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モーニングサージとは

 健常者でも夜間に血圧は下降し、朝方覚醒とともに上昇に転ずるという日内変動リズムが認められます。一般的にモーニングサージとは、朝起きて1時間から1時間半くらいの間に生ずる急峻な血圧上昇ないし血圧高値のことを言います。
 モーニングサージの中には、夜間からの高血圧(non-dipper)を持続したsustained typeと、surge typeつまり夜間の血圧はやや低いが起床とともに著明に上昇するタイプの2種類があります。
 このメカニズムとしては睡眠中に低下した交感神経活動が覚醒前から亢進し始め、同時期に副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)の活性亢進も関与していると考えられています。
 この両者が強い血管収縮を生じ、動脈硬化の進展例で急峻な血圧上昇をもたらします。加えて朝方には、体液量の減少とカテコールアミンの増量のため、血小板凝集能や血液凝集能の亢進も認められます。交感神経とACTHの活性亢進、急峻な血圧上昇は凝集能や凝固能の亢進とあいまって、心筋梗塞や脳卒中などの心血管系疾患が増大すると考えられているのです。


モーニングサージの抑制

 最近、早朝の血圧上昇は交感神経活性の関与が考えられることから、日中の薬剤に加えてα1遮断薬の就寝前一回投与により、良好な降圧が得られることが分かってきました。
 このことをもう少し詳しくいうと、α受容体の刺激により血圧は上昇します。これが動脈を破綻させれば脳出血の可能性につながり、動脈硬化のプラークを剥離させれば心筋梗塞につながります。また、β受容体が刺激されれば、心拍数や心収縮力の増加が起こり、血液の需要供給のバランスが崩れ、心筋虚血や不整脈を誘導します。さらに、血液凝固系に働き、血小板の凝集能を高めます。この3点で、朝方の交感神経活性亢進は重大な心血管系事故のトリガーとなる可能性が出てきます。α遮断薬がモーニングサージの抑制に有効だという報告、β遮断薬による治療で心筋梗塞の発生、特に午前中の発症が有意に押さえられるという報告はこの点を裏付けるものと考えられます。
 また、突然死、心筋梗塞、脳卒中などは早朝に発症することが多いようです。このことからも早朝にも作用が持続する長時間作用型の薬剤を選択すべきであることも分かってきました。
 このように、高血圧治療においては薬剤の選択、投与量の設定に加え、投与時刻まで含めた、患者個々の病態に合わせた対応が必要であるといえます。


モーニングサージを捉えるのに有効な家庭血圧

 モーニングサージを捉える方法には24時間血圧計と家庭血圧計があります。実用面からいっても、価格面からいっても家庭血圧計がよいと考えられます。日本では2000マン台近く普及しているからには、これをほっておくのは意味がありません。
 家庭血圧のレベルから考えると、昼間血圧レベルの正常値が131/77mmHg未満で、朝の血圧の高血圧域が135/80mmHgであるから、モーニングサージは昼の血圧が131/77未満、朝の血圧が135/80mmHg以上と定義されます。
 また、朝の血圧の方が、20mmHg以上高ければモーニングサージといってもよいかもしれません。
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