7号櫓(ふかいだ「ろ」) 実験レポート (New!! 2002/12/22)
しばらくサボっていた櫓の実験を再開しました。
今回のテーマは「深い櫓」です (^_^)
櫓が水面に入る角度(入水角と呼ぶことにしましょう、勝手ながら)は通常は30度前後
と思われます。 この角度が定まったのは‥‥推測ですが
1)漕ぎ手の動きやすさ(腰の高さで軽く漕げる)
2)入れ子と櫓臍(ろべそ)の構造上の理由(櫓臍の上に櫓がちょこんと載っている)
上記 1)と2)の理由が重なり合って経験的に確立したのでしょう。
しかし推進力だけを考えると、櫓の入水角が(30度と)小さいのは無駄ですよね。
もっと大きな角度で入水するならば、推進効率が高まるものと思われます。

それで、今回の7号櫓では思い切って、入水角45〜55度を狙ってみました。
上の画像でお解りのように、櫓に発生する推進力(櫓と直角の揚力)がフネを効率良く進めて
くれるという期待が湧いてきます。 この櫓は薄くて柔軟なので、水中部分は60度くらいまで
しなると思われます。
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←まず第一に、櫓の取り付け金具(オールクラッチを 利用:櫓臍に相当する)の角度を深くしました。
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← そして、接続式の櫓腕を新調しました。 立ち上がりの角度が大きいので、短い櫓腕とします。 櫓脚は取りあえず以前に作った3号櫓を使おうと思います。 |
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← 右側の短い櫓が「7号櫓」。 左側に参考に並んでいるのは「4号櫓(ながいだろ)」です。 どちらの櫓もブレード(櫓の幅が広くなったところ)のところ まで水に浸かるのですが、「7号櫓」は先が地面に当たって しまうので、地上で写真を撮ることができません。 |
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↑ 櫓腕はさらに短くしました。 |
↑ 早緒の角度も異様ですね (^^;) |
これでボートを水面に浮かべると、予想通り櫓が浮き上がってしまいます。
当「GLラボ」に一連の実験櫓は軽量なので、それに入水角が大きいのでやむを得ません。
多分、漕ぎ始めれば推力で櫓は沈んでいくことでしょう (^^;)
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← 櫓が自身の浮力で浮き上がってしまい、「深いだろ」に なっていない状態。 早緒もゆるんで締まりがない感じ。 |
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← でも、漕ぎ手が船尾に座って漕ぎ始めると、櫓が前進して ご覧のようにブレードが沈みます。 早緒もピンと張ってきて フネがぐいぐい進んでくれそうです\(^o^)/ |
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← ところが‥‥ 実際に漕ぎ出してみると、期待したほどには進まない(^^;)? この様に櫓は深く沈んでいるにもかかわらずです (;_;)?? ? どうしてなのでしょうか〜〜っ ? なお、この画像は水中の櫓が見えやすいように加工したため 色調が不自然になってしまいました。 |
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← さらに実験当日は風が強かったこともあり 方向のコントロールがままなりませんでした (^^;) このためスピードの測定も延期としました m(_ _)m |
*** 以下 2002年12月14日更新、部分です。 ***
この7号櫓「ふかいだろ」の実験結果には驚かされました σ(@_@)
どうして入水角を深くして、推進効率を高めたにもかかわらずスピードが伸びないのでしょうか?
それどころか、計測するまでもなく体感スピードは落ちる様なのです。
しかしこんな簡単な解決策でスピードが上がるものなら、もうとっくの昔に実現したはずですから‥‥
そこは納得すべきことなのかも知れません。
ここはじっくり原因を調べないことには、これまでの一連の実験で進めてきた理論が挫折してしまうことになります。
ここから先は文章中心のページになりそうですが、しばらくご辛抱ください。
昭和9年発行の「舵誌」9月号に藤本武助氏の「櫓の考察」と言う論文が載っていると知り合いから
知らされたので、舵社編集部の資料室を訪れて誌面を読ませていただきました(編集部関係各位にお礼申し上げます)。
その中に面白い記述がありました、つまり‥‥
わたしたちは櫓の動きを観察するとき、一般に櫓が水を掻いている部分に注目しがちですが、この論文では櫓が水を
掻き始めるとき、そしてストロークを終えて反対方向に戻ろうとするところにも注目しているんです。 この視点は、
わたしにとって大変画期的な考え方に思えました、眼が醒めた思いです。 今後この反対方向に戻る部分を「ターン
オーバー」と呼ぶことにしましょう。 漕ぎ手から見れば「ターンオーバー」は「返しの操作」と言うことになります。
その後現代に至るまで、櫓の研究は大学の研究室などで長い期間続けられているようですが、この「ターンオーバー」
