「‥初号機だ」
「そうだな、碇」

 指令席でモニターを見つめるゲンドウと冬月。その先にはシンジの搭乗する初号機と、無数とも言える量産型エヴァシリーズが対峙しており、この状況下ではどうみても優劣は明らかだ。

「リツコ君、初号機以外を回線でつなげ」
「‥はい」

 リツコはゲンドウに言われるとパネルを操作し、コンソールで音声回線を繋ぐ。

「全職員に通達。‥現時点をもってエヴァ初号機並びに、パイロット碇シンジは破棄」

 驚くべき通達。




「よって、これから起こり得る出来事については我々の知る所ではない」







新世紀エヴァンゲリオン・ファイナル 第143話
「 希望と言う名の交響曲(シンフォニー) 」

By:関西 方麺







「指令!どう言うおつもりですか?!」

 ミサトがゲンドウの通達に対し反論の声を挙げる。
 先の戦いでレイの乗る零号機は大破、アスカの弐号機はあの時の不祥事で凍結、彼女は独房入り。しかも照らし合わせたかの様に今回のエヴァシリーズの大挙。それ以前に、この様な命令は明らかに常軌を逸しているとしか考えられない。

「聞こえなかったのか葛城三佐。‥ならばもう一度言おう、現時点をもってエヴァ初号機並びに、パイロット碇シンジは破棄だ」

 彼女の問いに、再びゲンドウの非情な命令が再び司令部に響き渡る。

「ですが司令!!」
「ミサト、諦めなさい」

 執拗に食い下がろうとするミサトに対し、白衣に身を包んだリツコが制止する。

「どう考えての今の私達には勝ち目はないわ。‥シンジ君には悪いけど、彼には人柱になってもらうしかないわね」

 あまりにも冷酷な言い分。ミサトはそれを聞くと彼女の胸倉に掴み掛かかる。

「リツコ、あんた!!」
「‥私は科学者として冷静に今の状況を分析しているだけよ」

 リツコの胸倉を掴む手が怒りの為に震える。
 科学者の分析かなんだか知らないが、ミサトと言えどシンジを見殺しにするほど冷酷ではなれないし、しかも私生活では弟の様に可愛がっている事も事実なのだ。

 ‥だが、何かがおかしい。このように逼迫したこの状況の中、リツコはどこか余裕があるように見える。
 まるで、この先の出来事が既に決まっている事を知っているかのごとく。

「‥ミサト、手を離しなさい。あなたの今している事は司令に対する侮辱でもあるのよ」

 リツコに言われると、ミサトは諦めたのか、ようやく手を退けようとする。
 だがその瞬間、ミサトは彼女の首筋にアザらしき物を見つけた。


 ‥何、あのアザ…。
 ‥いいえ、あれはアザなんかじゃないわ…。


 思うミサトに、ある事がフラッシュバックされる。
 それは、再び姿を消した加持がミサトに対してコンパクトフラッシュの中に残した一文。


『誰も信じるな、葛城』
『これから先、ある印を着けた奴等がお前の前に現れるかもしれないが気をつけてほしい。そいつはこの先重要なファクターだ』
『その印の形は…』


「ペンタグラム…?」

 呟く様にして言うミサトの声に対して、今まで冷静を保っていた彼女の顔色が変わる。
 リツコは白衣を翻すと、首筋を両手で隠す様にしてミサトに背を向けた。

「‥リツコ、あんた…」
「そこまでですよ、葛城さん」

 こめかみにヒヤリとした感触。
 銃を突き付けられているので横を向く事はできないが、この声には聞き覚えがある。しかし、この様な状況だとは言えミサトに気配を感じさせる事もなく、忍び寄るとは。



             ***



「くそっ、なんなんだよ!」

 プログレッシブナイフを量産型の肩口に突き下ろす。そして、下ろしたナイフはそのままに相手のスライサーを奪い取ると、自機の後ろに待ち構えているエヴァシリーズに切りかかる。

 戦自の攻撃により、アンビリカルケーブルが切断されてから本部との連絡が一切途絶えてしまった。
 限界まで後三分。二分間の間に何体のエヴァシリーズを倒したか分からない、だが、雲霞のごとく現れる敵に対し、どこまで対抗出来るかも分からない。

