GLラボ特別企画 日記「S&G工法で造る・不思議なカヌー」  


このページは極めて特殊なページとなります、当サイト「GLラボ」では「GL工法を主に扱ってきました。

しかしここでは「S&G(ステッチ&グルー)工法」を用いて建造する特殊なカヌーを紹介します。

不思議というのは「櫓帆走」という新しいジャンルを試してみようとしているからです。

     櫓帆走の動画(Youtube)はこちらです

 

では、進水までの製作期間12日、総作業時間70時間というS&G工法の

特徴ある工程と、完成後の実験の様子などをご覧ください。  

艇の設計、作業の指導、工房の提供など、全面的な「新世代木艇工房」さんのご協力に感謝します。

   

 作業第1日目(作業時間7時間)

 現図(原寸の図面)をプリンターで長尺の用紙に直接プリントアウトする。 全部で10枚あります。

 その現図を4mm厚の合板に両面テープで貼り付け線の通りに切り出します。

 

   

 合板を切り出しています。

  ステッチ&グルーの教科書には、最初はジグソーで大まかに切り出して、手ノコで丁寧に仕上げるようにと指示されていると思いますが‥‥

  この艇は細長くて、切り出しの総延長は80mあります (^_^;)、作業時間の短縮を狙って、電動丸ノコで直接切り出してみました。 材料の無駄も少ないし‥なかなか良い結果がでました。

ただし、初めての方は真似しないでください m(_ _)m

 

 

   

 切り出された合板には、まだ現図が貼り付いていますので、これから両面テープを剥がします。

   

 合板の長さが足りないので、2枚を接続して接着します、単純な繋ぎ「バットジョイント」です。

細長いのでグニャグニャして折れそうでズレやすく、一番困難な作業でした。

ここまでの作業時間:合計7時間

   

 第2日目(作業時間7時間)

 前日のエポキシ接着剤が硬化して‥‥この様に細長い外板パネルが5枚完成です。

この写真では船体の構成順に並べてあります。それにしても‥‥細長すぎる~っ!

 ここからがステッチ&グルー(S&G)工法の最大の特徴であるステッチングの作業です。

 銅の針金を15cm程の長さに切り、パネルの継ぎ目を縫って、船体を組み上げていきます。

この場面は、底板とその隣の板(ビルジ)を簡単に繋いでから、隔壁(バルクヘッド)を当てているところです。

  

 バルクヘッドは中央と前後の3枚を切り出して、底板部分と繋ぎ縫いするように組み上げると‥‥

 あ~ら不思議! 立体構造が出来上がってきます。

 バルクヘッドには通気口(大きな穴)と排水溝(小穴)を開けておきます。

ここまでの作業時間:合計14時間

  

 第3日目(作業時間4時間)

 さらにその上のパネル(サイド)を追加すると‥‥早くも船体が姿を現しました \(^o^)/

 だがこの状態の船体はとても頼りなくてグニャグニャしていています。ひずみが出ないように注意しながら針金を締め付けていくと、しっかりした船体になるのだそうです。

   

 ステッチングが終わった様子を船首から見ると‥‥まるでハリネズミ状態 (@_@;

 このトゲトゲは後で消えますから、ご心配なく。滑らかな船体の全体像とのアンバランスが面白い。

ここまでの作業時間:合計18時間

 

 第4日目(作業時間7時間)

 この弱々しい船体の上の、ヘリの部分の内側に角材を接着して補強します(ガンネル材と言います)。

 ここでは多数のクランプ(万力)が活躍します。

 

ガンネル材の接着剤の硬化を待つ間に、パネルの接合部の内側からエポキシパテを充填し、さらにその上にガラステープをエポキシ樹脂で接着していきます。

画像で見ると、継ぎ目が濡れているように見えます。これが「ステッチ&グルー」の「グルー」作業で、、アメリカ人は「ステッチ&テープ」とも呼んでいます。

 

 

船首と船尾部分の尖った箇所は、様々な力が集中する部分なので、この様に3角形のブレストフックと呼ばれる

補強材を接着して補強します。

ここまでの作業時間:合計25時間

 

第5日目(作業時間7時間)

この日は船体の内側を塗装し、外側に飛び出している針金を切り取りました、結構大変な作業です (^^;)

ここまでの作業時間:合計32時間

第6日目(作業時間6時間) 

