二人が眺める先には半狂乱のアスカに首を絞められ、もがくシンジの姿。
「‥あれは完璧にチョーク入ってるわね」
「‥止めなくていいの、ミサト?」
「‥私だって命は惜しいわよ」
「‥確かにね」
「まあ、ここは保護者として可愛い弟、妹をあたたかく見守ってあげるのが妥当だと思わない?」
「妥当ねぇ‥」
ミサトとリツコがあたたかく見守る間にも、シンジの顔はドス黒く、だんだんと紫色に変わって
きていた。
涙(後編)
By:PON
あと数秒でシンジがアスカのチョークスリーパーで落ちそうになっていたその時、
「・・・一人ならいいわよ」
「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・へっ?」」」
「リツコぉ〜?!アンタ本気なの?!」
「ちょっとリツコ!あなた何考えてるのよ!」
「・・・ほ、本当に良いんですか?」
あまりにも突飛なリツコの言葉に驚くアスカ・ミサト・シンジ。
言い出したシンジですら驚きの表情が伺える。
「流石に2、3人ってのは無理だけど、1人ならMAGIの監視システムから誤魔化す事も可能だから。
それにここにいる4人が黙ってれば済む事。それよりも、レイと言っても良いのかしら・・・
とにかく”レイ”をシンジ君がどうするのかに興味を持ったの。その方が私にとっても貴重なサンプルが入手出来るかと思って・・・」
「「・・・そう」」
そんなリツコの暴走っぷりにミサトとアスカはすでに疲労困憊の表情で、他に言うべき言葉を無くしてしまったらしく、
表情はうつろで目線は定まらない状態であった。
アスカはシンジの首に掛けていたスリーパーホールドを解き、
ミサトは力が入らずガックリ肩を落として、2人とも完全に意識が銀河系の彼方へぶっ飛んで行ってしまった様子である。
一方、何故か許可がなし崩しに出てしまったシンジはと言うと・・・
「あ、綾波がボクのモノになるんだ・・・でも・・・どうしよう・・・」
言っては見たものの、まさか本当に連れて帰れるとは思って無かったのでこっちも半ば放心状態である。
ちなみに怪しい展開を想像したアナタ、それは多分ありません(笑)
「シンジ君」
無表情なままリツコがシンジに問い掛ける。
「は、はい」
我に帰ったシンジが答える。
未だアスカとミサトはあっちの世界に行ったきりではあるが・・・
「どの”レイ”がお好みかしら?好きに選んで良いわよ。」
LCLの水槽に浮かんだ無数のレイに視線を向けるリツコ。
それにつられてシンジも水槽に目を向ける。
「え〜っとぉ・・・」
とは言え生け作りの魚を選ぶ訳ではないので、シンジもなかなか決まらない様子である。
簡単に決まるのもそれはそれで問題であろうが。
その時、ふと一人と目が合った。
「彼女にします。」
「良いのね。後から返品は効かないわよ。ノークレーム・ノーリターンが原則だから。」
リツコは訳の分からないセリフを混ぜながらシンジに問う。
「彼女がいいんです。法的にはノークレーム・ノーリターンは無効ですから。」
シンジはキッパリとリツコに答える。やっぱり訳のわからないセリフが混ざっているのは気のせいだろう。
「そう・・じゃあ彼女以外は壊すわ。シンジ君、彼女が水槽から出るのを手伝ってあげなさい。」
と言うと端末を操作するリツコ。
「あっ、はい。」
と言うとシンジは水槽に近づき、中からレイが出ようとするのを手伝う。
その間もシンジを目線で追うレイ。
心なしか頬が赤らんでいるのは気のせいだろうか。
シンジが選んだレイが水槽から出たその時、リツコがリモコンのスイッチを押す。
水槽の中のLCLが排出され始めた。
それと同時に無数のレイも身体が崩れ始める。
「あとは只の『入れ物』だから・・・」
リツコがそう言うと同時に水槽のLCLは空になってしまった。
「じゃあこの綾波はどうなんですか?」
シンジがリツコに問う。
リツコが静かに口を開く。
「・・・その”レイ”にはとりあえずバックアップの記憶を入れてあるわ。
だからシンジ君、そしてアスカ・ミサトなどの記憶はあります。
ただし・・・認識と言ったほうが正解かも知れないけど、その程度でしかないわ。
最低限14歳位の能力はあるけど後はシンジ君次第ね。”レイ”がどう成長していくかは・・・」
「そうなんですか・・・わかりました。」
と、真っ直ぐな目をして答えるシンジ。
「ところで、何か着せたら?困ってるみたいよ」
「えっ?・・・」
とシンジが横を向くと・・・当たり前だが裸のレイが立っている。
何故だか頬を真っ赤にしているが・・・
「あ、綾波!な、何か着てよぉ!り、リツコさ〜ん!なんか無いですかぁ〜どうすれば良いんだよ!
