THE END OF EVANGELION アナザ−ストーリー
「手を取り合って」
ネルフ本部発令所内。
戦自による侵攻はすでに収まり、今は嘘の様に静まり返っていた。
残されたオペレーター達は、一心にモニターを見詰めている。
そこには、九機の量産機相手に孤軍奮闘する弐号機の姿があった。
「アスカ、頑張って・・・」
マヤの祈るような声。
青葉も悲痛な表情で戦いの様子を見守る。
そんな中、一人日向は別の事を考えていた。
(シンジ君・・・何故出撃しないんだ・・・それとも・・・間に合わなかったのか・・・)
(・・・・・・葛城さん・・・・・・)
弐号機の残り電源はもう半分を切っていた・・・
シンジはケイジで呆然と立ち尽くしていた。
「そんな・・・・・・」
硬化ベークライトで完全に固められている初号機。
自力でエントリーする事は不可能だった。
(ちくしょう!ミサトさんが命を懸けてまで連れてきてくれたのに!)
その時ケイジ内にアスカの声が響き渡った。
『もう!なにやってんのよバカシンジ!早く出てきなさいよ!!』
(アスカが一人で戦っていると言うのに・・・)
何も出来ない・・・その無念の思いからシンジは声を上げる。
「ちくしょう!ちくしょう!ちくしょう!!」
その時ケイジ内を大きな振動が襲う。
突然初号機が動き出したのだ。
ベークライトが弾け飛び、初号機の手が現れる。
その手はシンジの目の前へと差し出された。
「母さん・・・?」
弐号機と量産機の戦いは終盤を迎えていた。
残る量産機は後二体。
その内の一体、五号機へと掴み掛かる弐号機。
トカゲのようなその口を掴むと、そのまま強引に引き裂く。
そして活動を停止し、崩れ落ちる五号機。
「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」
アスカは苦しそうに息を付く。
長い間寝たきりだった所に、この極限状態での戦闘。
すでに体力は限界に近づいていた。
だが、それでもアスカは気力を振り絞り、最後の一機である十三号機へと向き直る。
「これでラストぉぉぉぉぉっ!!!」
十三号機へと突進する弐号機
勢いを利用した一撃で動きを止めると、そのままベアハッグの要領で抱え上げる。
弐号機のパワーの前に徐々に軋みをあげていく十三号機。
だがその時、弐号機の内臓電源のカウントが、無情にもゼロを刻んだ。
「はっ!?」
動きの止まった弐号機を、十三号機が蹴り飛ばす。
もんどりうって倒れる弐号機。
「あと少しなのに・・・動きなさいよ!」
必死に呼びかけながら、インダクションレバーを動かすアスカ。
だが弐号機がそれに答える事は無い。
「ママ・・・・・・どうして?・・・・」
そして、更なる脅威が襲う。
殲滅したはずの量産機達が、再起動を始めたのだ。
頭を割られたもの
口を裂かれたもの
胴を折られたもの
一つとしてまともな姿のものはない。
だが、たしかに量産機はその活動を再開していた。
量産機達は、初めの戦闘の時のように、弐号機の周辺を包囲するように陣取る。
そして、手にしたブレードを一斉に構えた。
ブレードは形を変え、まがまがしい形の槍と変化した。
「ロンギヌスの槍・・・」
おそらくはレプリカであろう、だがその威力まで偽物とは思えない。
アスカは自らの最後を覚悟する。
「・・・やだな・・・ここまでなの・・・」
(そう言えば前にも同じ事言ったっけ・・・確かあの時は・・・)
(そうだ・・・シンジが助けに・・・)
その時、ネルフ本部の方から、光が柱のごとく立ち昇った。
光の柱は二つに割れ、光の翼となる
エヴァンゲリオン初号機
その真の姿であった
初号機に搭乗するシンジ。
その目には確固たる決意が現れている。
(もう誰も失いたくない。だから僕はエヴァに乗って戦う。自分の意志で・・・)
(加持さんが、そしてミサトさんが教えてくれた事。それを無にしちゃいけないんだ!)
(アスカ・・・無事でいてくれ・・・)
主を宿した紫の巨神が今目覚める
その真の力が今解放される
背中より現れる一対の翼
シンジと初号機は、最後の戦場へと飛び出した。
ジオフロント上空へと出る初号機
それに呼応するかのごとく月面上より飛来する物体
大気圏を突破したそれは、高速で初号機に向かってきた。
そのまま突き刺さるかの勢いであったそれは、初号機の目前で停止した。
オリジナルのロンギヌスの槍
対第十五使徒戦において失われていた物だった。
(これはロンギヌスの槍!なんでここに?)
