「悪臭?」

 「はい、他の住民から苦情が殺到しています」

 「それは、住民間や管理人の問題でしょ、忙しいんだからそんなくだらないことで時間をとらせないで」



はぁ、とため息をつきながら白衣の女性、赤木 リツコは若いNERV職員を尻目にコンソールに視線を向け直した

エヴァの新兵器の開発やら使徒の生態の研究やら、果ては前の使徒との戦いでエヴァ初号機に発現した紅い矢についての調査とやらなくて はならないことが山のごとくあり、文字通り書類が山を作っているのだ

いちいち、悪臭問題などにかまっている時間はない

というよりも、何故そのようなことを一介の技術屋である自分にいうのだろうか

それは先ほど言ったとおりにマンションの管理人や住民間、上のほうまで言ったとしても国連の特務機関であるNERVではなく環境省の仕事 だろう



 「ですが、住民が相次いで意識不明に陥り、市のほうで調査を行ったところガスが発生しているのはわかったのですが、そのガスの成分 がまったく分からないそうです、未だに30名以上が意識不明で2人が危篤状態に陥っています」

 「だからって何故、私なのかしら?別に研究者なんてほかにもいるでしょう?」



リツコは暗にこれ以上邪魔をすればただでは済ませないと言葉に含めながら言った

職員は緊張からゴクリと喉を鳴らし、一呼吸置いてから理由を告げる



 「そのマンションの名前が……」













某日、NERV管轄のマンション、『コンフォート17』の前は野次馬やらなんやらでごった返していた

以前から住民が突然意識不明になり病院に送られることが頻発していたのだが、ついにたった一人を除いて住人全てが原因不明の呼吸困難 やら植物状態やらで入院してしまったというニュースが流れたからだ

