それは、オレンジ色に照らされるLCLに満ちた水槽。
その中の、無数の人影に思わず息を飲むシンジ。


「‥綾波‥レイ?」


その声に呼応するかの如く、その群像がこちらを向く。

 リツコに銃口を向けるのを忘れ、ただ呆然とその場に立ち尽くすミサト。
そのミサトの横でシンジの腕に捕まり、怯えた顔をするアスカ。

「人は神様を拾ったので喜んで手に入れようとした、だからバチが当たった、それが十五年前」
「でも今度は神様を自分達で復活させようとしたわ、それがアダム」


 冷たい微笑を浮かべつつもリツコはシンジ達に話しつづける。


「‥そして、アダムから人間に似せて神様を作ったの、それがエヴァ」
「人間だって言うの!?」

 リツコの言葉にミサトが半ば叫ぶ様に聞く。

「そう、人間なのよ、本来魂のないエヴァには、人の魂が宿らせてあるもの、みんなサルベージされた物なの」
「魂の入った入れ物はレイ一人だけなの、あの子にしか魂は生まれなかったの」


 アスカは目の前の光景が信じられなかった。
シンジに捕まる手が震え、怯えで足元がおぼつかなくなってくる。
だが、これでレイの素性がネルフでもトップシークレットだった訳がよく理解できた。  結局のところレイはネルフにとって本当の意味での 『駒』 だったのだ。そう、いくらでも代わりのある駒。

「‥だから壊すの、憎いから」
「リツコ、あんたああぁぁ!!」

 リモコンを握りつつ、冷ややかな微笑を浮かべるリツコにミサトは叫びながら銃口を向ける。
どう考えてもリツコの行動は常識を逸しているとしか思えない。
確かに謎を知りたい気持ちはあった。だがリツコのこの行為は彼女にとっても命取りになる。そうなる前に止めさせないと!





「‥待ってくださいリツコさん」





 不意にシンジが口を開いた。
尤もその顔は冷静そのもので、ミサトとリツコのやり取りを見ずにLCLの水槽を見続けたままだったのだが。

「へっ…、な、何かしらシンジ君?」
「シンジ君は黙ってなさい!!」

 リツコはまさかシンジから横やりが入るとは思ってなかったらしく、とてもその場にはそぐわない様な声を挙げた。
一方、そんなリツコの動きを逃さぬよう銃口を向けつつ、シンジに対して叫ぶミサト。
 だが、シンジはそんなミサトを知ってか知らずか話を続ける。

「‥そのリモコン…、それでここにいる綾波達を殺すんでしょ…?」
「えっ、ええ、そうよ」

 いきなり何を言い出すのだろうこの少年は?
リツコは突然のシンジの話に戸惑いを隠せないでいた。
ここに着いてからの話の成り行きで、これからリツコが何をするかと言う事は、いくら察しの悪い彼でも解るハズ。

「‥だったら…」
「だったら?」
「だからシンジ君は黙ってて!」




 緊迫した雰囲気の中、アスカに腕を捕まれたまま、シンジは水槽の中に浮遊する綾レイ達に今一度視線を移す
と、ポツリと呟いた。





「‥ここにいる綾波を2、3人持って帰っちゃダメですか…?」








涙(前編)


By:関西方麺







「 「 「 ‥はあ? 」 」 」




 シンジの言葉に、思わず場にそぐわぬ声を挙げるその他の三人。

「シンちゃん‥あなた何考えてるの?」

 思わずリツコに向けていた銃を下ろし、呆れた様な顔をしながらミサトがシンジに言う。
少なくともシンジのこの言動は絶対におかしいし、それ以前にレイは物ではない。
「くれ」 と言われて 「ハイどーぞ」 と簡単にあげる事は出来ない。

「えっ、‥だって勿体無いじゃないですか…。
遅かれ早かれ、ここにいる綾波達はリツコさんによって…って、おわぁ!」

 不意にシンジの腕に捕まる力が強まった。
しかも、その捕まる力に比例してどこからともなく、ゴゴゴゴ…と地響きが聞こえてくるのは気のせいか。

「‥シンジ、アンタァァ…アタシという者がありながら、何考えてんのよぉぉ…」

 さっきまで、足のおぼつかなかったアスカは、シンジを上目づかいに見ていた形だったのだが、今の彼女の目つきは伺うと言ったものではなく、シンジを射殺するかのような猟師の鋭い目つきへと変わっている。

