愛宕神社 島根県松江市外中原町 式内論社(出雲国意宇郡 意多伎神社)
阿羅波比神社の境外末社
現在の祭神 加具土命
[配祀] 大己貴命
本地 勝軍地蔵

「雲陽誌」巻之一

宝照院

天台宗なり。 愛宕山といふ。
本社は愛宕大権現、左の社は役の優婆塞、右の社は太郎坊なり、 役の優婆塞は世人是を役の行者といふ山伏の元祖なり、 太郎坊は人是を大天狗といふ、ある書に梯本の紀僧正真済といふ僧の霊なりといふ、又一の名栄術太郎といへり、 縁起にいはく、権現は伊弉冊尊の御子火神軻遇突智の神なり、本地勝軍地蔵なりといふ、
此社昔年能義郷古川村灰火山といふ所にあり、 灰火山とは軻遇突智は火産霊のことなり伊弉冊尊此神を生たまひて焼て神終ますこのゆへに草木土石火を含によりて灰火山といふなり、 慶長の比堀尾帯刀吉晴能義郷富田の城を島根郡松江に移たまふ時此社も今の山に移たまふといふ、
鐘楼堂あり、 本堂には地蔵菩薩を安置し奉る恵心僧都の作なり、
按に権現は軻遇突智なり、 或説には百済国の日羅将軍の霊なり、 世人愛宕権現は火難を除く神なり、 専武家崇敬す、 軻遇突智は火の神なるを以て火難を除くなり、 又武家崇敬するは日羅は智勇の人なり、 本地勝軍地蔵然らは将軍は戦に勝といふ文字の心をもつて武家崇敬するなるへし