今の私、何もしなくてもいい私。落ち着かない。何もしなくて良いはずなのに、何かをしなくてはいけない気がする。何かに追い立てられているような気がする。自分のための時間。自分に何も求められていない今。何となく空しい。何となく楽しくない。何となく落ち着かない。何となく不安。何となく不安。何をしたら良いんだろう。

 誰もいないこの部屋。私しかいない部屋。私は私が何をしたいのか分からない。自分のために何をしたらいいのか分からない。
 今までずっと、人のために、人の評価を気にして、人の評価を支えに生きてきて。


 MUSTだった。名誉が欲しいのではなく、名誉が無くてはならなかった。名誉が無くては自分を支えることが出来なかった。何よりも相手から求められることが大切だった。人から求められることが生き甲斐だった。それを支えに生きてきた。

 MUSTだった。使徒に勝たなければいけない。一番でなくてはいけない。負けたら誰も私を必要としてくれない。だから勝たなくてはならなかった。そして私は常に勝ってきた。

 WANTではなかった。きっと本当は訓練なんかしたくなかった、エヴァになんか乗りたくなかった。でも、エヴァに乗らないと、誰も私を見てくれない。誰も私を求めてくれない。誰も私を愛してくれない。だからエヴァに乗らなきゃいけなかった。エヴァにのって使徒と戦って、そして勝たなければならなかった。

 WANTではなかった。でもエヴァに乗っていると、みんなが私を見てくれる。だからエヴァに乗った。

 そこにあるものは不安。成功しなくてはいけない。使徒に勝たなければいけない。一番でなくてはいけない。
 そうでないと私はまた捨てられてしまう。ママに捨てられたように。

 努力した、他の誰よりも。血の滲み出るような努力をした。それなのにいつも強迫感があった。失敗したら捨てられる。それが怖くて一層努力した。それでもいつも不安だった。心の支えがなかった。もし自分が何も持たなかったら、誰かが私を見てくれるとは思えなかった。だから名誉に心の支えを求めた。エースになることで自分を支えようとしていた。

 否、一人で生きる為に、自分を支えなければならなかったから、エースにならなければならなかった。
 支えなかったら私は壊れてしまう。誰にも必要とされない人間になって、捨てられてしまう。



 捨てられるのが怖いの。ママはどうして私を捨てたの?
 私良い子でいたのに。ママのために良い子でいたのに。




 最初は結果を出していた。私は誰よりも優れた成績を訓練で残し、エリートパイロットと自他共に認めていた。
 自他共に、他に認めれることにより、自も自分を認めることが出来た。

 エース。素晴らしい響きだった。
 誰よりも努力した自分に相応しい称号だった。


 しかし私は負けた。

 使徒と、碇シンジという男に。

 得体の知れない生物と、努力もしていない男に。

 失敗し、エースでもなくなった。

 使徒戦では捨て駒にされた、名誉も自身も失った。

 名誉を失った私は、たった一人で戦い続けていた私は、もう心を支えることが出来なくなった。

 辺りを見回しても、誰も私を助けてくれなかったの。

『違うっ! 同情なんかされたくない!』

 誰も私を助けてくれなかったの。

 誰も私を見てくれなくなったの。


 そして私は・・・壊れていったの。






 今の私、何もしなくてもいい私。落ち着かない。何もしなくて良いはずなのに、何かをしなくてはいけない気がする。何かに追い立てられているような気がする。自分のための時間。自分に何も求められていない今。何となく空しい。何となく楽しくない。何となく落ち着かない。何となく不安。何となく不安。何をしたら良いんだろう。

 誰かが見ていてくれないと不安。
 誰かが側にいてくれないと駄目。

 ・・・でも、もう捨てられるのは嫌。捨てられるのが怖い・・・怖い・・・






 夢を見ていた。
 何の夢だったかは忘れた。少しだけ覚えてる。

 ミサトが出てきたような気がする、シンジも出てきたような気がする。
 ヒカリやあの女や加持さんやリツコも出てきた気がする。みんなが私に向かって何かを言っていたような気がする。
 私の方に手を伸ばしている人がいた。語りかけている人がいた。耳を傾けている人がいた。気にしている人がいた。後ろめたそうにしている人がいた。でも、どうしても私の手はその人の手に届かなかった。どんなに耳を凝らしても何も聞こえなかった。何かしゃべろうにも口が強ばって動かなかった。振り向かせようとしても自分を見られるのが怖かった。