入り口には『KEEP OUT』の黄色い線が引かれ、対バイオテロ装備の警備員がその前に立っている

そこから少し離れたところに群がっている人々を紺色の制服、普通の警官たちが人々を散らそうと交通整理やらを行っている

別段殺人事件でもないというのにご苦労なことである、いや、殺人ではないのだ

不意に人垣の後ろのほうがざわめいた

NERVのロゴが車体に描かれている小型のトレーラーが停まり、中から黄色線の前にいる係員よりもはるかに重装備の人間が現れたからだ

中から出てきた三人はゆっくりとした動作で黄色線を潜り抜けると中にいた人間からいくらかの情報をやりとりし、頷いたかと思うとマン ションの中へと姿を消した





コンフォート17の一室の前で重装備の三人は足を止めた

顔を覆っているガラス部分の奥ではそれぞれが緊張した面持ちで呼吸を整えいる



 「これより、原因究明の為に突入する。これは訓練ではない、くれぐれも油断はするな!」

 「っは!」

 「了解であります!」



リーダーらしき男の言葉に残りの二人が防護服を着たまま不恰好な敬礼をする

『葛城』、と表札のかかった部屋の扉はギギギという不気味な音を立て、実に78時間ぶりに開かれた



 「「「っな!?」」」



扉が開かれるのと同時に三人は息を呑んだ

どさりと落ちてきて足元まで転がってくるのはビニール袋

ビニールゴミも生ゴミも分別されることなく適当に押し込まれているそれは、とてつもなく臭い

完全防護され臭いなど感じるはずもないのだが視覚からして異臭を感じさせる力がそれらにはあった

足元から視線を正面に戻すと壁という壁をゴミ袋が埋め尽くし、壁の上にゴミのパンパンにつまったゴミ袋で新たな壁がコーティングさ れている

本来ならば、ゆうゆうと大人二人が通れる間取りになっている廊下は、やっと一人が通れるほどに狭まっている



 「い、いくぞ……」



リーダーの言葉に二人が頷き、三人は部屋の中へと足を踏み入れる

ゴミ袋の隙間からは見たこともない、おそらく植物図鑑などにも載っていないであろう植物が顔を出し、別の場所からはジュクジュクと音 をたてながら謎の液体が漏れている

確認しておいた間取り上では、リビングダイニングである部屋に入ったところで三人はさらなる驚愕に身を凍りつかせた

まず第一に暗い

真昼間、太陽も真上にきているような時間だ

外は太陽が照りつけ、半そでを着ていても滝のように汗が流れるような天気だというのに、信じられないほど暗く寒い

袋に入れられていないゴミが散乱し、ところどころで微妙に動いている

ドブネズミやゴキどもが生息しているだけならまだましだろう

正直、見たことがない生き物の存在を確認したときは自分の記憶を消したく思うほどに衝撃を受ける

不意にどさりと言う音が後ろからした



 「た、田島!」



一列に並ぶフォーメーションの一番後ろにいた田島隊員が倒れたままビクンビクンと痙攣している

見たこともない生物たちはガサガサと田島隊員へと群がっていく



 「くそ!寄るな!寄るなよ!」

 「田島しっかりしろ!」



隊長、島中ともう一人の隊員である中田が田島を助けようと寄ってくる生物たちを振り払う

だが、中田も突然糸が切れたように倒れたかと思うとビクンビクンと痙攣しだす



 「中田!おい、中田!」



島中は慌てながらも急いで二人を肩に担ぎ一目散に外へと駆け出した

これ以上ここにいれば確実に死が待っている

そう彼の長い平和で衰えていた直感が警報を鳴らしている

今でこそめったにないが、セカンドインパクト直後の世界ではガス漏れやらなんやらで窒息死する人間も多かった

誰もが気づかないで死んでいくような見えない毒

島中はそんなガス漏れや有毒ガスの発生などの空気中を漂う毒に非常に敏感だった

それだけでなく、寝床にしていたビルが倒壊する直前に嫌な予感がしてその場から逃げ出したこともある

そんな危機的状況における第六感の働きが異常に強い

そのおかげで弟や妹たちがそれらで死ぬようなこともなく、今もNERV特別バイオテロ対策チームの分隊長としての仕事も手に入れた

その第六感が告げているのだ

ここは危険だと

積み重なるゴミ袋を蹴飛ばし、後ろから迫り来る謎の生物から必死で逃げる

後少しで外だというところで島中の膝がガクリと落ちた

そんな、あと少しなのに

声にならない思いが外にある光を求める

倒れた拍子に田島と中田の二人は放り投げる形で外に出たようで部屋の中に残っているのは島中一人だけになった



 「嫌だ、死にたくない!太一、梢!」



息子と娘代わりの弟と妹はまだ高校生だ、社会にも出ていない

これから先に父親代わりとしてやってやりたいこと、教えてやりたいことは山ほどあるのだ

死にたくない、そう思う一心で恥も外聞もなく、ただはいずるように外を目指す

迫り来る謎の生物



 「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」



島中は外に出ると同時にドアを閉めた

ドカリドカリとドアに何かがぶつかる音がしたかと思うと、ドアの一部が膨らむ

そう、まるでものすごい力で内側から叩かれたよ うに変形している

島中は肩で息をしてドアノブから手を離し、崩れるように座り込んだ

この仕事を辞めよう

溶かされている、あらゆる液体や化学物質での試験をクリアしたネルフ製最新型の素材で作られた防護服の足を見つめながら、島中はそう 心に決めて意識を失った









T

FATE
why it is our karma



第陸話

虹の向こう
〈セカンドチルドレン〉






バラバラとヘリのローター音が響き渡る甲板、そこでシンジはトントントンと軽やかにタロップを降りた

別段優雅な動作であるわけではない、シンジは年相応の男の子の顔をしながら少しばかり歩いてヘリから離れた

長いことヘリに乗っていたので耳の調子がおかしいが、それほど疲れてはいない

空母というものには、はじめて乗ったが、思っていた以上に大きいものだと、シンジは興味深げに辺りを見回した

水平線まで障害らしい障害も見当たらなずにきらめく海原

整備士が戦闘機の整備を行っている甲板

ゴスロリファッションの少女がこちらに歩み寄り

上を見れば抜けるような青空が広がっている

風にたなびく国連の旗

よく見られる光景ではないが、漫画や小説でありそうななんともほのぼのとした平和な光景だ



 「?」



不意にシンジは今の光景に違和感があることに気がついた

あきらかにこの場所に似つかない少女がいたような

シンジは目をこすってからもう一度目を向けようとした

が、時はすでに遅く、ゴスロリ少女はシンジの眼前に立って微笑んでいた



 「初めまして、だな……お前が碇 シンジでまちがいないか?」



金髪ツインテールに薄い灰色の瞳、どこをどう見ても日本人ではないのだが、流暢な日本語でゴスロリ少女は言った

あまりにも予想外の事態にシンジの思考は完全にフリーズしてしまう

それもそうだろう、国連軍の船までセカンドチルドレンを迎えに行くと言われてやってきた場所で、軍服でも平服でもなくゴシックロリー タファッションの少女、しかもどう見ても小学生くらいの少女が話しかけてくるなんて誰が想像するのだろうか

