磐梯神社 福島県耶麻郡磐梯町磐梯 旧・郷社
現在の祭神 大山祇命・埴山姫命
本地 薬師如来

「日本歴史地名大系 第七巻 福島県の地名」

磐梯山

頂上に小祠があり、「新編会津風土記」に「絶頂に磐梯明神とて石の叢祠あり」と記す。 磐梯明神は磐梯山の神である。磐梯町恵日寺脇にある磐梯神社はこの磐梯山の神を祀る社。 永正八年(1511)高野山で修復したと記される絹本著色慧日寺絵図(恵日寺蔵)では、境内最奥に磐梯社を描く。 「新編会津風土記」に「磐梯神社金堂の戌亥の方にあり、当寺草創の時祭れる所なり」とある。 「新編会津風土記」に「磐梯神社も古は此山上に鎮座ありと云」と記す。 大同元年(806)徳一建立とされる恵日寺の鎮守で、同寺の山号は磐梯山である。 磐梯山の信仰は磐梯神社と恵日寺の信仰にも包摂される。 なかでも磐梯神社の国祭には、磐梯明神の農業神・作神の一面がみられる。 「新編会津風土記」恵日寺の条に次のように記される。
「国祭(中略)二月十三日磐梯明神の仮屋を造り幣帛を磐梯の本社より遷し来り読経す、同十四日、衆徒院主三時の祈祷あり、十五日船を堂前におき、白米を盛り、この村のもの聚りてこれを争ひ牽く、東を上とし、西を下とす、その船の往く方にて其年の米価の貴賤を卜す、その後金堂にて明神舞あり昔は仮屋の前に舞台を設てこの舞を行ひしとぞ当寺草創以来伝ふる所なり、二人各日光月光の仮面をかうふり、外に三人笛を吹き、大鼓を鳴し、撃節す、其舞畢りて明る十六日の朝その神体を本社に還し納む」
同社の船引祭は有名。 明神舞は絶えていたが復活された。 日光・月光の面は現存し、県指定重要文化財。 磐梯明神を祀るこの行事は春の予祝行事とみられよう。 国祭の時の仮殿には「磐梯明神大頭小頭十八末社をこの所に遷座」されたが、その大頭・小頭については「金堂の辰巳の方に柵を繚らし、その中に二本の柱を建て上に二の櫝を置て仏体を封ず、秘仏にて見る者なし、九月二十一日これを負て諸村を巡る、民みな秋収の初穂を供す」と記すように(新編会津風土記)、予祝に祀られた大頭・小頭を持って回村する九月二一日の行事(イナバツ)は、いわば磐梯明神への感謝祭といえる。 大頭と小頭は木製で鉾形をなし、大頭には日形、小頭には月形が彫られる。 鉾は磐梯明神の依代、彫られた日形は薬師の脇仏の日光菩薩、月形は月光菩薩と考えられる。 磐梯明神をつかさどる恵日寺の本尊は薬師如来で、薬師は磐梯明神の本地仏である。 日光・月光の面を被って舞う明神舞も同様に磐梯山の神と仏の一体になった姿を示すといえる。