【9】クレイドル

出来上がったハルは頼もしい姿をしているが、一旦モールドから外すとまだモノ
コック構造が成り立っていないので、変形しやすく頼りない構造物になってしまう。ちょ
うどピンポン球を半分に割ったような状態である。従ってそのままでは正確な工作ができ
ないので丈夫な台の上に置いて安定させてやらなければならない。ここでモールドを作っ
たときの残りのベニヤ合板が役に立つのである。F0からF6まで7枚の合板が残ってい
るはずであるが、必ずしもこれらを全部使う必要はなくF0とF5、F6は省略しても差
しつかえない。但しこれらの残り板をすべて同じ高さ(WL7が適当である)で切り揃え
て準備することが重要である。これらの合板を使った船台をここではクレイドルと
呼ぶことにする。
フレームを切り出した残りの板をそのまま使ったのではハルがプランクの厚み分だけ大
きくなっているので具合が悪い。従ってフレームの切り口を全体に約10mm大きくジグソ
ーで仕上げる。前のモールドの製作と比べるとかなり大雑把であるが、これはクレイドル
がハルの形を決めるものではなく、ハルを合理的に支えるためのものであるからで、
従ってこの程度の精度で良いのである。キール部分は15mm位飛び出しているので、こ
れに応じて切り取る必要がある。これらをモールドのフレーム位置通りに並べてクレイドル
を組み上げるのであるが、その組立て法は自作者が自由に考え出して欲しい。 画像
はあくまでも参考である。 なおF1〜F4までの4枚のうち1枚でも省
略してはいけない。省略すると自作者がハルに乗り込んで作業する時の体重を支えること
ができず、変形を起こす原因となるからである。
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← クレイドルの部材を並べて、サイズを 確認しているところ。 ハル(船体)には、表面保護のため、 下塗り塗装がすでにすませてある。 |
必要があればクレイドルの縁部分を修正する。最後に船体を保護するためクレイドル
のハルと接する縁の部分にそって水道のビニールホース等を切り開いたもので挟み込むよう
に取り付けるとクレイドルの完成である。
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【10】船体の分離

これからADの工作のうちで最もスリリングなハルとモールドの分離作業を行
うことになる。しかしこの作業を始める前にもう一度確認しておくことがある。ハルの内
側に確実に基準点がマークされているかということである。忘れているところがあればこ
の時マークすること。
すでにステムを仮止めしていた木ネジと、トランサムを仮止めしていた上部のクランプ
は外されているので、残りの最下部クランプを外せば分離の準備は完了である。ポリシー
トが適切に配置されていればハルは簡単にモールドから分離するはずである。
簡単に分離しないときはハルを壊さない程度の力を加えて分離を試みてもよい。これで
も分離しないときは原因を確かめなければならないのでハルの内側を点検するため狭いハ
ル内に潜り込む必要も出てくる。分離を確実に行うため、くれぐれもポリシートの適切な
配置を忘れずに。仮釘が残っていないか、または折れて隠れていないかも調べること。
またこのテキスト通りにフレームを船台に並べた自作者は、外から手の届くところに木
ネジでフレームを取付けたことを思い出していただきたい。この木ネジを抜き取って、モ
ールドごとハルを正立させ内側を調べることも可能である。どんな奇抜な手段を使っても
よいから(モールドを全部壊してしまうというのは最後の手段にして欲しい)とにかくハ
ルを分離した後クレイドルの上に移すのである。

