《3》作業の進め方

 

 【1】現図作業

 現図作業については、固有の符号を使ったりしているので、いま公開に備えて準備中です。

そのために、【2】以降の説明の符号で意味不明なところが出てきますが、とりあえず無視

して読み進んでください。 理解しやすいように画像を添えます。

 

 

 【2】モールド用フレームの製作

 

 

 

12mm厚合板から切り出したフレーム。

残りの板もクレイドルとして後に利用する

ので、捨ててはならない。

 現図のフレームラインからモールド用のフレームを切り出す作業を行なう。

GLの工作ではフレームはモールドを形造るためのもので、この部分が実際のボートにな

るわけではない。従って材料には安価な12mmの建築用合板を用いるのが良い。しかしモ

ールドが丈夫で作業し易いことは非常に重要であり、次の自作者が使用する場合も考えら

れるから、あまりに質の悪い合板を使わないこと。

 

 

 

 

 【3】船台製作

 梯子型の船台。

糸を張りセンターラインを書き込み、

フレーム位置に駒を取付ける。

 モールドを組み立てるためには、まずしっかりした船台を用意する必要がある。

伝統的なクリンカーハルは通常船台に正立して組み立てられた。これは主にリベット打ち

の作業能率のためと思われる。しかしこの方法ではキール部分やプランク作業もやり難い

ので、新世代の木造ボートはほとんどハルを伏せた状態で組み立てている。ADでも同様

である。

 船台の作り方に決まりはなく作業場の状況に応じて考える。作業場が平らなコンクリー

ト面のような場合には梯子型の船台が一番使いやすいので、この方法について説明する。

材料には丈夫な角材(ツーバイフォー建築で使う洋材が使いやすい)を使用する。まず4m

の2本を60cm以上の間隔で縦に平行に並べ、この上にフレームの位置ごとの横材

をしっかりと固定し、更に適当に「すじかい」を配置する、ここでは寸法の精度はあまり

必要でない。

 船台の形が出来上がったらフレームを並べる面がすべて水平になるようカンナで調整す

る。この作業は正確なハルを完成するために非常に重要であるから水平儀、糸などを利用

して完全に仕上げること。

 水平な船台が完成したらまずセンターラインを墨入れする。次にセンターライン上に各

フレーム位置をプロットする(各フレームごとにF0から寸法を取ること、フレーム間隔

を寸法としてプロットしていくと誤差が蓄積されるのでしてはならない)。次にプロット

した各点からセンターラインに直角に、フレームの取付けラインを引く。

 

 

 

 【4】モールド製作

  (1)フレーム仮並べ

 

手前(船首)の縦位置のフレームがF6

その後ろがF5です。

船尾(トランサム)がF0(わずかに見えます)

 船台に駒を取り付けて、位置を決めます。

 

 

 

 

 

フレームF0(船尾、右側)とF1(左側)

 

   フレームには厚みが有るのでこれを船台に取り付けるには注意が必要である。

すなわちF0〜F2まではフレーム取付けラインの前方側に、F3〜F6はこのラインの

後方側に添わせて取付ける。これは各フレームのヘリの部分を斜めに仕上げる作業(ベベ

ルを取る作業)を省略するためである。

まず船台のフレーム位置にコマを置いて再び取付けるとき作業が容易になるようにする。

またフレームが垂直に立つように前後から支える。12mmの合板にはもともと曲がってい

るものがあるので、この場合は角材を取付けるなどして曲がりを修正した後船台に取付け

る。バウの縦位置のフレームもF6に添わせるようにして配置する。仮並べ

であるので取り外しできるよう木ネジを使うこと、木ネジの位置はハルが完成した後でも

手が届きドライバーをまわせる位置であるように注意する(後にハルがモールドからうま

く分離しない場合、この木ネジを抜いてモールドと船台とを分離させるため)。

 

  (2)ストリンガー仮並べ

 

ご注意:

←この画像のフレームは

すでに(3)の「溝切り」が

終わっています。

    ストリンガー用に22mm×15mm長さ4mの角材16本を準備する。節のな

い部分を使うこと、ラワン材でもよい、長さ不足の場合はスカーフする。

現図から12mm厚合板でステムのストリンガーの位置を決めるジグを切り出し、これを

バウの縦位置フレームに木ネジで外付けする。次に1本のストリンガーを所

定の位置の上に仮止めしフレームとの交角とベベル角を各位置ごとに記入する。同様に1

6本分のストリンガーの各フレームとの交角を記す。キール部分の交角はもちろん90度

である。

 

(3)ストリンガーのための溝切り

    フレームを全部船台から外しストリンガーを取付ける溝を切る。この溝の底面は

ストリンガーを素直に受けとめるように斜めに仕上げる。まずノコギリでストリンガーの

交差線に沿って2本の切れ目を入れてから、ベベル分を考慮してジグソーで切り出し木工

ヤスリで仕上げる。

 