一瞬とまどったシンジ。だがすぐに思い直し槍を手に取る。
槍は吸い付くように初号機の手に収まった。
軽く槍を振りかざすと、それは疾風となって雲を切り裂いた。
(凄い力だ・・・これがなんでここに現れたかはわからないけど、そんな事を考えてる場合じゃない。使える物は何でも利用してやる。絶対負けられないんだ!)
「いくぞ初号機!!」
「!?これは・・・初号機です!初号機、起動しました!!」
またしてもマヤの悲鳴の様な報告が上がる。
だが今度のは、今までのような絶望を表すものではない。
最後の希望・・・そんな言葉が三人の脳裏をよぎった。
日向は思わずホッとしたような表情を出してしまう。
(葛城さん・・・間に合ったんですね・・・)
ミサトの安否が気遣われる。だが今は気にしている余裕はない。
初号機が負ければ、それで全てが終わりなのだ。
「頼むぞ・・・シンジ君・・・・」
青葉が絞り出すようにつぶやいた。
その時突如、巨大なエネルギー反応が発生する。
それは超高速で飛来し、初号機の目前にて停止する。
「これは!?ロンギヌスの槍です!」
訳が分からない、といった感じでマヤが叫ぶ。
初号機はすでに槍を手にしていた。
今まで黙って様子を見ていた冬月が、その光景を目にしてつぶやく。
「・・・・・・勝ったな・・・・・・」
「・・・あれは・・・初号機?」
神々しく映る初号機の姿。
量産機達はその姿を確認すると、格納していた翼を展開する。
そして一斉に初号機に向けて飛び立っていった。
アスカはその光景を呆然と見送ると、誰ともなしにつぶやく。
「臆病なくせに・・・無理しちゃって・・・」
そこでアスカは、意外にも冷静にその事実を受け入れている自分に気が付く。
(あたしはシンジを憎んでいたはず・・・あいつに助けられるなんて、死んでもイヤ。)
(・・・なのに・・・なんで安心してるのよ・・・)
(・・・・・・そっか・・・・・・)
(・・・ユニゾンのときも・・・マグマの中でも・・・あいつはあたしの所へ来てくれた・・・
だから今度もきっと来てくれるって、心のどこかで信じてたんだ・・・)
(まったく・・・他人に助けてもらうのを期待するなんて・・・あたしらしくも無い・・・)
(あたしにとって、あいつって何なの?)
(わかんない・・・イライラするわね・・・)
そう考えながらも顔は微笑んでいる。
すでに、ここからは見えなくなった初号機に向かってアスカは叫んだ。
「こらあーバカシンジ!今回だけは見せ場譲ってあげるけど、
だからって調子に乗るんじゃないわよーっ!」
「だから、無事に帰ってきなさいよ・・・」
風が渦巻くジオフロント上空。
初号機に向かい、量産機が次々と地上から飛び立ってきた。
「こいつらが目標か・・・」
量産機達は初号機を取り囲むように位置を取る。
包囲が完成すると、その内の一体が槍をかざしつつ突進してきた。
その一撃を紙一重で避ける初号機。
そこへ堰を切ったのように、次々と攻撃を掛ける量産機。
九本のロンギヌスの槍が初号機へ襲い掛かる。
だがその怒涛の攻撃を、軽業師のように避けていく初号機。
一撃でも食らえば、致命傷にもなりかねない。
だがそんな状態でもシンジは落ち着いていた。
一度に襲われないよう、徐々に量産機達を分散させていた。
目の前に来ていた十号機の突き上げを軽くいなすと、そのまま袈裟懸けに槍を叩き込む。
その一撃はコアをも打ち砕いていた。
完全に活動を停止し、地表へと落ちていく十号機。
「よし、いけるぞ!」
それは確信だったのかもしれない。
次の目標を六号機に定めると、それに向かい突進する。
「はあぁぁぁっ!!」
気合とともに放たれたその一撃は、狙い違わず六号機のコアを破壊する。
さらに返す刀で背後の七号機へと切り付ける。
体勢を崩した七号機にさらに突きを加える。
その突きで七号機も軽く倒された。
残るは六体。
次に向かってきたのは十二号機。
十二号機は初号機に向かい、一直線に突進してくる。
「そこだっ!」
それに向かい槍を突き出す。
だが十二号機は初号機の目前で急に上昇する。
一瞬無防備となる初号機。そこへ突如現れた九号機の攻撃が繰り出される。
さらに上から十二号機の打ち下ろしが迫る。
カキィ−ン
だがその攻撃を初号機は槍の両端で受け止めた。
槍を回転させ弾くと、九号機の正面へ槍を叩き込む。
そして串刺し状になった九号機ごと、十二号機へと槍をぶつける。
槍を五号機から抜き取ると、さらに十二号機への一撃。
活動を停止した二体はもつれあうように落下していった。
残るは四体。
正面から打ちかかって来る八号機。
その攻撃を受け止めず、流れるように払っていく初号機。
大振りとなった一撃を切り払うと、空いた側面に攻撃を加える。
「ちっ、浅いか!」
その言葉どうり、ひるむことなく攻撃を続けて来る八号機。
一旦八号機から距離を取ろうと上空へ逃れる初号機。
そこへ猛然と十三号機が突っ込んできた。
八号機に気を取られ、反応が遅れる。
(避けられない!?)
