8月26日(金) 曇りのち雨
「鉛色の黄金」

朝外を観ると、空は一面雲に覆われていた。いや、少し前まで雲間から光が差していたんだったかな。その雲間からの光が大きくなっていき、空を覆いつくすことを期待していたのだが、結果は曇り。
ウダウダやってても仕方ないので、出発することにする。

昨日の一年前会ったというCB1300氏は今日も長距離を走るので、僕よりも素早くユースを出て行った。またいつか、北海道のどこかで出会えるのかな?その時が楽しみだ。

さて、僕はどこに行こう。今日中に襟裳岬を越えて苫小牧まで行ければいいな〜という気持ちで地図をパラパラとめくる。そうすると道道1060号線と道道243号線で、釧路湿原の反対側に出られそうだ。ルートは決まった。

釧路湿原とうろユースを出て少し走ると、僕が行くルートはコッタロ展望台に続く道だという事が分かった。久々にコッタロ展望台に行ってみるか!
砂埃を上げながらフラットダートを駆け抜け、コッタロ展望台にたどり着く。

今日は天気が良くないから、展望は期待できない。でも、カメラを持って展望台のゲートをくぐり、上り始める。

僕はここで大きな勘違いをしていたのだ。コッタロ展望台のゲートの階段を上ればすぐ、展望台にたどり着くと思ってたのだが、なんのなんの!その距離の3倍くらい歩かされることになった。

そういえば以前来た時も、階段を上がってからの方がしんどかったんだっけ!?

うっすらと涼しい季節だというのに、ペース配分を崩されたことで全身汗だくになりフラフラとなって上りついた。
展望台からの眺めは、曇り空の下に湿原が静かに広がる寂しい景色だった。湿原の水面がてん、と空の色を映し出している。

バイクに戻るとレンタカーに乗った夫婦が展望台に上がろうとしていた。どうやら半分道に迷っているらしく、地図で現在位置を教えてあげた。彼らは一昨日、旭川空港に降り立ったということで、家は大阪だと言った。ここの展望台は思いのほか歩くことを教えて、僕はコッタロ展望台を後にする。

ここらは湿原の中を走っているはずなのに、実際走ってみると「湿原」という雰囲気は全然無いですね。
ただ単に、木々の中を走る舗装道路といったところか・・・

道道243号線に入り、湿原を抜けたところは左右に農地が広がっていた。
綺麗な茶色の畑が土の良さを示している。・・・あ!ツルだ!!

右の更地となった畑にツルが一羽歩いている。バイクを道路わきに停め、レンズのズームを目一杯伸ばして撮ってみる。茶色い地面に白い羽、黒い尻尾で歩き回り、時々エサをついばむのか挨拶をするようにくちばしを地面に着けていた。
雪の中、タンチョウヅルがダンスをするような写真にはとても及ばないな。そういった幻想的なシーンには足元にも及ばない、農地にトリが一羽と言った感じか・・・

このまま道道53号線を南下し、釧路市湿原展望台に着いた。
どうも釧路湿原と僕の相性はあまり良くないようで、天気の良い日に訪れたのは数えるほどしかない。
天気の良くない日にお金を払って市の展望台に上がるのは馬鹿らしいとは思いつつ、「何かあるかもしれない」という期待を込めて行ってみる。やっぱり上がらなけりゃ良かったよ・・・何だか毎回これで落胆してる気がするのだが、どうだろうか?

バイクで走り出す前に駐車場を一周してみるかー!と、バイクでぐるっとまわってると、なにやら女の子数人とバスガイドが柵の向こうを見ながらキャーキャー言っている。
「どうしたの〜?」と近づいて聞いてみると、柵の向こうに蛇がいるらしい。おぉ、いるいる!とぐろを巻いている。その後すぐに草むらに消えて行った。少し話をしてみる。
彼女らは横浜の中学校から修学旅行で北海道に来ているらしい。でも、天気が悪くて残念だったね。
彼女らの担任の先生は学生時代、10回ほど北海道に来ているということで、その頃とは北海道は随分変わったとか。もしかすると僕とその先生は、どこかですれ違ってるかも知れないですね。

挨拶をしてバイクで走り出す。みんなが手を振ってくれる。・・・おぉっとっと!そうだそうだ。この旗(ホクレンの旗)あげるね!
荷物にくくりつけてあった3本の旗をみんなに手渡す。そして再びバイクで走り出す。
いつの日かこの中から、北海道を旅する人が出てきてくれることを期待して・・・

釧路湿原から再び、釧路市内に入る。お土産を買うために、釧路の六花亭にやってきた。

ここには帯広の六花亭本店にも無いメニュー「サクサクパイ ライト」があるという。本店の「サクサクパイ」は作り置き3時間だが、この「サクサクパイ ライト」はそれをも凌ぐ作り置き30分!帯広は今回行けるか分からないので、これは体験してみなくちゃ!
早速注文してみると・・・え?今はもう無くなっちゃってるんですか!?
どうやら今年の3月で「サクサクパイ ライト」は終了してしまったらしい。今は本店と同じく3時間リミットの「サクサクパイ」を出しているとの事。去年知ってたら味わえたのかー!残念。とりあえず「サクサクパイ」(125円。安い!)を1つ食べ、お土産を沢山買って、宅急便の伝票を沢山書く。

11時半ごろ外に出ようとした時、ポツポツと雨が降り出した。とうとう来たか!