はたから見れば、滑稽なことこの上ないが、当の本人であるシンジはなんとか取り乱さずに平静を保とうとするも、ただ目を丸くして少女 のことを正面から呆然と見つめることしかできなかった



 「……む?私の日本語はどこかおかしいか?」



いつまでたっても無反応のシンジにゴスロリ少女はいぶかしげな表情でたずねた

小首をかしげている動作は人形のようにかわいらしい外見と相まって恐ろしいほどにかわいらしい

その手のシュミの人であれば間違いなくを鼻息を荒くして目を血走らせる場面であろう

別段その手のシュミの人ではないシンジも少女の質問に関係なく、あぁ、けっこう可愛いなこの子、などということが頭の中には浮かんで いた



 「大丈夫か?」

 「え、あぁいやそんなことないよ、すごくうまいから安心して」

 「ふむ……そうか、それなら良かった。それで、私の質問に答えてもらえるか?」

 「え…っと……なんだっけ?」

 「お前の名前は?と私は言ったんだ」

 「あ、あのぼ、僕はシンジ、碇 シンジだよ」

 「ふむ、やはりな。それにしても、文字や言葉もあてにならないものだ、情報よりも精悍な顔つきじゃないか」



少女は少し考え込むようにあごに手を当てるとシンジに視線を向けたり外したりしてみる

情報というのが若干引っかかるが、いまだに混乱状態のシンジにはそれを言及するほどの余裕があるはずもない



 「名前を聞いて名乗らないのも、無礼だな。私の名前はマルティ・リンカサス・クランベリアム・ル・バラバ・ドンファンクロス・クレ イアントリアルブベッティル・セティメイサッツ」



少女はそう言って右手を差し出した

シンジは混乱した頭でもってなんとか今までの情報をつなぎ合わせ、少女が名乗り自分にワールドワイドな挨拶を求めていることに行き当 たった

が、やはり混乱しきった頭は理解しつつも正常な動作を起こそうとはしてくれないようだ



 「マルテ……リンカ……え?」



少女の長い名前がシンジの混乱を助長する

というか、長すぎるだろう

一発で全て暗記できたらびっくりである

と、普通はそんな風に思われることを少女は知っているからか、微笑みながら付け足した



 「リンでかまわない、自分の名前が長いことは理解している」

 「えっと、よ、よろしく」



シンジはようやく少女の手をとると握った手を上下に振る

ここにきて混乱もある程度収まり、ようやくシンジの頭は通常の思考回路を回復した

そこで新たに湧き上がる疑問は彼女がセカンドチルドレンなのだろうか、という点だ

話に聞いた限りだと同い年にも関わらず飛び級してドイツの大学を卒業している秀才だとか天才だとかいうことだが



 「君がセカンドチルドレンなの?」

 「いや、セカンドチルドレンはアスカだ。私は彼女と違ってたんなる技術屋だよ」

 「技術屋?」



聞きなれない言葉にシンジは首をかしげる

技術屋とは乱暴に言えば技術開発をする後方、もしくは影の人間のことでシンジの知る限りでもリツコはその部類に入る

当然それだけではないのだが、詳しくは割愛させてもらおう

とりあえず言えるのはシンジがその言葉を知っていたとしても目の前の明らかに小学校低学年くらいの少女がそれだと言われて、信じられ るかは疑問なところであるということだけだ



 「技術屋って言うのは簡単に言えば私みたいな人間のことよ」



と、シンジの後ろから話に割り込んできたのは先ほどの例にも挙げた赤木 リツコ女史である

シンジは握っていたリンの手を離すと慌ててリツコのほうへ向き直った

リツコはリンのほうへちらりと目を向けるがすぐに、シンジのほうへ視線を戻す



 「勝手に先へ行かないでくれるかしら?甲板だったから良かったけど艦の中に入ってから迷ったら面倒なことになるの」

 「あっ、とあの……すいません」

 「そう怒らなくてもいいんじゃないか?別にこんな見晴らしのいい場所で見失いようもないだろう」

 「そうね、でも自分が迷惑をかけたことに気づかないで艦の中に入ってから迷子になっては面倒なの、あらかじめ釘をさしておくのは大 切なことじゃないかしら?」



リンはリツコの言葉にふむ、と頷いてシンジの肩を叩いた



 「まぁ以後気をつけろ」



僕の味方をしてくれているんじゃなかったのかと口の中で呟きながらシンジは苦笑した

というか、自己紹介も何もせずに話をしているこの二人は知り合いなのだろうか

だとしたら納得できるのだが、だからと言って理解できない専門的な用語を並べたてた会話で自分を村八分にはしてほしくないのだが……

そんな幸薄い願いがかなえられなかったシンジは疎外感にため息を一つつくと何気なく後ろに目を向けた

その視線の先には整備中の戦闘機も、海兵の姿もない

だが、青い空と青い海を背景にして一人の少女が立っている

背後の海や空よりも美しい青い瞳、自分と同年代であろうけども、下世話なことだが最近の子どもは発育が、などといわれているその最近 の子どもである同級の女学生と比べたとしても、スタイルも色気もケタが違う

釣り上がり気味な勝気気味の瞳、整った顔立ちとつんととがった顎先、レイとは対照的な印象を受ける見るからに活発そうな少女

彼女がセカンドチルドレンだ

視線を外すこともできずにただ、そんなことがシンジの頭をよぎった

証拠や理由なんてありはしないが確かな自信がシンジの中にある

だが、そんなことを確かな意識を持って考えていたわけではない

今、シンジの中からは音も意識もどこかへ飛んでいって目の前の少女と自分の二人だけしか世界にいないような感覚に襲われていた

不意に少女の長い栗色の髪が大きく膨らみこちら側に流れる

シンジはそのときになってようやく意識を取り戻し一滴の涙が自分の頬を伝うことを自覚した

それは風が吹くほんの一瞬の出来事だったのかもしれない

だが、シンジはそれが永遠のように感じられ、ただ今までに感じたことのない未知の経験に戸惑いつつも

この涙は埃が目に入ったのだろう、甲板にこぼれた涙はもうすでにどこに落ちたのかも分からなくなっているし続いて涙が流れる様子もな い

シンジは目をこすってから目の前の少女に視線を戻す

シンジが再び顔を上げたとき、少女はすでにシンジのすぐ前にまで近づいていた



 「セカンドチルドレンの惣流・アスカ・ラングレーよ。あんたがサードチルドレンの碇 シンジでしょ?」



少女、アスカは言いながら値踏みするかのような視線をシンジに向ける

腰に手を当てながら足元に向けた視線を下から上へと動かしていく

その視線がシンジの顔を見上げる形になったところで、ちょうど見下ろす形のシンジの視線とぶつかった

レイもそうだが彼女もかなりの美少女だ、10年もしないうちに美女といわれることは目に見えている

加えるなら枕詞に絶世のがつくかも知れない

そんな少女が真っ直ぐと自分と視線を合わせている

普通の青少年であれば赤面してしまいそうなものだが、さいわいシンジは同じくらいの美少女が純真無垢な赤い瞳を自分の目を見つめなが ら会話してくるために美少女に対する耐性ができているので大丈夫

