線で連絡を受けて周り見たら寒気した。。

いきなり箱乗りしてるヤツとかが併走しているのだ。
2台で連絡取り合っていきなりUターンかまして全力疾走で逃げた。。。。。。。

懐かしい思い出ばかりだ。
もう十数年も前の話。遠い昔の話。

さすがにもうこんなあほらしい事は出来なくなってる自分がここにいる。



その頃と違う今の自分。戻りたいけどもう後戻りはできない。