(推奨)
これは、『この想いを君に』
Section−Cの続きです。『この想いを君に』Section−A,B,Cを読まれた後に読む事をお勧めします。
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It's HAPPY STORIES Part2〜 『この想いを君に』 〜 Section −D |
お互いの想いを胸に、それぞれ心を込めた贈り物を渡した後、買い物に夢中だった二人は、遅い昼食を摂った。それから、二人は、アスカが以前から行ってみたかったという、オープンカフェに来て、お茶をしていた。シンジは、
「このケーキ美味しいね。でも、どうやって作るんだろう?…あ、そうか!分かった!これなら、家で作れるかも…。」
などと主夫根性を発揮していた。そう言っているシンジを見て、アスカは、
「もう!こんな所まで来て、主夫根性出しているんじゃないわよ!恥ずかしいじゃない!」
とちょっと膨れていたりする。少し離れた席に座っている女子大生らしき女の子3人組が、シンジたちの方を見て、くすくすと笑っていた。
それからしばらく、シンジとアスカは、他愛の無い話をして時を過ごした。けれども、二人にとっては、その時間は何物にも代え難いものである。シンジがシンジとして、アスカがアスカとしての自分の存在を確かめる事のできる時間。何気ない会話の一つ一つが交わされるたびに、確かな自分としての存在を認識でき、また、それと同時に自分にとって必要不可欠と言える存在を感じることができる。お互いに、それを口に出す事はないが、想いは同じである。
自分の中の他人の存在…。以前の二人には、決して容認できる事のできなかったもの。しかし、今では、それを必要としていた。心が似すぎるくらいに似ている二人。心を他人に犯される事を恐れ、他人との接触を嫌っていた二人。その方法こそ違っていたが、−シンジは自分の心の中に閉じこもる事で、アスカは心に壁を作る事で−自分の心を他人から守っていた。そうしなければ、自分を守れないと思っていた。
しかし、いつの間にか自分の心の中に、違う誰かが住んでいた。
それに、はっきりと気が付いた。
シンジは、最後の使徒との戦いの最中に…。アスカは、心の中での母との会話で…。
否、二人はそれ以前から気が付いていた、自分の中にいるその人の事を…。ただ、認めるのが恐かっただけ、裏切られる事を恐れていただけ…。
もしも、それを認めたなら、もし、それを受け入れたなら、自分の存在は壊れて、無くなってしまうと思っていたから。本当は、誰よりも、そうした存在を求めていた二人なのに…。
だからこそ、今、こうしてお互いの存在を感じながら一緒にいられる事に、シンジとアスカは、幸福感とも満足感とも、あるいは安心感とも、何とも言えない不思議な感覚を覚えずにはいられないのだ。いつものように、アスカが突然とんでもない提案や注文をシンジに突きつけ、シンジがそれに少し困った顔をしたり、アスカが、シンジの全く天然としか言いようが無い気障なボケ(?)に耳まで赤くなり、それを不思議そうにシンジが眺めていたり…。そんな満ち足りた時間を、二人は、心の底から湧きあがる感情とともに、満喫していた。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
カフェを後にした二人は、夕闇が迫るいつもの公園へと足を運んでいた。マンションに帰る途中の少し小高い丘にあるこの公園は、シンジとアスカが(アスカが無理矢理シンジを連れ出して)出かけた帰りに、いつも決まって通る場所である。アスカがこの場所を気に入っているからなのだが、シンジもここから見る夕暮れの第三新東京市が好きだった。そして、盆地の第三新東京市の夕暮れは早い。そんな二人の後ろには、長い影ができていた。
噴水とベンチと木立があるだけで、他には何も無い、シンプルな造りのその公園は、いつも人影がまばらであった。アスカが、『誰かにシンジと二人っきりでいるのを見られたら恥ずかしいじゃない!でも、ここならあまり人も来ないし…。だから、誰にも邪魔されないしね…。』と思ったのも、この公園を気に入った理由である。
