8月23日(火) 雨のち曇り
「ホワイトハウスで昼食を」

この日は朝から、細かい雨がパラついていた。朝ごはんを食べた直後だったかな。雨は止んだ。だけど、曇り空は相変わらずで、サロマ湖の景色も湖に反射する朝日の美しさとは程遠く、どんよりとした景色が広がっていた。
食事を済ませた他の人は、バイクで、自動車で次々に旅立って行った。僕は洗濯を始めた。そのうち天気も良くなるだろー、と実にのんびりとした気分だ。
ひと通り済ませたが、まだ青空は出ていない。もう10時だ。
そろそろ出発せねば、貴重な今日が台無しになってしまう。こんな時は、時間を気にせずに旅をしている人がつくづく羨ましいものだ。

サロマ湖に着いたとなると、いつも目指すは「幌岩山展望台」。フラットダート10kmの先にあるサロマ湖一望の景色は、僕も大好きな場所だ。何となくもうすぐ展望台までの道路が舗装されそうな気がしており、そうなると観光客(観光バス)がどっと押し寄せることになる。また隠れ家的な場所が一つ消えてしまう。僕はサロマ湖畔を西へ走る。

しかし、幌岩山展望台への道に差し掛かったとき、ポツリポツリと雨が降り出した。山の上方は雲がかかり、展望台からはサロマ湖など一切見えないことが容易に想像できた。

仕方ない。網走に行ってみよう。
国道238号線を東に東に走る。空の色は均一。太陽がどこにあるかも分からず、空全体が灰色に光っている。
海岸線の景色も空の色に感化されて、どこか寂しげ。かろうじて路面が乾きかけていたのが救いだ。

網走駅に着いた。細かい雨が降り始めている。道路の反対側には、高校生チャリダーと思わしき集団が走っている。
僕は昨日聞いた場所を教えてもらうため、駅の観光センターに立ち寄った。
丁寧に場所を教えていただいたので、商店街を通るとすぐに着いた。
先ほどのチャリダー集団も、僕と同じ所に自転車を停めた。
「グローブ落ちてますよ」
「あ、どうも」

着いた。
「ホワイトハウス」。レストランだ。

ここは何がスゴイって、量と値段!
どれもこれも、量的には体育会系そのもの。その割には、1000円前後で何とかなってしまう価格も物凄く魅力だ。僕のようにバイクに跨っているだけの人よりも、このチャリダー集団のように日々体を動かし続け、そして金銭的に苦労が多い人にこそ、そのオアシス振りを体験できると思う。僕にとっては興味本位そのものだが、彼ら高校生(と勝手に決めているが・・・)チャリダーにとっては、網走では「ホワイトハウス」しか考えられないのだろう。

僕は数多くのメニューの中から、「サーロインステーキとポーク生姜焼きセット」を注文する。
カウンターに座ると、目の前の鉄板でステーキを焼いてくれる。隠し事一切無しの姿勢は、好感が持てる。

おぉ〜出てきた。ライスも普通なのに大盛りっぽいぞ!これで1100円だったら量的には納得でしょう。
お味の方は、普通のステーキと生姜焼きですな。特に可もなく不可もなく・・・でした。だけど、ウマくてもマズくても、栄養やカロリーに違いは無い。やはりココは、チャリダーの聖地なんだなぁ。

今日は出発が遅かったので、網走の多々ある観光名所はスッ飛ばし、先を急ぐことにした。おぉっと!ここはカニの水揚げがある土地じゃないか。というわけで、網走郊外のある直売所に立ち寄って、実家や親戚にカニを買うことにする。最近は、カニ爆弾(カニの無料配送)に関しては皆無なのだ。

毛がに、タラバガニ・・・お、近頃はタラバガニと偽って売られていた”アブラガニ”も、「アブラガニ」として売られているんだね。だんだん素人にも「アブラガニ」という名前が浸透してきて、騙せなくなって来たという感じか(笑)?

フラッと立ち寄ったライダーが意外にも大量の買い物をしたので、入ってきた時と出て行ったときでは対応が全然違っていたのが面白かった。

次に目指すは、小清水原生花園。しかし、雨はあがったのは良しとして、こうも天気が悪いのでは写真もあまり撮る気になれず、短時間で去ることにする。

仕方が無いから、もう宿に荷物を預けに行こう。今夜の宿は、「オホーツク小清水ユースホステル」。
前に一度泊まったことがあるけど、その時に体験したコーラ色の温泉にもう一度入りたいので。

ユースに到着したのは、2時半。当然、飛び込みである。そして当然のように部屋は空いている。
荷物を部屋に運び込むと、身軽になったバイクで走り出す!この軽快感がタマリマセン!
「6時から夕食なので、それまでに帰ってくるように」と言われていたが、問題ないだろう。

硫黄山を目指して、国道391号線を南下。一気に走りきる。

天気の良くない硫黄山を散策したあと、摩周湖に行く。しかしこの時間、第一、第三展望台は観光バスで埋め尽くされている。どうせなら”表”はパスして、裏摩周展望台に行ってみよう。
神の子池にも行きたいし。

国道391号線から国道243号線に入り、道道885号線を走る。途中、道道150号線に折れ、裏摩周展望台に向かって走る。道はわずかな上り坂。

着いてみると、まさしく「霧の摩周湖」!何も見えません!!摩周湖快晴率が非常に高い僕であっても、最近は霧であることが多いです。代わりに見えたのは、観光バスで来た観光集団。あぁ・・・

だんだん時間的に押してきたかな。次は神の子池に行こう。道道1115号線を北上し、以前は非常に見つけ辛かった入り口に入る。年々道が広くなってきているが、これも観光バスの影響なんだろうな〜

2km近く続くダートを走ると、急に道が開けて大きな駐車場が目の前に現れる。神の子池はその向こうにある。

静かな雰囲気の中、深いブルーの水を育む神の子池は、いつ見ても気分を落ち着かせてくれる。
ガヤガヤとした観光客がいなかった事は、タイミングがよかったと思う。
聞いた話では、ニュースステーションで立松和平が池に潜ってから、状況がおかしくなってきたらしい。
あぁ・・・朝日・・・の・・・バカ。

池の周りをゆっくり歩いてから、バイクに跨りユースを目指す。
舗装路に出る直前、ぬっと観光バスがダートに入ってくる。道幅ギリギリだ。こんな所に入ってくるなー!

6時までに時間が無いぞ!ユースホステルまで近道するつもりが、だんだんどこを走っているのか分からず、すっかり道に迷ってしまう。
気が付くと清里町の駅まで走ってたらしく、だいぶ時間をロスしてしまった。
途中でガソリンもリザーブになり、焦りが募る。
やっとのことでユースホステルに帰り着いたのは、5時50分。夕食10分前であった。何とか間に合ったー!

食事のあと、隣の原生亭の温泉に入りに行く。

コーラ色の温泉で温度は高め。でも、慣れるまで浸かってから出ると、行きの寒い道が帰りは涼しくて気持ち良いくらいだ。それに2年前見た星が、今日もきれいだった。
温泉で温まり、わずかな時間だが星を眺めて散歩するのが、このユースでの大好きなひととき。

この日泊まっていたのは、僕を入れて4人。少ないけど部屋に引きこもる人がいないのが良かった。北海道初めての人もいれば、このユースの常連さんもいる。明日はどこに行こう?それだけでもお喋りのネタには事欠かないものだ。

夜は更けていき、今日が消えていく。写真と一夜の出会いという、思い出が残る。

本日の走行距離:254.7km
本日の音楽:「Tequila Sunrise」(The Eagles)