体育の日を含めた3連休は、日本列島が高血圧に覆われ鉄板の快晴予報。 紅葉には早いものの日照時間がまだ
長いので、信州峠から三国峠を超えて中津川林道を目指しました。中津川林道は秩父側から2回登ったことがありま
すが、悪路でひたすら自転車を押して歩く区間が長いので、長野側からの下りならもう少し楽になるだろうという目論
見です。
信州峠と三国峠の2つの峠を超え、下りとはいえ悪路の中津川林道を通るとなるとかなり時間がかかりそうです。信
州峠に一番近そうな中央本線の駅は穴山駅、新宿発朝7時のあずさだと9時13分着となりどう考えても中津川林道
の途中で日没になってしまいます。

そこで穴山駅近から3kmほどのところにビジネスホテルを見つけて前泊することにしました。前日の土曜に満席の新
宿17:30発特急あずさに乗り込み、甲府から普通に乗り換え穴山駅に到着。夕食は甲府駅で普通列車の乗り換え時
間に駅ビルの京樽で弁当を入手、さらにカメラにSDカードを入れ忘れていたことに気がつきコンビニで朝食のパンと
一緒に確保しました。危うく写真を撮れないという最悪の状況になるところでしたが、車内でカメラをいじっていて気が
尽きたので助かりました。

駅から国道まで真っ暗な道を通り予約したニュープリンスホテルにチェックイン、暗闇にネオンが浮かぶ様子は少し
怪しげですが、薬湯の大浴場があり部屋も広く健全で快適でした。フロントで自転車の保管場所を相談したところ、部
屋に入れて構いませんということだったので、とても助かりました。こういった場所で盗難に合うという可能性は極めて
低いですが、大事な相棒なので目の届くところにあったほうが安心できます。

翌朝は7時にホテルを出発。 ホテルの近くのローソンでコーヒーを飲んでいきなり余裕モードだったのですが、最後
は日没後に走ることになったのでした。 まあ、そんな予感もしてはいたのですが、富士山から茅ヶ岳、黒富士といった
信州の山々がこれだけ綺麗に見えていたので急ぐ気にはなりません。

最初はいくつかの県道で韮崎から増富ラジウム温泉を結ぶ増富ラジウムラインと呼ばれる道に入り、途中から集落
の中を走り田園風景を満喫です。サトイモ越しに見える八ケ岳なんていうのも楽しくなります。

そんな感じでうろうろと進んでいたら、何と1つ隣の清里方面に向かう町道に入り込んでいました。一つ峰を越えて県
道23号に入りました。

県道でも緑がたくさんあって十分楽しいですが、脇道の集落に入って地元の生活感のある道は旅の気分を味わうに
は最高です。自転車の旅が楽しいのは、線で移動しながらじっくり風景を見ることができることですね。
根小屋というところでは小さなカーブの向こうに一瞬、岩と見間違えたぐらいの大きなケヤキが立っていました。上部
は折れていましたが、まだまだ太い枝が青葉を繁らせています。 樹齢は1000年を超え天然記念物に指定を受けてい
るそうです。 神社にお参りをして先に進みました。

するとこんどはこんな小さなトラックが。フロントグリルにライザーと誇らしげなプレートが掲げられていました。 HPで
検索してみると、福岡県のメーカーが受注生産している運搬車だそうです。最高速度は17kmで自転車よりも遅いぐら
いなので、交通量の多い道では邪魔にされてしまいそうですが、小回りが効いてダンプ機能もあり、こういった山間部
や田園での農作業に威力を発揮しそうです。 オーナーの方は見かけませんでしたが、きっと大切に使われているの
に違いありません。

県道の鳥井坂トンネルの脇にあった旧道です。 アスファルトから草が伸びて朽ち始めていました。
先ほどの根小屋集落を通る道も従来は県道の本線だったそうですが、今は川の対岸に県道が作られています。

続いて立ち寄ったのが比志という集落です。集落の入口など、3、4ヶ所に「比志のエゾエノキ」という表示がありまし
た。最後は民家の横のコンクリートの小道を登ってゆきます。

全体に丸い姿の大木がポツンとたっていました。 樹の下に案内板があり山梨県指定文化財と説明が書かれていま
した。エゾというので北海道の樹なのかなと思ったら、全国に分布、山梨県北部にとくにたくさん自生しているそうで
す。
黒い色をした実がたくさん熟していたので口に入れてみると、お〜っ意外と甘い! 何粒かもぎって口に入れて甘味
を楽しみました。 残念なのは実が小さい上、種が直径の8割ぐらいを占めているので果実部分が少ないこと。でもお
勧めです.よ。

エゾエノキの入口にたっていた供養塔の菩薩さまです。とても優しい顔をしていました。 小型耕運機に乗って移動し
たご年配の方とすれ違いましたが、すてきな挨拶を返していただきました。自然の中で土をいじりながら年月を重ねて
ゆくという生活は、人のぬくもりが感じられていいですね!

