新世紀エヴァンゲリオン  GAG & LAS

張れ、ケンスケ君!4  〜みんなでお月見だヨ!編〜




 相田ケンスケ、14歳。
 第三新東京市第壱中学校2年A組。
 ミリタリー&メカ&カメラマニア。
 いろいろ世話を焼いてくれる彼女が…いない。
 人類を守る、選ばれたチルドレン……でもない。

 これはそんなナイスな彼の、とある日の物語である。




「う〜さぎうさぎ、なに見て跳ねる、十五夜おっつきさま見てはぁ〜ねぇるぅ〜」

 ここはお昼休み時間の第壱中学校2年A組。
 ガヤガヤと生徒達が楽しげに昼食をとっている教室の一角に目をやると、各々弁当やら購買で買ってきたパンやらを広げた毎度おなじみの面々を確認する事ができる。

「な、なんやいきなり」
「ど、どうしたの?」
「……うさぎ…」
「とうとう狂ったんじゃないの?」

 皆の目が歌声を発した人物に注がれる。
 出だしからいきなり珍妙な歌声を発したのは我らが主人公、相田ケンスケ君である。メガネを妖しく光らせながら唄い上げた彼の音程が外れまくってたのはご愛敬というところか。

「チッチッチ、おいおいみんな、この唄を聞いてもピンと来ないのか?」

 人差し指をメガネの前で動かしながら、さも呆れたような声を出すケンスケ。皆の引いた視線なぞ意に介さないところはさすがである。

「ピンとくるって…それだけじゃ訳が分からないよ」
「そうよね〜シンジ。いいからあんなバカは無視してぇ…はいあ〜ん

 ケンスケの言葉に真剣に首を傾げるシンジとその彼の口元に嬉しそうに箸を運ぶアスカ。もちろんその箸がアスカ本人のものであるのは皆さんの思っている通り。

「分からない?ん〜じゃあヒントな。団子とススキ、これで分かるだろ」
「団子とススキかいな?」
「…おだんご…丸いもの……ドライもんの手…」
「もしかして相田君、お月見の事を言ってるの?」
「ぴんぽ〜ん。さすが委員長、その通り!」
「あ、お月見の事だったんだ。はいアスカ、あーんして

 これまた自分の箸でアスカの口にお弁当を運ぶシンジ。
 もうこんな事は当たり前なのか、お弁当を食べさせあってるシンジとアスカに突っ込む者は誰もいない。

「そうそう。んで今日の夜さ、みんなでパーっと月見やらないか?ミサトさんや赤木博士達も誘ってさぁ」
「おっ、そらええなぁ。いいアイデアやで」
「あ、じゃあミサトさんに後で電話してみるよ。お月見の場所はウチでいいのかな?」

 と、そのシンジに後ろから抱き付くように回される腕。

「わわっ、か、カヲルくん…」
「ちょっとあんた!あたしのシンジに気安く触るんじゃないわよ!!」

 血相を変えて立ち上がるアスカを一瞥し、回された腕の持ち主、渚カヲルは笑みを浮かべながら頬をシンジの髪にスリスリする。

「フンフンフンフン……お月見はいいね、リリンの…
「Vielen Dank!!!」

 ガスッ!!

 お決まりの台詞が終わらぬうちに、アスカの踵落としがカヲルの頭上にクリーンヒット。

「うがっ!……さ、さすが惣流さん、君の踵落としは芸術に値するね…。……ところで今回の僕の出番はこれだけって…本当なのかい?」

 あ、うん。ホント。

「そうかそういうことか…今回の僕は作者にとって忌むべき存在…というわけか……」

 ガックリ力尽きるカヲル。

「ふんっだ!…あっ、シンジったら口の周りにハンバーグのケチャップついてるわよ。ふきふき」
「あ、ありがと。じゃあアスカ、次はどれを食べる?」
「んーっとねぇ…これっ!」

 何事もなかったかのようにラブラブお弁当食べさせあいっこを再開する2人。
 そしてカヲルが撃沈されるのをハナクソをほじりながら待っていたケンスケが平然と話しを続ける。

「終わった?んじゃ話しを本題に戻すな。ほいじゃお月見、今晩シンジの家でって事に決定でいいかな?」

 カヲルの立場っていったい…。

「おう」
「私もいいよ」
「…了解」
「おっけー。ねシンジ」
「うん」
「おし、それで決まりな。幹事はこの相田ケンスケめが努めさせていただきます!」

 声高らかに立ち上がるケンスケ。
 その口元にはにんまりと笑みが浮かんでいる。

 (月見だ月見だ〜!
  くっくっく、酒にほんのり酔ったミサトさん達の艶姿を激写!!
  あわよくば惣流や綾波も酔わせて…くくくっ。
  月の光は女を大胆にする魔力があるのだ!)

