Lesson 3:ビリヤード場での関西弁



今回は、ビリヤード場での関西弁に注目してみましょう。
別にビリヤード場だからといって、特別な関西弁が使用されているわけではありません。
極めて普通の関西弁です。
 
例題1)関西弁
黒ちゃん:「おはよ〜」
にっしゃん:「あ〜、毎度。突く?」
黒ちゃん:「突こか」
にっしゃん:「最初はグー、ジャンケンホイ」※1
黒ちゃん:「ブレイク頂き」
 
※1の部分に注目して下さい。
私達が子供の頃は「インジャーンでホーイ♪」という掛け声でした。
さらに私の小学校ではかなりローカルな「インジャンジャラケでアイスクリームほっかほっか北海道♪」という掛け声もありました。
中学生くらいになると「いんさらぷー」でした。
子供の時に、江口寿氏の「すすめパイレーツ」の中で「ちっけった」という掛け声を見て「変やなぁ」と思っていましたが、自分達の事を変だとは全く思っていませんでした。
 
例題2)関西弁
アキさん:「自分、どこのキュー使ってんの?」
電人:「これです」(バットエンドの『Schon』の文字を見せる)
アキさん:「ええ、キューやな。スコーンか。スコンスコン入りそうやな」
電人:「・・・」(手の平を上に向けてベロを出し、飽きれた事を表現する仕草をする)
 
勿論、アキさんは冗談で言っています。
かなりベタです。これくらいベタな会話は日常茶飯事です。
「自分」という表現が何度か出ていますが、「あなた」、「キミ」に相当します。「ワレ」というのは河内方面の古い呼び方です。
神戸では「ワレ」は殆ど使用される事はないですが、稀に「ワレ、何さらしとんじゃ?あぁ?言わすぞこらぁ」と熱き青春の血潮を持った方が使用する場合もあります。
 
例題3)関西弁
エリちゃん:「プロ、ジャパンしましょうか?ジャパン」
プロ:「ええよ。負けへんよ。俺は5、7、9(ごなきゅー)でええ?」
エリちゃん:「よう言わんわ」
 
「ジャパン」とは「5−9」にほぼ等しいゲームです。ただ、点玉が5,9だけでなく、3,5,7,9が一般的です(稀に1も点玉になる事もあります)。
対戦者の実力差で点玉を減らしたり増やしたりします。
 
「よう言わんわ」という表現は、困った時に使用します。
意味としては「呆れかえって物も言えない様子」。つまり「言語道断」という意味です。
ただし、この「よう言わんわ」という表現は、最近ではあまり聞きません。
家族にご年配の方がいらっしゃる人くらいではないでしょうか?
 
例題4)関西弁
黒ちゃん:「あっ、ごめん」(フロックで9番イン)
にっしゃん:「何してくれよん?ヤカ○やな、自分」
黒ちゃん:「ごめん、ごめん」
にっしゃん:「納得でけんな」(プリプリ怒る)
黒ちゃん:「おこりないなぁ〜」
 
例題4)標準語訳(誤訳)
黒河君:「あっ、申し訳ありません」(フロックで9番イン)
西元君:「これは参りましたね。ついてますね、あなた」
黒河君:「本当に申し訳ありません」
西元君:「ついてないなぁ」(プリプリ怒る)
黒河君:「まあ、そう怒らないで下さい」
 
何故、誤訳となるのか?
それは「ヤ○ラ」の部分です。これはあまりよい言葉ではありません。
何故伏字を使っているかというと、「差別用語」と呼ばれる言葉に属する可能性があるからです。
ですから、本来の意味についてはあまり語りたくありません。
ここで紹介するのは、「本当の言葉の意味を知らないで、神戸(特に中央区、長田区、兵庫区)以外の人間が勘違いして使っている意味」です。
 
例題4)標準語訳(模範解答)
黒河君:「あっ、申し訳ありません」(フロックで9番イン)
西元君:「これは参りましたね。かなり無茶苦茶な事をしますね、あなた」
黒河君:「本当に申し訳ありません」
西元君:「ついてないなぁ」(プリプリ怒る)
黒河君:「まあ、そう怒らないで下さい」
 
「おこりないなぁ〜」は故林家小染師匠が一世を風靡したギャグです。
若い人は知らないギャグです。
 
「無茶苦茶な事をする」という表現は「ゴチャしよる」とも言います。
こちらの方が「無茶苦茶な事をする」という行為を表現するのには、正しい表現です。
「ゴチャ」=「無茶」と理解して下さい。
 
例題5)関西弁(「ゴチャ」の使用例)
黒ちゃん:「にっしゃん。セットマッチしよか?」
にっしゃん:「ええで。ハンディは?」
黒ちゃん:「にっしゃん10で、俺が1」
にっしゃん:「ゴチャ言うな」
 
誤解しやすいのが、「ごちゃっとしてる」という表現です。
これは「無茶っとしている」という意味ではありません。
「狭い空間に無整頓に存在している」という意味です。
「ごちゃごちゃしてる」という関西弁は「無茶無茶している」という意味でも、「狭い空間に無整頓に存在している*2」という意味でもありません。
Lesson1でも書きましたが、関西弁で、同じ言葉を繰り返す場合は「強調」を意味する場合があります。
ですから「とても狭い空間にとても多くの物(または人)が無整頓に存在している」が正しい訳となります。
 
使用例としましては、ブレイクの直後、玉があまり散らばらずに密集している状態を見て「なんや、ごちゃごちゃしてるなぁ」などと言います。
ここで使われている「なんや」は、「なんだかとても」という意味です。
よくテレビで聞く「なんや?ワレ」の「なんや?」とは発音が違います。
 
さあ、これで他地域の方も安心して、関西のビリヤード場に遊びに来て頂けると思います。
どんどん遊びに来て下さい。(本当に安心できるかどうかは不明です)
 
他の定番的な駄洒落については、「30代からはじめるビリヤード」の余談3に記載しておりますので、そちらも参照して下さい。
 
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