「ちくしょう、ちくしょう!」

 スライサーを地面に突き立て、それを軸にして飛びあがり、相手の顔と思われる部分に蹴りを叩き込む。そしてその反動を利用しながらスライサーを引き抜くと、切っ先を盾にしつつ他の量産型に突きかかっていく。



 ‥だが、シンジにとってこの戦い方はあまりにもリスクが高すぎた。

 シンクロ率が高すぎる為か息が切れる感覚がする。
 操縦桿を握る手が痺れてくる。
 しかし、敵の攻撃は止む事を知らない。


「アスカ…ごめん、‥約束、守れそうにないよ…」


 戦いの中、遥か上空を飛来する新たなエヴァシリーズを見上げつつ、シンジは呟いた。





 ‥ドガァァァン…。

「ここまで衝撃が伝わってくるなんて…」

 独房の中でアスカは誰にも聞こえないくらいの声で呟いた。ジオフロントではシンジの搭乗する初号機が一進一退の戦いを繰り広げており、その振動がここまで伝わってくる。

 あの戦いでアスカはあまりにもイージーなミスを犯した。結果的にネルフを救う事にはなったが、現に彼女は独房の中で長椅子に座り罰を受けている。

「N2をあそこで市街地に向けなかったら…」

 ‥ドガァァァン…。
 長椅子の上で体操座りをするかの様に腕を抱え込み、アスカは衝撃に耐える。

「やっぱり、アタシ…、あの時ファーストに嫉妬してたのかな…」

 再び振動が響く。アスカは薄暗い部屋の中、虚ろな眼差しで虚空を見つめ、そして伏す。
遅 かれ早かれ、あの状態からすると戦自の連中は一年前と同じ様に部隊をここに送りこんでくるだろう。そうすれば全てが終わる。同じ徹は踏みたくはないが仕方がない。
 ‥そうこれは運命なのだから。



             ***



「‥いつまでこうしているの?」

 ん…、何?とうとう幻聴まで聞こえてきたってか?アタシの運命もたいした事なかったわね…。

 …って、‥違う!!    こ、この声は…。

 驚いてアスカが顔を上げると、そこにはレイとカヲルが立っている。

「なななな、何、何なの?!」

 ここから廊下に出る方法はカードキーを使い、しかもごくごく限られた職員でしか扱えない。それ以前に数秒前まで自分以外の気配はなかった筈。
 いきなりの出来事で呂律の回らないアスカを尻目に、レイはアスカの顔を覗き込むようにしながら中腰でたんたんと話しかける。

「あなたは今、なぜこんなところにいるの…」
「ア、アンタ、病院にいるはずじゃあ…」

 レイの出現に驚くアスカだったが、たんたんと自分に対し諭すレイに、少しづつやり場のない怒りが沸いてくる。
 自分とて、すきでこの場にいる訳ではない。本来なら自分はシンジと一緒にエヴァシリーズと戦っているはずなのだ。なのにどこからわいたか、いきなり現れたレイにこの様な事を言われる筋合いは毛頭ない。

「な、なによ、アンタにそんな事言われる必要なんかないわ!!」
「‥質問に答えて。弐号機パイロット」
「アンタこそ質問に答えなさい!!」

 怒りの為、長椅子から立ち上がりつつ真っ赤な顔で、レイに対し叫ぶ様に答えるアスカ。しかし、その瞬間レイに両肩を掴まれ、壁に押さえつけられる。

「ちょ、ちょっと何よ!離しなさいよ!!」

 アスカはレイの両手を掴みつつ、振り解こうとするが彼女は腕はビクとも動かない。不条理なレイの行動にアスカはレイを睨むように顔を見るが、レイは下を向きアスカの位置から表情を伺い知る事ができない。

「何よファースト!顔を上げなさい!!」

 押さえつけられながらもアスカはレイを罵倒する。だが、その言葉が終わらないうちにレイの腕からは力がと抜け、アスカの肩口に添えられているだけの状態になってしまった。
 急な展開に戸惑うアスカ。何事かとレイを見ると、彼女は顔を上げてアスカを見ている。薄暗い部屋のはずなのに彼女の表情は読み取りにくいのだが、一点だけ分かった事があった。


