二人が眺める先には半狂乱のアスカに首を絞められ、もがくシンジの姿。


「‥あれは完璧にチョーク入ってるわね」
「‥止めなくていいの、ミサト?」
「‥私だって命は惜しいわよ」
「‥確かにね」
「まあ、ここは保護者として可愛い弟、妹をあたたかく見守ってあげるのが妥当だと思わない?」
「妥当ねぇ‥」


 ミサトとリツコがあたたかく見守る間にも、シンジの顔はドス黒く、だんだんと紫色に変わってきていた。







 ‥最近、アタシは不愉快だ。

 別にミサトの事についてじゃない。 使徒戦の時はいざ知らず、最近のミサトは罪悪感から来る物なのかどうか解らないけど、アタシ達に良く尽くしてくれていると思う。

 それならシンジ? ‥ううん、それも違う。
相変わらずボケボケッとした所はあるけれど、最近のアイツはアタシから見ても、それなりに頑張ってる所も感じ取れるし…。
その…、昔よりも優しく起こしてくれるし…。


 ‥なら、何に不愉快になっているかって?

そんなの…


「これを見て、不愉快にならない訳ないじゃない!!」


 アスカが指差す先には、リビングにてソファーに座り、くつろぐシンジの横に腕をからめ、寄り添う様に座るレイ。
そして、ソファーの後ろからシンジの首に腕をからめ、体ごと密着しつつ無表情な顔でシンジに頬擦りをするレイ。
更には、シンジのふくらはぎに腕をからめつつ、フローリングに座り、ふとももに頭をのせて顔を赤らめるレイ。
 


 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥。
 
 ‥‥レイが三人、シンジに寄り添うようにして座っていた。








涙(後編)


By:関西方麺







「アスカったら、今 「シンちゃんの事じゃない」 って言ってたじゃない」

 シンジのソファーを対にして反対側のソファーに座り、エビチュをグビグビと喉を鳴らしつつ飲みながら、ミサトがアスカに問う。

「何言ってんのよ!!あの状況を見ての話じゃない!誰だってあんなの見ると怒り心頭に達するわよ!!」
「アスカったら、よくそんな難しい言葉よく知ってるわね」
「へ〜っ…アスカぁ、何騒いでんのさぁ〜」

 後ろをアスカが振り向くと、シンジは相変わらずの状況で、にへらにへらとだらしない顔をしながらレイの肩を抱いていた。


「‥‥だから、それをやめろ、ってえええのおおぉ!!」


 場の雰囲気を全くもって分かってないと思われるシンジの言葉にアスカがキれた。
いきなり叫んだかと思うと、彼の方に向かいつつ腕を大きく振りかぶり彼を平手打ちしようとする。




 だが!

 駄菓子菓子!!(誤字)





ガキイイン!!

「な、なによこれ…、まさか!?」

 アスカの振り上げた手がシンジに届くかどうかと言うところで八角形型のシールドが現れ、平手打ちを阻まれてしまう。

「碇君に暴力は許さないわ、弐号機パイロット」
「そうね、暴力は良くない事だわ、弐号機パイロット」
「だいじょうぶ碇君、あなたは私達が守るから」

 先と同じ格好で、シンジに肩を抱かれつつ呟く様に顔を赤らめながら言うレイ  ×3。

「ムキイイイイィ!アンタ達卑怯よ!そんなにシンジを独占して楽しいわけ!?」

「ええ、凄く楽しいわ、 ‥そう、」
「な、何よ!?何が 「‥そう、」 なのよ!?」
「‥これが楽しいって感情なのね

 アスカに対し、あくまでも無表情な顔でシラッと答えるレイ。

「なっ!!」
「それ以前に 「卑怯」 って言葉はあなたの専売特許だわ」
「まあ、ムキイイイイィ!っていうあたりまさにサル知恵ね、‥‥‥クスクス」

 これではあまりにもアスカの立場が悪い。
普段、レイと口喧嘩をする事もあるが、だいたいはアスカが一方的にまくし立て、それをレイがそれを受け流す、と言うのがいつもの風景だが、今回は口数自体で負けている。