 ってそれホントかぁケンスケ?
 うーむ、さすが主人公様である。







 そして時は流れ、空には美しい月が真ん丸に輝いている。
 会場となった葛城家のベランダには風流に団子とススキが用意され、部屋の中には大量のご馳走と酒が揃っている。


「わーお、すっごいご馳走!それにお酒いっぱいねぇ〜」

 目の前に広がる料理と様々なアルコールに目を爛々と輝かせるミサト。

「ああ本当だな。料理を作ってくれたシンジ君と洞木さん、それと酒の手配やらなんやらを全部やってくれた相田君に感謝しなきゃな」

 おつまみ用なのか、自分の畑から持ってきたらしい季節はずれのスイカを手にした加持も楽しそうに微笑む。

「ん〜相田君エライっ!」

 ミサトは上機嫌でケンスケを抱きしめる。

「当然ですよミサトさぁ〜ん。この相田ケンスケ、ミサトさんの為ならたとえ火の中ディラックの海の中!うへらへら」

 鼻の下を伸ばし、一時の至上の快楽を享受するケンスケ。鼻から波長パターン赤の液体がポタポタと滴り落ちるのは若さゆえか。

「お月見…か。風流でいいわね」
「そうですね先輩!なんかこう、創作意欲がモリモリって感じですね!」

 『悪魔の実験室』のお二人も嬉しそうである。

 料理を作り終えたシンジとヒカリをはじめとする子供達も皆楽しげにテーブルにつく。

「みんな揃ったわね?それじゃ宴開始の挨拶を幹事の相田君にやってもらいましょう〜!はい拍手拍手」

 わー わー
 ぱちぱちぱち


 ミサトに声をかけられ、ケンスケがやや照れたように立ち上がりる。

「…こほん。えーっとではこの不祥相田ケンスケが挨拶をさせていただくであります。本日は皆様大変お忙しい中、お集まり頂いて誠にありがとうございます。今日は日頃の仕事や勉強の事を忘れ、楽しく……って誰も聞いてないし!!

 そう、みんなケンスケの事なぞ無視したかのようにワイワイと飲み食いを始め、宴会はスタートしていた。

「あれ相田君、何ボケっと突っ立ってるの?さあさあパーっとやるわよん!」

 早くも3本目の缶ビールに手を伸ばすミサト。

「………ミサトさん……いや〜ん」

 ともかく、こうして宴会は始まった。







「きゃはははは、みんな飲んでるぅ?」

 宴会スタートから小一時間程経った現在、場は大変な大盛り上がりとなっていた。
 子供達はもっぱら食べる事に熱中し、大人達はミサトに引っ張られるようにかなりのペースで飲んでいる。

「いやーもう楽しいわねん。ほらっレイ!あんたも飲んで飲んで!」

 既に少しろれつが回らなくなってきたミサトがコップに注いだビールをレイの前にズズズイと突き出す。

「……命令ならそうするわ」
「命令。飲め」
「…了解」

 コップを受け取りコクコクと飲み干すレイ。

「お、おい葛城…。未成年に飲ますのはマズいんじゃないか?」
「うっさいわね加持ぃ!あんたも飲め〜!!」
「やれやれ…」

 加持はちょっと肩をすくめると苦笑しながらミサトと軽くコップを合わせ、グッとビールを飲み干す。

「わはは、いいぞいいぞ!」

 嬉しそうにパンパンと手を叩くミサト。
 その様子をちょっとヤバそうに見つめるケンスケ。

「お、おいシンジ。ミサトさんちょっと飛ばしすぎじゃないか?」

 さすが幹事としての自覚があるのか、傍らのシンジにそっと声をかける。
 ちなみにケンスケが激写を狙ってた「ミサトのほろ酔い」なんてものは全く無かった。そんなもんはすっ飛ばしていきなり酔っ払い全開モードのミサトである。

