新世紀エヴァンゲリオン GAG & LAS
頑張れ、ケンスケ君! 〜調理実習編〜
Illustration:緋色樹
相田ケンスケ、14歳。
第三新東京市第壱中学校2年A組。
ミリタリー&メカ&カメラマニア。
いろいろ世話を焼いてくれる彼女が…いない。
人類を守る、選ばれたチルドレン……でもない。
これはそんなナイスな彼の、とある日の物語である。
「なぁなぁ、今さ、女子が家庭科の授業で何をやってるか知ってるか?」
眼鏡をキランと輝かせて親友2人に話かける彼。
彼こそこの物語(なんて大層なものじゃない)の主人公、相田ケンスケ君である。
「んなもん、知らんわ」
トンカチでコンコン釘を打ちながら、さも興味なさそうに答えるトウジ。
「昨日の夜、アスカがエプロン貸してくれって言ってたから…何か作ってるのかな?」
同じくトンカチを片手にシンジ。
この技術家庭の時間、2年A組の生徒は男子は木工、女子は家庭科と男女で異なった授業を行っている。
シンジ達はこの木工室、アスカ達は家庭科室で授業という訳である。
「そうそう、それなんだよ!」
やたら元気なケンスケ。どうしたというのだ、彼は。
「実は…女子は調理実習でケーキを作ってるんだよ!ケーキを!!」
「はぁ?女子がケーキを作ってるからって、それがどないしたっちゅうねん」
「馬鹿だなぁトウジ。女子は作ったケーキをどうすると思う?」
「自分らで喰うんとちゃうか」
「チッチッチ、違う違う。女子が初めて授業で作るもの!しかも甘い甘いケーキ!!とくれば!?」
「と、とくれば?」
シンジはなぜかヒートアップするケンスケに少しビビッている。
「好きな男子、もしくは気になってる男子に食べてもらおうと思うに決まってるじゃないか!!!」
「そ、そうなの?」
「そうなんだよ。そう決まってるの」
「ふ、ふ〜ん、そうなんだ…」
思わず引きつった笑みを浮かべるシンジ。
「で、でもさ…どうしてケンスケは女子がケーキを作ってるって知ってるの?」
「せや、なんで知っとるんや」
「ん?写真を撮りに行ってきたからだよ」
2人の問いに、さも当然のごとく答えるケンスケ。
「写真を撮ってきたって…もしかしてさっきトイレに行くって出ていったとき?」
「そうそう」
「…授業を抜け出して盗み撮りしてきたっちゅー訳かいな」
「だってよ、あの惣流と綾波のエプロン姿だぜ。これを撮らなきゃバチが当たるってもんだよ」
ケンスケは全く悪びれずに言う。
これにはシンジもトウジも開いた口が塞がらない。
「フンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフ〜フフ〜ン」
と、その時、なんの前触れもなく聞こえる妙な鼻歌。
「げっ…」
「渚…」
机の上に片膝を立てて座り、遠くを見つめる銀髪の少年。A組で1番の変わり者…。そう、渚カヲルである。
「盗み撮りはいいね、リリンの生み出した文化の極みだよ…そう思わないかい、シンジ君?」
と言ってニッコリとシンジに微笑む。
「か、カヲル君…」
先程以上に顔を引きつらせてしまうシンジ。
ちなみになぜこの設定でカヲルが居るのか?
……それは聞いてはいけませんです。ハイ。
まぁとにかく、こんなメンツにアスカやレイやヒカリの女性陣が加わっている2年A組なのである。
そして授業は終わり、時は昼休み。
2−Aの教室はケンスケが断言した通りの展開となっていた。
「渚くぅ〜ん、これ作ったの、食べて」
「あ、ずっる〜い。渚君には私のを食べてもらうの!」
「私のだってばぁ」
たくさんの女の子に囲まれて焦っているカヲル。
彼のそのルックスは当然、何を考えてるんだか良く分からない言動も女生徒達には人気で、カヲルの席の周りには出来立てのケーキを手にした女の子達で溢れていた。
「ちょ、ちょっと待ってくれたまえ。僕はシンジ君とお昼を食べようと…」
「早く食べて!渚君!」
「私のも!」
「はい、これも食べて!」
「…ああ…シンジ君…」
アスカとは別の意味で完全無欠、唯我独尊な彼にも弱点はあるようだ。
そんな様子をさも意地悪そうに見つめるケンスケ。
「けっ、ざま〜みろ」
眼鏡がキランと光り、ペッとつばを床に吐く(真似をする)。
「ちょっとばかりモテるからっていい気になりやがってよ」
君が断言した通りの展開になったってのに、何が不満なんだ、ケンスケ君。
「おいシンジ、見てみろよ。渚のやつ面白い……」
後ろを振り返りつつ、シンジに話かけたケンスケの言葉が止まる。
(そ、そうだった…。シンジには…シンジにはこの女がいたんだった!!)