 そして、私は何かを叫んだ。なんて叫んだかは忘れてしまった。

 でも・・まあいい、夢など忘れよう・・・



 枕元に置いてある目覚ましを時計を見たら5時56分を指していた。6時になるように設定しておいたアラームをoffにした。
 ベットから起きあがって、そのままバスルームへ向かった。熱いシャワーを浴びて、寝汗を流した。部屋の中で乾かしていたタオルを体に巻いた。
 昨日入れたコーヒーを温め、フランスパンと一緒に飲み込んだ。

 今日は学校に通う初日、かったるい、学校なんか行きたくない。他人の目の触れるところに出たくない。このマンションの中は快適なのに、この中にいる間は誰に気を遣うことも無いのに。虐められることも訓練を受けさせられることも、エヴァに乗せられることも無いのに。

 死ぬか生きるかと言われて生きることにしたものの、私にはまだ何の情熱も無かった。
 エヴァに乗っていた頃、おそらく心の底で密かに望んでいた自由な生活。何者にも縛られず、自分の思うところをなす事の出来る生活。
 今がまさしくその状態にあるはずだった。UNの監視下にあって行動規制されているとは言え、私は少なくとも日々の人生は、自分で考え、自分で生きることができる立場にあるはずなのだ。それなのに自分が何をすればいいのか分からない、自分が何をしたいのかも分からない。


 誰か教えて。私の生きる意味を、私がやりたいことを。






  連載小説
その言葉を Side Story


− 第弐部 本当の私 −


By:えふ





「転校生を紹介する、惣流 アスカ ラングレー君だ。仲良くしてやってくれ」

「はーい」
「よろしくお願いします」
 流石は優等生の通う中学と言うべきなのだろう、真面目そうな顔つきが多い。偏差値70の市立校とも言えばそれも頷ける。このご時世だ、編入生自体は珍しくないのだろうが、露骨な視線をぶつけられる、まあそれなりの格好をしてきているから問題もないと思う。

 転校生恒例の質問攻めにあったが、当たり障り無く適当に答えた。
 今まで何処にいたのと聞かれて、ちょっと前まで病院に監禁されていて、その前は第三新東京市にいたの、とは答えられない。

「12歳の時にドイツから移住してきた、極普通の中学生」
 それが今の私、UNから与えられた肩書き。

 毛色の違う私は、まず女子から敬遠された。
 男子を適当にあしらっていたら、態度がでかい女とレッテルを貼られた。



 学校は面白くない、授業はもう分かり切っていることばかりだし、教師の教え方もあまり良いとは思えない。
 月100万の給料を貰っていてこんな教え方しかできないのだろうか?

 学校は面白くない、生徒に面白みがない。いつも必死の形相で勉強している。
 良いことだとは思うが、面白くはない。休み時間にまで勉強の話をしている。
 親に、先生に言われたとおりに勉強する。昔の自分を見ているようでまた嫌になる。今の私の有様を見てまた嫌になる。

 面白くない。



 高校に編入してから随分と経った。
 学校にも馴染んだ。クラスにも、溶け込んではいないが、慣れた。もうすぐ中学3年になる。
 あまりにもさぼっていたせいか、成績が学年二番に落ちた。
 何となく面白くないから、次回でまたトップになろう。

 何人かの男と、誘われたからデートした。
 面白くない。学校の授業がつまらないから、こんなつまんない男になるのだろうか?

「惣流さん、何処に行きたいですか?」 コイツ何考えてるのかしら。
「退屈?」って聞かれたから、「退屈」って答えた。
 ソフトクリーム買いに行かせて、そのまま帰った。
 次の日あったら罵声を浴びせてきた。
「惣流、あんま調子にのんなよ!?」だって。

 面白くない。



 私は監視されている。何処の人間だかは分からないが、おそらく一日二交代で24時間。二人の内片方は顔を確認した。中肉中背の男。
 何処かで見た顔のような気がする、その直感が確かならネルフの職員だった奴なのだろうか?