と、いうわけもなくシンジは恋する乙女のように頬を染めることになった

まぁ、しょうのないことだろう



 「なぁ〜に顔赤くしてんのよ、なんだか目がスケベよ!」



くすくすと微笑みながらアスカはピン、とシンジの鼻の頭を人差し指で弾いてクルリと背中を向ける

ふわりとスカートが揺れる、ことはない

なぜなら彼女はスカートではなくジーンズをはいているのだから













 「どうだい、サードチルドレンと会った感想は?」



通路の途中、リツコたちをブリッジに案内し終えたアスカに声をかけたのは無精ひげの男だった

歩いている途中で通路の横から突然声をかけられただけに一瞬驚きの表情を浮かべたアスカだったが、声をかけた主に目を向けると下唇に 人差し指を当てながら考える



 「ん〜、そうねぇ……思ったより普通かしら?もっとムキムキのとか想像してたからちょっと拍子抜け」

 「はっはっは、そうか普通か。でも、いきなりシンクロ率の最高記録を塗り替えられたじゃないか、それについて思うとこはないのかい 」



無精ひげの男はアスカの答えに目を細め、さらに質問を投げかける



 「べっつにぃ、記録なんて意味ないもの。それに、目標は高いほうがいいんですよ、加持さん」

 「さすがアスカってところかな?その不屈の精神があればシンジくんを追い抜くのもそう遠い日じゃないかもな」

 「加持さ〜ん、なんか不屈の精神ってスポコンくさいですよぉ」

 「よしアスカ、夕日に向かって競争だ!」



加持と呼んだ無精ひげの男の乗りの良さにアスカはクスクスと笑う



 「まぁ、冗談は置いとくとしてシンジ君の様子はどうだった?」

 「様子って?」

 「誰か探しているようだったとか、変な質問をしてくるとかさ」

 「そんなこと、なかったけど……そんなに気になるんなら自分で見てきたらどうですか?」



いぶかしげにいうアスカに加持は苦笑しながら背を向けた



 「そうだな、アスカの言うとおりだ。ちょっとシンジ君をからかってくるかな」

 「あんまり、いじめすぎないようにしてあげてくださいよ加持さん」



加持はアスカの言葉に背を向けたまま手をひらひらと振るだけだった













 「また、子どもが増えたか……ここはボーイスカウトの活動場所ではないんだがな」



襟元にはUNの中将をあらわす階級章が光るイカにもタコにも、といった老年の男性はパイプに火を入れながら言った

えもしない雰囲気というか風格のある中将は煙を吐きながらシンジとリツコを見比べる

リツコに向けられた視線には侮蔑ともいえるものが含まれていることは子供ながらにもシンジは理解できた

それもそうだろう、海上では最強の戦力であるUN太平洋艦隊が総出でたった一体のエヴァを運ばされているのだ

船乗りの男たちのプライドを傷つけないはずが無い



 「たかが、子供にしか動かせないという役立たずな人形一体運ぶのに太平洋艦隊が総出動だ……いったい何時から我々は宅配業を始める ことになったのかね」

 「どこかの非人道的で金食い虫の組織ができてからだと記憶しています、艦長」



艦長の後ろに立つやせっぽちた男

肩に輝く階級章は大佐を示すものだ、彼が副長なのだろう

なにも、船のトップツーが揃っていやみを言う必要も無いだろうと、シンジは小さくため息を漏らした

いや、トップツーだからこそいやみを言いたくなるのか



 「予算削減が叫ばれている中でまったく豪儀なことだな」

 「エヴァの重要度を考えれば少なすぎるくらいです艦長」



皮肉に皮肉を返されて艦長は眉を寄せた

少なくともこの場で自分たちは歓迎されていない、なぜ自分がこんな射殺されそうなほどの視線の中心に立たなければいけないのかとシン ジは少しばかり泣きたくなった

そんなシンジとは対照的にまったく周りのことなど意に介した様子もないリツコは淡々と話を進めていく

エヴァの引渡しに関する書類だろうか、それを艦長に差し出した



 「艦長、こちらの書類にサインをお願いします」

 「なんだねこれは」

 「非常用ソケットの使用書とエヴァ引渡し手続きの書類です」



リツコの言葉を聞いた艦長は受け取りかけた書類を乱暴に突き返した



 「まだだ!まだあの人形は我々の管轄だ!それにあのデカブツを船の上で動かすなんて話は聞いていない!」

 「……そうですか」



リツコは艦長の迫力に押されるでもなく淡々と書類をケースに戻した

最後に一つため息をつくと軽く頭を下げて見せる



 「それでは、横須賀に着くまではエヴァに同行させていただきます……それと、非常時に関してはネルフの命令権が最優先であることを お忘れなく」

 「ふん!……せいぜい邪魔にならんよう食堂にでもこもっていろ!」



艦長はもはや感情を隠そうともせずにシッシと手を振ってリツコたちが退出するのを促した

リツコの方も、もはや用がないばかりにさっさとブリッジを出て行く

シンジはただ呆然とリツコの後姿を見送った

それは、別段いやみったらしい艦長たちに文句を言う為ではない

ただ出遅れたシンジがいるのにリツコが出て行った直後、先ほどまでの冷たい視線がなくなったからだ

まだ自分が残っているというのに

その突然の変化に驚き、呆然としてしまい自分でも知らないうちに足を止めることになったのだろう



 「………………」

 「君は行かなくていいのかね?」

 「…………へ?」



シンジはしばし呆然としていたが副長のやんわりとした指摘に慌てて辺りを見回した

ブリッジクルーの視線が一身に注がれている

シンジは顔を真っ赤にして頭を下げると逃げるようにブリッジを後にした

そのときシンジは気づいていない

ブリッジクルーたちのシンジを見る目がリツコに向けられているものと違うことに

暖かな、見守るような視線であったことに



 「まったく……あんな小僧に世界の命運を託すことになるとはな」

 「……艦長、子供を戦わせることにイラつくのも分かりますがあの少年たちは被害者です」

 「わかっている!だから……だからこそ……」



艦長は歯噛みしながら首にかけられた銀色のロケットを開いた

数年前の艦長とその横に佇む女性、彼の首にぶら下がっている幼い少年が無邪気に笑っている



 「だからこそ……辛いのだ」



副長は肩を震わせる艦長の後姿をただ黙って見つめていた

それ以外にすべきことはない

できることはないのだ













 「子供を戦わせたくないから……か」



リツコはブリッジを降りた先の場所で煙草に火をつけた

先ほどまでのブリッジでの彼らの視線

全てが自分に向けられていた

子供を戦わせる腐った大人の代表である自分たちに向けられていたのだ



 「でも艦長、エヴァに関わった大人である以上あなたも加害者なんですよ……」



ふぅ〜と煙を吐きながら今その場にはいない老年の男性へ言う

でも、それを分かっているからイラつくのでしょう

リツコは心の中で付け足したがそれを口に出して言うことはない

何も知らない少年が自分の下へと駆け寄ってきていたから

リツコはまだまだ長い煙草を携帯灰皿に捨てるとシンジをつれてブリッジに背を向けた

とりあえず艦長の言っていた食堂にでも引っ込んでいることにしよう













船の中の食堂はシンジが思っていたよりも広くてきれいなものだった

長い航海の間にこぼした食べ物でしみができていたりタバコくさい空気や壁のいたるところに傷があったりということはない

少なくとも一般的なファミレスなどと同程度には清潔感が保たれている

加えてシンジが想像していたこととは違う点がもう一つ

人がいないのだ

食堂に入った瞬間にモクモクとした煙や煙草を吸った男たちがぎろりと睨みつけて歓迎してくれるというイベントも起きていない

厨房内に数名の人間が動いているだけで食堂内に人影はない

単に食事時でないという理由なのだろうがそれでもこの人の少なさは異常だ

シンジがキョロキョロと辺りを見回していると視界の隅に人影が映る

彼はどうやら入り口から新たに食堂の中に入ってきたようで、ゆっくりとコチラに近づいてくる

クルーのほとんどが欧米人系の船内では珍しい日系のようだ

無精ひげと頭の裏で縛られた黒髪が特徴的な男性

シンジたちの座るテーブルまで歩いてくると男性は突然後ろからリツコの首に腕を回した



 「やぁ、リっちゃん久しぶり」

 「久しぶりねリョウちゃん」

 「り、リョウちゃん!?」



あまりにも普段のリツコのイメージとはかけ離れた言葉に思わずシンジはのけぞってしまった

気軽に声を掛け合っているあたり、どうやら二人は知り合いのようだ