ベンチに座る二人の眼下には、第三新東京市が広がる。今日は、外食が良いと言うアスカに、ミサトに気を遣ったシンジが、家で三人で食べよう、と言ってここまで来た。そこまでは良かったのだが、しかし、この公園まで来てこのシチュエーションになると、シンジの鼓動は急速にその速さを増して行った。今までは、意外にも意識の外に置いておく事ができた、今日アスカを誘ったその「理由(わけ)」が、シンジの頭の中で踊り狂ったように、駆け回っていた。そして、シンジは、どうアスカに話し掛けようかと、そのタイミングを見計らっていた。そう、シンジは、この公園を「その場所」として決めていたのだ。
シンジは、あの晩加持に、「何処か二人の思い出のある場所で」想いを告げたらどうだ、とアドバイスされていた。「二人の思い出のある場所」でシンジは三つの選択肢が思い浮かんだ。
一つは、二人が初めて出遭った場所。
二つ目が、いつも出かける時に通る、今いるこの公園。
そして三つ目が、二人が今も住んでいるミサトのマンションである。
一体何処で自分の想いをアスカに告げるか…、シンジは思い悩んだ。
さすがに二人が出逢った場所、国連軍所有の空母「オーバー・ザ・レインボー」と言う訳にはいかない。まさか、「アスカに自分の想いを伝えたいから空母を貸してくれ」などど言えるはずも無い。では、残り二つの場所のどちらか…という事になる。シンジは、本当はミサトのマンションでアスカに自分の想いを伝えたかった。あそこは、シンジにとってもアスカにとっても、そして二人にとっても、様々な思い出が詰まった場所だからだ。しかし、あのマンションで自分の想いを伝えるには、最大にして“最凶”の障害がある。それは、言うまでもなく、「自称二人の保護者」こと、葛城ミサトその人である。そうした消去法の結果、この公園という事に決めたシンジである。
しばらく、そのまま黙って山肌に消える夕日を眺めていた二人。アスカが、何も話し掛けてこない事を少し怪訝に思いながらも、シンジは、加持とのあの会話を思い出していた。
「迷っていたのは、ここに来て、葛城に会うべきかどうか…。そして、俺の想いを伝えるべきかどうかをね。」
「だが、俺はそうは思えなかった、はじめはね。今更どんな顔してアイツに会えば良いのか分からなかったんだよ。失った時間は、どうあがいても取り戻せないんだ。俺達二人が失ったものは、あまりにもでかすぎた…。」
「俺のこの思いをアイツに伝えないまま、悩んだまま時を過ごす事は耐えられなかった。たとえ結果がどうあれ、俺は俺の気持ちのまま正直に行動しよう…とそう決めた。」
「シンジ君。だから、君にも…、自分の思いを伝えて欲しいんだ。君の心に住んでいる人にね。」
「もう、君は、それが誰か気が付いているじゃないのかい?」
「俺にも迷いや恐れはある。まして、シンジ君はまだ俺の半分も生きていない。色々な事で迷ったり、悩んだり、恐れたりする事があるだろう。ただ、その時に逃げたりしない事だ。後悔したくないならな。」
「君には俺と同じ道を、同じ過ちを犯して欲しくないんだ。俺は、8年前選択を誤った。あの時、葛城に伝えたかった言葉を伝えないまま無駄な時間を過ごして、俺達は回り道をしてしまった。その失った時間を取り戻す事はもうできない。ただ、前に進む事はできる。」
「葛城が、俺にとって運命の女なのかどうか?それに気が付くのに俺は8年もかかった。だが、君はもう気が付いているんだろう?」
「君も俺と同じじゃないのか…と思ったんだ。シンジ君。君のその想いも、君の想う人に伝えるべきじゃ無いのか?そうは思わないかい?シンジ君」
「恐いかい?君のその想いに、彼女が応えてくれなかった時の事を考えると。」
「そうだな、正直俺も恐いさ。」
「何を恐れるんだ?碇シンジ!君はもう既に自分で答えを見つけているんじゃないのかい?」
と、あの時の加持の言葉が、次々とシンジの心に語り掛けてくる。
そして、加持の、
『シンジ君!君の想う人もまた、君の言葉を、君のその想いを待っているとは思わないかい?』
と言うシンジの心と強く打った言葉を思い出し、シンジが、一つ深呼吸をして、思いきってアスカに言葉をかけようとしたその時、不意にシンジの携帯が鳴った。
“ピピピピピ…!ピピピピピ…!ピピピピピ…!”