「え…、あ、でもまだあれぐらいなら普通だよ。側には加持さんもいるしね。それにいざとなったら僕が何とかするから安心しててよ。ミサトさんを押さえるにはコツがあるんだ」

 さすが同居人、頼りになる言葉である。

「そっか。いざって時は頼むぜ」
「うん」

 ニッコリ微笑むシンジにホッとケンスケは胸をなで下ろした。

ねぇねぇシンジ、こっち来て

 と、そのシンジを呼ぶアスカの甘えるような声。

「あ、うん」

 シンジはその声を受けて立ち上がり、アスカの手招きするベランダへと向かう。

「LASフィールドのお時間…か。いいねぇ……」

 その通りですケンスケ君。
 君はミサトが暴走しないようにしっかりと見張っていてくれたまえ。





 アスカの声に誘われ、ベランダへとやってくるシンジ。

「どしたのアスカ?」
「ここ、座って。一緒にお月様見ましょ」

 アスカはベランダに置かれた長椅子に座り、自分の隣をちょんちょんと指差す。

「う……ん…」

 その言葉にシンジは椅子に腰を下ろしかけ、何故かそこで動きが止まってしまう。

「どしたのシンジ?」
「あ、いやその…アスカが…」
「あたしが?」
「その…月の光に浮かんで見えて……なんかまるで月から来たお姫様みたいだなぁ…って思って…」

 シンジの飾り気の無い、本心から出たこの言葉を聞いて、アスカの頬に朱の色が浮かぶ。そしてその頬に手を当て、モジモジと恥ずかしそうに顔を少し背けた。

「…やぁんもぉ……」
「あ、ご、ごめん。何言ってるんだろう、へ、変だよね僕」

 そんなアスカの仕草につい自分の口から出てしまった言葉の意味を知り、シンジも恥ずかしそうにしながら腰を下ろした。

「シンジ」
「えっ…」

 自分の名を呼ぶ言葉に彼女の方へ視線を向けると、シンジの目に入ったのはアスカの相変わらず赤く染まった頬と、少し潤みを帯びているような蒼い瞳だった。

「あたし…お姫様?」
「うん…お姫様…」
「あたしがお姫様ならね…シンジはあたしのナイト様なのよ」
「ナイト?」
「そう。お姫様をね、ずっとずっと守ってくれる…あたしのナイト様…」
「アスカ…」
「ナイト様…これからもずっと側にいて、あたしを守ってくれる?」

 アスカの少しおどけたような表情を優しく見つめ、シンジは静かに、でも力強く心を込めて呟いた。

「…お守りいたします、お姫様…」

 LASフィールドの効力か、ミサトの喚き声なぞ2人には届かない。
 アスカは嬉しげに微笑むと、シンジにそっと身体をあずける。
 そんな彼と彼女を優しく見守るかのように、2人の頭上には丸い月が神秘的な光を投げかけていた……。


 <おわり>

 …って終わっちゃダメなんだよ。
 短編LASもののシメを飾るような文章が出ましたが、頑ケンはまだまだ続きます。ご安心を。






 そして「お月見」と称したただの宴会は盛り上がり続け、葛城家からは笑い声やら歓声が休むことなく聞こえている。

「ぎゃっはっはっは!!飲め飲め〜!」
「おいおい葛城…」
「シンジぃ、あ〜ん」
「う、うん…」
「…コクコクコク」
「鈴原これね、私が作ったのよ」
「かぁ〜!ごっつウマイわ!」
「くっくっく…」

