西暦2015年。ここは、サードインパクト後の第3新東京市。

とあるコンフォートマンションの一室の台所に一人の少年が立っている。

彼の名は碇 シンジ。つい先日までは、国連直属機関Nerv

が誇る、対使徒用決戦兵器エヴァンゲリオン初号機の専属操縦者

であり、サードチルドレンと呼ばれていた。

しかし、Nervはサードインパクト後に解体され非政府組織となったため、

シンジは任務が無くなり普通の中学生に戻ったのだ。

 

その彼をエビチュを飲みながら見ている女性がいる。

彼女の名は葛城 ミサト。元Nerv作戦部長。現Bewahren開発部長。ちなみに独身。

ミサトは、すでに5本目のエビチュの空き缶を振りながら、

シンジに突然告げた。

「シンちゃ〜〜ん、アスカの誕生日プレゼントもう考えた?」

その言葉にキョトンとするシンジ。そして…

「へっ!?え?え〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!!」

 

DREAMLOVER

マンション全体に響きわたるような驚声に、リビングでテレビを見ていた少女が、

ビクッと体を振るわせ、驚いた顔でシンジを見た。

 

「ちょっと、どうしたのよ?」

そう言って台所のシンジのところへやって来る。

 

彼女の名は、惣流=アスカ=ラングレー。

シンジと同じく、元エヴァンゲリオン弐号機専属操縦者。セカンドチルドレン。

その姿には、明らかにヨーロッパ系の血が入っており、

非の打ち所のない美しさをしている。また、髪も眩いほどの蜂蜜色をしており、

サラサラで艶々している。ついでに、この若さで大学を主席で卒業している。

そんな、彼女を形容するなら“容姿端麗”“頭脳明晰”がぴったりだろう。

 

そんな彼女に、いきなり質問され答えの出てこないシンジ。

「えっ?あっ、あの…その…」

「もう何よ!ハッキリしないわね!」

「あっ、ゴッゴメン。」

「アンタ、バカァ?何でそこで謝るのよ!支離滅裂じゃないの!」

怒りながらも、さらに問いただすアスカ。

「で、一体どうしたのよ?」

「そっ、それは…」

 

しかし、シンジには答えられる訳がない。

目の前にいる彼女のことだから…

だが、全く訳が分からないことなので、アスカにとってシンジの態度は

さらに苛立たせることになり、またきつく言ってしまう。

「アンタって、本当にハッキリしないわね。よくそんなんでエヴァパイロットが

務まったもんだわ!!」

流石にここまで言われると、シンジもカチンと来てしまう。

「アッ、アスカには関係ないだろ!」

 

意外な反撃に、驚きと悲しみの混じったような顔をしたアスカだが、

すぐさま逆襲する。

「あっそ!なら始めからそう言いなさいよ!!

ハン、いちいちくだらないことで叫ぶんじゃないわよ!!」

そう言い残すと、アスカはドタドタと歩きバン!と勢いよく自室のドアを閉めた。

(もともとアスカの部屋のドアは襖だったが、いつシンジが忍び込んでくるか分からない、

という理由でカギ付きのドアに交換してもらったのだった。)

 

「アッチャ〜〜〜」

呆然と立ち尽くすシンジの後ろで、ケンカの合間に本領発揮し、

2ケタ台中半!!に突入したエビチュの空き缶を振りながら、

ミサトが渋い顔をして言った。

 

当のシンジの頭の中は、すでに錯乱状態だろう。

アスカと仲直りしなければならないし、何より誕生日プレゼントを何にするか?

ということが彼を余計に焦らしていた。

ついでに、ミサトが飲んだエビチュの空き缶の片付けや、エンゲル係数の再計算など

頭のイタイこともしなければならないのだが…

 

次の日、学校へ行っても話そうとしないアスカとシンジを見て,

クラスメイトのヒカリ・トウジ・ケンスケの3人は

『また夫婦ゲンカしたの(か)(かいな)。』

と思った。が、いつもと様子が違っている。

いつもはシンジがアスカのご機嫌を伺ってなんとか仲直りしていたのだが、

今回に限ってシンジはアスカに話しかけるどころか、近づこうともしない。

ただ、しきりにアスカの方をチラチラ見ている。

様子の違う2人に心配して3人は、それぞれに話しに行った。

 

