メランコリック・少年シンジの憂鬱 5か

メランコリック・メリー・クリスマス

作者:ごまめ

[424] 題名: メランコリック・メリー・クリスマス 名前: ごまめ MAIL URL 投稿日:2010年12月25日 (土) 22時46分

「メリクリや!」
「碇君、アスカ、今日はお招きありがとう」
「ようこそ!ヒカリ、鈴原、相田。今日はね、あたしとレイが料理したのよ!どう?」
「マジ!?写真に撮ってやるよ」
「それいいじゃない!」

一同が葛城邸のリビングに通された。その光景は。

「………」

テーブルの真ん中に巨大なクリスマスケーキ。それはいい。

鯛の尾頭付き。
鯛と大根のあらだき。
お造り盛り合わせ。
鯛の子。
赤飯。

スープは潮汁。ではなくミサト特製トムヤム味噌汁。

「…食卓が茶色い…醤油くさい…」

「鯛ばっかりじゃない。お正月と間違えてない?」

「このバラバラな食事のセンス…懐かしいなー。わしの大阪の実家こんなんやねん」

「しょうがないじゃない!だって……シンジがクリスマスには鯛が食べたいって言うんだもん」

エプロンの端っこをいじいじ指でこねまわしながら照れ臭そうにつぶやくアスカ。

「まあいいじゃない!はじめましょう!平和な暮らしにかんぱーい!」
乾杯の音頭をミサトがとる。手にした飲み物はビール、ではなく冷酒。「だって和食だし」

「そうや!乾杯!明けましておめでとー!」

「イエーイ!ハッピーニューイヤー!めで鯛ー!」

「それ違うってば…」

ちからなくツッコミをいれるシンジ。

***

「立派なクリスマスツリーねぇ。本物の樅の木?」
見上げるヒカリ。

「そうよ。加持さんがドイツからわざわざ空輸してくれたの。さすが加持さん」

「あいつはホントにやることがいちいち気障ったらしいったら!けっ!」
あらだきを口に放り込みつつ、冷酒をあおるミサト。

「とか言いながら、加持さんが贈ってくれたドイツワインを、大事にしまってるのよね、ミサト…」

***

「なあ綾波、なんで赤飯なんだ?」
鯛の身をほぐしながらケンスケが尋ねた。

「クリスマスパーティーに碇くんのリクエストで鯛を焼くと司令に報告したら、『そうか…とうとうなるようになったか…。よくやったな、シンジ』と遠い目をしてつぶやかれ、『鯛だけでは祝いに足りない。赤飯も炊きなさい』と命令されたわ」

「命令って…」

「一万円札も一緒にくれたわ」

「あずき代か」

「めでたいことって。おぉ!シンジ!お前とうとうアレか!先に進めたか!」

喜色を浮かべたトウジが、もくもくと赤飯を口に運ぶシンジをヘッドロックした。

「…」
ヘッドロックされたまま、もくもくもくもくと赤飯を口に運ぶシンジ。

「シンジ…お前、赤飯のあずきだけ箸でつまんで食べてるの…?」
気付いたケンスケが引き気味になった。

「碇くん、箸づかいが上手…」
綾波が感嘆する。 

なんだか得体のしれないものを抱えてる気になったのか、トウジがそっとシンジを解放した。

「まあ、まだまだ、わしらこれからやしな。元気だせや。シンジ…」

もくもくもくもくもく。

「シンジ、米粒だけつまむのはさすがにやめておけよ…」

***

「それにしても立派なツリーねぇ…。鈴原、相田何してるの?」

色のついたメモに、マジックで何やら書き込んでいる。

「よし出来た!これも飾ろうぜ」

「何それ。願いごと?!あなたたち七夕と間違えてない!」

「ヒカリの分の短冊もあるで。ほれ」

「あ…ありがと」

「料理がちゃんぽんなんだから、祝い方もちゃんぽんでいいわよねん!」

もくもくもくもく。
黙って赤飯を食べ続ける主人公。
「…あずきがなければこれは赤飯じゃない。赤飯じゃない。ただの色付きのご飯さ…。めでたくない。めでたくなんかないんだよ父さん…。」
ぶつぶつぶつ。