「だ、大体ねぇ!ミサトもいいの?ファーストがあんなにいたら、ただでさえ狭いこの家がもっと狭くなっちゃうのよ?!」

 それならば、とばかりに話をミサトに振るアスカ。
別に腕づくでなくても良い。「保護者」 である彼女に同意を求める事ができれば万事解決するのだ。

「あら〜、私はかまわないわよ〜ん、今のこの状態は何かと楽しいし」
「で、でもどうすんのよ!?ファースト達の寝床だって無いのよ!?」

「そんなのレイがシンちゃんと一緒に寝れば良いだけの話よ」




 ピシッ



 
ミサトの言葉で、一気に部屋の体感温度が下がる。

「‥な、な、‥なに考えてんのよおお!ミサト!?」
「あなたこそ何考えてるのアスカ?私は一緒の部屋で、って言う意味で言ったつもりだけど」
「ぐっ!!?」

 言葉に詰まるアスカに対し、ミサトは主導権を得たりとニマ〜と笑い顔を作った。

「全く何考えてんのアスカったら、ホントにやーらしいんだから。レイはかまわないでしょ?」
「はい、私はかまいません、葛城三佐」
「碇君と一緒…、添い寝…、マッサージ…」
「そう私達、碇君にマッサージするの、 ‥手取り足取り腰取り…

 ミサトに問われ、ますます顔を紅くするレイ三人。
その間に挟まれ、にへらにへらと顔を緩ませるシンジ。


「‥う、うう、うるさいうるさーい!!!!」

 全く持って打つ手無し。所詮このメンバーに正論ぶって言う事自体間違いだったのか。
一瞬、引きつらせた顔を作ると、アスカは突然ビックリ豆が弾けたかの様にリビングから駆け出した。

「あっちゃあ…ちょっちやりすぎたかしらね」

 言葉を聞く限りはアスカに気を使っている様にも聞こえるが、相も変わらずグビグビとえびちゅを飲みつつ、しかもニヤニヤとした顔を作りながら呟くミサトは、あたかもそこら辺にグダまく場末の居酒屋のオヤジさながらだ。











「なによなによ!みんなして私の事を馬鹿にして!!」

 自分の部屋のベットに突っ伏し、枕を両手で抱えつつ悪態をつくアスカ。
周りには壊れた置時計や、破れかけたヌイグルミが散乱しており、どうみても彼女の八つ当たりにあった事は想像に難くない。

 アスカはそのまま枕を抱えたまま、微動だにしない。
プライドの高い彼女の事である、よほどレイにシンジを取られたのが悔しかったのだろう。


 ‥‥‥‥‥‥。


 ‥‥‥‥‥‥‥‥。


 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥。


 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥。


 ‥‥‥すぴ〜。


「はっ、いけないいけない、アタシともあろう者がつい寝てしまったわ」

 よだれを手で拭いつつ、起きるアスカ。どこかヘッポコだ。

「だけど、このままじゃあ絶対ファーストにシンジを取られちゃうわね…、なんとかしないと……」

‥問題はあの人数なのよね…。
‥ファースト一人だけならまだしも、二人も増えられたら正直アタシの勝ち目は薄いかも……。

 目をつむり首を傾け、ベットの上にあぐらをかき、う〜むと考えに耽るアスカ。


‥結局はあの人数なのよね、あの人数をどーにかすれば……。

‥人数……。
‥人数………。

‥‥ん? ‥人数…?!


