2009年11月7日(土) Google Map
臼田駅〜田口峠〜大上峠〜十石峠〜上野村(すりばち荘)
71.8km 快


    

 今年もあっという間に紅葉シーズンが到来、紅葉狩りはどこに行くか迷うところです。 まずは先月越えた塩之沢峠 を目的地の一つに決定。 圧倒的な森の濃さに強い印象を受け、紅葉シーズンにぜひ再訪したいと思っていました。
 その次に選んだのが十石峠です。 以前から興味はあったのですが、小海線・海瀬駅を出発地にすると、国道299 号(武州街道)を通る国道サイクリングとなってしまうため、車の交通量の多さが気になり足が向きませんでした。 そ こで、お気に入りのコースになっている、小海線臼田駅から田口峠、大上峠を経て十石峠を繋げると、なかなかよさそ うです。 仕上げに上野村に一泊した翌日に塩之沢峠を越えるというコースを考えてみました。
 折りよく文化の日を挟んだ3連休は。日本列島全体が高気圧に覆われるという予報を確認、勇んで上越新幹線 東 京発下り始発6時24分のあさま501号に乗り込みました。



    

 臼田駅から上野村の宿までは、3つの峠を越えて70kmほどです。 日の入りは16寺45分。暗い山道は避けたい ので、遅くとも17時には到着したいところ。 過去の記録を確認しながら、きちんと時間設定をしておきました。

 臼田駅に8時8分到着、できるだけ手早く輪行袋から取り出した自転車を組み立て、まずはいつもの新海三社神社 の大ケヤキに立ち寄りました。 何度見ても圧倒される力強さを感じさせてくれます。 寄り道している時間は多くは取 れないので、今日は参道の入り口から道中の安全を祈念し、 田口峠に向かいました。



    

 県道93号線(下仁田臼田線)を進み民家が途絶えると、落葉が加速しモノトーンの世界に入る直前の最後の紅葉 が、朝の光を受けて輝いていました。



    

雨川湖を通り過ぎると、カラマツ林が増えてきます。 青空と、カラマツの黄金色の組み合わせが実に見事です。



    

 沢を覗いてみると、落葉したカエデで真っ赤に染まっていました。 臼田駅から田口峠までの10kmほどの間には、 宝石を散りばめたように見所がたくさんあります。



        

ほぼ予定通りに10時15分に田口峠に到着。 トンネルの出口からは独特の形をした立岩(たちいわ)が目に飛び込 んできました。 一息入れていると、ランドナーの二人組が到着しました。 二人の愛車は、TOEI製のダブルレバー、 泥除けガード、ダイナモが装備された正統派ランドナーでした。  田口峠〜大上峠までは同じで、そのあとは佐久方 面に下り日帰り予定とのこと。 この後、熊倉で休憩中に再度お会いしました。



    

空気が澄んでいたので、兜岩山方面から立岩、兜岩山など妙義荒船山系が、くっきりと浮かんでいました。




   

 下仁田臼田線の名物、連続ヘアピンカーブを一気呵成で走り抜けました。

 ニューサイクリング誌1985年5月号の『下りに苦労した峠』という山本秀男さんのエッセイの中で、昭和30年代の 田口峠の様子が書かれています。 関東ローム層の赤い粘土質の未舗装路で、雨中の下りを四苦八苦して大幅に予 定が遅れ、下りきったところの最初の民家に一夜の宿を乞うた、とあります。



     

狭岩峡に到着。 道の両側から妙義荒船山系特有の荒々しい岩壁に挟まれて、紅葉がぎゅっと凝縮されていました。




    

 勘能に到着。 右折して大上峠に向かって登り返して行きます。



    

 勘能から2km弱で熊倉に。 熊倉の集落を左折して全長7783mの林道大上線に入ると、両側を岩壁に挟まれた 道に差し掛かります。 狭岩峡の岩壁も見応えがありますが、ここの岩壁はそれ以上に息を呑むような迫力がありま す。





 熊倉から大上峠まで10kmほどですが、10%超の激坂も多く、今日のコースでもっとも登り応えのある区間です。  朝方は肌寒かったものの、南側の斜面では心地よい日差しもあり、汗ばんできました。 



    

 なんもく村自然公園の売店に到着したところでソフトクリームを注文、濃厚な味は期待を遥に超えるおいしさでびっく りしました。 とんがった姿が印象的な、大岩・碧岩(オオイワ・ミドリイワ)を眺めながら、濃厚な味を楽しみました。 
 売店の中には、30cm天体望遠鏡で撮影された天体写真が数枚展示されています。 星空観測にもよさそうなところ です。



