八天神社 佐賀県嬉野市塩田町谷所 旧・村社
現在の祭神 火之迦具突知大神・建速須佐之男大神・稚産霊大神
本地 十一面観音

「山口十二所権現并八天狗神鎮坐縁起」

肥之前州藤津郡能古見庄の西に山有り。 隆崇嵂崒、塩田能古見嬉野の三庄の間に跨る、 其山至て高きに非ずと雖も、独り諸峯之上に傑出して、 四面不背、宛も富士山之形に似たり。 東南二十里之海波心緑を涵し、西北十里之路雲気紫を凝す。 徒する者之を仰て簦を卸ぎ、航する者之を指て針と為す。 一区の勝境良とに千載の霊地也。 頂に八天狗の神祠有り、麓に十二所権現の鎮坐有り、 其の村を鳥坂と云ひ又鳥越と号す。
[中略]
抑八天狗神の因由を尋れば、則ち不可思之蘊奥は又不可測知也。 暫く神書之載る所を考れば、素盞嗚尊軻愚突智神にして軻愚突智者火神也。 伊弉諾伊弉冊之誕たもう所にして伊弉冊尊所と焦かるる所にして崩したもう矣。 伊弉諾尊十握剣を抜て軻愚突智を斬て八段と為、八段各化して八山祇と為。 一は嶽山祇命、二は峰山祇命、三は奥山祇命、四は端山祇命、五は麓山祇命、六は谷山祇命、七は原山祇命、八は陰山祇命是也。 軻愚突智神の魂魄豊葦原国に荒れます、 伊弉諾尊天下の竃煮之事と南方は夏の時とを授けて、以て其の荒魂を鎮む矣。 又所謂素盞嗚尊も亦二神之誕たもう所也。 其性勇悍猛気胸腹に満ち而余りて吐物と成り、化して天狗神と成る。
[中略]
当山之本地者十一面観音、是修羅道の教主也。

「肥前古跡縁起」

常在寺

未申の間に都の富士に似たる山あり 八天狗嶽と云ひ常に八天狗住給ひ普く国土の火難を除武運兵法の利益を施し給ふ、 本地は観世音菩薩也