 ‥ファーストが泣いている。


「‥なぜ、あなたなの?碇君はなぜあなたを選ぶの…」
「‥ファースト、アンタ…」

 アスカの目を真っすぐに見つつ、目に涙を溜めて小さな声で呟く様に言うレイ。

「私はあなたが羨ましい…。‥私はどんなに努力してもあなたに近づけない。碇君に振り向いてもらえない。どうして?‥私とあなたは何が違うの…?」

 小さな嗚咽。レイはアスカから手を退けると、そのまま後ろを向き、声をあげる事なく肩を震わる。

「‥シンジ君を助けてやってくれ、惣流さん」

 何時の間にか長椅子の端の方に座り、二人の成り行きを見守っていたカヲルがアスカに話しかける。

「君も知っている様に今彼の立場は大変に危ういし、それゆえに魂が悲鳴を挙げている状態だ」

 いつもの様なにこやかなカヲルではなく、真剣な顔つき。彼は長椅子から立ちあがるとレイの方に近づいていく。
 カヲルが近づいていくと彼女は耐えきれなくなったのか、そっとカヲルの胸に自らを預けると再び嗚咽を挙げ始めた。



             ***



ビーッ…、ビーッ…

「何事だ?リツコ君、報告を」

 異常な状態の中、あくまでも冷静に事を運ぶゲンドウ。言われたリツコは白衣のエリを正すとマヤに問う。

「マヤ、どうしたの?現状報告を」
「は、はい、えっ…、大変です!凍結中の弐号機が!!」



             ***



「‥何よ、アンタ達…」

 さも、ふてぶてしそうにカヲル達に言うアスカ。レイを胸に抱くカヲルが彼女を見ると、頭をボリボリと掻いている。

「さっきから聞いてたら二人で勝手に盛り上がっちゃってさ…、アタシの立場がないじゃないのよ…」
「ふふ、だんだんといつもの君に戻ってきたようだね」

 ‥アタシは一体、何をウジウジしてたんだろ?なんだか今までが夢だったみたい。

 アスカは軽く伸びをすると、自らの顔を両手でぱんぱんと叩いた。それこそ赤い紅葉模様が付くくらいに。

 「さて…と、アンタ達、ここまでやって来たからには何かアタシに土産物があるんでしょうね…」

 アスカがカヲルに言うと彼はいつものにこやかな顔つきに戻っていた。





 ドゴオオォォォ!!

「な、何?なんなの!?」

 再びの衝撃。しかし先程までの振動ではなく、この衝撃は内側からのものだ。

「‥リリスのしもべがそろそろ動き始めたようだね」

 にこやかな顔つきを崩さずにアスカに言うカヲル。その横ではレイがようやく泣き止んだのか下を向いたまま立っている。

「ファースト!」

 いきなりのアスカの叫び声にビクッと体を強張らせるレイ。つかつかとアスカはレイの前まで歩いていく。

「アンタにこれだけは言っておくわ。シンジは絶対に渡さない。だけど、アンタにシンジを好きだと言う気持ちが少しでもあるんならアタシから奪い取ってみなさいよ!!」

 片手を腰に当てて、もう一つ手はレイを指差し、いつものポーズでふんぞり返るアスカ。

「‥いい気にならないで、弐号機パイロット。碇君はあなたに騙されているだけだわ」

 レイはアスカの言葉を聞くとボソッと呟いた。その横では楽しそうにカヲルがニコニコとしている。

「‥では惣流さん、そろそろここから脱出しようか」
「アンタに言われなくても分かってるわよ。でもアンタらみたいにアタシは生身の人間なんだから…」

 ドゴオオォォォ!!

 再び衝撃が響く。しかもその振動はだんだん大きくなっていく。

「クスクス…、そろそろ到着するころだわ…」
「何よファースト、それってどう言う……って、まさかアンタ達!!」





次回予告

「嘘…嘘ッ…ウソッ!!」

 カヲルとレイの力を借りジオフロントまでたどり着くアスカ

「ちょっと、どこにいるのよ!」
 だが運命は彼女に更なる試練を与える

「遊んでんじゃないわよ!さっさと帰って、あたしのご飯を作りなさいよ!!」


             次回、新世紀エヴァンゲリオン・ファイナル第144話「破壊」


「……イヤァァァーーーーーー!!」





関西さんに投稿していただきました連載小説「新世紀エヴァンゲリオン・ファイナル」、第143話でした〜、
執筆お疲れさまでした関西さん。いや〜今回は待ちに待ってしまいましたよ。

いよいよ佳境をむかえたこのシリーズ、今回はかなりの動きがありましたね。思いっきりハラハラドキドキな展開です。あれ、今までの展開ってどうだったっけ…?という読者さんは、是非「エヴァンゲリオン・ファイナル」の第50話くらいからでもいいから読み返してくださいね。面白さが数倍違いますよ。

それにしても、リツコさんがまさか敵のスパイだったとは…。第100話で人質から開放されたのにまさかこういう展開だったとは、全然想像できませんでした。

今回の先の展開はいろいろ想像できますが、真のストーリー展開は作者の関西さんのみぞ知るって事ですね。
とにかく意表をつかれた今回のお話。続きが楽しみです!