 そんなみんなの様子を見ていたリツコが唐突に「コホン」と咳払いをする。

「ん〜、どったのリツコぉ?」
「ふふっ、宴もたけなわね。頃合いは良し。ここで1発、素晴らしい芸をご覧にいれましょう」

 おおお〜

 皆からあがるどよめき。

「先輩!あれをやるんですか?」

 マヤのその声にリツコは無言のうなづきで答える。

「分かりました…ではさっそく…」

 自分のバッグから何やら電飾のついた奇妙な輪っかを取り出し、おもむろにそれを頭に装着するマヤ。

「な、何ですかそのマッシーンは!?
 思わず目を血ばらせながら大声を上げるケンスケ。さすがメカオタク、いかにも怪しげな機械ではあるが血が騒いだのであろう。

「ふっふっふ、よくぞ聞いてくれました。これは私とマヤが発明した『念写マッシーン』よ!!」
「「「ね、念写マッシーン?」」」

 一同の頭上にハテナマークが点灯する。

「そう。これを頭につけてカメラに念じるとアラ不思議!、頭の中でイメージしたものが写し出されるという代物なのよ!」
「そうなんです!これであなたもユリ・ゲラーって感じなんですよね先輩!」

 おお〜

 再びどよめきが起こる。

「では実際にこのマッシーンの素晴らしさをご披露しましょう。マヤ」
「はい先輩!」

 リツコの声を受けて、頭に装着した『念写マッシーン』のスイッチを入れるマヤ。
 ブゥゥゥンと低い機械音を発し、周りに付けられた電飾がチカチカと点滅しはじめる。

「これで準備はOKね。では相田君、あなたの持っているそのポラロイドカメラをちょっと貸してくれないかしら」
「へっ?これですか?」

 と言ってケンスケは自分の手の中にあるカメラに目をやる。

「そうよ」
「んん〜、実はこれって高いんですよねぇ。軍から流してもらった暗視フィルター付きのやつだから…。ねーキャサリンちゃん

 そんな物が存在するのかどうか知らないが、ケンスケにとっては大事な高級品らしい。しかもカメラにキャサリンなどと名前を付けているあたり、かなりキている。

「大丈夫よ、ちょっと借りるだけだから」
「他ならぬ赤木博士の頼みだから承知したいのはやまやまなんですけど…う〜ん」

 カメラを手に渋るケンスケの眼前にリツコがスっと顔を近づける。

「い・い・か・ら貸しなさい。あんまり我が侭言うとペンするわよ、ペン。それともまた…薬を飲みたいのかしら?」

 リツコの白く光る目と薬というその言葉に、ケンスケの顔から血の気が引く。

「すすす、すいません…そそそ、それだけはご勘弁を…」
「じゃあ貸してくれるわね?」
「は、はひっ!」

 ケンスケの震える手からカメラを受け取り、ニッコリ微笑むリツコ。さすが『悪魔の実験室』のボスだけの事はある。

「ふふふっ、ありがとう相田君。じゃあマヤ、早速やってみて」
「はい先輩!行きます!!」

 マヤはリツコから手渡されたカメラを自分の額の前に持っていき、目を閉じる。もちろんそのカメラはレンズの部分に蓋をしており、通常では絶対に何も写らない状態だ。
 その様子を好奇心いっぱいの顔で見守るケンスケを除いた面々。

「うぅぅぅぅ……はぁっ!!」

 カシャ

 そのマヤの掛け声と共にシャッターが押され、数秒後、ポラロイドカメラから写真が出てきた。

「はぁはぁ…ど、どうですか先輩?」

 マヤから受け取った写真を凝視するリツコ。ミサトや子供達もワクワクして覗き込む。
 が、

「はぁ?何よこれ、写ってないじゃない」

 アスカの言葉に皆うなづく。
 その言葉通り、写真にはまるっきり全然何にも写ってはいなかった。

「お、おかしいですね先輩…」
「お、おかしいわねマヤ…」

 皆の視線が2人に集中する。

「も、もう1回。もう1回やってみましょう!」

 その視線に焦りながらマヤを促すリツコ。

「そ、そうですね!…………はぁっ!!」

 が、結果は同じ。
 その後2、3度繰り返しても写真に何かが写る気配すらも感じられなかった。
 皆のしらけた視線がまたもや2人に集中する。
 その視線を受けて、汗をタラタラ流す先輩と後輩。

