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 本邦初公開、AD-scull の理論のページにようこそ (2003/01/09 改訂!)

 このページは、AD-scull の原理と仕組みを理論的に説明するページです。

 まず、水中の櫓の動きをじっくりと観察してみましょう。

 注目していただきたいのは、櫓が左右に動きを切り替える(返し)瞬間です。 

 ↓こちらは従来の伝統的な櫓です(図は他頁と重複)

   ↓こちらが AD-scull の動きです

 

 

 

 

 ご覧になってお解りのように、返し部分で必要とされる角度の変化量は一見両者同じですが‥‥

 「伝統櫓」では高速域で非常に無駄な角度変更を行っています。

 これに対して「AD-scull」では(伝統櫓とは)反対方向に角度変更を行いますので、その変化量が

 非常に少なく、しかも渦(抵抗)の生じない向きに廻るのです。

 

 この「返しの領域」をさらに詳しく検証しましょう、今度は櫓の位置を固定して眺めます。

 すなわち、櫓から見たら周りの水はどう流れているか?を図示してみます。

 上の櫓の動きの図を対照しながらご覧ください。

 伝統櫓の動きの図の A B C 位置での水流の変化を見る

AD-scullの動きの図の A B C 位置での水流の変化を見る

 返しの操作(B位置)での水流の違いは、一目瞭然ですね。これって「乱流」と「層流」の違いです。

 これまで使っていた「層流櫓」と言う名称はこの水流の違いから名付けられました。

 でもそう呼んでしまうと、伝統櫓のことを「乱流櫓」と呼んで区別することになり、先人の工夫に対して

 申し訳ないことになりますが、伝統櫓の完成度は究極の域にあり、これまでのような和船を考える限り

 最高の手漕ぎ装置であることは間違いありません。 「層流櫓」は伝統櫓から生まれたのです。

 そして2009 年 2月「AD-scull」と改称しました。

 

 次に、AD-scull の第2の特徴である「V」字状の曲がりについて説明します。

 第2の特徴と言っていますが、一見したところ伝統櫓ともっとも違った感じを受けるのが

 この「V」字状の曲がりであるかも知れません。 伝統櫓では「へ」の字状に曲がっていますね。

  そもそも日本の櫓の特徴であるこの「曲がり」は何のためでしょう?

 曲がりの理由について、通説(学説?)では‥‥

 1)櫓先を深く水中に入れて、推力を稼ぐことができる。

 2)漕ぎ手の手元で、櫓腕が都合の良い高さに来る。

  ‥‥と言うことになっている(筆者の独断による)ようです。

 しかし「GLラボ」独自の研究により、櫓の曲がりは「櫓を自然に回転させるため」にある!

 と結論づけました。

  どういう事かと言いますと、下の画像をご覧ください。

 ←ブレードの回転軸を加筆しました。

 ブレードは水中では水の抵抗のためこの軸廻りに

 回転を起こしやすいのです。

 ですから、アームを左右に動かすと自然に回転が起き

 正しい迎え角の方向にを導きます。

  またロープ(早緒)は迎え角を適切に制御する

 働きがあります。

 この様に「V」字状の曲がりは、ブレードが返しの操作で自動的に適切な迎え角を作るのを

 助ける働きがあるのです。 曲がっていないと、かなり難しい操作になります。

 また、もし伝統櫓のように「へ」の字状に曲がっていると、逆方向の回転が生じます (@_@;。

 こうなると、船は後進してしまいます。

 でもこの回転方向こそが AD-scull を漕ぐのに必要な回転方向なのです。

 

 

 第3の特徴である「スラストロープ(早緒)周りの形状」について‥‥

  まずお断りですが、この「AD-scull」に関しては、伝統的な名称を使わないと言いました。

 伝統櫓での「早緒」という名称は実に素晴らしいものです、言い得て妙!