全員盛り上がり、願いごとを書いた短冊を飾る。

ぽん。
シンジの肩をミサトが叩く。
「はい。シンちゃんのぶんの短冊よ」

さながら慈母のような微笑みを浮かべるミサト。

「…ミサトさん…」

「槍 シ ネ ダキ 進み…」

「前回のミサトさんの謎々じゃないですか!全然効果無かったし!」

「シンジ〜!お前落ち込みなや!元気のないお前のために、今夜は朝までゲームやるで!ボードゲーム天国や!」

「ますます正月らしいわね…」

機嫌のいいトウジがシンジに再びヘッドロックをする。
「ト、トウジ、酔ってる?シャンパン飲んだ?」

***

海の波のように寄せては返す地響き。ではなく入り交じる寝息といびき。

みんな、さんざん盛り上がったあげく、リビングで気絶も同然に眠りこけていた。

「ふぅ…みんな風邪引かないでよ」

つぶやきながら、皆に毛布を掛けていくシンジ。ふと気付けば、さりげなくトウジとヒカリが手をつないで向かい合い眠っている。

ほほえましく思い、二人に一枚の毛布をかけた。

「毛布を蹴飛ばすなよ、トウジ」

***

一人ベランダに出た。
星が輝いている。

「クリスマスか…」

「…シンジは、メリークリスマスじゃなかった?」

「!」

気付けば横にアスカがいた。

「そ、そんなことないよ」

「嘘。だって全然楽しそうじゃ無かった。…あたしの作った料理、美味しくなかった?レイの作ったお赤飯ばっかり食べてた!」

「ち、違うんだ。鯛を食べてたらその、なんだか涙が出そうで…」

「なんで泣くのよ」

「その、うれし過ぎてというか…」
(アスカの見当外れっぷりが情けないやら悔しいやらで涙が出るとは口が裂けても言えない。全然二人っきりじゃなかったし)

「嘘!嘘!うそ!」

声は抑えているがきつめに叫んで、シンジの胸をグーで叩いてきた。

「わわ!ご…ごめん」

殴りかかるアスカの手首を掴む。彼女の力はすぐに抜けた。

「シンジのバカぁ…」

「ごめんアスカ、美味しくないわけないよ、アスカが作ってくれたんだもの。僕が悪かったんだ、ごめんね、ごめん…」

「ごめんって言わない約束じゃない…」

たまらなくなって、泣きそうなアスカの頬に自分の頬を寄せた。何も言わず擦り寄せていたら、なめらかな頬の先に柔らかい唇があったので、いつものようにした。

でもいつもよりちょっと長めで深かったかもしれない。

***

ベランダに立って、背を向けるアスカを後ろから抱き抱えて、ウエストに両手を回して二人で星を見る。シンジを柱みたいにして、背中をもたせ掛けるアスカの重みが愛おしかった。いつかより重くなってくれた。あの泣きそうな軽さは二度とあってほしくない。命の重み。

「シンジ」

「なに」

首だけ振り向いて、片腕を伸ばして僕の首にまわして口づけしてくれた。
君の体は柔らかい。人魚姫みたい。

君の命の重みとカラダの重みで、正直スパーク寸前なんだよ…。とほほ。

「あ、あたしの作った料理、ホントのホントに美味しかった?」

「美味しかった」

「鯛のあらだきも、鯛の塩焼きも、鯛の生殺しも?」

「鯛の『活き作り』って言うんだよ…。全部、美味しかったよ。また作ってね」

「うん」

嬉しそうにアスカが微笑む。自分の顔のそばで。髪と体からはいい匂い。



ああ、アスカ。

生殺しは、僕です。



※↑なんじゃこりゃ。※真面目なクリスマスのお祝いしてる人に申し訳のない話。※
※ オー、イヅコッティ、Youもオールユアセルフアッホーだったのね!よかったわ※ていうかわかりにくいねん。ちゃんと書いて。※イヅコッティってビスコッティみたいでイタリアぽくない?って思ったけどやっぱりそんなこと無かった。イタリアに謝る。※雲っていいよね。※予測不能は何処さんの親父ギャグやっ ちゅうねん※


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このお話は気にいっています。

何処さんとごまめ。実に 薄汚い 心温まるやりとりですね。
イヅコッティと書いてましたが、読み方としてはドコさんが正しいそうです。訂正させていただきます。ドコッティー。(ごまめ)

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