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
アスカは先程のショッピングから、カフェでの会話以降、徐々に大きくなる−今までずっと閉っていたはずの−自分のある想い…、「シンジへの自分の想い」に耐え切れなくなっていた。表面上は、いつもと変わらない風を装っていたが、その実、心の中では様々な葛藤が渦巻いていた。その想いは、この公園に来て、こうしてシンジと二人っきりになるとますます強くなるのだった。
『シンジ…。シンジは、私の事をどう思っているの?』
『そう、シンジは、いつも私を見ていてくれる。シンジは、いつも私を支えてくれる。シンジは、いつもアタシにその優しい笑顔を向けてくれる。でも、でも、本当のシンジはどうなの?シンジの心は、本当にアタシの方を向いているの?…確かに、シンジは、アタシがおかしくなってしまった時も、ずっと傍にいてくれた。アタシをアタシとして見守っていてくれた。けれど…、それは…。それは、シンジは優しいわよ…、そう、誰にでもね…。だから…、もしかしたら、アタシも同じなの?アタシが、かわいそうだったからなの?アタシに同情したからの?……ううん、シンジは、そんな奴じゃない…。ただの同情なんかじゃないって…、そう思える。でも、本当は怖い…。アタシは、アタシの中のシンジへの想いに気が付いてしまったから…。ママとの…、ううん、違う…、もっとずっと前から、アタシはシンジへの想いに気が付いていた。アタシのこのシンジへの想いに…。』
『だから、だから、アタシは知りたい…、シンジ…、シンジが、アタシの事、本当はどう思っているのかを?』
『だから、だから、アタシは伝えなくちゃいけない、アタシのシンジへの想いを…。』
アスカが、そう考えて、ぐっと身体に力を入れて、シンジに話し掛けようとした時、シンジの携帯の着信音が、アスカの言葉を妨げてしまった。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
シンジとアスカは、二人の邪魔をしたその無粋な音に完全に気勢をそがれてしまった。シンジが、渋々といった感じで携帯に出る。
「はい…。」
とそこから聞こえてきたのは、今のこの二人の状況とは正反対の、非常にテンションの高い、二人の良く知る人物の声だった。
「あっ!シンちゃ〜ん?今日、私、ご飯いらないから〜♪」
「え?ミ、ミサトさん?」
と声と話の内容でミサトと分かりつつも、シンジが電話の向こう人物を確かめる。
「それと、帰りも遅くなると思うから。じゃ、そういうわけだから。」
「あ、そうそう、シンちゃん、アスカと上手くやってるぅ〜?」
と一方的に話すミサトに、
「ちょ、ちょっと!?ミサトさん!」
とシンジが何か声をかけようとするが、
「んじゃ、そういう事だから、よっろしくねぇ〜ん♪」
と言うとそのまま、ミサトは電話を切ってしまった。わけが分からないシンジ。その様子を伺っていたアスカは、まだ治まらない気持ちの高まりをシンジに悟られないかと気にしながら、
「ミサト、何だって?」
とシンジに聞く。シンジは、自分の事で精一杯だったためか、アスカのそんな様子に気が付く事もなく、
「う、うん…。何だか良く分からないけど、ミサトさん、今日夕飯いらない…って。」
と応える。アスカは、
「そう…。」
とだけ応えると、何か考え込むような仕種をしている。ミサトからの電話でさっきの勢いを失ってしまったシンジは、アスカの先程の要求を呑む事にした。
「じゃ、じゃあ、ミサトさんもいないって言うし、今日はやっぱり、外食にしようか?」
とシンジがアスカに言うと、何かを考えていたアスカは、
「何言っているの!早く家に帰って夕飯の仕度をしましょ!」
と返してきた。アスカは、
『ミサトがいない…。!!!…こ、これは、神様がアタシに与えてくれたチャンスよ!』