ピ○クハウスのワンピースなんか似合うかも?ってそうじゃなくて・・・」
真っ赤になって完全にパニックに陥ってるシンジ。また変な願望が混じってるのは気のせいだろう。
「ハイ、シンジ君。」
とリツコから渡されたのは壱中の征服もとい制服一式である。
下着もセットになっている。
「あ、綾波ぃコレとにかく着て!」
目をつぶってレイに制服を渡す。
手馴れた様子で制服を着るレイ。
その間もシンジの方をチラチラ見ている。
「・・・碇君良いわ。」
レイの声が聞こえたのでシンジが目を開けるとそこには見慣れたレイが立っていた。
「・・・碇君行きましょ」
レイがシンジの名を呼ぶ。
「あ、うん」
シンジが虚ろな様子で答える。
出口に向かって歩き始めたが何故かレイはシンジに寄り添って歩いて行く。
「あ」
シンジが何か思い出したかの様に
「あ、アスカ。一緒に帰ろう。」
シンジがアスカに声を掛ける。
とその声でアスカは我に帰り
「あ、うん。・・・で?なんでファーストが一緒なのよ!」
「だ、だって綾波がかわいそうじゃないか・・・。」
「だってもへちまもない!こんなトコもう居たくないから行くけど帰ったら”ちゃんと”聞かせてもらうからね!」
と言うとアスカはシンジの手を取って引っ張っていく。それに遅れないようにシンジに付いて歩いていくレイ。
あらゆる物音を立てながら3人は出て行った。
「いいわよ、ミサト。」
その声を聞いたミサトはすぐに我に帰る。
と言うよりは”フリ”をしていただけだったのだが。
「ふ〜リツコぉ?あたしの演技も中々のモノでしょ?」
「何言ってるの?ボケっとしてただけじゃないの?」
「まぁそう言いなさんな。ここまでするのに苦労したんだから。」
「まぁミサトにしては上手くいったみたいね。」
「しっかし驚いたわ〜レイがあんな事言い出すなんてね」
「私も天地がひっくり返ったかと思ったわよ」
「でも、レイもようやく人らしくなってきたって事じゃないの?」
「人らしくねぇ・・・」
本当はと言うと・・・
この”お芝居”はレイがミサトとリツコにお願いしたのがきっかけであった。
ひそかにシンジに興味を持ち始めたレイがアスカだけにシンジを独占させるのが気に食わないのでそこに自分が割り込むことが目的であった。
そんなお願いをされたミサトがリツコに相談し、なぜかノリノリのリツコが舞台を用意したと言う訳である。
「しっかし、リツコも良くこんな猿芝居に乗ったわね?」
「レイの心の変化を数値化して見たかったってトコロかしら?これも研究の一環でしかないわ」
「良く言います事。楽しんでやってたクセに」
「・・・まぁね」
『シ〜ンジ!何見てるの?』
『あ、アスカぁ〜・・・』
と驚くと慌てて端末のディスプレイを閉じるシンジ。
「べ、別になんでもないよ!・・・」
「いいじゃない?アタシにも見せてよ!」
「何でも無いってばぁ!」
力ずくでディスプレイを空けさせまいと頑張るシンジ。
「あっ!」
ふとアスカが素っ頓狂な声を出す。
「へっ?」
つい反応してしまうシンジ。
「いっただきっ!」
シンジの机からアスカが端末を奪う。
「返してよぉ〜アスカぁ〜」
端末を奪われて弱々のシンジ。
「どれどれ・・・ん?シンジと同じ名前じゃない?・・・アタシもいるのぉ?・・・ミサトまでぇ!・・・なに?シンジがレイを頂戴ぃ?・・・どうゆうことよシンジ?!」
画面の文章を読んでいるアスカの表情がみるみる変わり、最後には大爆発してしまった。
「え、あ、そ、それは・・・け、ケンスケがみんなと登場人物の名前が同じネット小説があるから見てみろって言われて・・・そ、それを読んでただけなんだよぉ〜」
しどろもどろになりながらなんとか答えるシンジ。なんでアスカが怒ってるのか見当が付かないようである。
どうしてここまで鈍感なのであろうか?