「い、いや、あの違うんだよアスカ」
「何が違うのよ」
「僕はただ、ここにいる綾波達が単にかわいそうだから助けてあげようと」
「‥そんな事はさっきは言ってなかったじゃない」

 「墓穴」 と言う言葉はまさに彼の為にあるのではなかろうか。
アスカに詰め寄られ、言えば言うほど泥沼にはまるシンジを、ミサトとリツコは半ば呆然としながら眺めている。

「‥リツコさぁ…」
「‥何、ミサト?」
「‥なんでシンジ君だけじゃなく、アスカの監視を解いたの?」
「‥私は解いた覚えはないわよ。‥シンジ君が気を利かせて一緒に連れてきたんじゃないの?」


 二人が眺める先には半狂乱のアスカに首を絞められ、もがくシンジの姿。


「‥あれは完璧にチョーク入ってるわね」
「‥止めなくていいの、ミサト?」
「‥私だって命は惜しいわよ」
「‥確かにね」
「まあ、ここは保護者として可愛い弟、妹をあたたかく見守ってあげるのが妥当だと思わない?」
「妥当ねぇ‥」


 ミサトとリツコがあたたかく見守る間にも、シンジの顔はドス黒く、だんだんと紫色に変わってきていた。




                                                 ‥To be continued.





「アンタ‥、ホント久しぶりじゃない?ここにでてくるの。」

本当、ひさしぶりですね。ここに登場するのも、一年ぶりですから。
ほんと、色々忙しくて、書く暇が無かったんですよ。

「ホントかしら?アンタそんな事言ってて、実はただ単に書けなかっただけじゃないの?」

‥それもあります。何か、 「突然に書けなくなった」 って言うのと、 「SSの書き方を忘れた」 って言う二つのモノが突然に襲って来ちゃって…。
今回のこの話も、実は前回の 『結末』 からすぐに書き始めていたのに、仕事と上に書いた事で、もう遅れる遅れる。

でも、その間に色々「Gehen」に色々な新人さんが出てきて、それを見るたびに、凄く悔しい気持ちが込み上げてきちゃったんですよ。

「書きたいのに書けない」

‥この気持ちは何なのでしょうね。ただのSSなのに。
でも、今回の事でよく解りましたよ。自分はEVAと言う作品が好きだし、それ以上にSSが好きだって事。

「‥ふーん。まあ、いいんじゃないの。アンタがそれで納得できるんなら。後編も出来てるんでしょ?」

ええ、そうじゃなければ投稿しませんよ。  ‥それと、

「何?アンタなにか考えてんの?」

実は、後編は私以外の人にも書いてもらう事になっております。

「はぁ?」

もう、その方々には連絡をしてますので、遅かれ早かれ、仕上げてくれることでしょう。
頼みますよ、○ONさん、○ンさん。 フフフ…。(ホラ、これで逃げ場が無くなったw)

「久々に出てきたと思ったら、またアンタは面倒な事を…」



お久ぶり!な関西さんに作品を投稿していただきましたー。
いや本当にお久しぶりでしたね。どうもありがとうございました。

さてお話の方ですが、いきなりシリアスな雰囲気で始まります。
水槽に浮かぶ幾人ものレイ。その前で言葉を失うミサト、シンジ、アスカ。そしてリモコンを手にしたリツコ…。
まさにシリアス真っ盛りなのですが、シンジの一言でそれはあっけなく崩れ去ります。
持って帰っちゃダメですか…?」って…。そりゃアスカも怒っちゃいますな(w
後編でどうオチを付けるのか楽しみなのですが、なんとその続きは他の作家さんにバトンタッチされるとのこと。
どうやらGehenの常連さんが書かれるようですが……果てさてどういう続きになるのか楽しみですね。

作者の関西方麺さん(おお、ドリキャス!)に作品のご感想をっ!
感想は作家の元気の源、是非お願い致します。

関西さんどうもありがとうございました。やっぱり関西さんに作品を読めるのは嬉しいですね。
今後もまた楽しんで作品を書いてくださると嬉しいです。
リレー小説のようになったこちらの作品、続きを期待しております!



第壱中学校資料館に戻る