「………ま、マヤっ!作戦P−20を発動してっ!」
「P−20……。りょ、了解!」

 マヤはそう叫ぶと、額の前のカメラにヘッドバッドをかました

「ああああっっっっ!い、伊吹さんっ!!」

 当然それを見て声を上げるケンスケ。
 しかしマヤはその声を無視してガスッガスッとヘッドバッドを続けた。

「せ、先輩、このカメラ壊れてますよ」

 ヘッドバッドにより形が変形したカメラをリツコに差し出すマヤ。その額にはうっすらと血が滲んでいる。

「どれどれ…。あ、ホントね、壊れてるわ。これじゃ写らないのも無理はないわね」

 白々しく言い放つリツコ。

「はい相田君、返すわね」
「あ、赤木博士!ひどいっすよ!!」

 顔を真っ赤にして怒るケンスケ。うん、それはもっともだ。

「きゃはは、壊れた壊れた!」
「わーすご〜い!!」
「いいぞ〜!」
「ひゅーひゅー」

 そんなケンスケを無視するかのようにリツコとマヤに浴びせられる喝采。
 その歓声を受けて、『悪魔の実験室』の2人は優雅に一礼する。
 そして、やんややんやの喝采の中、1人涙ぐむケンスケ。

「お、俺のカメラ…。キャ、キャサリンちゃん……」






 リツコとマヤの余興のせいもあってか、尚も激しさを増していくお月見。
 ケンスケだけがポツンと部屋の片隅でカメラを胸に涙ぐんでいる。

「…コクコクコク」
「ちょっと綾波。飲みすぎなんじゃ…」

 あれから黙々と飲み続けるレイに心配そうに声をかけるシンジ。

「シ〜ンジ!」

 と、その彼にバっと前から抱き付くアスカ。

「わっ、あ、アスカ」
「んふふ〜シンジぃ〜」
「ああっアスカ!お酒飲んじゃったの?」

 シンジの言葉通り、アスカの顔はアルコールで真っ赤に染まっていた。

「ん〜シンジぃ、うにゅうにゅ

 アスカは笑みを浮かべた幸せそうな顔をシンジの胸にスリスリとこすり付けている。

「ちょっとアスカ、しっかりしてよ」
「ね、シンジぃ」
「な、なに?」
キスしよ、キス

 妙にとろんとした目でシンジを見つめるアスカ。

「な、何言ってるのさアスカ!」
「いいじゃなぁ〜い、いっつもいっぱいしてるでしょ?」

 その言葉に真っ赤になって、シンジはバツが悪そうに視線を動かす。
 シンジの視線の先には、にへらぁと笑みを浮かべているミサト。

「ふふーん、いっつもいっぱいねぇ」
「ち、違うんですよミサトさん!」
「シンジ君もやるなぁ。うんうん、男たるものそうでなきゃな」
「か、加持さんまで!アスカは酔ってるか……ん、んぐっ!!」

 シンジの言葉はそこで途切れた。
 アスカが電光石火の早さで彼の唇に自分の愛らしい唇を重ねていたのだった。

 パキーン

 2人の周辺にお約束のものが展開される。

「来た来たぁ!LASフィールド!」
「…コクコクコク」
「見てみろよリっちゃん。あれは舌を使ってるぞ」
「ほんとね」
「きゃー、シンジ君とアスカちゃんってすっごーい!私恥ずかしいです、先輩」

 なぁーんていいながらも顔を覆った指の隙間からしっかり凝視するマヤ。
 大人達のいいつまみと化している2人。が、LASフィールドにはそんな視線は無効である。あくまで自分達の世界を展開するシンジとアスカ。
 アスカは両腕をシンジの首にしっかりと回している。
 シンジの方もガッシリとアスカの腰に手を回している。

 1分…。
 2分…。

 どのくらいの時が経ったろう、やがて2人の唇がゆっくりと離れる。

「アスカ…」
「シンジ…」

 あまりに激しいキスだったのか、潤みを帯びた2人の目。

「アスカ…顔が真っ赤だよ」

 アスカの頬を優しく撫でるシンジ。
 その手をそっとつかみ、うっとりとシンジを見つめるアスカ。

「本当?」
「うん。鏡持ってこようか?」
「…いらない。シンジの瞳を見るから」
「僕の瞳?」
「そう…。本当のあたしの姿が映るのはね、シンジの瞳の中だけなの…」
「そっか…。じゃあ僕もきっと同じだね。アスカの瞳にしか本当の僕は映らないんだ…」