比志から3km弱ほど走ってみずがき湖ビジターセンターに到着、自販機で水分を補給しながら休憩を取りました。

点在する集落や道祖神など見ながらゆっくり登ってゆきます。

小尾という集落から本谷釜瀬林道の始点がありました。地図を見ると瑞牆山荘を通って増富まで続いていて、ここも
自転車で走ってみたくなる雰囲気でした。

このあたりは花豆が特産らしく、あちこちに畑が点在し、集落の庭先ではほぼ必ず花豆を天日で乾燥させていまし
た。 北海道の留辺蘂でも花豆畑が広がっていましたが、円柱状の支柱を使っていました。こちらは直線上につなげて
栽培していましたが、それぞれやり方があるんですね。

小尾から黒森に入るカーブを登ってゆくと日本百名山の一つになっている瑞牆山(2230m)が眼前に見えてきました。
花崗岩が風化を受けてささくれだっている稜線は迫力があります。

峠まで残り3kmで標高差300m! 平均斜度10%あり大苦戦。 おまけに風は向かい風が吹き出しました。前泊し
て早めに出たということで余裕たっぷりで走ってきたので、この激坂区間は想定外、ちょっと時間が心配になってきま
した。 最近はGPSに頼りきって地図を読まずに手を抜いているので自業自得です。

信州峠から一気に川上村までと思ったら、向かい風でスピードに乗れず。 うーむ、これはますますまずい。日のあ
るうちに中津川林道を抜けられるか微妙になってきました。
やめればいいのに、川上村のスーパーマーケットのナナーズでメンチカツカレーを注文、すぐに出ると思ったらオー
ダーが溜まっていたらしく10分ほど待つことに。 でもメンチカツは巨大な大きさでコストパフォーマンス抜群でした。こ
の先に食料を確保できる店はないので、ちょっぴり時間をロスしましたがエネルギー満タンで再スタートできたので、と
りあえず安心です。

ナナーズ13時10分に出発、三国峠(1740m)まで残り20kmで標高差550mです。日の入りが17時15分、峠か
ら林道の全長が20kmあるので、時速10kmで下るとして、峠を15時30分に通過すれば大丈夫と計算、休まず走れ
ばなんとかなりそうです。 もしそれよりも遅く峠に到着した場合には林道区間での日没回避のため、峠から引き返し
て小海線信濃川上から輪行で帰ることを想定しておきました。

何とか時間に間に合いそうになってきたので、写真を撮る余裕も出てきました。

三国峠に予定通り15時15分到着、ぎりぎり間にあいました。三国峠はNew Cycling誌の読者投票で全国ナンバ
ーワンに選ばれた峠で、切通しの間からのぞく山並みの変化がすばらしいのですが、到着してみるとぜんぜん雰囲気
が違ってました。
どういうことだろうとよく見て見ると、長野県側と山梨県側に車両通行止めの土塁が築いてあり、それが景観を遮っ
ているのでした。あ〜残念。

気を取り直して15分だけ休憩することにしてエスビットに点火してお湯を沸かし、コーヒーを入れました。 ツーリング
でコーヒーを入れるのはずいぶん久しぶりのことですが、峠で飲むあったかいコーヒー、なかなかいいものです。
看板を見ると悪路注意と書いてありますが、通行止めとは書いていないので躊躇なく秩父側に入りました。

峠から秩父へと下ります。秩父側からは2回ほど登ってきたことがありますが下りは初めてです。 悪路で有名です
が、まあ時速10kmぐらいで走れるかなと思ったら大間違いでした。

先月の台風18号の直撃で土砂が流入し、さらに道が荒れてしまったようです。 もはや修復は不可能で廃道止む
無しというぐらいの路面で、カンチブレーキをかけっぱなしで慎重に下っていたにもかかわらず、厚くたまっていた砂に
前輪を取られ転倒すること2回。 スピードが出ていなかったので自転車も体もダメージはなかったものの、角の立っ
た大きな石もごろごろ転がっており、ここでパンクしてチューブ交換する時間を取られるのはあまりにも辛いので、しば
らく押すことにしました。

押しているときは時速5kmほど。半分以上押して勾配が緩くなってきたところで路面も何とか乗れるぐらいになりま
した。とはいえ落石はごろごろ倒木もありで、油断なりません。

だいぶ下りてきたところで路肩が大きく崩れている部分があり、これでは車両は通れないですね。 素堀りのトンネル
を通過するあたりで日没となり、バッテリーライトを点灯しました。

突然目の前に道路遮断のゲートが現れました。一瞬、この先が通れないならどうしたらいいんだ!と思ったのです
が、ゲートをまたいで反対側から見てみると長野県側には行けませんよ、というゲートでした。 あ〜よかった。 そう
いえば、時間が時間だからと思っていましたが、林道区間では車もバイクも1台もすれ違いませんでした。

以前、山伏峠を越えたときにやはり最後に日が暮れてしまい、静岡駅までの山中でライトが暗くて心細かったことを
教訓に、バッテリーライトは最大200ルーメンを誇るレッドレンザーP7を使っています。予備のエネループもあるので
夜道でも安心、 ところが一難さってまた一難、秩父鉄道の時刻表はノーチェックでした。 スマホはもちろん携帯電話
すら持たない主義なので、行き当たりばったりです。
週末の利用客はほとんど登山客だろうから、案外終電が早かったらどうしようなんていう不安が浮かんできました。
そのときは西武秩父駅まで行くしかないなあなんて思いながら、三峰口駅まで一気に下って行きました。

三峰口駅到着が18時50分、すぐに駅舎の時刻表を見ると18時57分発で自転車を輪行袋に入れるのは到底無
理でしたが、次に19時34分があるので一安心しました。 さらに最終は20時24分でした。 もし終電だったら、がら
がらの車内なのでとりあえず自転車に袋をかぶせ、乗車してから入れなおすという荒業もあったかもしれません。
4両編成に乗ったのは御岳山林道を走ってきたというサイクリスト2名と地元風の1名の計4名。2名連れは御岳山林
道を走ってきたそうですが、はやり路面が大荒れで何度もパンクして難儀したそうです。 西武秩父駅からレッドアロー
に乗り換え自宅には23時到着、さすがに疲れました
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