「アスカ、どうしたのよ?」

心配そうな声で聞くヒカリ。

「何がよ?」

アスカはかなり不機嫌そうである。

「碇君とまたケンカしたんでしょ?」

「別に…」

「原因は何なの?」

「シンジがアタシに隠しごとしてたから問いただしただけよ。」

「はは〜ん。アスカは碇君の隠しごとが気になるんでしょう〜?」

「うっ…!」

少しづつ妖しい光を放ち始めるヒカリの目。

「と、いうことは碇君のことが気になるってことね〜〜!」

「ちっ、違うわよ!!なんでアタシが、あんなグズで鈍感なバカシンジの事なんて

気にしなくちゃならないのよ!アタシはただ、バカシンジが隠しごとするなんて

生意気だから少しきつく言っただけよ」

 

こうしてアスカはヒカリの話術でじょじょに口を開いていくのだが、

トウジ達はかなり苦戦している。

 

「おい、シンジ!」

「シンジ、どないしたんや!」

3度目となる呼びかけをするが、依然シンジは何の反応もしないまま、

執拗に目を泳がせ、そわそわしている。

どうやらトウジ達がいることさえ気付いていないらしい。

 

「おい、シンジ!」

トウジが呼びかけと共に、シンジの肩にポンと手を置いたことで、ようやく

体をビクッと振るわせシンジはトウジ達の方を向いた。

「あっ!トウジにケンスケ。どうしたの?」

「どうしたのやあらへんやろ!」

「そうだよ。一体どうしちゃったんだよ」

シンジの、拍子抜けする応答に2人は少し落胆した。

 

「さっきから何べんも呼んどったのに気付かんかったんかいな?」

「ゴメン。」

「惣流とまたケンカしたんだろ?今度は何が原因なんだ?」

「また、くだらんことちゃうんかいな?」

「違うよ!そんなんじゃないよ…」

シンジの真剣な顔に、トウジとケンスケはやれやれとした顔をした。

「そっか。これは俺達が首を突っ込むことじゃなさそうだな。」

「すまんかったなぁ、シンジ。」

「まぁ、何にせよ早く惣流と仲直りしろよ。」

「ありがとう。ケンスケ。」

 

何も言わなくても分かってくれる友人に、シンジはとても感謝した。

と、頭を本題に向けるとまた思考の森へ入って行った。

 

結局、学校ではアスカと仲直りは出来なかった。

そして、いつもは賑やかな夕食もミサトが仕事で居ないこともあって、

かなり重い空気が場を包んでいた。

シンジは、この状況を何とか打開しようと何度も考えたが、その度、アスカに

何を隠しているのか聞かれるだろうと思うととても話せなかった。

夕食後も会話は無く、2人とも早々と自室に引きあげた。

 

次の日、シンジはアスカが掃除をしているスキを伺ってヒカリを屋上に呼出した。

「どうしたの?碇君。」

「あっ、委員長。あの…女の子がもらって喜ぶプレゼントって

その、何かな〜って…」

こんなことを女子に聞くのは初めてなので、かなり緊張気味のシンジ。

そんなシンジを見てヒカリはプッと笑った。

「アスカにあげるの?」

「う…ん」

ゆっくり頷くシンジ。

「そおねえ……アスカが本当に欲しいものは碇君のその気持ちだと思うわ。」

「気持ち?」

「そう、何かをあげる時一番大事なことは、その人を想う気持ちだと思うわ。」

「そうだったんだ…」

「碇君。アスカのこと大切にしてあげてね。」

「うん!ありがとう委員長。」

そう言って走り出したシンジだか、不意に呼び止められた。

「待って!」

「えっ?」

「自信を持って、頑張ってね!」

「うん!」

 

数十分後、走って帰ったシンジは家に戻って…はいなかった。

以前、ミサトに連れて来てもらった高台の公園に来ていた。

周りには数人の子供が遊んでいる。

シンジは第3新東京市が一望出来るベンチに座りながら、物思いにふけっている。

 

『明日はアスカの誕生日か…

 委員長は僕の気持ちを大切にしてって言ってたけど、まだ何も思い付かないや。

 女性雑誌も読んでみたけど、いいのは載ってなかったしな。

 ……でも、いつから僕はこんなにもアスカのことばかり考えるようになったんだろ?

 初めて会った時は、かわいいと思ったけどいきなりあれだもんな。

 一緒に暮らし始めても、いっつも僕のことからかうし、おフロがちょっと熱かったり

 したら怒るし、すぐ叩くし、家事は手伝ってくれないし……

 でも僕は、アスカは誰よりも寂しがり屋でか弱いって知ったんだ…

 その時、無意識のうちに僕は守ってあげたいって思った。

 そして、僕にはまだ向けられていないけど、委員長と話してる時に見せる

 あの笑顔が何よりもアスカらしいし、好きだな…』

 

もうすでに、シンジの顔はゆでだこのようになっており、目はトロ〜〜ンとして、

口は半笑いの状態である。

周りから見ればかなりアブなく見えるが、本人は気付いてないらしい…

 

『アスカは僕のことどう思っているのかな?

