日枝大神社 神奈川県川崎市川崎区小田2丁目 旧・村社
現在の祭神 大山咋命
[配祀] 大山津見命
[合祀] 天照皇大神・木花開耶姫命・大国主命・豊受姫命
本地 阿弥陀如来

「新編武蔵風土記稿」巻之七十一
(橘樹郡之十四)

小田村

山王社

御朱印地十石、村の中央にあり、 本社宮造り九尺に二間、 拝殿三間に二間、 神体丸き石なり、円周八九寸、 別にかわりたる石とも見えず、 土人云古の神体は黄金をもって作れる扇子の開きたる日月星辰を鐫したるものなりと、いつの頃か賊の手に奪はれたりと、 後その形を真鍮にて模し、年々祭礼のころは今の里正栄助が家にて承り、馬上にて捧持し神輿の先に立つ古例なりとそ、 かの真鍮にて作れる扇子と云へるものも近来のものにてはなく古色なり、 例祭年々四月中の申の日なり、 隣村下新田・菅沢・当村すべて三村の鎮守たるにより祭の頃は此の三村のものとも出でとり行へり、 中にも神輿の前後を馬上にて守護するもの十二人なり、 村内を過て下新田村・菅沢村をわたして夫より社地に還れり、 此の山王はもと比叡山坂本山王権現の遥拝のために爰に社を設くることゝぞ、 故に比叡の宮などいへるものあり、 是もその始をしらず、たゞ口碑に伝へるのみ、 稲毛領平村より禰宜来りてとりをこなへり、 拝殿の前に石鳥居たつ東向の社なり、
八王子社 社に向て右の方にあり、末社なり下同、
子神三峯合社 社に向て左の方にあり、
別当円能院 新義真言宗、同郡神奈川宿金蔵院末、金沢山福泉寺と号す、
[中略]
又山王の縁起左に出す、
 円能院山王権現縁起
武州橘樹郡河崎之領小田村氏者、惣廟山王権現、天暦貳戊申三月申日、京都従比叡山遷、
村上天皇之御代ニ奉守護、本地阿弥陀如来、山者金沢、寺謂福泉、院号円能、本尊大日如来也