「日本の神々 神社と聖地 9 美濃・飛騨・信濃」
白山神社(生駒勘七)
国鉄大桑駅の木曽川対岸の小川のほとりに鎮座する。
旧殿村の氏神で、本殿に白山神(祭神菊理姫命)を祀り、蔵王神社(祭神大己貴命)、伊豆神社(大山祇神)、熊野神社(伊弉諾命)が同じ覆屋のなかに祀られているが、これは創建当初からの形であると伝えられる。
江戸時代は白山権現、明治維新以降は白山神社と称しているが、各社殿の神号額はいずれも権現号のままになっている。
木曽谷には、楢川村贄川、木曽福島町新開黒川、大桑村野尻、南木曽町与川に菊理姫命を主神として白山を号する神社が五社あり、いずれも旧村単位の氏神であるが、この殿村の白山神社は鎌倉末期創建のままの社殿(重要文化財指定)を残すことで名高い。
[中略]
当社の古い信仰習俗を伝えるものとして興味深いのは、白山社の奥の院と称する観音堂と、「旧社道は小羽根氏の下千体地蔵を祀る堂宇の側より入りて十一面観世音を祀れる奥の院と称する所より木曽川西古道筋によりたるなり。しかして同神社参拝の順序として千体地蔵尊に参り、十一面観世音を拝し白山社に参拝するを例とせり」といった伝承記録が残っていることである。
この奥の院は、かつて白山社よりわずかに離れた人家寄りにあって、文中にあるように、昔は白山社の参拝はまず奥の院、それから神社という順序であった。
いまでは観音堂は移転されてやや距離が遠くなっているが、この観音堂には白山社葺替に関係する棟札様のものが残っており、白山社との関係を裏づけている。