『ミサトがいないって事は、今夜はシンジと二人っきり…。いつでも、シンジにアタシの想いを伝えることができるって事よ!そうよ、何を悩んでいるの、アスカ!今日は初めてシンジがアタシを誘ってくれた日だし、アタシもシンジもお互いにプレゼントをあげているし、カフェでもいい感じだったし、それに…、今だって…。そうよ!今日を逃したら、いつまたシンジがアタシを誘ってくれるか分からないのよ?』
『行くわよ、アスカ!私たちのあの家で、シンジにアタシの想いを伝えるのよ!』
という思考の果ての発言なのである。しかし、その意を介さないシンジは、
『また、アスカの我が侭が出たな…。』
と思いながらも、
『でも、ミサトさんがいないって事は、あの家で…、僕達のあの家で、アスカに僕の想いを伝えられる…って事だよね?…そうか!うん!これで、かえって良かったのかもしれない…。』
と思い直していた。アスカが、そんなシンジを急かして、
「ねぇ!早く帰ろうよぅ、シンジィ〜。夕飯は適当に冷蔵庫のあるもので良いからさぁ。」
と言うので、アスカにしては珍しく食事の事をあれこれ言わないな…と思いながらも、
「う、う〜ん、そうだなあ…。」
と冷蔵庫の中身を思い出しながら、アスカに引っ張られるシンジ。
「まあ、ハンバーグなら作れるかも…。」
と今夜のメニューを言うシンジに、アスカは、以外にも自分の大好物の名前が出てきたので、
「やったぁ!シンジっ!早くっ!ネ!早く帰ろうっ!」
と引っ張っていたシンジの腕にしがみついて、更にシンジを急かす。
「う、うん。わ、分かったから、そんなに腕を引っ張らないでよ…。」
とそうアスカに応える。シンジは、アスカに引っ張られて、二人の思い出が詰まった「我が家」へと向いながら。
『何だかアスカ、ミサトさんがいないって言ったら、急にはしゃぎだしたなぁ…。』
と思いながら、
『今日なら…、あの僕たちの家なら…、アスカに僕の想いを伝えられるかも…。いや、伝えなくちゃいけないんだ…。』
と改めて決心するシンジであった。
まだ熱を帯びたアスファルトに、長く長く伸びた二人の影だけが、自分達の主人が秘める想いを知っているのだった。
あとがき
はい!今回はここまで!
え?また短いって?
だって、この先書くと今度は長くなるんだもんな〜。
と言うわけで、今回はここまでで我慢我慢。(^^)
では!次回作、『この想いを君に』Section−Eでお会いしましょう!
文責Byやす
やすさん執筆による「It's HAPPY STORIES」この想いを君に〜Section-C〜、そして〜Section-D〜でした〜。
もうずーっと続きを待ってたんですよやすさん!(w でもこうして2話もいっぺんに読めて嬉しい嬉しいっす。
〜Section-B〜でワクワクデートに出かける事になったシンジとアスカ。
…っと、今回のCとDを読む前に一度〜Section-A〜とSection-B〜を読んだ方も、もう一度おさらいの意味も兼ねて読んでおきましょうね。A.B.C.Dと続けて読めば面白さが桁違いですから。
さてさて肝心要の2人のラブラブデートシーンなのですが…。
ううう、初々しい! 照れてるシンジもアスカも可愛い!(w
つーか堪らんですよ、こんな2人のデートシーンを見せられちゃ。お互いに心を込めたプレゼントも買っちゃってますしね。
Section-Dの方では夕暮れの公園舞台に、微妙な2人の心の動きが丁寧に描写されてますね。
シンジもアスカも想いは同じ。それは「相手に自分の気持ちを伝える事」。
2人共覚悟を決めてさあ告白!…って時にミサトからの携帯電話。むうう、Suckミサト!(汗
そしてそして「告白」は次回のお話に持ち込み…。
うー今回もなんていい所で終っちゃうしー。すげーヤキモキする〜(w
作者のやすさんへ是非感想を!
えびに感想を送ってもらえば、必ずやすさんに内容を転送します。もしくは掲示板へ書き込みをお願いします!
今回も良い所で「続く!」なんて、やすさんも意地悪だなぁ(w
もう思いっきり続きを期待して待ってますんで執筆頑張ってくださいね、やすさん!