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「あなたを探しに」レポート


えー最近様々な理由でSSがすすまないので、「あなたを探しに」の感想を書きます。
ネタバレ全開ですがご容赦ください。

今回は珍しく、紅、黄、白の3本のプロットが併走する形になっています。最後にわずかですが、黄と白のプロットは合流します。そして「明日」を提示して終わります。紅は合流しませんが、同様に「明日」を提示して終わります。

「〜になったら〜をするんだ」という状況を色々な人が「死亡フラグ」などと言っていることは、とりあえず置いておきましょう(笑)。


黄薔薇の話はよかったですね。いわば天敵とも思える二人が、一緒に行動するうちに友情を深める。その様子がエピソードの過不足もなく、楽しく描かれていました。
細かい点では、「説明しよう」と強引に「BL」の説明が入ったり、映画のタイトルが「若様浪人剣・玉と牙」「パリ21区のジュテーム」「血みどろ屋敷の経文」といった具合で、「罰当たり修道院の最後」並にいい加減なところが面白かったですね。
手を握り合って悲鳴を上げる二人の様子が楽しくイメージできました。

紅薔薇では、穏やかではありますが緊張感のある中で、静かに瞳子の心情が語られます。そして祐巳との間の誤解や壁は取り除かれます。それ自体は優しい気持ちになりつつ読むことができましたが、不満な点もあります。それは、「瞳子の中では全て終わっている」という点です。瞳子の秘密、なぜなのか、について知ることはできましたが、読者としては、瞳子が自分の置かれた状況に気づき、祐巳の差し出した手をつかむことを決意する、その瞬間に立ち会いたかったです。
瞳子の説明じゃなくて、瞳子自身に起きたドラマを見たかったです。

白薔薇は正体不明の相手と志摩子さんが対決する訳ですが、これは問題大有りと言わざるを得ないでしょう。
先程の映画の話ではありませんが、紅薔薇がラブ、黄薔薇がコメディなら、白薔薇はサスペンスといった位置づけで、一冊で三度おいしい、という構成なのかもしれませんが、一年前ではなくて今の志摩子さんにサスペンスやスリラーは通用しないでしょう。今の志摩子さんには、そういうものを粛々とこなせるだけの強さがあります。
昼食が少し多い、暴力沙汰(笑)、などのヒントの出し方から見て、純粋に志摩子さんに感情移入してスリルを味わうのが想定されている正しい読み方なのでしょう。

問題は謎解きの後が他のプロットに比べてつまらない、ということですね。紅薔薇や黄薔薇ではきちんと各人の心情の大きな変化があり、明るい「明日」がドラマを通じて提示されますが、白薔薇では「なるほど」で終わりです。志摩子さんが何かに気づくでも、亜実さんと千保さんが成長するでもなく、終わってしまいます。

だから、白薔薇にはもうひとつテーマを持たせてあったはずなのです。例えば、「薔薇さまと一般生徒の距離」を持たせることもできます。謎が解け、和解した三人は今後の計画を薔薇の館の二階で決めますが、その後志摩子さんが冗談を言って場を和ませ、親しくなるという展開はあまり想像できません。亜実さんと千保さんが次第に大胆な質問を投げるようになって盛り上がる、という展開も無理があるように思います。

蔦子さんの存在はそこで必要になります。志摩子さんと二人の一年生の間に入って、両者が親しくなれるようにおせっかいを焼くのです。写真を撮るのでくっついて座れ、と言ったり、たまたま持っていた(笑)志摩子さんの変な表情の写真を見せたり、いくらでも方法はあります。ですが、本文では蔦子さんの存在が二人の一年生より大きすぎて、その辺のドラマが省略されてしまいました。これはとても残念なことです。

デートが終了してバスに乗る時点でも白薔薇組は一緒にいますので、志摩子さんと亜実さんと千保さん、それに蔦子さんと笙子ちゃんの五人は大いに盛り上がったことが想像されます。が、もし一部でも、例えば、蔦子さんの出した変なお題に志摩子さんが大真面目に変なことを答えたり、亜実さんと千保さんが回答に窮しているときに笙子ちゃんがスットコドッコイなことを言って笑いが起きたり、そういうドラマを使って志摩子さんと亜実さんと千保さんの接近がこのプロットで描写されていれば、他のプロットと釣り合うだけの重さを持ち、まさに一冊で三度おいしい本になっていたはずなのです。

とにかく、白薔薇はラストシーンの描写が絶対的に不足しています。読み返すと志摩子さんと亜実さんと千保さんが親しくなれた、と思える描写がない訳ではないのですが、十分ではありません。

もう少し、せめてあと4ページあれば―――
―――蔦子さんと笙子ちゃんの近況を読めたのになぁ。



ここまでお付き合いいただきましてありがとうございました。
ごきげんよう!





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