作者の関西方麺さん(おお、ドリキャス!)に作品のご感想をっ!
感想は作家の元気の源、是非お願い致します。

あーうー、今回もまたいい所で終わってしまうのですね。ズルイ引きだなぁ(w
カヲルとレイの登場。そして彼らの真意とは!?
続きの完成を期待して待ってます。頑張ってくださいね、関西さん!!




バゴオォ!!

「ちょっとアンタ何よコレ?!!」

 ‥いたあぁ…。
 へっ、みて分からないんですか?正福さんの「エヴァンゲリオン・ファイナル」ですよ。

「そんなん見りゃ分かるわよ!!なんでこれをアンタが書いてんのよ!!」

‥まあ、これを見てくださいよ。



[106] 題名:次回予告 その19 名前:正福 MAIL URL 投稿日:2002年03月21日 (木) 22時47分

孤立したシンジに下したNervの判断。
エヴァ初号機並びにパイロットの破棄…。
……バカ言ってんじゃないわよ!!
シンジ、あたしだけでもあんたを助けにいくからね。
次回、新世紀エヴァンゲリオン・ファイナル第143話「希望という名の交響曲(シンフォニー)」
「あたし達はいつも一緒だって……分かってんの、バカシンジ!!」
(つづきません)




「これがSSS掲示板に載っていた、元の正福さんのネタなのね…。」

あのですね、こんなの見せられたら続きがごっつい気になるじゃないですか。しかも次回予告ですよ。内容を見たくても、誰も分からないし作ってくれない。ほんなら自分が作りましょうって事で。
‥だけど、一つだけ心配事があるんですよ。

「何?何かあんの?」

‥じ、実はこの作品…。

「‥アンタ、‥ひょっとしてまだこのSSの事、正福さんに言ってないんじゃあ…?」


‥‥てへっ(はぁと)。


バゴオォ!!

「アホかああ!!アンタ自分のやってる事解ってんの!!アンタ如き一兵卒がやっていいギャグじゃないのよ!!」

そんな、思いっきりグーで殴らんでも…。
は、始めは4月1日ネタで考えてて、ほとんど出来ていたんですけどデータが全部飛んじゃったんで、また始めから全部作りなおしですよ。結構手がかかってんですから。

「しかも、えびさんの偽コメントまで作っちゃって…。アンタ絶対殺されるわね…。」

‥って言うか、このSSをえびさんが載せてくれるかどうか…。

「た、確かに…。えびさんごめんなさい。」



……………………………………………
……………………………………………
……はっ、ここで俺がコメントを入れればいいのか!(w
ってな事で、関西さんの「新世紀エヴァンゲリオン・ファイナル」、第143話でした!
いつもナイスな作品の投稿本当にありがとうございます〜。

しかし今回はやってくれましたね関西さん(w
最初拝見したとき、「あれ、なんでもう俺のコメント書いてあるんだ…?」って思っちゃいましたよ(汗
これはもうアイデア勝ちっすね。
投稿形式を逆手に取り、そしてGehen小話掲示板の正福さんの作品も上手く使ったグッドアイデアですよ。
話の内容が思いっきりシリアスだけに、このオチには笑ってしまいました(w
参ったっす関西さん、完敗!

作者の関西方麺さん(おお、ドリキャス!)に作品のご感想をっ!
感想は作家の元気の源、是非お願い致します。

しかし俺のコメントってワンパターンですね(汗
せっかく投稿してくださった皆様の為に、もっと気の利いたコメント書きたいんですが、いかんせん文才が無くて…。勘弁してくださいませ(汗
あとパロディにしては小説の内容面白すぎ。ここまでの話と、これからの話読みたい!
いっちょ書いてみてはどうですか、関西さん?(w



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