今日は日曜日。だがしかし、葛城家の命運をその双肩に託されている主夫シンジは、休日など関係無く家事に追われていた。
掃除、洗濯、食事の下拵え、等々………彼に安息の日々など無いのである。

 


デンジャラス葛城家(仮)

第壱話  絶体絶命!葛城家

by K-tarow


 

「さて、と。掃除も終わったし、そろそろ昼食の準備しなくちゃ」

キッチンに入りエプロンを身に付けた時、彼の同居人が帰宅した。

「ただいま〜」

威勢良く玄関から顔を出し、栗色の髪をなびかせた少女。
惣流・アスカ・ラングレーその人である。
親友のヒカリと買い物に行ったので、手には紙袋が握られている。

「あ、おかえり、アスカ。あんまり荷物多くないね」
「ま〜ね。良いデザインの服が無かったのよ。3着しか買ってないわ」

アスカは自分の部屋に買ってきた荷物を置き、リビングの椅子に座った。

「そうなんだ。ご飯食べるよね?」
「当ったり前でしょ。お腹空いてるんだから早くしてよね!」

そう言ってリモコンでテレビを付けるアスカ。

「ん、分かった。すぐ作るから待ってて」

シンジは冷蔵庫を開け、材料を物色し始めた。

「ミサトはネルフだっけ〜?」

テレビを見ながらアスカ。

「うん。日曜日だって言うのに大変だよね、ミサトさんも。午前で終わりだって言ってたけど」

シンジも手を休めずに答える。

「たっだいま〜!」

噂をすれば何とやら。この家の「名前だけの主」のご帰宅である。

「おかえり、ミサト」
「おかえりなさい、ミサトさん」

「あ〜、疲れた〜。ま〜ったく人使い荒いんだから、うち(ネルフ)は〜」

ぶちぶちと愚痴をこぼしながらリビングの椅子に座り、机に突っ伏す。

「シンちゃ〜ん、お腹空いた〜。ご飯〜」

まるで子供のように、机をドカドカと叩くアクションを起こすミサト。

「全く、いい大人がみっともない真似するんじゃないわよ」

頬杖をついてジト目でミサトを睨むアスカ。

「まぁでも、早くしてよね、シンジ。アタシもお腹空いてるんだから!」

シンジはキッチンで苦笑いをするしかなかった。

 

 

「はい、お待たせしました」

数十分後、シンジが食卓に本日の昼食を並べた。
今日のメニューは、ご飯、大根の味噌汁、餃子、野菜サラダ。
毎度の事ながら手抜きを感じさせない、昼食にしては豪華なメニューである。

「待ってました!ちょ〜っち遅かったわね〜」
「相変わらず鈍くさいんだから!このアタシを餓死させるつもり!?」

遅れたと言っても大した誤差は無い。
それでも空腹の二人はいちゃもんをつける。
シンジも可哀想な男である。

「別に遅くはないと思うけど………」
「うるっさいわね!遅いったら遅いのよ!」
「シンちゃん、男なら細かい事は言わないのよ!」

有無を言わせぬ迫力でシンジに迫る二人。こうなるとシンジにはどうする事も出来ない。
はぁ、とため息をついてシンジはペンペンの昼食である2匹のサンマを皿に乗せて、ペンペンの前に置く。

「それじゃ………」

「「「「いただきま〜す(クワッ)」」」」

一斉に食事を始める三人と一匹。
ミサトとアスカは餓鬼のように目の前の料理を貪る。自分達で言っていたように空腹だったようだ。だが、それにしても見事な食べっぷりであった。

「シンちゃん。この味噌汁、味噌多いんじゃない?しょっぱいわよ」
「シンジ!この餃子、焼き過ぎじゃないの!?」
「え?あの……そんな事無いと思いますよ………」

「しょっぱいったらしょっぱいの!!」
「何よ!アタシの言ってる事が間違ってるって言うの!?」

自分では料理をしないのに、いちゃもんだけは一級である。
付け加えると、味噌汁の味はいつもと変わらないし、餃子も中華料理の一流シェフが食べてみても「お見事」と唸らせるであろう一品だった。