 やっぱり、頼りなくて、自信の無い僕なんて嫌だろうな…

 僕にとってアスカなんて“夢のような恋人”だもんな…』

 

と、シンジは憂鬱さを払うかのように頭を横に振ると、もう一度考え始めた。

『また、弱気になっちゃたな。

 僕はもう決めたんだ。

 アスカに僕の気持ちを全部伝えると…』

 

シンジが周りを見回すと、何時の間にかすっかり暗くなり、シンジ以外に人の

姿はほとんど無かった。

空は太陽が半分沈んでおり、ピンク色の雲が広がっている。

 

「キレイだな…」

空を見上げたシンジが、ポツリと言った。

そして、心の中では『いつかアスカと、こんなキレイな空を一緒に見れたらなぁ…』

と考えていた。

と、シンジは思い出したように時計を見ると、時刻はもう6時になろうとしている。

シンジは、バッ!と立ち上がると、

「プレゼントを買いに行こう!」

と言い残し,街の方向へ走り出した。

 

今日は金曜日。本来なら学校だか、創立記念日で休みなのだ。

シンジは今日も朝から洗濯、掃除等忙しく働いている。

すると、その音で目覚めたのか、アスカが起きてきた。

明らかに半分寝ているような足取りだ。

「あっ、おはようアスカ。」

「おはよう…んっ?ミサトは?」

「ミサトさんは、今日も仕事で朝早く出て行ったよ。

帰りも遅くなるみたい。」

そう、と言ってアスカは洗面所へ向かった。

シンジは寝ぼけてたアスカを思い出して、クスッと笑うとまた掃除を始めた。

 

「ん……んっ……」

日が沈み、完全に真っ暗になった部屋で寝ていたアスカが目を覚ました。

「寝ちゃってたみたいね…」

今日は1日何も予定の無かったアスカは、昼食後に自室のベッドに寝転がり

適当に雑誌等を読んでいたのだが、いつのまにか眠りについていたらしい。

最後に見た時刻は確か2時50分ぐらいだったかしら、等と考えながら

カーテンを閉め、電気をつけた。

 

コンコン

「アスカ、晩ご飯出来たよ。」

お腹もすいたわねえ…と思った時タイミングよくシンジが

準備完了を告げた。

 

「何これ?すごい豪華じゃない?」

部屋を出てテーブルを目にしたアスカは、驚きながら言った。

彼女の言う通り、テーブルの上には様々なおかずが並んでいる。

しかも、全部アスカが好きなものばかり。

さらに、台所からはアスカが一番好きな匂いがしてきた。

「ハンバーグもあるのね!」

「うん。僕の特製デミグラスソースもついてるよ。」

シンジの言葉を聞いたアスカは嬉しそうに席へついた。

 

「でも、今日は何があったのよ?」

「うん、ちょっとね…」

「また、隠しごとしてんじゃないでしょうね?」

「えっ!?いや!?すっ、すぐに分かるよ。」

「何なのよ?」

不思議そうな顔をしているアスカのところへ、シンジが特製ハンバーグを

持ってやって来た。

 

「はい。アスカ。」

「ありがと。へぇ〜〜今日のはかなり気合い入ってるじゃない。」

アスカはハンバーグを食い入るように見つめている。

シンジも席に座った。が、いつもと違うところへ座った。普段はアスカの隣だが、

今日はアスカと向かい合うように座った。

 

「じゃあ、いっただきま〜〜…」

「あっ!待ってアスカ!」

食べようとしたアスカは、急にシンジに止められた。

「何よ?まだ何かあるの?」

「あのアスカ…その…誕生日おめでとう!」

「えっ?」

「その、今日はアスカの15回目の誕生日だろ?

だから…あの…おめでとう。」

「!!!」

 

皮肉にも、アスカがこれまで続けてきた必死の努力は、人が一番輝く日、“誕生日”

を忘れさしていた。

 

驚愕しているアスカに、シンジはあるものを渡した。

「アスカ、これ…プレゼント…」

それは赤く綺麗な紙でラッピングされ、ブルーのリボンのついた長方形の箱だった。

「これって…」

ゆっくりと、それを受け取り、丁寧に箱を開けたアスカはさらに驚いた。

中には、シルバーの美しく鋭い光を放つプチハートのネックレスが入っていた。

「シンジ…アンタ…」

アスカはもうこれ以上言葉にならなかった。

 

