滝尾神社 栃木県日光市山内 二荒山神社の別宮
現在の祭神 田心姫命
本地 阿弥陀如来

「日光山志」巻之二

別所[LINK]

抑滝尾は、弘仁十一年七月二十六日、弘法大師始て当山に下著し給ひ、先四本龍寺の室に入り給ひ、上人の遺弟教旻・道珍等、其余の徒を伴ひ、滝尾に到り給ふに、滝有りて乱糸に似たりとて、是より白糸の名起れりとぞ。 嶺を亀山と名附け給ふ。 其形の伏亀に似たるを以てなり。 空海和尚、境地の霊区なるを感じ給ひ、大杉のもとに庵を結び、壇を設けて、仏眼金輪法を修し給ふ事一七日夜、池中より一白玉出現す。 是則天輔星なりとて祀り給ひ、小玉殿と称する是なり。 又も勤行せられしに、天より一白玉降りて、水上に浮び、我は妙見星なり。 公が請に仍りて今来下せり。 此所は我が住所にあらず、此嶺に女体の霊神いませり、此地に祝ひ奉るべし、我をして中禅寺に安住せしめば、末代迄人法を守護せしむべしと、語り畢りて見えず。 依て中禅寺に崇め奉らる。 また尊星の告によりて修法し、霊神の影向を請ひ給ふに、忽霊神化現し給ふ。 其貌天女の如く、端正美麗、金冠瓔珞を以て荘厳に飾り、其身扈従の侍女、前後を圍繞し、僮僕左右に充満し、異香紛紜として、霊神出現の尊容を拝し、心願満足す。 即崛上に社殿を造立して勧請し奉り、手書題額し「女体中宮」と云々。 道珍に室を附与し、是より道珍を以て滝尾上人の元祖とす。
[中略]
拝殿 銅葺、三間に四間、黒漆、上蔀外赤塗、縁側高欄附なり。
中門 素木造、板葺、左右玉垣、矢来の内に矢篠を栽ゑたり。
本社 巽向、銅葺、二間に三間、大床造、三扉黒塗、滅金飾、正体の額三面、鰐口三つ掲ぐ。 玉垣の内は丸小石を敷きたり。 総赤塗、向拝造、彩色彫物、高欄、二重垂木、方七八間許。
祭神 田心姫命の垂迹 本地阿弥陀仏。 鎮座は人皇五十二代、嵯峨天皇の御願所にして御造立といふ。
[中略]
本地堂 本社より西の方、二間四面、赤塗、橡葺。 弥陀・観音・勢至の三尊を安ず。 恵心僧都の作なり。

「木曾路名所図会」巻之六

日光

○楼門 表に二王、裏には風雷の二神を置けり。 額は弘法大師の御筆にて「女体中宮」とあり。 此の門を入りて拝殿あり。
○御本社滝尾大権現  祭神田心姫命、本地は阿弥陀如来也。 向拝造の御社なり。 抑人皇五十二代嵯峨天皇の御願にて御造営あり。 凡そ当山のあらたなる奥儀は、当社にとゞめたりといへり。
[中略]
○本地堂 本尊阿弥陀・観音・勢至の三尊仏。 恵心僧都御作にて、日本に三体の本尊なり。