「そーよ!人数よ!!」

 つむっていた目を 「くわっ!」 と開け、やおらに 「ぐふふふ…っ」 、と女の子らしからぬ含み笑いをするアスカ。
その顔はとてもじゃないが、ケンスケから写真を買っている他のクラスの男子生徒には見せられない。




「この勝負、絶対に貰うわよ……!」









 それは、オレンジ色に照らされるLCLに満ちた水槽。
その中の、無数の人影に思わず息を飲むシンジ。


「‥ア、アスカ?」


 その声に呼応するかの如く、その群像がこちらを向く。
水槽を前にして、リツコに銃口を向けるのを忘れ、ただ呆然とその場に立ち尽くすミサト。



 そして、そのミサトの横でシンジの腕に捕まり、怯えた顔をしつつも、含み笑いを浮かべるアスカ。




「‥えーっと……、人は神様を拾ったので喜んで手に入れようとした、だからバチが当たった、それが十五年前」
「でも今度は神様を自分達で復活させようとしたわ、それがアダム」


 冷たい微笑を浮かべながら、小脇に隠し持ったアンチョコを読みつつ、リツコはシンジ達に話し続ける。


「‥そして、アダムから人間に似せて神様を作ったの、それがエヴァ」
「人間だって言うの!?」

 リツコの言葉に反応して目配せしつつ、ミサトが半ば叫ぶ様に聞く。

「‥‥で、そ、そうそう、人間なのよ、本来魂のないエヴァには、人の魂が宿らせてあるもの、みんなサルベージされた物なの」
「魂の入った入れ物はレイ一人だけなの、‥んっと……、確かあの子にしか魂は生まれなかったの」


 アスカは目の前の光景が信じられなかった。

‥流石はネルフ、リツコの科学は世界一ね…。
最初に水槽を見た時は、あれだけの人数にアタシもちょっとビックリしちゃったけど…。

 でも、でもでも!

シンジも、これだけアタシ達がいればきっと満足、大満足ってもんよ。

絶対、 「リツコさん!ここにいるアスカ全員連れて帰ります!!」

 ‥って言うに決まってんのよ。
そしてその夜はアタシ達をとっかえひっかえ…って、 やっだ〜シンジったら純情っぽい顔して(はぁと)。

 シンジの横で彼の腕に捕まりつつ、 「ぐふふふ…っ」 と含み笑いをこらえようとするアスカをよそに、ミサトとリツコの三文芝居はとめどもなく続いていた。


「‥だから壊すの、憎いから」
「リツコ、あんたああぁぁ!!」

 リモコンを握りつつ、冷ややかな微笑を浮かべるリツコにミサトは叫びながら銃口を向ける。


 ‥が、その瞬間。


 急にアスカに捕まれていた手を振り解くと、リツコの元に走りながら駆け寄っていくシンジ。
そのままシンジはリツコの元に駆け寄るやいなや、彼女の持つリモコンを奪い取った。

「あ、ちょ、何をするのシンジ君?!」

 だが、時は遅し。
リツコが彼に言うが早いか、シンジは何をためらう事も無く、手に持ったリモコンのスイッチを押した。
 

 ‥その瞬間、LCLの中のアスカの形をしたものがボロボロと、音も立てずに崩れ落ちていく。
その光景に、半ば呆然としながら見続けるアスカ、ミサト、リツコの三人。


「アンタアァ!、何やってんのかわかってんの!」

 一早く我に返ったアスカがシンジに怒号を含んだ様な叫び声を挙げる。
アスカの考えにはこの様な事態は無い。あってはならない。
シンジにしてみれば、こんな美少女が何人も傍に始 終はべらせる事ができるのだ。
いくら、彼自体がボケボケッとしていてもこんなおいしい事は逃さないハズ。
 


 ‥だがシンジはアスカの思惑とは違い、リツコのいる方向に振り向くやいなや、こう言った。



「リ、リツコさん!他にはアスカはいないんですか!!ひ、一人ですら手一杯なのに、これ以上増えられたらかなわないですよ!他にいるんだったらは、早く壊しちゃいましょう!さあ!早く!!」



