Lesson 4:ヤクザ映画の関西弁



今回は、ヤクザ映画での関西弁に注目してみましょう。
ヤクザ映画では迫力のある関西弁が多く使用されています。
 
その中から有名なセリフを解説してみましょう。
 
例題1)関西弁
「タマ取ってきたれや」
 
漫画ですと「タマ」という部分に「命」という字が使われる事が多いです。
この字を使うと「命取ってきたれや」となり、意味がわかります。
 
例題1)標準語訳
「殺してきなさい」
 
訳としてはこれで問題ありません。但し「タマ」=「命」というのは意訳です。
実はこの「タマ」というのは「頭」の事です。
 
例題1)関西弁(応用)
迫力のある役の黒ちゃん:「くそったれがぁ。おい!あのボケのタマ、きっちり取ってこんかい!」
ちょっと天ボケ役のにっしゃん:「タマ?タマって金玉ですか?」
迫力のある役の黒ちゃん:「なめとんのか?ドタマ取ってこい言うとんじゃあ!どあほぅ!」
 
ドタマとは「頭」の関西風な呼び方です。
 
さて次は関西弁の定番です。
 
例題2)関西弁
「われ、なんぼのもんじゃ?!」
 
よく聞きますよね?このセリフ。
これを直訳すると「あなたは、いくらの値打ちがあるのですか?」と?な意味になります。
厳密にはこれに該当する標準語がありません。
 
しかし、あえて理解して頂くと為に、次の様な展開を行って頂きます。
 
 ・「あなたは、私にどれくらい恐怖を感じさせる事ができるというのですか?」
      ↓
 ・「あなたは、私に恐怖をいくらも感じさせる事はできませんよ」
      ↓
 ・「あなたなど、恐くはありませんよ」
 
この様に、相手に対して自分が優位に立っている事を意味します。
同じ様な表現では例題3の様な表現があります。
 
例題3)関西弁
「誰に口きいとんや?!」
 
これは標準語でいうところの「誰に話しかけてるいるのですか?」の最上級表現(戦闘モード)です。
関西では話す(話しかける)事を「口をきく」と言います。
 
例題3の場合、「誰に向って、その様な横柄な態度で話しかけているのですか?」というのが一番正しい訳になると思います。
これを先ほどと同じ様な手順で展開し、相手に対して自分が優位に立っている事を意味する表現になります。
 
これらのセリフは俗に言う「ハッタリ」です。
正直に申し上げまして、関西でこんな調子で揉め事をやっている連中の大半はハッタリだけで揉め事を決着させたいと思っている連中です。
しかし、多くの場合は儚い希望となるのです。何故なら、ハッタリだけで相手が引き下がってくれるほど世の中は甘くなく、最終的に行動に出なければ決着しない事が多いです。
(それならば、最初から行動に出た方が、効率的であるという意見を行動派の方々から耳にします)
 
行動派の方々は、最初に揉めた時点で、行動に出ていますので、非常に効率的に揉め事を解決していきます。
ただ、一番よいのは揉め事は起こさない事です。
 
話しが少しずれてしまいました。
さて、「ハッタリ」とよく似た言葉で「脅し文句」というのがあります。
これは、相手に対して「恐怖心」を植え付ける役割を果たします。
 
例題4)関西弁
「いてまうぞ、こらぁ!」
 
例題4)標準語訳
「危害を加えますよ、コラ」
 
殴る、蹴る、投げる、極めるなどの攻撃を加えようとする事を意思表示する言葉です。
上級者になりますと「いてこますぞ」となります。
 
「こます」とは「行動する」ことを表す言葉です。
関西ではこの様にあってもなくても意味が通じるのですが、より雰囲気を盛り上げる為に使用される言葉が数多く存在しています。
 
「何しやがる」→「何しくさる」→「何してけつかる」
 
「しばくぞ」→「しばきあげるぞ」→「しばきまわすぞ」
 
ヤクザ映画では、あまり「しばく」という表現は使われません。標準語に訳すると「殴る」という言葉なのですが、関西には「殴る」に相当する言葉が二種類あります。
その一つが「しばく」。もう一つが「どつく」です。
 
関係的には「しばく」<「どつく」の関係にありますが、痛い事には違いはありません。
意味合い的にも、雰囲気的にも「どつく」の方が雰囲気がありますので、映画ではこちらが使用される事が多いです。
(例:赤井英和主演「どついたるねん」=「殴ろうと思っています」)
 
では、いつもの二人の会話で雰囲気を確かめて頂きましょう。
 
例題5)関西弁
黒ちゃん:「聞いてくれや」
にっしゃん:「どないしたん?」
黒ちゃん:「昨日、おかんの財布から500円ぱちったんバレてよ。しばきまわされたんや。」
にっしゃん:「500円?あほか、お前。俺なんか、家の車ぶつけたん黙とったんがバレて、おとんにどつき倒されたわ。もうちょっとで脳味噌飛び散るとこやったで」
 
例題5)標準語訳
黒河君:「聞いていただけますか?」
西元君:「どうしたのですか?」
黒河君:「昨日、母の財布から無断で500円を拝借したのが発覚しまったんです。おかげで叱られてしまいました」
西元君:「500円ですか?なんと愚かな…。私などは、父親名義で家族みんなが使用する車を傷付けてしまったのを、みんなに報告していなかったのが発覚しまして、父に折檻されました。もう少しのところで死に至るところでした」
 
但し、最後の部分は関西特有の「大袈裟に伝える」部分ですので、「怪我をするところでした」と解釈するのが正しいと思います。
 
この様に標準語では同じ意味なのに、関西弁では2種類の表現があります。
 
さて、これだけ理解できれば、関西を舞台にしたヤクザ映画も十分にお楽しみ頂けると思います。
 
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