ハルをクレイドルに備え付けたら、全体をよく観察してハルが変形していないこ
とを確認する。 巻尺をバウから船尾左右端に斜めに当てて比較し、同寸法
であれば捩じれがないことが確認できるので、ハルの2〜3か所に角材を左右に渡して仮
止めし、以後変形が起こらないようにする。この時ハルの横幅が最終的に決定されること
に注意していただきたい。普通ここではハルを多少拡げるような作業が必要になると思わ
れるが、クレイドルにはクッションが付いていてもはや正確な意味でのモールドで
はないので次の方法で横幅を確認する。骨だけに戻ったモールドの左右のS7(S8では
後の作業が困難となるので)の上に角材を通して置き、これをF1、F3、F5のフレー
ムに接してあてがい、ノコギリでモールド幅ぴったりに切り取る。次にこ
の角材をハルの内側の対応する部分に当てて仮止めすれば、正確な横幅が得られる。
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← 横方向に置いた角材で、モールドの 幅を正確に写しとる。 |
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← 上の画像の角材をハルの内側の 所定の位置に置くことにより、ハルの 幅が定まる。 この画像では、ビームシェルフを取り付け ようとして寸法合わせをしている。 |
ハルが分離して横幅が決定されてしまうと船台、モールドはもはや無用となる。しかし
確実に組まれたモールドは再使用、再々使用に耐えられるであろう。一旦分解すると正し
く組み立て直すのは不可能となるので、そのまま他の自作者に貸してあげることが出来る
と好都合である。
【11】ビームシェルフ(デッキビーム受け材)
ハルの内側にプランクのたびに鉛筆で記したマークが並んでいるはずであるか
ら、これらを正確に結んでハル内側の基準線L1〜L7とする。この線はこれからデッキ
ビームやバルクヘッドを取付けるのに重要な役割を果たす。今後ハルの位置を表わすのに
この記号を用いる。なおL8、L9のマークはここでは必要ないので記入されていない。
このあたりからは、これまでのハルの工作と違ってあまり精度のことを気にせず、ハル
を出来るだけ丈夫に、そして軽く仕上げることに重点を置いて作業を進めてゆく。寸法や
工作方法の多少の変更は差し支えない。
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← ハルの内側左右の前後方向の材がビーム シェルフである。 ハルの幅を決定する横方向の角材が、ビーム シェルフの下側に接している。
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まずデッキを張るための「受け」となる縦通材(ビームシェルフ)をハルの内側、P8
とP7とが重なり合っている部分(ラップのハル内側)に接着する。縦通材はヒノキまた
は良質のラワンで寸法は25mm×15mm、長さはおよそ4。のものを現場合わせする。
ビームシェルフはちょうどモールドのストリンガーS7と入れ替わったことになる。こ
のビームシェルフの位置はシアーから離れているため、接着のときクランプの懐が不足し
て届かない場合も考えられるが、木片を使う等工夫して対策を考えてほしい。
【12】積層フレーム
ハルの内側L1、L6、L7にバルクヘッドを取り付けるには、これを受け止め
るフレームが必要になる。工作は積層フレームと呼ばれる方法で、3mm×15mmの薄
いヒノキ板をハルの基準線に沿って3〜4枚重ねて接着す。
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← 最初の1枚目を接着、仮釘で固定する。 画像左上はフィリングウェッジ |
を基準線に合わせて接着する。基準線に添わせるとハルに傾き(ベベル)があるので
片側が浮き上がってしまうが構わず接着し、隙間に接着剤を充填する。接着剤の硬化が終
わったらこの上に残りの薄板を全部同時に接着する。積層フレームがホグと交差するとこ
ろに3角形の隙間ができるので、前もってここを塞ぐように駒(フィリングウエッジ)を
並べておくこと。
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← 薄板を3層積層したところ。 ホグと交差する部分はフィリングウエッジで 塞がれている。 |
バルクヘッドの位置のほかにL2〜L5の4個所に補強のため積層フレームを取付ける。
ここはハルに溜まった水が流れるように穴(リンバーホール)を準備する必要があるの
で、フィリングウェッジをホグから約15mm離して配置すること。
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← フィリングウェッジがホグと離れている。 |
前部エアアンク内側のバウ寄りL8、L9付近の2個所にも積層フレームを接着する。
この部分はホグのところでの曲がりが大きいので左右別々に接着し、中央は接続しない。
ここにはバルクヘッドを付けないので無理にL8、L9に合わせる必要は無く、ビームシ
ェルフの所だけ位置を合わせ、その下はハルに添って自然にフレームを接着すればよい。
従ってベベルによる隙間は生じない。この様にハルの中心線と直交しないで、ハルに対し
て素直に並んだフレームをカントフレームと呼ぶ。

一般にグルードラップ工法においては強度が充分なので、このフレームの工作を必要と
しない。しかしADではバルクヘッド、フロアーなどを取り付ける必要があるので積層フ
レームを配置するものである。
【13】スォート
センターボードケース上部の一部を平らに削りここにハルとを結ぶスォートと
呼ばれる渡し板を取付ける。スォートはクルーの腰掛けとして特にローイングのとき便利
に利用されるのであるが、実はハルの曲げ、ねじれをこの部分が受け止めまたセンターボ
ードの曲げモーメントをハルに伝えるなど強度上非常に重要な部分である。
材料にはカシ、チークなど強度の高いものを使用したい。取り付け位置は、スォートの
前縁がL4に接する位置とする。サイズは厚さ14mm 幅160mm〜180mm,長さ
は現場合わせである。両サイドはビームシェルフのところで接合されるので、この部分に
ノッチを刻みしっかりと取付けること。中心線上のセンターボードケースと交わる部分は
強度上重要なだけでなく、コクピットの大黒柱という感じで完成後目につきやすい部分で
あるので丁寧に現場合わせして仕上げること。
このあとスォートの前後縁の下側に同じ材料(14×25mm)の角材を積層して強度を
高める。