  (4)モールド最終組み立て

 

   次にふたたびフレームを船台に並べ、これにストリンガーをF0から順番にバウ

のジグまで木ネジで取付けていく。ここで充分注意すべきことは、ストリンガーを取付け

る溝の幅の寸法にわずかな余裕が必要だということである。溝があまりピッタリに出来て

いると、木材の持つ自然の曲線を殺してしまい、ストリンガーが不自然な曲線となりやす

いのである。また溝の底はベベルをとってはあるものの、木ネジも決して締め過ぎないこ

と。つまりストリンガーにあくまでも自然に曲がってもらうように取り付けるのであって、

決して無理に曲げ付けるようなことをしてはいけない。そして上下方向は勿論、斜にも

バテンを当て、どの方向にも滑らかであることを確かめ、必要により溝の深さを微調整す

る。また隣どうしのストリンガーの間隔など全体の配置のバランスは、ストリンガーを配

したまま溝のサイドにノコギリを当てることにより微調整する。

  

                                     これら

微調整の作業は、大変根気のいる仕事であり実りのない無駄な作業のように思われるかも

知れないが実は全くそうではない。この部分に充分時間をかけなくてもハルは完成できる

し、性能的にもほとんど差は認められない。しかしADのハルの特徴はこのクリンカーの

ラインにあると断言できるほど完成後にこの部分が目につくのである。自分が納得できる

まで修正したラインはいつ見ても気持ちが良いものであり、そうでない場合には、見るた

びに気になり、悔いを残すことになると思われる。ボートの内部構造は完成してからでも

かなり変更することができるが、しかしハルの形状を変更することは不可能なのである。

 ストリンガーの位置が決定したらF0の外にはみ出しているストリンガーを切り落とす。

ステムのジグの部分も切り落としたいのであるが、このままではバウ付近のストリン

ガーがバラバラになってしまうので、全部のストリンガーと縦位置フレームとの間に適当

な大きさのコマを当て100mm長位の木ネジでストリンガーの外側から固定する。S1と

S2の2本のストリンガーはコマの位置を約10cmジグから離して配置する。これは後に

ステムのニーが納まるスペースを空けておくためである。

 ここまでの準備が終わったら、まずジグを取り付けていた木ネジを外してから、縦位置

フレームより外側部分のストリンガーをすべて切り取ると、ジグ共々不要部分が除かれる。

 

 (5)ハル基準線

   モールドがほぼ完成したので、今度は一歩先を読んだ作業をすることになる。

 プランクが終わり、ハルがモールドから分離すると、基準のラインが無くなってしまう。

そうすると、ハルは湾曲しているので、積層フレームやバルクヘッド(船体隔壁)をど

の位置に取り付けるべきかが解らなくなってしまう。これは大変に面倒な事態であると想

像していただきたい。 

 これを避けるためモールドから分離する

前にハルの内側の所定の位置に基準線を引

いておく必要がある。そこでストリンガー

の所定の位置に、鉛筆で印を付けるための

刻み(ノッチ)を入れておくのである。

 

 

  

 基準線は全部で9か所あり、後方から順番にL1〜L9と名前を付ける。線の間隔はL

6までが各々410mm、L6〜L9間は各々360mmである。このうちL1、L6、L7

の3か所にはバルクヘッドが、L2、L3、L4、L5の4か所にはコクピットの床面の

補強材(フロアビーム)が取り付けられる。L8、L9は補助デッキビームとカントフレ

ーム(【12】積層フレームの項を参照)の位置を示すだけであり、余り精度を必要とし

ないので、ここで刻みを用意しなくても良い。

 ノッチ(刻み)の位置の出し方は、曲尺を最寄りのフレーム面にあてがい、ここから直

角に寸法をとり各々のストリンガーの角の部分にマークする。この寸法とは各々の基準線

のステーションナンバーと最寄りのフレームのステーションナンバーとの差のことであり、

フレームの厚さも考慮する必要がある。次にこのマーク部分にノコギリを当てて小さな

刻みを付ける。これら一連の作業はやや面倒臭いものではあるが、プランクが終わったと

き初めて有難みが実感できることになるので、忘れないようにして欲しい。

 

    *** 参考事項 ***

 ADの基準線の準備は自作者にとって甚だ面倒な作業であり、申し訳ないと思っていま

す。

 実はこのADは最初11フィートでプランしたものを、少しづつ改良を加えながらストレッチ

したものなのです。モールドのフレーム間隔が590mmとか413mmという様に整った数

字でないのもその名残りです。オリジナルのプランではフレームの位置とバルクヘッドの

位置は同一だったのですが、ストレッチに伴い当初のバルクヘッドの位置では何かと不都

合になって来ました。 そこで新たにバルクヘッドの位置を定め直し、これに対応する基

準線を決めたという訳なのです。