Lesson15:関西弁への変換



世の中にはURLを入力すれば、そのサイトを関西弁に変換してくれる便利なサイトがあります。
また、メールの内容を関西弁に変換してくれるサービスもあります。
 
そういうサイトを見かけるとついついやってしまうのが、関西人の性なのか…。
しかし、それらのサイトで「完璧や!」というサイトに出会った事がありません。
それは、所詮コンピュータが事務的に変換するだけなので、どうしても微妙なニュアンスを変換する事ができないからです。
 
今は昔、世に袴垂といういみじき盗人ありけり。
頭賢く、腕強く、足早く、世に並び無き者なんありける。
 
記憶が正しければ、今昔物語の「袴垂」はこの様な始まりだったはずです。
(何しろ中学の時に習ったらから、記憶が曖昧で…)
 
これを現代語に訳すると次の様になります。
 
今ではもう昔のことだが、袴垂(はかまだれ)という名の有名な泥棒がいました。
頭脳明晰で力も強く身軽るで、彼と肩を並べれらる泥棒はいませんでした。
 
では、これを現代関西弁に訳してみましょう。
 
むっちゃ前の話やけどな、袴垂っちゅー泥棒がおったんやって。
バリかしこ〜て、喧嘩もむっちゃつよ〜て、足なんかカモシカ並みに速かったらしいわ。
あいつに勝てるんは、ルパン三世くらいやで。
 
この訳を見て、「全然出て来ていない言葉があるじゃないか!」とお怒りの貴兄。
待たれよ。
 
関西にはそういう比喩表現が頻繁に使われます。
 
何かを表現する時にどれくらい凄いのかを相手にわかりやすくする為に、別の人間以外の物を使用する事がよくあります。
今回の場合は足が速い=カモシカ並みです。
 
別にポルシェでも、新幹線でもいいのですが、それだと現実離れしすぎて、相手もちゃんと聞いてくれません。
一昔前に関西で健脚の代名詞と言えば、アベベだったのですが、この袴垂は人間離れした足の速さを表現する為にカモシカを使用しています。
 
次に「ルパン三世」ですが、これは実在しない。
つまり、現実社会では、袴垂に勝てる泥棒はいないという事を強く強調しています。
 
この様に関西弁は微妙なニュアンスがとても大切です。
 
では、次の例題に言ってみましょう。
 
父は、私が幼い時に着のみ着のままで蒸発しました。
 
これを関西弁で言うと…。
 
お父ちゃん、俺が子供ん時にタバコ買いに行ったまま、まだ帰えってこうへんねん。
 
これも関西ではよく使われる言葉です。
蒸発したという哀れさしか連想させない言葉を使用せずに、タバコを買いに行くという日常的な行動に置き換える事で哀れさを一切感じさせません。
これは相手への気配りと同時に、いつか帰って来てくれるはずという強い期待が込められています。
 
では、次の例題に言ってみましょう。
 
あの子、とても魅力的だね。
 
これを関西弁にすると何種類かに分かれます。
 
あの姉ちゃん、ええ乳しとんの〜。
あの姉ちゃん、ええケツしとんの〜。
あの姉ちゃん、ええ耳たぶしとんの〜。
 
これは女性のどこに魅力を感じるのかがわかる様になっています。
この件に関しましては、詳しい説明を省略させて頂きます。
 
この様に関西弁は、他の地域の人からみたら、「言わなくてもいい事まで」言ってる様に聞こえます。
しかし、関西では、この「言わなくてもよい事」が個性になっているのです。
そして、こういう個性のある人を関西では「頭の回転が速い」と思われる事が多いです。
 
逆にこの「言わなくてもよい事」を本当に言わない人は、関西では「愛想の無いヤツ」と言われます。
 
最初に紹介したサイトの管理者の方には、その辺りのニュアンスをしっかりと反映させて欲しいものです。
 
それでは、最後に有名な言葉を関西弁に訳して、お別れの挨拶を代えさせて頂きます。
 
ほな、さいなら
 
いまどき、そんな言葉使うヤツはおらん!
 
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