かわすことをあきらめ、こちらも槍を突き出す。
ガシュッ
鈍い音がして、初号機と十三号機がぶつかり合う。
一瞬の静寂の後、崩れ落ちていったのは、十三号機の方だった。
交錯した槍により十三号機の攻撃が逸れたのだ。
そしてそのまま背後に向けて槍を繰り出す。
それは、背後に来ていた八号機のコアを貫いていた。
残るは二体。
五号機と向かい合う初号機。
両機はほぼ同時に槍を振りかぶった。
槍同士がぶつかり合い、お互いに体勢を崩す。
わずかに早く立ち直った初号機が、槍を打ち下ろす。
それをなんとか槍で受け止めようとする五号機。
しかしレプリカの限界か、初号機の槍は真っ二つに五号機の槍を切り裂き、そのままの勢いで五号機を切り裂いた。
残るは一体。
最後の一機である十一号機は、臆することなく初号機に立ち向かう。
しかしその攻撃は軽く初号機にかわされた。
「これで終わりだぁー!!」
放たれる必殺の一撃。
それは十一号機に、かわすことも、防ぐこともさせず、真正面からコアへと突き刺さった。
変色していくコアとともに、十一号機が地表へと落下する。
ついに全ての量産機がその活動を停止した・・・・・・
「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」
短くそして長い戦いを終えたシンジ。
荒々しく息をつく中、突然初号機が咆哮を上げた。
ウオォォォォォォォォォン
ロンギヌスの槍を持ち、ただ一機空に佇む初号機。
その姿は神か悪魔か・・・
・・・あれからどうなったんだろう・・・
・・・量産機を倒して・・・
・・・・・・・・・
・・・そうだ・・・
・・・あの後綾波が現れて・・・
・・・すべてがひとつになった・・・
・・・それはとても気持ちのいい世界だった・・・
・・・・・・
・・・でも・・・
・・・僕はそれを望んではいなかった・・・
・・・そこには僕がいないから・・・
・・・たとえ再び他人の恐怖が始まっても・・・
・・・それでもかまわない・・・
・・・だから僕は・・・
・・・この世界を否定した・・・
・・・・・・
・・・ただもう一度会いたいと思ったんだ・・・
・・・みんなに・・・
・・・アスカに・・・
(そう・・・良かったわね・・・)
・・・そんな声が聞こえたような気がした・・・
ザ−ン ザ−ン ザ−ン
赤い色をした海
生という物を全く感じさせないその風景
地獄というものがあるのなら、それはこういう所だろう
砂浜に横たわる少年と少女。
その内の少年の方、シンジが上半身を起こし、隣りの少女、アスカを見つめる。
アスカはまだ目を覚まさない。
だが、その表情はとても安らかに見えた。
次にシンジは海の方へと目をやる。
何も無い真っ赤な海。
だがそこには制服姿の少女の姿が見えた。
(綾波・・・・・・)
再び目をやると、その姿はもう無い。
「・・・・・・んっ・・・・・・」
隣りから小さく声が聞こえる。
アスカが目を覚ましたようだ。
シンジはアスカに向かって手を差し伸べる。
アスカもシンジに向かって手を差し伸べる。
二人の手が触れ合い、繋がれたその時、アスカが口を開いた。
「・・・バカシンジ・・・」
いつものアスカの呼び方。
だが、シンジにとってこれほど嬉しい言葉はなかった。
自分が、そしてアスカがここにいる、そのことを確信できるから。
思わず涙を浮かべてしまうシンジ。
「バカ、何泣いてるのよ。そんなにバカシンジって呼ばれるのいやだったの?」
からかうような口調でアスカが言った。
だがシンジはそんなことには気付かない。
「ち、ちがうよ。また・・・アスカに会えて、嬉しかったから・・・だから・・・」