雨中走行の身支度をして、バイクにまたがる。目指すは・・・帯広?襟裳岬?
ええい!こうなったら襟裳岬だ!ルートは決まった。

国道38号線を雨の中、バイクは走る。国道38号線から国道336号線に入る交差点手前にホクレンがあった。給油と休憩を兼ねて雨宿りをする。
すると中には、今年初めての北海道ツーリングだというバイク2人組が、先に来て雨宿りをしていた。

服装もバイク専用とは言いがたく、食事もコンビニなどがメインらしく、いわゆる「お金が無いけど北海道を旅したい!」という学生の典型だった。実家は東京だと言ってた。
雨や寒さ対策が不十分だったので、今日のような天気は強烈に寒いらしく、ここに非難してきたということだ。

いや、でもね、費用の事なんて、実は現地でなんとでもなるんですよね。それよりも僕は、僕よりもはるかに長い時間北海道にいられることが羨ましかった。
「コンビニでおにぎりも良いけど、北海道に来て寂しくない?やっぱここは!という時は、土地のものを食べた方がイイよ〜!コンビニ弁当とか食べてると、何だか敗北感に襲われない?」と、僕は言った。だけど考えてもみると、それってお金がある人の意見なんだよなぁ。
僕の今の旅のスタイルは、明らかに学生のそれとは一線を画している。いや、どっちが良いとかは無いんだけど・・・もう一方のスタイルも魅力的に見えた。すごく新鮮な感動に満たされているだろう旅が、とても羨ましかった。

1時間くらい休憩して、国道336号線に入る。しばらくして黄金道路に入った。どうやら通行止めにはなっていないようだ。
左手に見える海は雲に覆われ、海が少し荒れているのがわかる。
確かに「黄金道路」の名のとおり、こんな所に道路を通すには、(黄金を敷き詰められるほど)莫大な費用が掛かったはずだ。道路を通す条件としては、悪い事この上ない。。。

幾つ目かのトンネルを抜けた直後、ザッパーン!という音とともに一瞬、視界がさえぎられる。
何が起こったんだ!?気が付くと、バケツで水をかけられたみたいにびしょびしょに濡れて水が滴り落ちている。
おぉー!波かぶった波かぶった!!(笑)
これくらいの海の荒れでもあるんですね。時々波にさらわれる人がいるって聞いたけど、こういう事なのか!?

百人浜を横目で見ながら、襟裳岬をめざす。途中、”元”ユースホステルの建物を発見したので、行ってみる。

現在ここは、ユース時代からあった「喫茶エリモリエ」とペンションだか民宿だかになっている事が、外観から想像がつく。でも今日は、閉まっているようだ。気が付くと看板の下には「えりも岬YH」の看板が、目立たない位置にまだあった。
かつては「北海道3大バカユースホステル」として有名だったえりもYHだが、今はその頃が懐かしい景色になっていた。

襟裳岬。とうとう着いた。宗谷岬、納沙布岬、そして襟裳岬か・・・走ったなぁ。
などと感慨に浸るまでもなく寒々しい風景。風も強いし細かい雨も降っている。森進一も「襟裳の〜ォ春ぅはぁ〜ァ・・・」と歌っている。

遠くの方にゼニガタアザラシが居るのかも知れないけど、肉眼では観測不可能だった。
観光客も少なく、総じて寂しい襟裳岬だ。僕は岬を後にした。

国道336号線から国道235号線に入り、浦河町でひと休み。
時間が押している。もう今日中に苫小牧まで行くのは無理っぽいので、新冠に刻むことにしよう。
今夜の宿となる「ファンホース新冠YH」に予約を入れた。今の時間からは夕食の時間には間に合わないだろう。

雨の中、道の駅「サラブレッドロード新冠」でひと休みして、今夜の夕食を買う。
道の駅では、数人でツーリングしていて、今夜はこの道の駅で一夜を過ごす人々もいた。
ユースは橋を渡ったところを左に曲がると、すぐ見つかった。雨の中の長距離ツーリングだったので、僕はぐったりとして風呂に入る。
この日泊まっていたのは2人位?

そして食事はコンビニ弁当。敗北。

本日の走行距離:350.3km
本日の音楽:「My Baby And Me(COR−DI−A)」(RANDY CRAWFORD)