「三国名勝図会」巻之三十二
山路村にあり。
国分弥勒寺の末にて天台宗なり。
本尊阿弥陀如来(坐像、長三尺六寸、恵心僧都作)、夾侍観音勢至(長四尺一寸、作人同上)。
此本尊の堂宇方三間あり。
建仁三年、十月十九日、得仏公是を造立し給へり。
[中略]
○日吉山王社 当寺より丑寅五町許の山下にあり。
奉祀大己貴命にて、台明寺一山の守護神なり。
社内に神輿三を安置して、其三輿に、凡そ二十一社を勧請す。
社壇は益救杉材にて、昔時名匠が鉋を以て造れりといふ。
正祭十一月未申日なり。
今の社司を渡辺右京といふ。
上古は地主権現と称じて、当寺の門西二十間許にありしに、何の比にか、今の地に移せり。
其旧地を地主園と唱ふ。
今に一林叢あり。
大樟木の下に、石の小祠を建て、其旧蹟を標す。
又当社の右に、本地堂あり。
当寺本尊弥陀三尊を安す。
建仁三年、得仏公御造立ありしは、此堂なり。
当社は、台明寺門前の渓流に随ひ、曲折して五町許を経れば、石華表あり。
石階数十を登るに、即ち本社に至る。
本社は青葉竹林の中にあり。
○本地堂 前文に見ゆ。
○浄水瀑 付 御手洗水 当寺境内日吉社の西にあり。
其高さ二間許にて、崖間より瀉き落つ。
日吉社の前に一池あり。
御手洗の水といふ。
其池水は瀑水の下流を引けり。
日吉社の祭祀に、供物を浄むる処とす。
瀑水の名も是に由れる歟。
潔浄の霊水なり。