今日はギターでかっこよくステージをこなす方法を講義いたします。勘違いしてもらっては困るのですが、この講座ではギターの弾き方はいっさい教えません。そんなことは時間の無駄だからです。 6本の弦を5本の指で弾ける道理がありません。 弾ける方がまちがっているのです。 弾けるわけないじゃないですか。 私もはじめてギターを手にしてから20余年がたちますが、『禁じられた遊び』も弾けません。それでいいのです。それが人間というものです。 この講義のテーマはあくまでも、 弾けないギターを駆使してステージをかっこよくこなすことです。 それでは始めましょう。 |
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ギターの魅力とはなんでしょうか。 ◆和音の響き ◆音の幅広さ ◆グラマラスなボディ ◆キカイダーのジローになった気分 など、様々な理由が昔から言われています。そのどれもが正しいとは思うのですが、もっと大きな魅力を見落としています。 私が考えるギターの一番の魅力。それは『ギター』の『ター』の部分です。 『ター』という音の響きは、なんとなくヒーローを連想させます。「仮面ライダー」しかり「ターミネーター」しかり、『ター』には強さ・かっこよさを想起させる語感があります。 もし『ギター』の『ター』が、別の言葉だったらどうでしょう。 『ギポー』、なにか力が抜けます。 『ギチョーン』、格好悪いです。 『ギャー』、悲鳴です。 『ギンちゃん』、蒲田行進曲です。 『ギンギラギンにさりげなく』、そいつが俺のやり方です。 以上の例から、『ター』の部分にギターの最大の魅力があると言えると思います。 |
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どうでもいいんです、そんなことは。どうせ弾けないんだから、ゴミ捨て場で拾ったものでかまいません。どうせ弾かないのだから、別段、弦も必要ないでしょう。ただし、見栄えは非常に重要ですので、気をつかうこと。ボディに筆で『ギタリズム!!』と書いておけば、バッチリです。 |
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さて、いよいよ本題です。ギターを弾けないにもかかわらず、かっこよくステージをこなすにはどうするか。これから紹介する曲を選べば大丈夫です。 シチュエーションは、そうですね、学園祭でも新年会でもいいですが、あなたがひとりステージに立ち、ギター片手に歌を歌うことになった場合を考えましょう。 |
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打ち込みマシンをステージに置いておきます。 ギターを持ち、ステージに立ちましょう。 |
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テクノです。事前に曲のデータをマシンに入れておきましょう。ステージでは打ち込みマシンが、ただ黙々ピコピコと曲を奏でてくれます。ギターの出る幕はまったくありません。正々堂々と、あなたはギターを弾く必要がありません。 ただしこの曲の欠点は、歌もないので、あなたはまったくやることがないということです。打ち込みマシンの前で、ただなんとなく立っているだけです。ときどき、手を前に組んだり、後ろに組んだりしてみましょう。サビの部分を「フンフンフ〜ン」と鼻歌でハミングしてみるのもいいでしょう。ただし、うっかり『トキオ』とサンプリング電子音の口マネをするのはご法度。曲がちがいます。 |
![]() (『もしもピアノが弾けたなら』の替え歌) |
しっとり聴かせるバラードです。曲の中で堂々とギターが弾けないことを言っているのだから、弾く必要はありません。 注意点は「なんで弾けないのにギター持ってんだよ」と観客に思わせないことです。あくまで歌の上での演出だと思わせましょう。そのためには切々と歌い上げることです。観客をしんみりさせて、変な疑問を抱く余地を消し去りましょう。ここでも、「南郷さんよー!!」と怒って帽子を床にたたきつける行為はご法度です。モノマネ大賞になってしまいます。 |
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疾走感のあるロックです。ギターならではの曲ですね。ここでは、『ドブネーズミーみたいに<略>美しさがあ・る・か・らー』までのアカペラ部分は、ギターの出番はありません。そして、『リンダリンダ』と激しいサビにとりかかるやいなや、持っているギターを床にたたきつけて破壊します。 とにかく勢いで客を飲みこみましょう。高揚感を出すために、ギターをたたきつけながら飛び跳ねるのもいいでしょう。感極まって理由もなく泣いているというのも手です。あなたのアグレッシヴさに観客も大興奮まちがいなしです。 この曲の欠点は、終了までの3分弱、ギターをたたきつけ続けなければならないということです。歌の中盤であなたのギターは、ネックの部分を残してあとかたもなく粉砕しているかもしれません。こうなると、たたきつけることもできませんので、あとに残った方法は、客席へのダイブ。これのみです。 |
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いかがでしたでしょうか。かなりアツいライヴになること請け合いです。あとは個人個人でアレンジを加えて、新たな曲を見つけ出していきましょう。それではみなさんの充実したギターライフを夢見つつ、今日は終わりたいと思います。講義の間、続々と人が帰ってしまいましたが、最後まで残ってくれたみなさん、長い間つきあっていただいて、本当にありがとうございました。 |