「ちょ、ちょっと、シンちゃん…、それはあまりにも…」

 ミサトが、シンジの後ろからツンツンと背中を指で突付きつつ、フォローを入れようとするが、シンジはリツコの肩口を掴みながらガクンガクンと揺らしつつ質問を続けている。

「何をしているんですかリツコさん!僕も手伝いますから他の水槽………って、」


 ‥リツコに詰め寄るシンジの後ろに殺気。


「シンジ…、アンタぁ…今まで私をそんな目で見てたの…」

 本当に「墓穴」 と言う言葉はまさに彼の為にあるのではなかろうか。

「ねぇ、ミサト…」
「‥なぁに、リツコ?」
「何で、‥私達こんな事しちゃったのかしらね…」

 ミサトとリツコが眺める先には、逆上したアスカに肩固めを決められ、もがくシンジの姿。



「シンジに取り憑かれた人の悲劇……」

 
 ポツリと呟いたミサトの言葉をよそに、騒ぎを聞きつけた職員から引っぺがされるまで、アスカはシンジから離れようとしなかったと言う。




                                                   ‥世は全て事もなし。





シンさんの感想

こん○○わ、関西さん。

SSありがとうございました。
あのシーンからギャグに持っていけるなんてすごいですね。
私はどうもシリアスな場面ばっかり思いうかびました。
この一週間は忙しいので書くのは無理だとおもいますが。
できれば今月書き上げたいです。
それでは短いですがこの辺で〜〜〜


PONさんの感想

どうもPONです。
ある日、チャットで関西さんから「お題をあげる」と言われ、なし崩しに書くこととなりました。
なかなか難しいお題でしたが、なんとか後編を書き上げてまず関西さんに送ったところ・・・
「ネタがかぶった」らしいです(笑)
そんなんで書きなおされた関西さんの後編ですが、驚きましたね。
想像をひっくり返されてビックリです。
シンジがアスカに手を焼いてるところがにじみ出てます。
おもしろビックリな作品で面白かったです。
また、機会があったら是非・・・お願いはあまりしたくないです(笑)
では〜


「アンタぁぁ…、何よこのSS…」

い、いや始めはこんな事なかったんですよ。
ホ、ホラ、色々ありまして最終的にああいうオチになっちゃって…。

でも、こういうのもアリなんですけどね、自分の中では。
確かにLASではないとは思うんですけど(笑)シンジ君に対してヤキモチを焼くアスカ様も中々オツなものかと。
(末期LAS人の言い訳とも言う)

「しかもシンさんや、PONさんから感想まで強引にもらっちゃってさ、久々に出てきたと思ったらアンタ本当に最悪な事してるわよ…」

でも、このような企画モノ(?)も面白いですね。
今回はPONさんとシンさんに標的になってもらいましたが(爆)、どなたかでも今回のSSの後編を書いて見ようと言う方がおられましたらゼヒゼヒ。もしよかったら書いてくださいな。

「全くアンタったら、えびさんの了承も得ないで…。‥ところで、次はどうするの」

ええとですね…、次回は 「日常ノオワリ」 などを…。

「えっ!?アンタまだあのSSあきらめてなかったの?」

あきらめてませんとも。前も書いてたでしょう、「絶対に終わらせる」 って。

「‥ホントかしら。」



関西さんに「涙」の後編を送っていただきました〜。
どうもありがとうございます&執筆お疲れさまでした、関西さん!

いやしかし、以前の新世紀エヴァンゲリオン・ファイナル 第143話「希望と言う名の交響曲(シンフォニー)」の時もそうでしたが、関西さんは色々な意味で意表をつくことをやってくれます。
今回のこの後編の内容もそうですが、チャットでGehen常連さんに感想を書いてもらっているのには思わず「おお!」と感心してしまいました。
こういうアイデアは非常に面白いですね。
こうやってエヴァを通じてのコミュニケーションが広がるのってとても嬉しいですので、どんど楽しいことをやっちゃってください。別に俺の了承なんていりませんよ(w

作者の関西方麺さん(おお、ドリキャス!)に作品のご感想をっ!
感想は作家の元気の源、是非お願い致します。

楽しい作品を本当にどうもありがとうございました。
お仕事大変みたいですが、お互い死なない程度に頑張りましょう(汗



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