だが、女性が突然後ろから抱きつかれたというのに平然としているのはなんとも驚きの光景だと思う

普通の女性であれば悲鳴でも上げそうな状況で、リツコはシンジが予想した斜め上の対応をする

リツコにリョウちゃんと呼ばれた男性はそんなシンジを見てニッと笑みを浮かべた

まるでいたずらに成功した子供のようだ



 「年頃の青少年をそんな風にからかうべきじゃないんじゃないのか?」



リョウちゃんの影から現れたゴスロリ少女、リンがあきれ顔で言った

いい年をした大人がやることじゃないだろうという心情がありありと表情に表れている



 「はっはっは、こいつは手厳しい」

 「ほんと、加持先輩ったら赤木博士にまで色目を使うなんて……あ、私パフェちょうだい」

 「おいおい、アスカ俺が本気なのは君だけだよ」

 「それが本当だったらそれこそ犯罪だ、女性は自分の年齢を考えてから口説くんだな」



リンの突っ込みに加持はもう一度笑った

冗談で言っているのは誰もわかっているのだろう

受け取り口でかなり大きなパフェを受け取っているアスカ当人もそれほど気にした様子はない



 「さて、それはそうと碇 シンジ君」

 「……僕の名前を知ってるんですか?」

 「それはそうさ、いきなりの実戦でエヴァを起動それもシンクロ率はアスカの10年の集大成を一発で塗り替える89%だ」

 「知ってることはあっても知らない道理はないということだろう、そもそも私もアスカもお前の事を知っていただろう」



加持の言葉を補足しながらリンはチラリとアスカの方を見た

パフェの前のアスカも幸せそうな顔でウンウンと頷いている

シンジは、今日初めて会った三人の様子を見てなんとも納得のいかず首をかしげた

それはそうだろう、自分が日本で周りの人間にセカンドチルドレンのことを聞いてみても、知らない、わからないといった返事しかなかった

数少ない何か知っている様子だった、ミサトは本来ならば一緒にココに来るはずだったが特別任務でここのところ忙しくて話をするような時間はなかった

自分は相手のことを何も知らないのに、相手が自分のことを知っているのはなんとも不安な気分になる



 「そう言えばりっちゃん、葛城はどうしたんだい?」

 「……ミサトは―――特別任務よ」

 「特別任務?」



キョロキョロと辺りを見回しながら尋ねた加持の言葉にシンジとリツコが苦笑する

そんな二人の表情を見て加持とアスカは首をかしげた

もともと、チルドレンの出迎えとなれば、チルドレンたちの統括役であるミサトが来るのが道理であろう

しかし、実際にきているのは開発部長のリツコ1人とはなんともおかしな話だ

セカンドチルドレンを迎えるよりも重要な任務とはいったいなんだろうか

ただ一人、リンだけは別段特別任務という言葉を気にした様子もなくのんびりとした様子でコーヒーに口をつけた



 「そんなことより、アスカ」

 「なに?」

 「シンジに弐号機を見せてやったらどうだ?」



ミサトの話などにさしたる興味はないのか、カップをソーサーに戻しながらリンは言った

前の話とのあまりの脈絡のなさに少しばかりの驚きを感じつつシンジはアスカに目を向けた

スプーンをくわえたままアスカは目をパチクリとさせる

どうやら話を聞いていなかったようだ



 「なに?」

 「だから、シンジに弐号機を見せてやれと言ったんだ」

 「あぁ、前言ってたチルドレン同士のお披露目ってやつでしょ?」



アスカはスプーンをパフェの器に入れると立ち上がった



 「こっちよ、シンジついてきなさい」



さっさと歩き出したアスカを見てシンジもあわてて立ち上がる

ちらりと目を向けてみればさっき受け取ったばかりのパフェは空になっていた













 「え!?じゃあなに、ミサトの特別任務って部屋の片付けなの!?」



道すがら先ほど話題に上がった特別任務について事の次第を聞いたアスカは信じられないといったように声を上げた

殊の外大きな声は通路の中ではよく響く



 「くっだらない理由ねぇ……」

 「くだらないって言うけど、大変なんだよ……意識不明の人もいっぱいでてるんだから」

 「うっそ、意識不明ってなんの冗談よ」



たちの悪い冗談であればまだマシだったのだろう

しかし、アスカ嬢は見ていないとは言え事実であるのだから笑えない



 「そういえば、惣流さんは葛城さんのこと知ってるんだ?」

 「まぁね、ミサトって前にドイツに出向してたんだけど、そのときにね」

 「へぇ〜、そうなんだ」



その後もネルフ本部の話やら使徒のことやらを話しているうちに二人は一つの扉に行き当たった



 「ここよ」



アスカはそう言って扉の横のスリットにカードを通した

赤いランプが緑に変わり扉がゆっくりと開かれる



 「さ、入りなさい」



そう言って通された場所には静かに横たえている深紅の巨人の頭が見て取れる

初号機とも零号機とも違う外観

エヴァンゲリオンとして、似通う部分はあるのだろうが、シンジにはこの巨人が今までにみた二機のエヴァとはまったく別のものに見えた



 「これがドイツで建造され、現在稼働しているエヴァの中で最強のエヴァンゲリオン弐号機よ!」



さも誇らしげに言い放つアスカの言葉を頭のどこかで聞きながらもシンジの意識は目の前のエヴァに向けられる

紅い色

不意に頭に痛みが走りシンジは思わず頭に手を当てた



 「ん?どうしたの?」

 「っ……大丈夫、気にしないで」



心配そうに顔を覗き込んできたアスカにぎこちない笑みで返事を返しつつ、もう一度エヴァに目を向ける

今度は頭が痛くなるようなこともなかったが、どこか気分は優れない

何か思い出せるようで思い出せないもどかしさを感じながらシンジは二度三度と頭をふった

おそらく疲れているのだろう

そう自分に言い聞かせながら、アスカの方に向き直った



 「赤いんだね、弐号機って」

 「な!?あんたは、感想を待たせといて、そんな一瞬でわかるような感想しかないわけ!?」

 「いや、えっと……」

 「あぁ〜もう!まったく、もっとこう強そうだとか、かっこいいだとかないの?」

 「そ、それも一瞬でわかることなんじゃないかな……なんて、あはは」

 「っ!この生意気な!」



アスカ嬢は必殺のビンタをシンジに見舞おうと手を振りかぶる

が、突然の振動にその手のひらはシンジの頬に当たることはなく虚空を頼りなく彷徨った

後ろに手を振りかぶった瞬間というタイミングの悪さに、バランスを崩して倒れそうになったアスカをシンジは慌てて支えようと手を伸ば す

しかし、運動神経がそこらに居る同世代の少年少女たちと比べるべくもないアスカである、突然の振動にも慌てることなく体勢を立て直し ……

これまたタイミングの悪いことに伸ばされたシンジの腕と接触する

どこにと言えば身体に

さらに細かく言うなれば男にはない膨らみに

手っ取り早く言えば、胸に

まさに某メガネのカメラ小僧と関西ジャージ少年の言う「いや〜ん」な感じの展開である



 「な、な、な、な、な、な、な」

 「ち、違うよ!じ、事故だから事故だから!」

 「ななななななな」

 「七な菜奈なな?」

 「なにすんのよこのへんた〜い!」



今度こそシンジは怒声と共に必殺ビンタを見舞われることとなった

合掌













 「もう、いったいなんなのよ!」



胸を押さえながらプリプリと怒るアスカは甲板に出て辺りを見回した

こんな海の真ん中でアレだけ大きな揺れが起きることなどよほどのことだろう

アスカとともに、頬を真っ赤に腫らしたシンジがちょうど目を向けたそのとき、一隻の巡洋艦が爆発した



 「な!?」

 「まさか、使徒!?」

 「使徒?アレが!?」



驚きながらも再び沈みつつある巡洋艦に目を向けるとアスカはその目を怪しく光らせた



 「チャ〜ンス」

 「へ?どうしたの?」

 「ふふ、あんたも来んの」

 「え、ちょっと?どこ行くの?早くリツコさんに指示を聞かないと……ちょっと、ねぇ」



アスカはシンジの襟首を無理やりに引っつかむとズリズリと引きずって再び艦の中へと戻っていく

シンジの空しい叫び声だけがその場には残されることになる

リツコがこの様を見ればこう言うであろう



 「無様ね」



シンジにはその声が聞こえるようだった













 案の定と言うか、真紅のプラグスーツ要するにアスカ嬢の予備プラグスーツに身を包んだシンジはもじもじとしながらエントリープラグ に滑り込もうとしているアスカを見上げた



