奴 隷 騎 士
 専ら軍隊を抱える神殿、王、有力貴族、騎士団等に仕える軍事奴隷。
 奴隷ながら騎乗・帯剣を許され、軍隊の奴隷兵・賤民兵の指揮官たる兵杖を持ち、非常時には良民の兵士すら指揮できるという武門である。

 奴隷騎士の制度は、古王国時代アトラントの奴隷騎兵を嚆矢とする。
 当時のアトラント軍においては、馬は戦車を引かせる物であり、直接騎乗するのは野蛮な遊牧民のする事と見做されていた。そこで蛮族、わけても騎馬民族出身の奴隷兵を鞍上に括り付け、敵に突撃させたのである。
 帝国時代に入ると奴隷騎兵の勇敢さ、強さに一目置かれるようになり、又、馬具の発達(特に鐙の発明)に伴い乗馬がアトラント人に認知されるにつれ、奴隷騎兵という兵科は奴隷騎士という階級へと変化していったのである。
 現在では、この制度は、ルーネヴェルド世界に広く普及し、豊かなプントやアヨドーヤなどでは、王の親衛隊として英才教育を施され、一種のエリート集団を形成している。我々やあなた方の世界におけるトルコのイニチェリや、エジプトのマムルークに似て、擬似貴族とでも云うべきものである。

 軍事的には、元々遊撃兵として始まった所為か、専ら軽快な機動力を重視した鎧を着けない軽騎兵として用兵される。大国アンティリアのエクオセルウスが重装騎兵(馬鎧も装備した装甲騎兵)である以外、せいぜいラーラインのスクラーベリッターが竜騎兵(弓装軽騎兵)として有名な位である。
 伝説によれば、かつて北方の金髪の野蛮人の奴隷騎士は、戦争において常に全裸で戦ったという。

 この金髪の奴隷騎士の血を引くと云われ、特に古北方語でリッテゼルフェ(女性形はリッテゼルフィン)と呼ばれるエルヴェインの奴隷騎士は、その精強と忠誠、さらには美しさでその名を知られ、諸国の軍隊垂涎の的となっている。