この女とは…?
いまさら書く必要もないが、もちろん惣流・アスカ・ラングレー、その人である。
「ねぇシンジぃ。さっきの授業でね、これ作ったの」
「わぁ…すごいよアスカ」
「でしょう?我ながらうまくいったんだ」
「とっても美味しそうだね」
「ホント?シンジ」
「うん」
机を挟んで向かい合って座っているシンジとアスカ。
この2人の周りには「もはや他の事は眼中にない」というような強烈なフィールドが展開されていた。
「あ〜あ、やっぱり碇君にはアスカがいるのよねぇ」
「私達の入り込む隙はないわね、こりゃ」
と、これはそんな2人を羨望の眼差しで見つめる女の子達の会話である。
繊細な顔立ち、優しい性格、それに加えてエヴァのパイロット…。シンジも何気にカヲルに匹敵するほどの人気を誇っているのだ。
でもシンジの場合、おはようからおやすみまで彼を見つめるアスカがいる。
自他共に認める校内(いろんな意味で)No.1美少女を敵にまわすほど、性根の据わった女の子はこのクラス…いや、この学校にはいない。
(シンジの裏切りものぉぉぉぉ…。)
同じく2人を見つめながら涙を流しているケンスケ。
彼は放っておいて、シンジとアスカのラブラブの続きに場面を移しましょう。
「シンジの為に頑張って作ったんだからね」
「うん…あ、ありがとう」
「ね、食べて食べて」
「あ、でも、お弁当は?」
「や〜ん、お弁当は後でいいの!先にこっちを食べてよ…ね」
「う、うん」
シンジはフォークを手にとり、ケーキを切ろうとする。
「あっ、やっぱダメ!」
その手からフォークを奪うアスカ。
「どうしたの?やっぱりお弁当を先に食べる?」
「…違うの。こうするのよ」
シンジから奪ったフォークでケーキを切り取り、アスカは嬉しそうに彼の口元へそれを運ぶ。
「は〜いシンジ。あたしが食べさせてあ・げ・る」
「ええっ!?」
「ほらあ〜んして、あ〜ん」
「えっ、い、いいよ…。自分で食べられるからさ…」
「だぁめ!あたしが食べさせてあげるの!」
「で、でもさ…」
「…あたしとこんな事するの…シンジはイヤ?」
少し悲しそうに顔を伏せて、上目遣いにシンジを見つめるアスカ。
彼女にこんな顔をされたら、シンジは軽くKOである。
「そんな事ないよ!じゃ、じゃあアスカお願い…あーん」
「ありがとシンジ。はいっ!」
顔を真っ赤にしながらも嬉しそうにケーキを食べるシンジ。
それをドキドキと見つめるアスカ。
「…どお?」
「美味しい、すっごく美味しいよアスカ!」
「やったぁ!」
シンジもアスカも顔には満面の笑み。
「美味しいのは…アスカの愛情がこもってるから…かな?」
「や、やだ、シンジってば…もぉ…」
今度は顔を伏せてモジモジする2人。
これは当分続きそうだ。
…でももうちょっと続き、行ってみましょうか。
「なんかシンジが喜んでるの見てたら、あたしも食べたくなっちゃった」
「ははっ。じゃあこの新しいフォーク使ってよ」
「…イヤ」
「えっ?」
「このフォークでいい」
「でもこれ、僕が口に入れたやつだよ」
「バカ…。シンジのだったら、あたしは…いいの」
「そ、そう?じゃあ、はい」
シンジはアスカの手からフォークを取ると、先程のお返しと、アスカの口元へケーキを運ぶ。
「今度は僕が食べさせてあげるね。はいアスカ、口開けて…」
「う、うん…ありがと。あーん」
「美味しいでしょ?」
「うん…。シンジの味がする…」
「アスカ…」
そのまま見つめ合う2人。
……このままでは延々とラブラブが続いてしまうので、ここらで終わりにして、筆者も存在を忘れかけてた主人公に場面を移す事にしましょう。
(シンジぃ、シンジぃ…お前ってやつは…。)
相変わらず涙を流し続けるケンスケ。
「碇君にケーキ食べてもらいたかったけど、これは無理ね」
「どうしよっかな…家に持って帰って弟にでもあげようかしら」
「私は家の犬にあげようっと」
と、これは先程の女の子達である。
「じゃ、じゃあ俺に…」
「あーもう、幸せそうねぇ、あの2人は」
「行こ行こ。ここにいたらヤケドしちゃうわよ」
ケンスケの呼びかけも空しく、苦笑しながら立ち去る女の子達。
(く、くっそ〜。そ、そうだトウジ!トウジなら俺の気持ちを分かってくれるに違いない!)