「でも………」

「デモもストもないわよ!うっさいわねー!!」
「シンちゃん。さっきも言ったけど、男でしょ?細かい事は言わないの!」

細かい事を言ってるのは自分達なのにも関わらず言いたい放題である。

「あー!もうこんなの食べたくないわよ!!」

アスカはそう言うと、皿を持って立ち上がり、ゴミ箱に餃子を投げ捨てた。

「………!!」

シンジはそれを見ると、俯いて身体をワナワナと震わせた。

「うーん、私ももういらないわ。御馳走様。シンちゃん、後片付け宜しくね」

ミサトが席を立とうとした瞬間、シンジが爆発した。

「いい加減にしてよ!もう沢山だ!!」

ビクッと身を震わせるミサトとアスカ。
滅多に怒鳴る事の無いシンジに驚きを隠せないようだ。

「何よ、突然叫んで。アンタバカぁ?」

「そんなに文句ばかり言うなら、これからは自分で作って下さい。僕はもう作りません」

シンジはミサトとアスカを睨み付ける。

「掃除も洗濯も、全部自分でして下さい。それだけです」

それだけ言うと、シンジは食事の後片付けもせずにさっさと自分の部屋へ戻っていった。

 

 

「………ちょっと………シンちゃん怒っちゃったわよ………どうしよう………」
「………フン!ほっときゃ良いのよ………あんな奴………」

ミサトもアスカも、流石に自分達のした事を振り返ってみて、言い過ぎたと後悔していた。

「アスカ、アンタが餃子捨てるからシンちゃんが怒ったのよ!」
「ミサトこそ、いつもと変わらない味噌汁にイチャモン付けてたじゃないのよ!」

「アスカが……………!!」
「ミサトが……………!!」

「アスカが……………!!」
「ミサトが……………!!」

「アスカが……………!!」
「ミサトが……………!!」

「アスカが……………!!」
「ミサトが……………!!」

「アスカが……………!!」
「ミサトが……………!!」

「………………………!!」
「………………………!!」

 

 

「はぁはぁ………もう止めましょ………アスカ………」
「はぁはぁ………そうね………これ以上は無意味ね………」

不毛な罪のなすり付け合いの末に疲れ果て、床にへたり込む二人。
窓から射し込む光はすっかり茜色になっていた。

暫くして、ようやく息が整った所でミサトがアスカに提案した。

「とにかく、二人でシンジ君に謝りましょう」
「………そうね………」

二人は立ち上がり、シンジの部屋の前に向かった。

 

 

 

「ねえ、シンジ君。聞いてる?」

返事は無い。だが、構わずにミサトは続ける。

「そのままで良いから聞いて………さっきは本当にごめんなさい」

ミサトは隣にいるアスカを肘でつついた。アンタも謝りなさい、と言う事のようだ。

「悪かったわね、シンジ。謝るわ」

アスカは腕を組んで俯いている。どうもまだ謝る事に慣れてないらしい。
ミサトはそれを見て『しょうがないわね』といった表情になるが、今はそれどころではなかった。襖の向こうでシンジが聞いていると確信して語りかける。

「きっと私、仕事の事でピリピリしてたのね。ごめんなさい、シンジ君」
「アタシもちょっとやりすぎたわ。反省してる」

「シンジ君も大変なのに………細かい事でゴチャゴチャ言っちゃって………」
「あ〜、もう!悪かったって言ってるでしょ!何とか言いなさいよ、シンジ!!」

アスカは今にも襖を突き破り、中に入っていきそうな勢いである。
ミサトはそんなアスカの前に腕を伸ばし、無言で落ち着くよう促す。
そして、これで駄目ならどうすることも出来ない、という最後の言葉を紡ぎ出す。

「シンジ君。もし許してくれるなら、また私達のご飯、作って欲しいの………」

暫くの時が流れる。
重い沈黙の中、アスカとミサトはじっとシンジの声を待ち続けた。

そして、ようやく待ち望んだ声が聞こえてきた。

 

