氷川神社 埼玉県さいたま市大宮区高鼻町1丁目 式内社(武蔵国足立郡 氷川神社〈名神大 月次新嘗〉)
武蔵国一宮(三宮)
旧・官幣大社
現在の祭神 須佐之男命・稲田姫命・大己貴命
本地 聖観音

「神道集」巻第三

武蔵六所大明神事

三の宮をは火河大明神と申す。 本地は観音なり。 この仏はこれ釈迦には左面の弟子、弥陀には補処の大士なり。 三十三身にして、十九説法し給へり。

「江戸名所図会」巻之四(天権之部)

大宮氷川神社

大宮の駅のうち(このところを氷川戸庄高鼻村といふ)、街道の右の方に鳥居・立石あり。 これより十八町入て御本社なり。 神領三百石、神主角井氏・岩井氏これを奉祀す。 祭神三座、本社の右は素盞嗚尊(男体の宮と称す。奥の社ともいふ)、同じく左は奇稲田姫命(女体の宮と称す、これも奥の社と唱ふ)、本宮は大己貴尊を斎ひ奉る(簸王子宮と称す)。 これはすなはち武蔵国第一宮にして、『延喜式』名神大社、月嘗新嘗に列する第一の官社たるところなり。
荒波々畿の社(本社の傍らにあり。手摩乳・足摩乳二神を祀る。『武蔵国風土記』に、「観松彦香殖稲天皇御宇三年祭るところ」とあるは、この社をいへるにや)。
宗像の社(同じ橋の左の方にあり。祭神田心姫・湍津姫・市杵嶋姫などの三はしらの女神を祀る)。
五山祇の社(本社の後ろの方にあり。大山祇・中山祇・麓山祇・正勝山祇・闇山祇、以上五神を祀る)。
本地堂(神池の北にあり。観音を本尊とす。社僧五宇あり。江戸護持院末、新義真言宗にして、本地供を主務すといへり)。

「武州一宮社記」

武蔵国一宮氷川大明神鎮座の社二所あり。 一所は中山道大宮宿大宮氷川大明神、これ人の知る所なり。 一所ハ一宮宿より一里余北に入て宮本の簸川大明神女躰宮と申、是なり。 この二所を合せて一座の氷川明神にて坐すを、今ハ宮本の社を知る人少きなり。
[中略]
一、中山道大宮宿氷川大明神の社は、大宮宿入口より右の方に立石あり。 武蔵一の宮氷川大明神といふ。[中略] 本社ハ甚小さし。 外縁三間許りもやあらん。 武蔵国一宮氷川大明神といふ額あり。 本社の東に本地堂正観世音を安置す。

「新編武蔵風土記稿」巻之百五十三
(足立郡之十九)

高鼻村

氷川神社

社地総て九万余坪と云、 当国の一宮にして古は殊に大社なりし故、今も大宮町・大成・土呂・本郷・天沼・北袋・加茂宮の七村を井垣の内と称せりと云、 社記を閲するに、当社は孝昭帝の御宇、勅願として出雲国氷の川上に鎮座せる杵築大社をうつし祀りし故、氷川神社の社号を賜はれりと、
[中略]
男体社 御手洗の橋を過て左の方にあり、宮作にして二間半に一間半、下二社も同じ、当社は神主岩井伊予司どれり、祭神は素盞嗚尊にして、伊弉諾尊・日本武尊・大己貴命の三神を相殿となせり、
女体社 男体社の東にあり、こは神主角井駿河持にして、祭神は稲田姫命なり、相殿に天照太神宮・伊弉冊尊・三穂津媛命・橘媛命を祀る、[中略]
簸王子社 三鳥居を入て正面にあり、当社は神主角井監物司どれり、祭神は大己貴命と云、一説に軻遇突智命なりといへど、前にも記す如く、出雲国簸の川上に鎮座せる杵築社を写して、氷川明神の号を勅許せられし由伝ふれば、恐くは大己貴命なるべし、杵築社の祭神大己貴命なる由、古記に詳なり、 扨当所三社の次第につきて、昔より異論あり、 或は当社大己貴命本体にして、男体女体は彼父母の神なれば、摂社に祀りしものといひ、 或はいふしかにあらず男体素盞嗚尊本体にして、簸王子は火神軻遇突智を祀りて、大己貴命にあらず、よりて当社と女体は摂社なりと、[中略]
摂社 門客人社 男体社の東にあり、祭神は豊磐窓命・櫛磐窓命の二座にて、古は荒脛巾神社と号せしを、氷川内記神職たりし時、神祇伯吉田家へ告して、門客人社と改号し、手摩乳・脚摩乳の二座を配祀すと云、[中略]
末社 五山祇社 男体社の後にあり、大山祇、中山祇、麓山祇、正勝山祇、䨄山祇の五座を祀れり、一に五男神社とも云、
愛宕社 男体社に向て左にあり、神主岩井伊予が家蔵の社内古絵図には吾妻社と載たり、
宗像社 御手洗の嶼中にあり、市杵嶋姫命・田心姫命・湍津姫命三座を合祀す、出雲国杵築の社にては筑紫社と号す、
稲荷社 簸王子社の西にあり、
天神社 簸王子と稲荷の間にあり、菅原道真朝臣を鎮座す、
住吉社 此地の入口にあり、下並に同じ、
石上布留社 布都御霊神を祀れり、
雷神社
神明社
第六天社
本地堂 簸王子の東にあり、氷川の本地仏正観音を安置す

「中世諸国一宮制の基礎的研究」

武蔵国

Ⅰ-2 一宮

1 氷川神社。 氷川大明神・大宮社ともいう。
5 中世における祭神は火川大明神。 本地仏は観音菩薩。
6 神宮寺には、観音寺・愛染院・宝積院・大聖院・常楽院・南龍坊・不動坊・池上坊などがある。