 「ねぇ、いったいどうするつもりだよ!」

 「あんたバカァ?そのかっこうしてる時点で気付きなさいよ」

 「で、でもエヴァは1人乗りでしょ?」

 「二人で乗ったってかわりゃしないわよ」



言いながらアスカは無理やりにシンジを引っ張り上げて、エントリープラグに押し込んだ

嫌がる男のことを女の子が強引に……普通は逆ではないだろうか

閑話休題

続いてアスカ自身もエントリープラグの中に滑り込むと手早くエヴァを起動させる

仮にも実験を含めれば十回以上はエヴァに乗っているシンジだ、アスカがなんの問題もなくエヴァの起動準備を終わらせたことは理解でき る

が、シンジの期待もアスカの自信も無情な警告音に打ち崩される



 「思考エラー?ちょっとあんた、日本語で考えてるでしょ!ちゃんとドイツ語で考えなさいよ!」

 「そんなの出来るわけないだろ!」

 「はん、学がないのを自慢気に言わないでよ!」

 「日本の中学生はドイツ語なんて知らなくたって平気なんだよ!」

 「あぁーーーもう!いいわよ!思考言語切り替え、日本語をベーシックに」



エントリープラグ内を駆け巡っていた赤いエラー表示が一斉に消え、今度はエヴァの周りの情景がエントリープラグの中に映し出される

アスカは自分が無理やりに押し込んだと言うのにシートの後ろにいるシンジのことなど気にも留めず、一気にレバーを引いてエヴァを立 ち上がらせた

エヴァを覆っていた巨大なカバーをマントのようにはためかせ紅いエヴァは立ち上がる



 「さあ、行っくわよぉぉ!!!」













時は少しばかりさかのぼる

突如としてソナーに謎の反応があったかと思えば、巡洋艦の一隻が沈められた

あまりに突然のことに誰もが一瞬唖然とするが、直後には警報が艦内に響き渡る



 「索敵なにをやっていた!」



副長の怒声がブリッジに響き、人が騒然と走り出す

索敵手が計器にかじりつき、手すきの者が双眼鏡で外を見る



 「敵の現在地は」

 「目標は艦隊2時の方向を移動中です」



いわれた方向に目を向ければ、穏やかだった海の一部に不自然な白波が走っている



 「魚雷発射準備!」

 「発射準備了解」



艦長の指示にブリッジの中にいた誰もが即座に自らのやるべきことを見つけ最善の行動をとる

このあたりはまともな戦争を実際に体験したわけでもないというのにさすがとしか言いようがない

しかしそんなクルーの迅速な行動を見ながらも艦長は歯噛みする



 「発射準備完了!」

 「発射!」

 「発射了解!」



時を同じくして旗艦であるオーヴァーザレインボウ以外の各艦からも目標に向けて魚雷やハープーンが発射された

雨あられとミサイルが白波に着弾し大きな水柱があがる



 「やったか!?」



通常では考えられない規模の爆発に艦長の期待も高まるが、そんな期待を裏切るように駆逐艦の一隻が二つに割れた

駆逐艦を二分した巨大な魚のような化け物は悠々と海を泳ぎだす

鯨でもない、あの巨大な化け物

にわかには信じがたいことではあるが、使徒が攻撃を仕掛けてきたのだろう



 「撃て!撃ち続けろ!」



ミサイルや魚雷が使徒に向けて際限なく撃ち続けられ、何本もの水柱が海上に立ち上る

ミサイルの発射音に耳を傷めそうなほどだが、時折海面を跳ねる使徒には傷らしい傷もつけられてはいない

艦長は口の中に鉄の味が広がるのを感じた



 「なんとしてもやつをしとめろ!」

 「いくらやっても無駄ですわ、艦長」



怒声を放つ艦長をいさめたのはいつの間にかブリッジに入ってきていたリツコだった



 「戦闘中だ、無関係な人間は入ってくるな!」

 「ですが、艦長ご自慢の通常兵器ではあの使徒には傷の一つもつけられないのではないですか?」



リツコの言葉に艦長の目の力が強まる

今にも掴みかからんばかりだが、生憎とそんなことをやっている余裕はない



 「あれに対抗できるのはエヴァンゲリオンのみ、それはあなた方もわかっているのでは?」

 「あんなものに頼らなくとも…………」



艦長はギリリと奥歯をかみ締めた

頭のどこかでは理解しているがそれはどうしても認めたくはない

そんな悩む艦長の姿を冷ややかに見つめながらリツコは使徒に目を向ける

ものすごい速さで海中を進み、また一隻の駆逐艦が沈められていた

そしてその視界の隅、船の上を何かが動く



 「オスローより入電、弐号機起動!」

 「なんだと!?そんな指示は出していないぞ!」



艦長の焦りとは裏腹に、オセローに目を向ければ弐号機がマントのようにカバーをはためかせて立っていた

リツコも同時にそちらに目を向け、即座に通信手のマイクを奪った



 「アスカ、非常用の電源ソケットがこの艦の甲板にあるわ、ここまで来てもらえるかしら?」

 「おい!勝手なことをいうんじゃない!」

 「りょ〜かい!」



艦長の叫びを無視してアスカは軽い調子で答えた

肩をほぐすように二、三度まわし、操縦桿を握りなおす



 「内臓電源は?」

 「あと三分」

 「それだけあれば十分ね」

 「どうする気?」

 「こうすんのよ!」



アスカが叫ぶや否や弐号機はオスローの甲板を踏み砕き飛翔した

途中、さらに別の船を踏み台にして飛翔を続けオーヴァーザレインボウの甲板にたどり着く

エヴァの着地の衝撃で大きく揺れる船の上でバランスを取ると、流れるような動作で予備のケーブルを装着

電源の残量をカウントダウンしていた表示が停止し、けたたましかった警報がなりやむ



 「さぁ、どっからでもかかってきなさい!」

 「B型装備でどうする気だよ」

 「うるっさいわね、いいからあんたは黙ってなさいよ!」



エントリープラグの中、二人はキャンキャンと喚きあう

今はいがみ合っている余裕はないことすら忘れているのだろう

二人は使徒の存在を忘れて言い合いを続け、使徒が海面から飛び出してきたところで同時に息を呑んだ



 「いなして!」

 「わかってる!」



アスカはシンジの叫びに怒鳴り返しながら突っ込んでくる魚型の使徒をいなして海面に叩き落とした

間一髪で攻撃を無力化できたことに胸をなでおろす

が、ゆっくりとしている余裕などありはしない

すぐさま使徒は体勢を立て直して再び体当たりをしてくる



 「ああぁぁぁ、もう!どうしろってのよ!ちょっとシンジ!あんた3匹も使徒倒したんでしょ?なんかアドバイスしなさいよ!」

 「僕にアドバイスなんかできるわけないだろ!あんなのとまともに戦った記憶なんてないよ!」

 「こんの役立たず!」

 「そっちが華麗な操縦を見せてやるって言ったんだろ!だったら華麗に倒して見せろよ!」

 「キィィ――――!言ったわねぇぇぇ!見てなさいよ!」



アスカは気を落ち着かせるために目を閉じて深呼吸をした

LCLという液体の中で呼吸というのもおかしな話だが、笑えるような状況ではなくピンと張り詰めた空気になったのがシンジにはなんとなく 理解できた

言うなれば、居合いをする前の精神集中のような肌がちりちりとする雰囲気だ



 「システム・『ディオル シーフェス』(偉大なる六賢者)申請」



目を閉じたままアスカは呟く

それはどこかで聞いたことのある言葉

学校で勉強した英語でもない、ドイツ語はよく知らないが絶対に違う

説明できないが、知っている言葉だ



 「この状況で使ってどうなるというのだ?」



突如としてリンからの通信が入り、呆れ顔でアスカに尋ねた



 「なんにも武器がないよりましでしょ!」

 「……だからといって、なかなかあんなデカブツにはキツイぞ、そもそもあんなものに刃を付きたてれば……」

 「そんな説明は後でいいわよ!とにかく今はあのデカブツに対抗する武器が欲しいの」



リンの説得を遮るようにアスカは言った

何を言っても無駄だろうと悟ったリンはアスカの言葉に嘆息すると静かに言葉を紡ぎだす



 「リオ トゥーダ、ナヴィオ クラ ゼクサ シェフィスト(開眼せよ、闇を討ち晴らすものよ)」



どこかで聞いたような、そう、傷痕の少年シュウが口にしていた魔法の呪文に酷似した言葉

そうシンジが気付くのと同時、不意に空気が震える

使徒の攻撃があったわけではない、エヴァが震えているのだ



 『カルッツ マオル』(炎の剣)