 LASフィールド最大展開。今日も絶好調である。
 と、そんなシンジとアスカの横でも淡いラブラブが展開されつつあった。

「見てみぃ委員長。シンジと惣流のやつ今日はスゴイで」

 シンジとアスカを指差すトウジ。その手をそっとつかむ委員長、ヒカリの手。

「い、いいんちょう?どないした?」
「鈴原…あのね…」
「あっ!イインチョも顔が真っ赤やないか。さては惣流と一緒に飲んだんやな」

 そう、ヒカリの頬も真っ赤に染まっていた。知らず知らずのうちにヒカリもアスカと飲んでいたようだ。

「鈴原…聞いて」
「な、なんや?」
「私、今っだたら素直に自分の気持ちを言えると思うの…。私ね、前からずっと…」
「待ったぁ!」

 ヒカリの前にビシっと手を突き出すトウジ。

「こ、こうゆうのはな、男から言わなアカンのや」
「……………」
「ワシも今なら素直になれそうや。あ、あのな…ワシもイインチョ…いや、ヒカリの事をな、前からずっと…」

 そして…。

「ああっ、泣かないでやイインチョ」
「だってだって…嬉しいんだもん…」

 良かったねぇ、トウジと委員長。
 本当は未成年はアルコールを飲んじゃいけないんだけど、たまにはいいものなのかも知れない。

 ………………。
 は?ケンスケ?
 誰それ?






 そして宴はピークに達しようとしていた。

「おらおらおら〜!!酒が足らねーぞ!!」

 一升瓶をブンブン振り回しながら吠えるミサト。酒が底をついた事により、リミットゲージはブチ切れ寸前のようだ。

「幹事ぃ!幹事の相田ぁ!!何処だぁ!酒買ってこーい!!」

 ミサトはのっしのっしと部屋を徘徊する。
 その様子をドアの影からカタカタと震えながら見つめるケンスケ。

「相田君、それ以上身を乗り出すと危険だ。見つかったら何をされるかわかったもんじゃないぞ。見ての通り酒が無くなったミサトは手が付けられない、悪いが急いでコンビニで買ってきてくれ」

 と、これはそのケンスケの傍らの加持。

「は、はいっ、行って来ます…」

 加持から金を受け取り、震える足取りで玄関に向かう。

「頼むぞ!早く帰ってきてくれ!」

 その声を背に受けて、玄関からフラフラと飛び出すケンスケ。
 ミサトのほろ酔いとかアスカやレイを酒に酔わせて…なんて事はもはや頭の中にはない主人公様だった。



「ただいま…」

 数分後、ケンスケは両手に酒を抱えて帰ってきた。

「か、加持さん…?」

 おそるおそる唯一頼りになる加持を探してみる…。
 が、そこには…。

「ああっ!か、加持さんっ!!」

 加持は部屋の片隅でうつ伏せになって倒れていた。その加持の頭の近くに割れたスイカが2個転がっているのが見える。

「あわわわわ、か、加持さん…」

 その惨状を見てカタカタ震えるケンスケ。
 と、背後に人の気配を感じ、ケンスケは振り返る。

「うぎゃあ、みみみみ、ミサトさん!!」

 ケンスケの絶叫を聞いて、ニッコリ微笑むミサト。

「あら〜ん相田君、お・か・え・り。お酒…買ってきた?」
「は、はい…」
「おっけ〜おっけ〜!んじゃ再度パーっと行くわよん!」
「あ、あの、ミサトさん…」
「なーに?」
「か、加持さんは…どうしたんスか?」
「ああ、加持君ね。スイカの呪いにやられたんじゃないのぉ?ほっほっほ〜」

 (ミサトさんだ…やったのはミサトさんだ…。
  加持隊長…自分は…自分はこれからどうすればいいでありますか…。
  やはり仇を…仇をとるべきでありますかっ!?)

「なぁーにブツブツ言ってるのよん、ささ、ぶわーっと行くわよ!!」
「はは、そーっすね」

 引きつった媚びを売るような笑みを浮かべたままミサトに引っ張られていくケンスケ。

 隊長は…隊長は草葉の陰で泣いてるぞ!