 このカヌーは帆走もできることを狙っています。そこで写真のようにダガーボード(センターボードと同じ役目の)を差し込むケースを接着して取り付けます。

 

 船底側からダガーボードのスロット(隙間)を開けます。 この周辺は完成後にもっとも水漏れを起こしやすい箇所なので、入念に作業します。

 

 同じ時期に艇の上側から眺めた様子。

デッキ板を貼るためのデッキビーム(梁)を追加します。バルクヘッド(艇体隔壁)に水抜きの穴(リンバー)が開いているのにご注意下さい。

ここまでの作業時間:合計38時間

 

第7日目(作業時間5時間)

 いよいよデッキ貼りの準備です。

まずデッキ材を切り出しますが、作業は船体パネルを切り出すのと比べれば大雑把で、少し大きめに切ります。特に船首や船尾の尖った部分はかなり大きめです。

デッキを貼ってしまうと船内に手が届かなくなるので、デッキの裏面と船体内側をエポキシ塗装します。 

丸い穴は点検窓で、開口部の裏側を補強しておます。

ここまでの作業時間:合計43時間

 

第8日目(作業時間7時間)

 デッキを3枚に分けて貼ります。

合板は4mm厚なので、貼り付けにはステップラー(ホチキス)が便利です。 ただし後で引き抜きやすくするためにボール紙の小片を置いてからホチキスを打ちます。

 

 

 デッキの接着剤が硬化する間に、次の作業を行います。船体パネル外側の隙間をエポキシパテで埋めるのですが、この部分は人目に触れるところなので丁寧な準備が必要。

隙間だけにパテが詰まるようにマスキングテープを貼って船体の汚れを防止します。

 船体内側では必要のない作業ですね (^_^;)

 

そして隙間にエポキシパテを充填し、パテが硬化する前にマスキングテープを剥がします。

するとかんな感じになります、作業6日目の内側の写真と比べると出来上がりの違いがはっきり解ります。

ここまでの作業時間:合計50時間

 

第9日目(作業時間7時間)

 一晩明けるとデッキの接着剤も、エポキシパテも硬化が終わっています。 デッキ材のはみ出している部分を綺麗に切りそろえてから、全体にサンディング。

特にエポキシパテの部分などパネルの継ぎ目の箇所を丁寧にサンディングします。

 また写真で見えるように、デッキ上面にもダガーボードのスロットを開けます。

ここまでの作業時間:合計57時間

 

 

第10日目(作業時間4時間)

 この日は悩みの多い日でした。デッキのどの位置にアウトリガー(フロート)の腕を取り付けるかを決めなければなりません。

このカヌーは「手漕ぎ」と「帆走」の両面を狙っているので、一筋縄ではいかないのです (^_^;)

船体パネルの接合部にガラステープを接着します。

ここまでの作業時間:合計61時間

 

第11日目(作業時間3時間)

 これまで部分的に塗装してありますが、今日は全体塗装です。

ここまでの作業時間:合計64時間

 

第12日目(作業時間6時間)

 この日はテスト進水の前日です。

アウトリガーの取り付け状態などを確認しました。そしてもう一回の塗装を念のため行います。

ここまでの作業時間:合計70時間

 

 これで準備完了ですので、作業時間の累計はここまでとします。

第13日目:テスト進水

 朝からカヌーを海辺に運んで、初めての水上テスト。

まずは座ってADースカルを漕いでみます。バランスも、スピード感も上々です \(^o^)/

バランスは船体の側面の喫水マークで確認します、

スピードはGPSで測定、速度のデータは条件が複雑なので別の機会に整理して発表したいです。

 次は「立ち漕ぎ」です、それもADースカル独特の

「両手漕ぎ」を試しました。 

この両手漕ぎは「ADースカル」がどれほど容易かを示すためのデモンステレーション的な漕ぎであり、本当は両手で1本を持って強く漕いだ方が速いのです (^_^)

このテストでは少し船首が上がり気味で、漕ぎ手の位置を少し前方に移す必要があることが判りました。

 この日、テストの第一段階を終わりましたが、これからもテストを続けます。

 前回のテストで、櫓漕ぎにはアウトリガーのアームを前方に移動する必要がありそうだと判断して、アームを取り付けるビーム材を約30センチ前方に増設しました。

色白の無塗装のビームが追加された部分です。新ビームは後方の古いビームより短いことにご注意。

 さらに帆走にも対応するために、9mm厚のマリン合板を切り出しダガーボードを造りました。

 帆走の為の艤装準備中です。マストを立てる位置は、中心からズレています (^_^;)

アウトリガー・カヌーは左右対称ではないのでこれで良い?と思います、デッキの中央は強度が足りないと言うのが本当の理由ですが (。_゚)☆\パシッ(^^;

 マストステップはベストの位置の確認前なので、両面テープで貼り付けています(まだ変わる可能性が)。

マストを左右から支えるサイドステーの付け根をご覧ください、これで前の写真でビームの長さが違っていた理由が判ります。

初めての帆走テストは、WBBM in 愛知でやりました。

 ご覧のように静かな水面を、風もないのに走ります!