「そう・・・相田が悪いのね・・・。」
アスカはシンジの話を信じてるのか信じてないのか分からないが、怒りの矛先をケンスケに向けたようである。
「相田っ!!!こっち来なさい!!!」
その瞬間、不穏な空気を感じて教室から逃げ出そうとしていたケンスケの足が止まった。
止まったと言うよりは固まったが正解なのかもしれないが。
「な、なんだよ?惣流?」
と言葉は強がったフリをしているが、顔色は真っ青でヒザは震え額には脂汗がびっしょりなケンスケ。
この後の展開を想像してしまったのだろうか?哀れ今日も不幸なケンスケだった。
「覚悟は出来てるわね?・・・」
低い声でケンスケに声を掛けるアスカ。なぜかケンスケにかなりの怒りを持っている様子。
「た、ただ俺は・・・」
「問答無用っ!」
アスカはケンスケが言い訳をする間を与えず、振りかぶって”何か”を投げた。
綺麗なオーバスローだった。
「えっ?グフッ!」
ケンスケの腹にめり込んだそれは・・・砲丸投げの玉である。鈍い光を放つ「それ」は何故か一般規格の直径125.5mm、重さ7.26kgの代物である。
なんでアスカがそんな物を持っていたかは・・・全くの謎である。
アスカに抹殺されてしまった哀れなケンスケ、君の冥福はみんなで・・・
「・・・死んでないぞ」ガクッ・・・
まだ生命の灯は辛うじて消えてはいなかったらしい。
「ふう、邪魔者は消えたわ。さて・・・シンジ?分かってるわね?」
「あ、うん。そ、そうだよね・・・」
なんだか分からず返事をするシンジ。
「このファイルは消すからね。それと、今日から一週間帰りにおごりなさいよ。」
「なんでおごらなきゃいけないのかな?・・・・」
なぜか理不尽な条件に不満顔のシンジ。
「いいの!アタシがそう決めたんだから。分かったの?バカシンジ!」
「は、はい!」
「分かればよろしい。さ、帰ろ。」
シンジが納得した途端笑顔になるアスカ。まったくもって現金なものである。
そのまま教室の出口に歩いて行く。
「なんでボクがおごらなきゃいけないんだよぉ・・・」
ぶつぶつ言いながらシンジはアスカの後を追って教室を出て行った。
当の2人が出て行った事で教室は平穏を取り戻す。
「な〜んや、結局はそうゆう事かい?オチがLASやないけ?」
トウジが仏頂面で誰に言うでもなく声を出す。
意味不明な言葉を残しながらではあるが。
「だめよ鈴原、ここはGehenなんだからね」
ヒカリもなぜか意味不明な発言だったりする。
「結局俺はお約束か・・・」
ケンスケが最後の気力を振り絞って声を出す。
「・・・碇君・・・ずるい。私にはおごってくれた事が無い・・・」
レイは微妙に勘違いな事を考えていた。
そしていつもの平凡な一日が過ぎていきましたとさ。
続く・・・
事はありません(笑)
おわり
シンさんの感想
ありがとうございました。PONさん。
なるほど、なるほど、2人とも結構ギャグの路線ですね。
どうもシリアス風なSSを思い浮かべる私(書きなれてないくせに)
ほんとにありがとうございました、これに負けないようなSSをぜひ!・・・・・・・・書けたらいいな。
それではこの辺で〜〜〜。
関西とアスカ嬢の感想
「‥アンタの訳の解らない企画にPONさんがのってくれたわよ、PONさんも色々忙しいのに…」
本当ですね、PONさん本当にありがとうございました。
しかも、仕上げてくれたのが早い事早い事。PONさん曰く、「スランプ気味」らしいのですが
なかなかどうして。やっぱり今、勢いのあるSS作家さんは違いますよねえ…。
「そりゃあ、アンタみたいにオチもなにもない作り方してないからねぇPONさんは。
あの前編から、ちゃんとアタシとシンジの結末にしてくれているし。」
確かに。あそこからよくここまでのオチにもって行ってますよねぇ…。
つか、PONさんの最後のオチがあるでしょ?
「へ?、ネット小説のくだりのやつ?」
‥実は、あそこのくだり…、今自分が書いていた後編のくだりとカブってるんですよねw
「アンタ…、またマユミ出してるんでしょ?」
ギクッ!!
そ、そんな事ありませんよ、アハハハ…。
‥‥‥書き直しします。
「‥それが賢明な考えね」
あとがき
どうもご無沙汰のPONです。
この話は某日にチャット参加のメンバーに関西さんから半強制的に頂いたものです。
さ〜てもうそろそろなんて思っていたらなんと!Gehenに掲載されてしまつたではないですか( ; ゚Д゚)
大慌てでなんとか書き上げました。
他の方の作品がどういう物かびくびくしながら待ってる状態です(笑)
しかもかぶってしまったのにOKして貰ったのでありがたかったです。
さて、「真夜中」その他を楽しみな皆様、もうしばしお待ちをm(_ _)m
私も「書き方を忘れて」しまったんですが書くきっかけを下さった関西さんに感謝です。
今後ともよろしくお願いしますね。
では〜
PONさんに作品を投稿していただきました〜。
どうもありがとうございますPONさん。そして執筆お疲れさまでした!
こちらのタイトルを見て「おや?」と思った読者の皆様も多いかと思います。
そう、この作品を昨日Gehenに掲載しました関西さんの「涙(後編)」の別バージョンなんです。
Gehenのチャットから出たこの企画らしいのですが、マルチエンディングのようで面白いアイデアですよね。
是非今後もこういう楽しい企画をやってくださると嬉しいです。
作者のPONさんに作品のご感想をっ!
感想は作家の元気の源、是非お願い致します。
お話の内容の方は……ケンスケ不幸でナイスってことで(w
どうもありがとうございましたPONさん。連載の続きも期待して待ってますよ!
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