    

ムラサキシキブの実を見つけました。 



    
 
 計画より30分遅れの13時20分に大上峠 (おおがみとうげ 1110m)に到着。 紅葉を背景に落ち葉が舞っていま した。  峠はハイカーのために駐車スペースを確保しているのか、道幅が広くなっているものの、人影はまったく見当 たりません。 広々とした中で木々に囲まれた景観と静けさのギャップが、不思議な雰囲気を持つ峠です。



    

 大上峠から長野県側に入り100mほど下ると、あっけなく国道299号に突き当たりました。 左折して本日3つめの 峠となる十石峠に向かいます。 十石峠(1353m)までは、約7kmで高度差は350mほどです。 




    

 今日走ってきた下仁田臼田線、林道大上線から、すっかり整備された国道になりましたが、案外と交通量は疎らで した。 右の写真は、先ほど越えてきた大上峠方向です。 



    

 時刻は13時30分。日没までには、余裕で宿に到着できそうなので、寄り道モードに入りました。まず、国道脇の公園 にあった臼石(うすいし)を見学しました。
 岩のくぼみに入り込んだ石が、水の流れで回転して削り取って出来たものだそうです。県の天然記念物の指定を受 けています。 その後やはり国道のすぐ脇にあった、乙女の滝も見物しました。 乙女の滝の付近は道幅がかなり狭く なり、乗用車2台がすれ違うのも難しそうなところもありました。 



    

国道とはいえ、この道幅なので車もあまり通りません。



    

峠に近づくと短い激坂がありましたが、全般的には楽な登りでした。15時ちょうどに峠に到着しました。



  

 国道にある峠ということで、世俗化した雰囲気をイメージしていたのですが、実際には売店もなくあるのは展望台とト イレだけ。そして展望台からの眺めは晴天に恵まれたこともあって、赤城・榛名山系から秩父、甲武信山系までの大 パノラマが広がっていました。 田口峠からの眺めもすばらしかったし、大上峠の静寂も言うことなし、そしてこの十石 峠からの眺望も堪能して、峠三昧の一日になりました。



    

 60歳代後半ぐらいの熟年夫婦が、手すりにカメラをおいてセルフタイマーで記念写真を撮ろうとされていました。 声 をかけてシャッターを押してあげたところ、 奥さまにものすごく喜んでもらえて、恐縮してしまいました。 お二人の記念 に写真が残れば何よりです。 この後も山道が続くから慎重に走らなきゃね、と夫を労る奥さんと、口数少なく答えるご 主人。二人の会話に、心が温まりました。私も、いつか自転車に乗る体力がなくなったら、こういう観光をする時が来 るのかもしれません。



    

 十石峠から再び群馬県側に。今日は、長野県と群馬県を行ったり来たりになりました。 峠から3kmほどで、林道 矢弓沢線の分岐に来ました。



    

南斜面に広がるカラマツの林



    

林道の脇の一番眺めのよいところに夫婦地蔵が並んでいました。 きれいな夕日を毎日仲良く見られそうです。



    

 林道は道幅も狭い上、ヘアピンカーブでは濡れ落ち葉にタイヤが取られてスリップするので、ブレーキを握り締めて 下りました。



    

 250年ほど前に建てられたという国指定重要文化財の旧黒澤家住宅。 ちなみに、上野村は黒澤さんだらけだそう で、この日の宿のご主人も黒澤さんでした。  



    

 薄暗くなった17時に野栗沢の一軒宿のすりばり山荘に到着し、さっそくお目当ての温泉に。 ここの温泉はかけ流し ではありませんが、塩素臭はまったく感じられず、とてもよい湯でした。 ヒノキの湯船の中で、きりたっぷ里の武士さ ん直伝の足指マッサージをしながらゆっくりと身体を暖めました。
 夕食は、イノブタ入りの鍋と、締めは源泉で作ったオリジナルうどん。仕事がひと段落した宿のご主人にいろいろと 話を伺うと、ここの源泉は塩分とミネラル分が豊富で、それを目当てに夏の間はアオバトがたくさん集まるのだそうで す。その数は年々増加し、今年は300羽ほどにもなったそうです。 
 源泉を飲ませてもらうと単純な塩辛さではなく、わずかに甘さも感じられる不思議な味でした。翌朝には化粧水代わ りに使うと肌にもよいから奥さんに持っていけ、とペットボトルに詰めてくれました。(峠を登ることを考えると重量が増 えてちょっぴり複雑な気持ちでしたが、ありがたく頂戴しました。)

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