 この早緒が無かったら、漕ぐたびに櫓腕が飛び上がってしまい、素人にはとても扱いにくい

 手漕ぎ装置となってしまいます。

  筆者の推測ですが‥‥ 初期の段階では「早緒」は存在しなかった。

 欧米にはボートでの補助的な手漕ぎでスカリングという漕ぎ方があります。 オールを船尾から斜めに突き出し

 て狭い水域などでチョコチョコと機敏に動くことができます。 しかし応急的に漕ぐので早緒はありません。

  しかしさらに本格的に(大型の)櫓を漕ごうとすると、櫓が発生する強力な推進力が櫓先を押し下げるので、

 漕ぎ手は持ち上げられてしまいます。 何度も紹介しているように、その推進力は漕ぐ方向の(横向きの)力の

 10倍ほど発生します。 この推進力をロープで支えるので、漕ぎ手は強力な推力を実感することなく優雅?に

 (片手でも)漕ぎ続けることができるのです。

 このロープのあることで、船の速度性能が大きくアップするので「早緒」と名付けられたのでしょう(例により、

 筆者の独断)。

  ‥‥で、その機能上の特徴をふまえて、GLラボでは「AD-scull」の早緒のことを

 「スラストロープ」と呼ぶことにしています。

 AD-scull の場合の「スラストロープ」の特徴は、アーム(櫓腕)の下側に取り付けられた

 スティック(櫓柄)の先に繋がっていることです。

 上の画像でお解りのように、スティックの先端の位置は、図示した回転軸に近いのです。

 

  言葉だけでの説明は難しいですが‥‥アームを横に動かして漕ぎ始めると

 まず「V」字形状のおかげでAD-scull が回転軸周りに回転して、水を掻く方向に向きます。

 しかし実は放っておくと90度近く、まったく水を掻かない(抵抗の少ない)角度まで

 回転して、落ち着こうとします。 しかしその過程で推力が発生してスラストロープが

 緊張します、これはAD-scull が回転し過ぎない方向に引き戻します。 この働きは伝統櫓

 の早緒には見られない、まったく新しい機能です。

 

 ・つまり伝統櫓の早緒は、推力を一手に引き受ける頼もしい働きものだが‥‥

 ・AD-scull の「スラストロープ」は推力を受け止め、しかもブレード(櫓脚)の面を

  適切な角度(迎え角)に保つと言うインテリジェントな知恵者でもあります。

 

 実際漕いでみて解ったのですが、AD-scull は返しの操作が伝統櫓よりさらに簡単です。

 どれくらい簡単かと言うのは表現が難しいですが、これまでの実績ではまったくの初心者

 でも最初から75点くらい取れます。 

 2005年の秋には某テレビ局の企画で「猿にも漕げるか?」という実験をし、見事

 成功しました。 この番組の放映は2006年2月の予定です。

 

 以上が「AD-scull」の基本理論の説明の総てです。

 さらに櫓の運動を詳細に調べると‥‥深みにはまってしまいますので、以下はごく簡単に。

 

 1)櫓先の運動の軌跡は、水面上では直線的なジグザグと考えられているが、

   実際は(サインカーブのような)波状曲線に近い。

 2)さらに細かく観ると、波状曲線ではあるが、綺麗でなく少し歪んでいる。

   なぜなら、船は一定方向に移動し、櫓先は円弧を描いて往復運動するからである。

 3)櫓の水中での動きを観察する場合は、櫓先だけでは不十分であり、もっと全体を

   眺めなければならない。

   と言うのは、船の前進速度は固有の数値だが、櫓の往復の速度は位置により違う。

   つまり、ブレードの部分部分ですべて迎え角が異なっている。

   このため、有効な推力を発生しているのはブレード全体のわずか1/3?程度で

   他の部分は推力を発生していないし、部分的には有害抵抗になっている。

 

  ここまで考えてみると、飛行機のプロペラの姿が眼に浮かびますよね。

 プロペラは、根本から先の方に向けて美しくねじれています、このためどの部分も

 有効な推力を無駄なく発生できます。

 櫓にも理想的なねじれを与えれば、驚くほど性能が向上します(独断)。

 しかし悲しいかな、伝統櫓はブレードの進行方向が、AD-scull 迎え角の方向が入れ替わる。

 だから普通の材料でねじれを与えられた櫓は、往復運動ができない (;_;)

 形状記憶合金などを使ったら、ねじれが入れ替わるような究極の櫓が出来るかな?

                 ↓

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