これが「AD-スカル」独特の「櫓帆走」なのです。

櫓は動かさなければ舵としての働きをするのです、もちろん左右に動かすと推進力を発生します、だから風が吹いても吹かなくても「櫓帆走」は可能です。

 後方の艇は「新世代木艇工房」のパワーフィン艇です。これも「櫓帆走」の親戚です (^_^)

 そのうちに風が吹いてきました \(^o^)/

このように軽快に帆走します!櫓(AD-スカル)は完全に舵になりきっています。

このカヌーは細長くてスマートなので、船首波が出ないので、写真ではスピード感がイマイチですが‥‥右舷から風を受けるとアウトリガー・フロートを持ち上げて(片足で)スリリングな帆走も可能です (^-^)v

 

 

 前の写真でご覧のように、セイリングするにはちょっと頭上が窮屈なので、、マストの全長を伸ばしてみようと思い立ちました。

延長するにも重心位置が高くならないように工夫しようと延長部分を骨抜きにしました。

 さてどうなるでしょう (^_^;)?

 

  この様に快適にセイリングできる様になりました。しかし、、今度はマストの強度に不安が (^_^;)

この後、マストを補強して、長さを多少縮めようと思っています。

セイリングにはしばらく向かない季節になりましたので2010年の春以降にレポートをアップします。

 セイリング・カヌーの櫓帆走は真冬には遠慮したいところですが、「櫓漕ぎ」は1年中がシーズンです。

 「立ち漕ぎ」で船首が上がり気味なのが問題でしたが、漕ぎ位置を約20センチ前方に移動してみました。

静止状態では良い感じですが、スピードが出ると写真のように、まだ船首が上がり気味です。

 漕ぎ位置をさらに15センチ程前方に移動しました。

カヌーの姿勢はベストです \(^o^)/

しかし今度はADースカルの櫓腕が体に接触するようになり、漕ぎにくくなってしまいました (^_^;)

 さて、どうしたら良いものか、、???

  今後の検討課題ですねぇ (^^;)

 この画像は、ちょっと解りにくいですが、、「後進漕ぎ」をしているところです。

櫓漕ぎは(一般的に)後進できないのですが、、ADースカルは櫓受け部分がオールロックなので、上下をひっくり返すことができます。 そしてそのまま普通に(伝統櫓的に)漕ぐと後進できます (@_@;!

この櫓漕ぎカヌーではこれまで、画像でお分かりのように櫓受けの金具はかなり水面近くに位置していました。それはビームの高さから来る構造上の制限でした。

 しかしこの位置では櫓のブレードの大部分が水中に位置することになります。 ブレードが推力を発生するのは先端部の50%程度であることが実験で明らかになりました(別の機会に発表予定です)ので、このたび櫓受け金具の位置を30センチ程度上げてみました。

 これで有効な部分だけが推力を発生してくれて、無駄な部分は水面上で大人しくしていてくれる筈です。

これにより、全体の配置が変更になりますが、、櫓漕ぎは楽になり、速度もやや上がり、とりわけ操舵性が向上しました。  

櫓帆走の場合はデッキに座るので、櫓受けの位置が高くなると、ちょっと漕ぎにくいです。

ラダーとして利用するにも操作性にやや難があります。しかし、すぐに慣れてしましました σ(^_^)

 この辺りの調整が今後の課題と思われます。

 このカヌーはやはり左舷方向の安定性(復元力)がやや不足です。安心して櫓帆走するためにご覧のような「セイフティ・フロート」を追加しました。

セイフティ・フロートの作り方はこちらです。

  それでも強風時の櫓帆走には安心できません (^^;)

それで、ご覧のようなスポンソン(張り出しフロート)を左の舷側に追加してみました。

 スポンソンの作り方はこちらです。