 

 

「あの………もう良いですよ………」

シンジの声はいつもの調子に戻っていた。
それを感じ取ったアスカとミサトは顔を見合わせて喜ぶ。

「………分かってくれればそれで良いんです。僕も言い過ぎちゃったみたいだし………」

そして襖は開かれた。シンジのはにかんだ笑顔が二人には懐かしく、眩しく見えた。
アスカもミサトも不覚にもぼぉっと見惚れてしまい、そのまま立ち尽くしてしまった。

「あ、お腹空いてるんですね?もうこんな時間だし、直ぐに用意しますよ」

相変わらずと言って良いほど鈍感なシンジは、そんな二人の様子に気付かなかった。
今は特大級のその鈍感さに密かに感謝するアスカとミサトだった。

 

「夕飯は何が良いですか?」

キッチンに向かいながらエプロンを着るシンジ。

「ん?私は何でも良いわよぉ。アスカは?」
「ん〜、アタシも何でも良いわ。シンジに任せる」

「分かりました。じゃあ今日はカレーにしますね。材料も揃ってますし」
「うん、お願いね。シンちゃん!」

もう既にギスギスした雰囲気は消え去り、いつもの明るい三人に戻っていた。

ミサトとアスカは食卓の席に、向かい合わせに座る。
シンジがキッチンに消えたのを見て、ミサトは身を少し乗り出してアスカに小声で囁く。

「それにしてもアスカぁ」
「何よ?」
「お昼のはちょっとやり過ぎなんじゃない?いくらシンちゃんに構って欲しいからって、餃子捨てなくても良いのにぃ」

ミサトはいつものからかいモードに入ったようだ。
アスカは瞬時に顔を赤くしてそっぽを向く。
ミサトはニヤニヤとそんなアスカを見ていた。

「何よ、それ?根拠も無しにいい加減な事言うんじゃないわよ」
「しらばっくれても無駄よぉ、アスカぁ。おねいさんは何でもお見通しなのよん」

そっぽを向いたまま抗議するアスカに追及の手を休めないミサト。

「シンちゃんの事、どうしようも無いほど大好きなくせにぃ〜」

余りのしつこさに堪忍袋の緒が切れたアスカが、机を両手で叩き立ち上がる。

「あのねぇっ!いい加減に………」

ガタタッ、ドサッ

アスカの言葉を途中で遮るように、キッチンから物音がした。
明らかに料理をしているのとは違う、只ならぬ音にアスカとミサトは、慌ててキッチンに目を向けた。

 

 

「シンジっ!?」
「シンジ君!?」

二人の視界に飛び込んだのは、倒れているシンジの上半身だった。

 

 

続くのか?



後書きと言う名のお詫び

あぁ〜、嘘つきK-tarowでござぁ〜す(←金八風に)

一応コメディ物になると思います。今回はシリアスっぽくなっちゃいましたが(^^;;)
これもK-tarowの腕不足でござぁ〜ますなぁ。困ったモンでござぁ〜す(←金八風に)

それと、良いタイトルが浮かばなかったので(仮)を付けました。
まぁ、ずっと(仮)が付いたままでも良いんですけどね(爆)


K-tarowさんの新連載、「デンジャラス葛城家(仮)」でしたー(^o^
さすがK-tarowさん……すごいタイトルですね(笑)

なるほど、コメディとの事ですが今回はシリアス風ですね。特に最後の引きが(笑)
しかしアスカ、餃子を捨てるなんて何てことを!と思ったのですが、そこまでしてもシンジに構ってもらいたかったのですね(^^;
さすがアスカですね。やる事が極端です(笑) (でもそこがイイ!(^^;)

ううー、シンジはどうして倒れちゃったんでしょう。
続きが気になる〜!!!


続きを早く書いてもらうもらうためにも、是非k-tarowさんに感想を!!
そしてk-tarowさんのページはこちらです!
 「アスカとシンジの愛の城」


タイトルですが、(仮)付きでいいじゃないですか。
面白いですしぃ(笑)




第壱中学校資料館に戻る