kugiri
質問ビタミンCを大量に服用すると風邪や癌になりにくいというのは本当ですか?
回答 「大用量のビタミンCを服用しても、体内で利用されずに終わる」との新しい研究結果がJames Blanchard 教授らによって『 American Journal of Clinical Nutrition』に最近報告されました。
 最近の栄養素の薬物動態学的研究に基づいた新しいモデルでは、ビタミンC摂取量が200mg/日から2500mg/日に増加しても、体内のビタミンC濃度は12mg/L から15mg/Lへとわずかに増加するにすぎないことが示されています。
 Blanchard 教授によると、栄養素の血中濃度は人体への作用を反映するため、今回の結果から大用量のビタミンCは排泄されてしまうことが示されています。現在のビタミンCの推奨栄養所要量(RDA)は60mg/日で、RDAの10倍以上が大用量と定義されています。
 Blanchard 博士は「ビタミンCの体内吸収がある時点で飽和状態に達するだろうと考える研究者は多かったが、それを裏づける研究はこれが最初だ」と述べました。
 このことはこれまでのいくつかの研究で、400mg /日から2600mg /日までのビタミンCを摂取すると心疾患、癌、運動誘発性喘息、白内障などの予防、症状緩和に役立つことが示唆されてきましたが、このような大用量を身体が吸収できる証拠はないこと示したことになります。
 同報告の付随論評を書いたBarry Shane 教授は「理論的には、1日200mg 以上のビタミンCを取ることで得られる恩恵はない」と述べています。同教授は、多くの人が科学よりも信念に基づいて大用量の栄養素摂取を行っていることに注目し、「ビタミンCはまるで宗教のようになっている」と指摘しています。
 ノーベル賞を2度受賞した化学者の故Linus Pauling 博士などビタミン信仰の教祖は、1日に1万8000mg までのビタミンCを摂取することを説いてきました。
 また、研究者のなかにはビタミンCのRDAを1日200mg に増やすよう提案するものもいますが、Shane 教授は、「最良の健康状態を維持するのに必要な1日摂取量はまだ解明されていない」と説明しています。
 「アスコルビン酸の動態に関する最近の研究で、アスコルビン酸摂取量の実際の上限についてはかなり解明されたが、推奨量についてはまだまだ議論が続きそうだ」と同教授は書いています。
 ただし、女性や高齢者そして有病者などではビタミンCの体内動態が異なるかもしれず、これまでに明らかにされてきた証拠は健康な男性にのみ当てはまることを認識する必要がありますが、私自身も大用量のビタミンCには疑問を持っています。
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