「げらげらげら、がおー!

 新たな酒を得て、口から火を吐きながら暴走を始めるミサト。
 部屋の中に残っているのはシンジとアスカ、相変わらず黙々と飲み続けるレイ、マイペースで飲み続けるリツコとマヤ…。

「あ、あれっ?トウジと委員長はどうしたんですか、赤木博士?」
「ああ、あの2人ね。洞木さんが寝ちゃったから、鈴原君がおぶって帰ったわよ」

 (に、逃げたな…。)

 トウジと委員長、ナイスな判断だ。

「相田くぅ〜ん」
「な、なんスか?」

 ブシッ

 ミサトの声に振り返ったケンスケの顔にビールが直撃する。

「きゃはははは、優勝〜!ペナントレース優勝おめでとう〜!きゃはは」

 床をドンドンと踏み鳴らしながら大笑いのミサト。
 ビールまみれのケンスケは泣きそうになりながらシンジの肩に揺さぶる。

「し、シンジ!助けてくれ!加持さんが倒れた今、頼れるのはシンジだけだ!例のコツとやらであの人を止めてくれっ!!」

 肩を揺さ振られ、アスカと何やら話していたらしいシンジの動きが止まる。

 ボカッ!!

 シンジは振り向きざまケンスケに大パンチをお見舞いした。

「うぎゃっ!……し、シンジ…?」
「うるせーよ相田!!」
「へ?」
「うるせえって言ったんだよ、このボケナス!!
「シンジ…まさかお前も…飲んじゃった…の?」

 シンジの目は完全に据わっていた。
 アルコールの力によってシンジの奥底に眠っていた部分が覚醒したらしい。むう、アルコールの力、恐るべし。

「ったくよ〜、俺とマイスイートハニーとの愛の語らいを邪魔するんじゃねーよ!殺すぞ!!」
「お、俺って……一人称が変わってるぞ。……成長した?」
「あぁぁ?何言ってるんだよテメェ!!」
「ごごご、ごめんなさい」

 あまりのシンジの眼光に思いっきりたじろぐケンスケ。

 パキーン

 シンジはちっと舌打ちすると、自らLASフィールドを展開する。
 酔ったシンジはこんな事も出来るのか…?覚醒したシンジ、まさに無敵のシンジ様である。

「けっバーカ。…ごめんねアスカ、変な邪魔が入っちゃったよ」
「ううん…いいの…」
「ねぇアスカ…」
「なぁに?」
「キスしようか…」
「うふふ、どーしようかなぁ」
「なんだよ、さっきはキスしようって言ってたのは誰だっけ?」
「ん〜と…あたしじゃないも〜ん」
「そうゆう事を言うのは、この口かな?」

 アスカの可愛らしい唇をそっと摘まむシンジ。

「やぁん、知らなぁ〜い…」
「嘘つきのアスカの唇なんて…塞いじゃえ」

 と言うが早いか、言葉通りにアスカの唇を塞ぐシンジ。

「…んんっ…」

 先程より濃厚なキス。
 アスカは幸せそうに目を閉じる。

 …アルコールの力って偉大ですね。
 ああもうどんどんやっちゃってください。

「……ん…………はぁっ……」

 そしてゆっくりと2人の唇が離れる。
 スッと切れる唇と唇を繋いでいた糸。

「シンジ……好き…」
「僕もさ…アスカ」
「好き…大好きよ……」
「僕の方がもっともっと好きだよ…」

「…ばか……」

 再び縮まる2人の距離。
 そしてシンジとアスカは、今日三度目の熱いくちづけを交わした。





 さて一方の主人公はというと…。

「ぎゃはははは、落書き落書きぃ!」
「わぁぁ、ミサトさんっ!油性マジックで書かないでくださ〜いっ!」
「相田君…ほいっ」

 ボムッ

「ぎゃ〜!俺の髪がぁ!!」
「きゃはは、先輩ぃ!バッチリですねぇ〜!」
「ふふふ、これぞお手軽超小型アフロヘアー作成爆弾、『アフロ君』よ」
「…コクコクコク」
「脱げぇケンスケ!腹踊りしろ!腹踊りっ!!ぎゃははははは」
「もう1個いっときましょうか…ぽいっ」

 ボムッ

「んぎゃ〜!!」
「きゃははははは、おっかし〜!先輩って天才ですぅ!!」
「…コクコクコク」
「た、助けて!ねぇ誰か、僕を助けてよ!!優しくしてよ!!!
「おいコラ、それは俺の台詞だ!ボケッ!!」

 ガスッ!!