カッとアスカが目を見開くのと同時にエヴァも呼応するかのごとく吼えた

赤い、蛍のような光が集まり徐々に何か形作っていく

それはシンジにはひどく幻想的なものに見え、それこそ蛍の光のように淡いもののように見えた



 「カルッツ……マオル…………炎の剣?」

 「そ、これが私と弐号機の奥の手、スルトが振るう炎の剣、レーヴァテインよ」



誇らしげに言うアスカはレーヴァテインを一つ振るうと感触を確かめるように両手で柄を握りしめた

レーヴァテインの周りの空気がゆらゆらと揺らめいているのを見る限りでは、あの剣は本当に炎のように燃えているのだろう

シンジはエントリープラグの中にいてもその熱さを感じるようだった



 「さぁ、どっからでもかかってきなさい!」



アスカの声に反応するように突っ込んでくる使徒

巨大な口を開き、噛み付かれればひとたまりもないだろう

しかし、アスカは臆することなく身をひねり船を飛び越そうとする使徒と甲板のギリギリまで身体を落とすと炎の剣を横に薙いだ

ちょうど使徒の腹部に該当するだろう場所に刃が迫るが突如として刃と腹の間に壁が立ちふさがる



 「ATフィールド!?」

 「しゃらくさい!」



止められるかと思った刃はATフィールドを両断し、使徒の腹部に刃をつきたてる



 「やった!」

 「!」



アスカは刃が使徒の身体に食い込んだことに顔に喜色を浮かべるが、事態はそれほど軽くはない

そのまま腹を切り裂ければよかったのだが、刃は途中で止まった

それは一瞬の出来事なのだ

その一瞬の中で刃は途中で止まり、抜くことも手を離す暇もない



 「ちょ、ちょっとぉ!」



アスカは情けない声を漏らしながら使徒に引きずられて海の中へと落ちていく

手を離した時にはもう遅い、通常装備ではまともに動くこともできない海の中で弐号機は流れに身を任せることとなってしまった



 「あぁ、もうまったく!どうしてくれんのよ!」

 「今のは自分のミスだろ!僕のせいにしないでよ!」

 「なんですってぇ!……って、なんかあいつもどってきてない?」

 「え?」



状況も考えずにケンカを始める二人だが、エヴァに再び大口を開けて向かってくる使徒の姿を見てあわてて体勢を整えようとする

が、海の中であったことを一瞬失念していた二人は、エヴァが動かないことにも気づかず、釣り餌よろしく口の中へと吸い込まれた

使徒の牙が肩口と腹に突き立てられ、意識が遠くなりそうなほどの痛みが二人を襲う



 「っく……」

 「うぐぅ……」



いったいこの状況を打開するにはどうすればいいのか

使徒との実戦経験がアスカよりも豊富なシンジであってもその答えはわからなかった













 「お前たち、自慢のおもちゃでもだめじゃないか!」



艦長は使徒によって海に引きずりこまれたエヴァを見て苦々しく怒鳴った

海中の様子はわからないが、B型装備であるエヴァ弐号機が海中にあって使徒とまともに戦えることなどありえないのは火を見るよりもあき らかであろう

リツコは黙ったままエヴァが沈んだ海を見つめ、レーヴァテインを発動を許可したリンはあきれたようにため息をついた



 「まったく、こうなるだろうからキツイと教えてやったというのに」



キチンと話を聞かないからこうなる、リンは仕方がないと再びため息をつきながらマイクを取った



 「アスカ、聞こえるか?」

 「な、なに……」

 「状況は?」

 「使徒に噛み付かれてるわよ、まったくお、乙女の柔肌に傷がついたらどうしてくれるのよこの魚野朗は」



声にはわずかに辛さが聞いて取れるが、それをできるだけ隠そうとしているのかアスカはおどけてみせる

リンはそんなアスカの言葉を聴いてわずかに唇の端を上げた



 「そうか、じゃあ復讐のチャンスだ。そいつの口を広げてやれ、思いっきり大きくだ。そのあとにはレーヴァテインでアンビリカルケー ブルを使徒の口の中に固定してやれ」

 「なに?どういうこと?」



いまいち状況のわからないアスカではあるが、使徒に対抗する手段がない以上、彼女の指示に従うしかないのだろう

肩と腹が痛むがレバーを握り締めて前を見据える



 「で、どうする気なのかしら?」



マイクを手放したリンにリツコは問いかけた

艦長や副長たちも同様にリンに目を向けている



 「艦底のミサイル類は残っているだろう」

 「確かに残ってはいるが……」

 「ならば、問題はない。現状、火気類の積載量はこの艦が最大だ、そして使徒のATフィールドさえ無効にすれば使徒をしとめるのに十分 な量が残されている」

 「……まさか」

 「この艦を使徒に突っ込ませる」



それは、ひどく乱暴な作戦であると言えた

海中に潜っている使徒に対して海に浮かぶ空母が突っ込むというのだ

艦長はいくらか逡巡した後に声を大にして叫んだ



 「本艦は5分後に目標に突貫する。乗組員は直ちに退艦せよ!繰り返す、本艦は……」



その声は艦内放送を通し、すべての乗組員に伝わった

騒然とする艦内だが、よく訓練がなされている乗組員たちは慌てながらも確実に退艦するために走り出す



 「まぁ、当然の判断ではあるがあなたが無能でなくてよかったよ、アスカ、シンジお前たちも聞こえただろう?この作戦の成否はお前たちの努力しだいだ」

 「でも、いいところは太平洋艦隊が持っていっちゃうんでしょ?」

 「それでも、必要不可欠なアシストをするのはお前たちだ」

 「まったく、わかったわよ」



ふてくされたように唇をとがらせるアスカだが、ニッと微笑むと再び目の前……というか、エヴァの上半身を加えている使徒の口の中を見据える



 「さぁ、シンジいくわよ!」

 「わかった!」



二人の思考が一致し、エヴァの腕に少しずつ力がこめられ始める

エヴァの動きに合わせて肩と腹部の牙がずれ、激痛が二人を襲うがそんなことは関係ない

二人はただ、使徒の口を開くという自分たちの仕事に意識を集中するだけだった













 「目標殲滅のために最良の選択をする、英断ですわ、艦長……」



嫌味でもなんでもなく、リツコは艦長に言った

即時即決した艦長の潔さに自らの親友の姿を見たのだろう



 「ふん、君に褒められたとしてもうれしくもない……君も早く逃げたまえ、行き先は同じだろう、お嬢様も一緒に頼むよ」



お嬢様、リンのことだろう

リツコは、頷くとリンを伴ってブリッジを後にした

ブリッジ要員もみな、退艦するためにブリッジを出て行き、艦長と副長の二人がブリッジに取り残される



 「君も早くいきたまえ」

 「艦長、お供いたします」

 「いや、君は艦を降りたまえ、陸に妻子がいるだろう」

 「しかし……」

 「これはな、副長……復讐なんだよ、私なりの、やつらに対する……」

 「艦長……」



副長は艦長の後姿に一度最敬礼するときびすを返しブリッジを後にした

艦長は一人残されたブリッジでパイプに火を入れ、静かに煙を吐き出した

一人きりのブリッジは静かで空気が冷たい

艦長は無意識にロケットを握り締めた

あとは、スイッチを一つ押せばバラストに海水が入り、さらには火器の一部を爆破させ、船は沈む

エヴァが使徒の口を開き、ATフィールドさえ無効化させればこの無謀な作戦は成功するだろう

艦長は肺の奥底まで煙を吸い込み、静かに吐き出していく

乗組員たちは無事に退艦できただろうか

艦長は帽子を深くかぶりなおした







エヴァの肩に深く食い込んだ使徒の牙

二人でシンクロし、痛みを分割しているとはいえそれだけでもあまりの痛みに気が遠くなってくる

それでも、使徒を倒すために自分たちがやらなくてはならないことがある



「開け、開け、開け、開け開け開け開け!」

「開け、開け、開け、開け開け開け開け!」



呪詛のように二人の言葉がつむぎだされ、徐々に使徒の口が開かれていく

徐々に後ろに引かれる力が強くなってくるのはアンビリカルケーブルをたどってオーバーザレインボウがこちらに近づいてきているからだろう

もはや、時間はいくばくも残されてはいない



「「ひらけぇぇ!!」」



二人の声が重なり、エヴァは力強く腕を広げる

使徒の口が大きく開かれ、肩の痛みがわずかに和らぐ



「いまだ!」

「わかってる!」



即座にアンビリカルケーブルを外すとレーヴァテインの柄に結びつけ使徒の口の中に突き立てる

徐々に引き寄せられてくるオーヴァーザレインボウの姿を目の端に捉えながら、二人はATフィールドの中和に意識を集中するのだった













眼前には大きく開けられた使徒の口が迫ってくる

オーヴァーザレインボウの艦首が使徒の口の中に吸い込まれていく



 「人間をなめるなよ化け物がっ!!!」



艦長の叫びに呼応するかのように艦の前部が爆発した

艦の勢いは止まることはなく、使徒の体の中へと沈んでいく



 「間違っていない……そうだろ、クリフ……キャロル……―――――」



艦長は口の端をわずかに上げ、フッと微笑んだ

爆発

爆発、爆発

使徒の身体が膨れ上がり、内側からはじけ飛ぶ

艦長の意識と共に、使徒はこの世から跡形ものなく消え去った













 「艦長に…………敬礼!」



拘束具のところどころを焦がした弐号機の佇む輸送艦の甲板に集まったクルーは副長の声に従って一斉に敬礼した

涙を見せるものはない