を研究した論文にはほとんどお目にかかりません。
そこで、まずは「ターンオーバー」の流体力学‥‥
ターンオーバーはまず櫓の速度が減速することから始まります、できることなら減速は避けたいのですが、反復運動す
るには減速するしかありません。そして速度がゼロになるのです。減速による推進力低下を避けるには、減速に伴って
櫓のピッチを増大すれば良いのですが、そのような操作は熟練した漕ぎ手でも不可能です。
つまりストロークの速度が減少し始めた時点から推進力は減り始め、やがてゼロになり、ストロークが止まって向きを
替えるところでは完全に抵抗になっているんです。
このへんの水の流れをもう少し詳しく観察してみよう。
1)ストロークの中盤では、もっとも効率よく揚力(フネにとっては推進力)を発生している。
2)ストロークの後段:スピードが下がり迎え角(水流との角度)が減るので、揚力を発生しない。
3)ターンオーバー前後:減速の途中以降は抵抗を生じ初め、ストロークが止まってターンオーバーの中間点で最大の
抵抗が生じる。そして次のストロークが開始されるまで抵抗を生じ続ける。
「櫓」の優れた性能と機能について:(念のため再度考えてみます)
オールとか、パドルとか手漕ぎの方法は幾つか存在しますが、櫓は流体力学上の揚力を推進力としているところが手漕
ぎの方法の中でもっとも近代的で、機能的といえます。 翼に生ずる揚力は理想的な条件ではそのときに生ずる抗力の
10倍以上も発生するからです。
漕ぎ手が「櫓」の抗力に逆らって、手元側の櫓の先端(櫓腕)を横向きに漕ぐと、櫓の船尾先端(櫓脚)で揚力はその
漕いだ力の約10倍生じるということです。 その揚力が推進力として船尾に伝わるが、早緒(ロープ)がその推進力
を(櫓の支点とともに2カ所で)支えるので、漕ぎ手はこの強い揚力を腕先に感じることはない、つまり軽く漕げるの
です。
早緒が揚力を全面的に受け止めて船を推進するところがとても重要です。
また櫓は他の手漕ぎ装置と違って往復運動の双方向で推進力を発生するので無駄がない。
他の装置では、水をかいた後に前方に戻すときの空気抵抗が馬鹿になりません。
一般に「櫓漕ぎ」は難しい操作と考えられていますが、実際やってみると言葉で説明を聞くよりはるかに簡単です。
適当な迎え角をつけて漕ぐのですが、櫓の往復運動の反復点において、「へ」の字形に曲がった櫓は自然に適切な迎え角
をとることができるのです、いわゆる「櫓の返し」の操作が驚くほど滑らかに行われます、「へ」形状は日本の櫓の最大
の特徴で、先人の知恵に驚かされます。
手漕ぎの難易度を表す言い習わしで、昔からの船頭達の間では「櫂(かい)は3月、櫓(ろ)は3日」とも言われている
そうです。その後さらに「竿(さお)は3年」と続くのだそうですが‥‥。とにかく櫓は簡単です。
この様に優れた推進装置である櫓は、幕末の頃アメリカのペルー使節などにより欧米に紹介された筈ですが、残念ながら
世界的な普及を見るには至りませんでした。
普及に至らなかった理由は文献などには表されていないので推測の域を出ませんが、櫓で推進される船の速度がオールで
推進される船に対して劣っていたからであろう‥‥と、筆者は推測します。
優れた理論に基づいた櫓が、実際には高速で進まないのは何故なのか?
筆者はこの疑問を解明すべく、これまで11本の櫓を自分で作り、自作のボートなどに取り付けて実験を重ねてきました。
いまでは伝統的な「櫓」を再現することは材料(樫の丸太など)入手の関係で無理なので、
近代的な木造構造(接着による集合材)とし、形態も自然とプロペラのブレード(羽根)に近い形態になってきます。
そこで解ったことは、操作が滑らかで、片手で前を向いて漕ぐことができ、低速での効率が非常に高く(軽く漕げる)、
楽しいと言うことです。
同じ速度をオールでもって漕ぐと、後ろ向きなので不便で、首が痛くなり、体の運動もギクシャクして不快です。常に
両手がふさがっているので飲み物も摂れません、つまり奴隷のような気分になり楽しくありません。
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しかし櫓の場合、船の速度が大きくな ると、それに伴う櫓の返しの操作(ピッチ 角の変更)量が増大するため、反復点 で非常に大きな渦を発生し推進効率が低 下してしまいます。 船の速度の増大に伴って渦はますます 過激に発生するので、櫓による推進では 高速の航行ができないということになり ます。
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返しの操作のとき過大な抵抗となる渦を生じさせないことである!
そのためにはどうすれば良いか? 以下のように幾つかの方法が考えられます。
例1 櫓の返し操作を水中で行わないようにする。
例えば、櫓を水面上まで振り上げて漕ぎ、水面を出たところで返す。
派手な操作になりそうですね (@_@; 船頭ずぶ濡れ!?
例2 返し操作そのものを行わないようにする。??
例えば、櫓を同一方向だけに、グルグル回転させるように漕ぐ (@_@;
超派手な操作になります、漫画チック??
ご想像の通り‥‥これらの2例は理論上は可能ですが、実際には無理でした (;_;)
まだまだ実験は続きます、画期的なレポート(New!「高速垂直櫓」)はこちらです。
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