「ぎゃはははははは!!」
「ふふふふ」
「きゃはははは!!」
「…コクコクコク」

「う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」






 そして宴は終わった。
 部屋の中では寄り添って寝ているシンジとアスカを始め、ミサト達も完全に寝入っている。


「…幸せ〜ってなんだぁっけ、なんだぁっけ……」

 真っ暗な洗面所で顔を洗うケンスケ。
 その頭はリツコの爆弾により、小柳トムのような見事なアフロに仕上がっている。

「しっあわせわぁ……あ〜るいてこない……」

 顔には髭やら眉毛が描き込まれ、上半身裸の彼のお腹にはヘンテコな人間のような顔が描いてある。

「ぐすっ…ぐすん……幸せ探しに…れっつらごー…」

 と、そんな彼の後ろに立つ1人の人影。

「あ、綾波…」

 そう、ケンスケの傍らに立つのはレイだった。
 あれだけ飲んでいたにも関わらず、彼女の顔はうっすらと赤くなっているだけである。

「ど、どうしたの?」

 レイは無言でケンスケの側まで近づく。
 切なそうなその表情。
 ケンスケはむろん、他の誰もが見たことの無いような表情のレイである。
 その表情を見てケンスケは思わず緊張する。

「相田君…」

 レイはそう小さく呟いて、ケンスケの手に触れる。

「あああ、綾波?」

 心臓がばっくんばっくんのケンスケ。

 (これはもしかして…。
  さっきの委員長みたく、綾波も酔って素直になっちゃったとか…?
  …きっとそうだ!そうに違いない!!
  ついに俺も、俺にも…。)

「うっ……気持ち悪い…
「へ?」
「おえおえ、げろげろ」

 ケンスケに例のモノがかかる。
 それは「あした○ジョー2」で矢吹ジョーが力石戦のトラウマにより、リング上で口から発射していたものと同じである。アニメ放映時と同じようにキラキラと描写が変えられているが、まぎれもない、これはアレだ。


「あ、あやなみぃ……それは惣流のキメ台詞だよ……」

 その声にゆっくりと顔を上げるレイ。
 すっきりしたのか、表情はいつものように戻っている。

「…洗面所……間に合わなかった…」
「………………」
「………………」
「……ごめんなさい…こうゆう時どんな顔をすればいいのかわからないの…」
「………………」
「………………」
「……わ、笑えばいいと思うよ
「………………」
「………………」
「………………」
「にっこり」


 薄暗い洗面所。
 笑みを浮かべる少女と、その前に立つメガネの少年。
 少年の顔に髭やら眉毛に混じって「肉」という文字が額に描いてあったのは秘密である。



 頑張れケンスケ!!
 負けるなケンスケ!!
 そのうちきっと、いい事があるさ!
 ……多分ね。


 <続く…のか?>




 最後まで読んでいただき、お疲れさまでした。
 こんな駄作に付き合ってくださり、誠にありがとうございます。

 てな訳で、頑張れケンスケの第4弾でした。
 あああ、今回はちょっとやりすぎましたかねぇ…いろんな意味で(^^;
 特にレイとミサト。
 ファンの方、ごめんなさぁ〜い(^^;
 本当はえびもレイとミサトは大好きです。
 オチをつけるには、レイに頑張ってもらうしかなかったんです(^^;

 それにシンジとアスカ。
 ぐわ、書いててすっげー恥ずかしかったっス(^^;
 LASな人達は…喜んでいただけたでしょうか?(笑)


 次回作は…35000ヒットでLASものとか言ってたのに過ぎちゃいました(^^;
 んんん〜それは40000ヒットでお目見えって感じしょうか?
 あ、「KOB」の続きも書かないとイカンですね(^^;



 感想とかいただけると、超やる気になっちゃいます。
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