「冗談よ、まったく・・・すぐ本気にするんだから。」
「ご、ごめん」
お約束の台詞が飛び出す。
それを聞き、やがてアスカが笑い始めた。
つられてシンジも笑い出す。
いつも交わされていた会話、それもいつからか途切れてしまっていた。
だがこうしてまた、言葉を交わし合うことができる。
それが二人には嬉しかった。
いつしか笑いも止まり再び静寂が訪れる。
やがてシンジは思いつめたような顔で、アスカに切り出す。
「アスカ・・・僕はアスカに誤らなければいけない・・・」
「・・・僕は何度もアスカにひどい事をした・・・使徒の攻撃で苦しんでいるアスカを助けにも行かなかった・・・いなくなったアスカを探そうともしなかった・・・そして・・・病室でアスカに・・・」
そこで険しい表情のアスカがシンジの言葉をさえぎった。
「ストップ!そこまでよ。あんたがやったことは全部知ってる。どうしても許せないこともある。」
そこまで言うと、表情を柔らかく変えて続ける。
「でもね・・・それならあたしも同じ、シンジには今まで沢山ひどい事をしてきた。でもシンジはそんなあたしに、いつも優しくしてくれた。そしてあたしがピンチのときには、必ずシンジが助けに来てくれた。あたしはシンジに感謝してる。だから・・・だからもういいじゃない。」
「アスカ・・・・・・」
「・・・それでもあんたが自分を許せないって言うのなら・・・あたしがあんたに罰を与えるわ・・・それでいいでしょ?」
「わかった、どんな罰でも受けるよ・・・」
アスカはしばらく考えると、いたずらっぽい顔で言った。
「そうねえ・・・それじゃあ・・・まずは、次の夕食はハンバーグにすること!」
「・・・・・・へ?」
「次が、新しい服を買ってくれること!」
「・・・・・・」
「そして最後に・・・ずっとあたしのそばに居てくれること・・・」
「つっ・・・アスカっ!!」
シンジはアスカのことを思い切り抱きしめる。
アスカもそれに答えるように、シンジの背中に手を回す。
「アスカ・・・好きだ・・・もう放さない・・・」
「あたしもよ・・・バカシンジ・・・」
そのままゆっくりと時間が流れる・・・
長く長く二人の抱擁は続いた・・・
どれくらいの時が経ったのだろうか。
二人は惜しむように体を離した。
「これからどうしようか・・・皆ももうじき帰ってくるはずだけど・・・」
「とりあえず・・・家に戻りましょ、早くお風呂に入りたいのよ。」
「うん、そうだね。帰ろう、僕たちの家に・・・」
そう言って二人は歩き出した。
その手はしっかりと繋がれている。
絶対に放さないと言うように・・・・・
完
後書きのようなもの
どうも始めまして、タイシンといいます。
このような駄作に最後までつきあっていただき、ありがとうございます。
わかると思いますが、この話は64版のエヴァを元に書きました。
シンジがアスカを助けに初号機で出撃!
EOEの後、このシチュエーションをどれだけ夢見たことでしょうか。(笑)
その意味では64版のエヴァは、まさに望んでいた物そのものだったのですが。
あれってアスカがやられた後に出撃するようになってるんですよね。
そうなると、エンディングでLASって、無理があるように思った訳です。
まぁ一番の理由は、アスカが酷い目にあうシーンなんて書きたくない!というものですが(笑)
そういう訳で途中から変更させてもらいました。
電源が切れたのに周りの様子が分かるのか?とかの突っ込みはかんべんです。(汗)
何せ、SSなるものを書くのは初めてなので、いかんせん見苦しい所も多いでしょうが、見逃してやってください。
それでは、機会があればまたお会いしましょう。