「トウジ〜。あの2人をなんとかしてくれ……」
後ろを振り返りつつ、トウジに話かけたケンスケの言葉がまたもや止まる。
(またまたそうだった…。トウジには…トウジにはこの女がいたんだった!!)
この女とは…?
書かなくても分かってますね。学級委員長、洞木ヒカリさんであります。
「…ごっそさん。ホンマ今日も旨かったわ、イインチョの弁当」
「あ、ありがとう…」
これまた机を挟んで向かい合って座っているトウジとヒカリ。
「こ、これ、デザートに食べて」
「これって…調理実習で作ったっちゅーケーキか?」
「そうだよ」
「…ワシが食べてええの?」
「鈴原に…食べて欲しくて頑張って作ったんだよ、私…」
「イインチョ…ありがとさん。ありがたく頂くわ」
「…どう?美味しい?」
「うん、旨いで!やっぱイインチョは料理の天才やな」
「やだ、鈴原ったら…」
(トウジぃ、トウジぃ…お前もか…。)
相変わらず滝のように涙を流し続けるケンスケ。
「シンジもトウジも真っ赤な夕日も……だいっきらいだぁ〜!!」
そのまま教室を飛び出すケンスケ。
シンジとトウジはラブラブ真っ最中でそんな事に全く気付いていない。
ああ、ケンスケ。可哀相に…。
「けっ、やってらんねーぜ」
屋上の手摺にもたれ、1人悪態をくつケンスケ。
その背中はとてつもない哀愁を帯びていた。
「シンジには惣流。トウジには委員長。…俺も彼女が欲しい…」
思わず呟きが漏れる。相田ケンスケ、黄昏モードに突入である。
と、そんな彼の背後に近づく1人の女性の影。
ケンスケは気配に気付き、後ろを振り返ってみる。
「あ、綾波…」
そう、そこには学校中の男共の人気をアスカと二分する、綾波レイの姿があった。
「な、なに?」
ケンスケは思わずドキドキしてしまう。
「これ…相田君に食べて欲しいの」
と言ってレイが差し出したのは、紛れもない調理実習のケーキ。
「お、俺に?」
コクンとうなずくレイ。
「おっっしゃああああっっっっ!!!」
感動のあまり、またもや涙の洪水を作るケンスケ。
(やったぜやったぜやったぜ!この俺にケーキをくれる女の子がいるなんて!!しかも綾波ほどの美少女がくれるとわっ!!
相田ケンスケ、生きててよかったであります!)
「早く食べてみて」
そんなケンスケの様子に表情ひとつ変えず、あくまでいつもの口調のレイ。
「そ、そうだね。ほんじゃ、いったっだっきまぁ〜す!」
口をあんぐりと開け、ケーキを頬張るケンスケ。
が、その笑みを浮かべた顔は青色に変わり、続いて赤色に変わった。
「うげっ!なんだこれ、か、辛いぞ!」
「そう、やっぱり」
「あ、あやなみ?」
「お砂糖とお塩を間違えてたみたいね。碇司令にあげなくてよかったわ」
「へっ…?」
「ありがとう相田君。…ありがとう…感謝の言葉…2回目の言葉…」
なにやらブツブツ言い出すレイ。
ケンスケにクルリと背を向け、階段へと向かう。
「もしかして俺って…実験台ってやつ?」
「………さよなら」
レイの背中を見送りつつ、しつこいけどまたドバドバ涙を流すケンスケ。
「な、なんじゃそりゃぁ〜!俺に、俺に春は来ないのかぁぁぁぁ〜〜〜!!!」
頑張れケンスケ!!
負けるなケンスケ!!
そのうちきっと、いい事があるさ!
……多分ね。
<続く…のか?>
うぉぉ、なんと緋色樹さんが挿し絵を描いてくれました!! 嬉しい〜(^^
特にシンジとアスカのLASなイラスト、もう最高っす!
こんな素晴らしい挿し絵を描いてくださった緋色樹さんのHPはこちらです。
またナイスな挿し絵、期待してます(笑)
という訳で、ギャグに初挑戦なSSです(^^;
コミケが終わった開放感からか、サクッと書いちゃいました(笑)
やっぱギャグと言えばケンスケ、彼しかいません。
途中でシン×アスなラブラブに大脱線しちゃいましたけど…(^^;
続く…とか書いたんで、気が向いたら続きを書くかもしれません。
このノリだと、遅筆な俺にしてはサクサク書けるし(笑)
内容はこんな感じですが、ラブラブは必ず入れますのでご安心を(^^;
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