艦長は自分たちの思いを代弁するかのごとく艦と運命をともにした

誰もが自分たちを率いた男のすばらしさに胸を張って敬礼をする

そう、悲しんでなどいない、頬を伝うものは涙などではないのだ

静かに肩を震わせながら誰もが、いつまでもいつまでも手を下げることはなかった













今にも降りだしそうな、どんよりとした重い曇り空

だが、そんな天気とは対照的にレイの心は晴れやかなものだった

残念なことにシンジは学校に来れなかったが、朝のうちに弁当を渡されていたので、最近仲良くしているヒカリと一緒に食べてきた

彼の作る弁当はまるで魔法のようだ

そのことをシンジ本人に言ったときは、少し練習すれば綾波にも簡単に作れるようになるよと言っていたがそんなこと到底信じられない

信じられないのだが、少し料理を教わってみようかと思っている自分がいることにレイはどこか心地よさを感じていた

いままで周りのことに興味を持つようなことはなかったがシンジを通じて世界が広がってきた

これからもまだまだ世界は広がっていくだろし、その中でいつか自分もヒカリが言っていたような恋をするようになるのだろう

「好きな人に自分の作った料理を食べてもらいたい、女の子ならそう思うのも不思議なことじゃないわ」と、言っていた彼女の言葉

もしも自分が誰かを好きになることがあったときに料理を作ってあげたいと思うかもしれない

でも作り方を知らなかったらどうすることもできない

ならば、早いうちに準備をしてもいいのではないだろうか

それにいつも世話になっているシンジにもお礼がしたい

彼に教えてもらったもので御礼をするのもすこしおかしな話かもしれないが、自分の作った料理をおいしいと彼に言って欲しかった

だからレイは明日シンジが帰ってきたときに料理を教えて欲しいと言うつもりだった

空を見上げてもどんよりとした灰色の雲しか見えないはずなのだが、レイにはその向こうに広がっている青い空が見えるようだ

本当に明日が楽しみだ、とレイは頬を緩め、ゆったりと足を進める

ふと自分の進む先に人の気配を感じた

ボロボロの再開発地区

この辺には住人は自分しかいない

以前、ホームレスたちは役人たちに強制退去されたので、彼らがいるとは思えない

というか、一度襲われかけたときに完膚なきまでに叩きのめしたのでそれ以来ホームレスたちは自分を恐れている

ネルフでの格闘訓練も役に立つものだ

そんなわけで自分以外の気配をこの近くで感じるはずはない、不思議に思いながらレイは顔を上げた

崩れたマンションとマンションの間

自分が毎日登下校のときに通っているそれなりの広さの道のようなその場所

彼は寂しげな表情で俯いて立っていた

年のころは自分と同じくらいだろう

だが、この近辺で見かけたことはない

不審に思いながらもレイはさっさと彼の横を通って家に帰ろうとした

不意に彼の視線がレイを捉える

レイは奇妙な感覚に襲われた

殺気ではない、嫌な感じもしないのだが、ビクリと肩を震わせて大きく距離を開ける

そんなレイの反応に驚いた様子もなにもなく、ただ彼はレイのことを見つめている

ポツリポツリと雨が降り出した



 「あなた…………誰?」

 「さぁ、誰だろうな?」



彼は苦笑しながら答えた

その表情は寂しげなままで

レイは何故だか分からないがチクリと胸が痛んだ

初めて会った、初めて言葉を交わした目の前の彼が寂しそうな顔をしていることが辛くて仕方がない



 「なぜ……こんなところにいるの?」

 「お前は何故ここにいるんだ?」



彼はレイの質問に答えることはなく、同じ質問を返してきた

ふざけている様子もなくどこか寂しげなままのいたって真面目な顔でまっすぐとレイを見つめながら

普通に考えればレイは彼を危険人物と判断して逃げるか捕まえるかするべきなのだろう

だが、不思議とレイは警戒を解いて彼のことをしげしげと見つめていた

どこか大人びた彼

右の頬から目を通り額まで達する肉がえぐれたような大きな傷

開かれている左の目は深い灰色

黒髪は後頭部で縛って邪魔にならないようにしている

体躯ががっちりしているわけではないので後姿だけを見れば女性と間違えてしまうかもしれない

荷物らしいものは何も持っておらず、服に不自然なふくらみがないので武器を隠し持っていることもないだろう



 「創られた少女よ、お前は何を求めて戦う?」

 「!」



レイは驚きのあまり表情を凍りつかせた

今、彼は何を言ったのだろうか

創られた

そう、創られた少女と自分を呼んだ

なぜ、何故知っているのだろうか

ネルフでもそのことを知っている人間はいないはずだ

そうだというのに何故



 「何故……私のことを……」

 「別に、俺がお前のことを知っているのは今この瞬間に重要なことではない」



彼は一呼吸置いてからレイが歩いてきた道の続きに視線を向けた



 「もしこのまま先へ進めば待つのは死という結果だけだろう……それでも、お前は戦うのか?」

 「…………」

 「お前が戦わなくてもシンジは世界での役割をまっとうする、そのシンジの世界においてお前は本来いない存在だたとえお前が戦うこと を辞めてもシンジはお前を責めたりしないだろう……死ぬと分かっているのに、戦う必要のないお前は戦うのか?」

 「…………えぇ、戦うわ。たとえ死ぬとしても、碇君のためなら…………いえ、私の友達を守る為なら」



彼はレイの言葉を聞いて微笑むとそのまま歩き出した

レイの横を通り、レイが今来た道を戻っていく

振り返ることなく、真っ直ぐと

レイはしばらく彼の後姿を見つめていたが、雨脚が強くなってきたので再び家路へとついた

足元を見ながら先ほどの彼は誰なのだろうかそんなことを考える

不思議と彼を思うと心の中があったかくなったが、それは何故だろうか

そんな疑問もある

今まで他人に興味を持たなかった自分が、他人のことを考えながら悩んでいる

そんなことがおかしくてレイはクスリと笑った

きっと彼とはまた会えるだろう

レイは顔を上げて、前を見ようとした



 「!」



道をふさぐように停まっている一台の車、その前には黒服の男が立っている

ネルフの人間ではない、ネルフの人間であればレイに対してここまであからさまな敵意を向けたりはしない

その男が銃を構えていることに気付き逃げようとするが全ては手遅れだった

後ろから誰かに動きを封じられて何かハンカチのようなものを口に当てられる

なんとか抵抗しようとしたが、レイの意識はゆっくりと闇の中へと落ちていった







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――――あとがき

えぇ、本当にお久しぶりなacinでございます。
あれですね、大学生が暇って言うのは嘘ですね……
大学生活が忙しすぎて、小説書く時間もない始末
すぐに出せるだろうと思っていた陸話を出すのに、一年以上もあけてしまいました
その間に、エヴァ破は上映するし、成人するし、果ては破のDVDとBLまで発売している始末
いや、本当に読者の皆様には申し訳ない限りです

予断ですが、冗談半分でacin fateとネット検索するとエヴァ小説の紹介ページでこのFATEが紹介されていました
うれしい限りなのですが、2点どうしても気になる点が
1、シュウはシンジの物語を知っているのではなく、平行世界を含む全事象を知っています
1+1の答えから、世界の終末、円周率の答えまで(あくまで設定ですので、私は知りません)
それら全てを含めて全知の存在です
詳しくはバベルと共に本文中に説明が入ります(いつか)
まぁ、私の文章力不足なんでしょうが……
もう一点は激しくネタばれなので、伏せておきますが、いつかお話できるでしょう
というか、随分長いあとがきになってしまいましたw

漆話が早く更新できるように頑張る所存ですが、遅くなってしまったらごめんなさい
一番重要な点ですが、陸話をもってFATEの第一部を終了とし、幕間、第二部という展開になります
乞うご期待(していただけるとうれしい)

                                10/07/29            acin











読者の皆様大変お待たせしました。というか自分もめっちゃ待っておりました!
acinさんの連載作品「FATE」の最新話を掲載させていただきました〜。
むおー実に1年以上ぶりっすね。でもこうしてまた「FATE」の最新話を拝見できて、感謝感激でありまする。

前回の第伍話は我らがアスカさんの登場!って所で終わりましたが、いやー今話は大活躍でした。
本編の「アスカ、来日」をベースにされている今話ですが、acinさんのち密な情景描写も相まって非常にワクワクしながら拝見させていただきました。
原作と同じようだけど、でもちょっと違う雰囲気が感じられるアスカの性格。
アスカと共にやってきた加持とゴスロリ少女のリン。そしてラストでレイと出会った少年…。
ううううう、これは続きが気になる〜。
次話の完成を超超楽しみにしておりますっ!

作者のacinさんに作品のご感想をっ!
感想は作家の元気の源、是非お願い致します。

しかしミサトってば、どんだけ家をバイオハザード状態に…;
最初の「異臭騒ぎ」部分で思いっきり笑ってしまいましたw



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