 私なんかを監視して何の得があるのかは知らないが、監視されているのを気持ち悪いと感じながらも、少し安心している自分がいる。
 何なんだろう、この感覚。異常なのかしら私。

 何も束縛されることがないのに、何故か追い立てられているような気がする。何もしていないと、何となく怖くなる。
 誰かに見ていてもらわないと、時折凄く不安になる。
 自分の他に誰もいない部屋にいると時折凄く不安になる。
 学校の成績が落ちると不安になる。
 表面的な付き合いだったはずのクラスメートから無視されると不安になる。
 本当の友達など一人もできなかった。
 作ろうとしなかったのもある、でも、それ以上にどうやって人に近づいていけばいいのか分からなかった。
 私がクオーターであること、私が勉強が出来ること。そこから来る私への視線。
 それにどう答えて良いか分からなかった。

 私のことを知られたらきっとみんな私から離れていく。
 私が本当はエヴァンゲリオンのパイロットであったことが知られたら、きっと私には居場所が無くなる。
 それを隠して生きていくの?
 悔しい、それは悔しい!
 私が全てを犠牲にして得た、エヴァンゲリオンのパイロットであるという事実を否定されるのはやはり許せない。



 何かをしてみたかった。しなければならないと感じていた。誰かに見てもらいたかった。
 見てもらわないと自分が保てないような気がした。

 模試で満点を取っても敵を増やすだけだった。
 そいつらもさえも私を見ていない、私ではなく模試の点数を恨んでいる。

 本当の自分を見て幻滅されて、捨てられるのが何よりも怖い。
 でも、このまま誰にも気を止められないで生きていくのは堪えられない。
 自分の歴史を否定されたまま生きていくのは私には堪えられない。
 私は元エヴァンゲリオン弐号機のパイロット、惣流アスカラングレー。
 「12歳の時にドイツから移住してきた子」なんかじゃないっ!






 その日、いつものように私は高校に通って、その帰りの電車のプラットホーム、向かい側にアイツはいた。
 こちら側には背中を向けていたが、間違いなくシンジだった。

「シンジ・・・」
 様々な感情が私の中にわき起こり、私は呆然としていた。

 けだるい声でアナウンスが入る。
 三番線に特急が入ります、危険ですので白線までお下がり下さい。

「シンジっ!」
 周りの人目も気にせず、私は叫んでいた。




あとがき

こんにちわ、えふです。今日は皆さんにどうしても話しておきたいことがあります。
これはとても重要なことで、これからの私の人生を左右しかねない問題です。

ヤマタノオロチは何で首が8本なのでしょうか? だって考えても見て下さい。ヤマタノオロチと言うからには、股が8個有るのでしょうから、首は9本になるはずなのです。
それともヤマタのマタは「股」ではないのでしょうか。全てが謎に包まれています。
五里霧中です。この事が気になって、おちおち眠ることも出来ません。
この件について何かご存じの方がいらっしゃいましたら、是非教えて下さい。
・・・あまり変なことばかり書いていると、もっと変になってしまうので、少しはちゃんとしたことを(^^;

さて、今回は外伝の2話をお送りしましたのですが・・・、訳分かんないですね( 爆 )
大変意味不明かつ中途半端かつ強引な文章で申し訳有りませんです。
これで一応、外伝「 アスカの章 」は終わりのつもりです。
このお話では、第2話までのアスカの心情と、そこからアスカがどうなって行くかの暗示を書いたつもりです。
つもりです。つもりです。つもりです。つもりなんです(^^;
次はどうしようかと考えています。外伝「 シンジorミサトの章 」を書くか、本編を書くか。
ご要望が有りましたら教えていただけると嬉しいです。
それに合わせて、感想や気になったところ、変だと思った所等を教えて下さったりしたら、最高に嬉しいなぁ…( 上目遣い )
もちろん返事は確実にいたします。

最後に一言、恋愛の始まりなんて、別に何だって良い。



えふさんの連載SS「その言葉を」の外伝、第二部「本当の私」でした(^o^
えふさんもお忙しいのに……ありがとうございますぅ(T_T

いやー今回もいつものシリアスな雰囲気バッチリですねぇ。

誰かが見ていてくれないと不安。
誰かが側にいてくれないと駄目。
捨てられるのが怖い。
待ち望んだ自由。
誰にも束縛されない生活。
新しい学校での生活。

……アスカの心を支配するのはもの。
「本当の私」って………?

ううう、上手い! えふさん上手いっすよぉ。
この流れで本編に繋がって行く訳ですね。なるほどなるほど…。
是非外伝のシンジ編やミサト編も見てみたいですねぇ。ね、えふさん(笑)
それともちろん本編の方も続きを待ってますよ!(^^;


作者のえふさんへ是非感想&励ましのメールを!!
どんな事でも感想は励みになります。ぜひお願いします!!

えっとヤマタノオロチはですね……。
な、なんででしょうね?(^^;(^^;(^^;
真相をご存知の方、是非感想と共にえふさんへメールを!(笑)




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