「アスカ……僕はずっとアスカのことが好きだったんだ。

僕はいつもアスカのことを見てきた。

そして、いつのまにかアスカを守ってあげたいと思っている自分に気付いたんだ。

まだまだ、僕は頼りないかもしれないけど、アスカだけはどんなことがあっても

僕が命にかえて守ってみせるよ!だから、僕にアスカのことを

一生守らせてほしいんだ!」

そういうと、シンジは下を向いた。

 

暫しの沈黙が訪れる。

 

チラッとシンジはアスカを見た。アスカも同じように下を向いている。

『ダメかな…!?』と思ったシンジだったが、不意にアスカが立ち上がったので、顔を上げた。

立ち上がったアスカは後ろを向くと、自慢の髪をかきあげた。

 

「アッ、アタシってあんまりそういうの1人でつけるの得意じゃないから

シンジがつけなさいよ…」

「えっ?」

「だ・か・ら、アンタにつけさしてあげるって言ってんのよ!」

シンジはそう言われ慌てて立つと、ネックレスを持って、アスカの後ろへ回った。

さっきから、飛び出しそうなほど呼吸している心臓を抑えつつ、

シンジはネックレスをつけようとした。が、初めて見るアスカの優美なうなじに

つい見とれてしまった。

 

「もう!何してんのよ?スケベシンジ!」

「へっ?えっ…あっ…」

慌てるシンジ。

「もう…そんなんでアタシのこと本当に守れるの?」

「えっ…今なんて…」

「だから!アンタ、アタシのこと一生守ってくれるんでしょ?

だったら、もっとビシッとしなさいよ!」

「ということは…」

「言わなくても分かるでしょ!アタシもシンジのこと好きだって言ってるのよ!

女の子にこんなこと言わせないでよね。」

 

それを聞いて、シンジの顔は満面の笑顔になった。

よく見ると、アスカも耳まで真っ赤になっている。

そして、シンジは優しくネックレスをつけてあげた。

 

「どう?」

笑顔で振り返ったアスカの胸元で、ネックレスが楽しそうに揺れている。

「とっても似合ってるよ、アスカ!」

 

と、アスカは急に下を向いてモジモジし始めた。

「シンジ、その…ありがとう。大切にするね…」

恥ずかしそうな声で、アスカが呟いた。

「アスカ…」

アスカとシンジは、お互いに真っ赤になりながら見つめ合った。

 

そして、ゆっくりと唇と唇を重ね合わせた。

 

「あっ!ご飯冷めちゃう!」

「あっ、そうだった!早く食べようか、アスカ。」

「うん!!」

そう言うと、2人とも席につき、最高の笑顔で楽しそうに食事を始めた。

 

……誕生日おめでとう……

……僕の大切な人……

Ende

 

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みなさん、初めまして。Chambon(シャンボン)と言います。

今年もアスカの季節が来ましたね。と、いうわけで書いてみたんですが、

どうでしたか?やっぱ、初めてすることは体力倍使いますね^^;

でも、これからもどんどん書いていこうと思いますので、また見てやって

下さい。最後になりましたけど、ここまで読んでくれてありがとうございました。

それでは!



初投稿作品をGehenにしてくださったChambonさんの「DREAMLOVER」でした!
記念すべき処女作を送っていただいて、いやもう本当に嬉しい限りであります。本当にありがとうございます〜。

さてこちらの「DREAMLOVER」、表題にも付いていますがアスカの誕生日を記念し、それに題材にした作品に仕上がってますね。
内容の方はもう…。LASの王道といいますが、読んでいて心からホっとでき、シンジとアスカおめでとう!って言いたくなるような作品です。最高!
ミサト、そして学校でのヒカリ、トウジ、ケンスケもいい味出してますし、やっぱりこういうハッピーエンドなSSはいいなぁって再確認できました。
それにしてもシンジの告白の台詞はなかなかカッコイイですね。
「アスカだけはどんなことがあっても僕が命にかえて守ってみせるよ!だから、僕にアスカのことを一生守らせてほしいんだ!」。
うーん、普段は大人しいシンジからこんな事を言われたらアスカはもうクラクラしっぱなしでしょう(w
最後はお互いの想いが通じあってハッピーエンド。
おめでとうシンジ。そして本当におめでとうアスカ! って感じですね!
>
作者のChambonさんに作品のご感想をっ!
感想は作家の元気の源、是非お願い致します。

素晴らしい作品をどうもありがとうございましたChambonさん!
しかし最近の作家さんはマジ上手いですねぇ。とても初めての作品とは思えないですよ。俺も負けないように頑張らねば…(汗
またの作品を楽しみに待ってますよ〜!



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